藤本かずのりサポーターズ はじめました

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老朽化した土地改良施設の維持費に対する地元負担を軽減すべき

 4月8日付、しんぶん赤旗日刊紙は、土地改良法に関し、日本共産党の紙智子参議院議員が、参議院農林水産委員会で次のような発言をしたと報じました。
 「参院農林水産委員会は3月27日、国や県が主導して老朽化した基幹的な農業用利水施設が更新できるようにする土地改良法改正案が前回一致で可決しました。これに先立ち、日本共産党の紙智子議員は、財政的に厳しい運営を強いられている土地改良区について質問しました。紙氏は『米価の低迷で米農家の経営難が長く続いてきたことから、老朽化した土地改良施設の維持や保全、更新の費用を負担しきれない現実がある』と指摘。法案で新たに設けられた国や県が主導するダムや頭首工などの期間水利施設の更新事業の更新事業でも、農家負担が発生する場合があるとし、『支援が必要だ』と要求しました。江藤拓農林水産相は『大規模な土地改良事業(7000ヘクタール以上)は公益性が高いので農家負担を軽減している』と述べ、比較的小規模な改良事業への支援は拒否しました。紙氏は『長期にわたり耕作放棄地となっていても賦課金(土地改良区の経費負担)を支払わざるを得ない事態も起きている』と告発し、土地改良区からの除外を受けた際の決済金などについて、政府の支援を要求。土地改良区を維持できないとの声が寄せられている。農家所得を確保することが大事だ』と訴えました。」
 宇部市万倉地区の県河川・有帆川に農業用水を主目的とする伏附井堰があります。
 1994年に改良工事を行っていますが、30年以上が経過して、更なる改良工事が必要となっています。
 昨年末、宇部市が、伏附井堰の頭首工の改修事業の国庫補助事業に関し、地元に、事業費想定額と負担割合を示してきました。
 市が地元に示した内容は、総事業費は、2億9千900万円、国が55%、県が10%、市が24%、地元が11%というものです。地元は、農業従事者の高齢化で、3000万円を超える負担を支払うことはできない状況です。
 昨年度末、私は、伏附井堰管理組合の役員の方と一緒に、宇部市に出向き、地元負担の軽減を要望しました。
 紙参院議員が指摘するように、全国の農業者は「米価の低迷で米農家の経営難が長く続いてきたことから、老朽化した土地改良施設の維持や保全、更新の費用を負担しきれない状況」にあります。
 今、ネットで調べた範囲で言うと、鳥取県には「鳥取県土地改良事業補助金交付要綱」があります。山口県は、「県営土地改良事業施行に伴う補助金等交付に関する条例」はありますが、広く土地改良事業に補助金を出す制度となっているのか今後調査したいと思います。
 私も実家の農業を手伝っています。利水は、厚東川からのポンプに頼っています。故障も頻発しています。改修費に対する補助はあるのかと以前、県の農林水産部に照会したことがありますが、当時、「法人など大規模の場合でないと補助金はない」との回答でした。
 このままでは、老朽化した土地改良施設が維持できない理由で、耕作放棄地が増加する可能性が広がる状況です。
 私は、今月に入り、子どもが現在、暮らすロンドンにパートナーと一緒に行ってきました。同時に、パートナーの友人が暮らすドイツ・デュッセルドルフ近郊で家に数日ホームステイしました。
 ホームステイした近くは、一面に広がる農業用地に囲まれた所でした。

 ホームステイしたドイツ・デュッセルドルフ近郊は、一面に農用地が広がっていました。

 昨年1月に開催された日本共産党第29回大会決議には、農業の再生に関し「農家の所得に占める補助金割合は、ドイツ77%、フランス64%に対し、日本はわずか30%にすぎない。価格保障・所得補償を抜本的に強化することを農業政策の柱にすえ、予算を大幅に増やして、農業を基幹産業として再生する」とあります。
 ドイツで、農業用地が延々と広がっている理由は、国が、農業者をしっかり支援しているからだと実感しました。
 「グローバルに考えローカルに行動せよ」という言葉があります。
 ドイツで見た延々と続く農地を考え、故郷山口県の農業者の苦しみを取り除くために力を尽くしたいと思います。
 国と山口県は、老朽化している土地改良施設の改修にあたり、地元負担を軽くするために補助を増やすべきです。これらのことを、来る6月県議会で、ドイツでの体験を踏まえて質問したいと考えています。

この春 朝ドラ「あんぱん」大注目です。

 この春から、やなせたかしさんご夫婦をモデルにした朝のテレビ小説「あんぱん」が始まりました。
 私は、1996年に、やなせたかしさんの故郷・高知県香美市設置された「やなせたかし記念館アンパンマンミュージアム」を開館されてまもない頃に尋ねています。この頃から、やなせたかしさんに興味を持ち、この程、朝ドラで取り上げられることにとても喜んでいる一人です。
 朝ドラを契機に、やなせたかしさんの関連本が相次いで出版されていますが、評伝物の中で、私は、梯久美子さんの「やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく」を推薦したいと思います。
 やなせたかしさんの仕事のひとつに「詩とメルヘン」誌の編集長をつとめたことがあると思います。私は、詩小学校の頃から、美術が大好きで、中学校の時の美術教師であった臼杵先生の控室に、「詩とメルヘン」があり、廃刊されるまでの間、社会人になってからも時折購入していました。詩もそうですが、葉祥明さんや黒井健さんなどのイラストが大きく描かれていて、これを鑑賞するのが楽しみでした。
 私が、梯さんの作品を推薦する理由の第一は、梯さんが大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、今や日本を代表する作家であることです。同時に、梯さんは、大学を卒業し、「詩とメルヘン」の編集部に在籍しておられたことです。
 梯さんは、「学生時代、師と呼べる人に出会うことができなかった私は、やなせ氏のもとで仕事をするようになってはじめて、心から『先生』と呼べる人をもつことにな』った書いています。梯さんは、やなせさんの「天才であるより、いい人であるほうがずっといい」という言葉が忘れられないと語っています。
 梯さんは、この言葉は、「身近な人に親身に接し、地道に仕事をし、与えられた命を誠実に生き切る」ことをがやなせさんの考えだと語ります。私にとっても心に残る言葉となりました。
 やなせさんの生涯で、戦争で弟の千尋を失ったことが、彼が生み出す作品に大きな影響を与えています。
 やなせさんは、戦後、戦争についてこう語っています。
 「どの国も、自分たちこそが正しいと思って戦争する。だが、戦争は結局、殺し合いだ。それぞれがいろいろ理屈をつけて戦うが、正義の戦争などというものはなんだ」「ある日を境に逆転してしまう正義は、本当の正義ではない」
 梯さんは「もし、ひっくり返らない正義がこの世にあるとすれば、それは、おなかがすいている人に食べ物を分けることができることではないだろうかー嵩はそう思うようになった。命が大切であるということは、世界中どこへ行っても、またどんな時代にあっても変わらない。戦争は人を殺すことだが、食べ物を分けることは人を生かすことだ。」
 やなせさんの「ある日を境に逆転しない正義」が我らがヒーローアンパンマンを生みました。
 沖縄には、「命どう宝」という言葉があります。命こそ宝。命を大切にする社会こそが、戦争をしない社会だということをやなせさんの人生を描いた梯さんの文章で学びました。
 朝ドラ「あんぱん」を応援していきたいと思います。
 やなせたかしさんや、朝ドラ「あんぱん」への想いをお聞かせください。

しんぶん赤旗 三浦誠社会部長が宇部市で講演を行いました。

  桜を見る会、モリ・カケ、パーティー券など、歴代の自民党首相による政治の私物化を暴いてきた「しんぶん赤旗」の(スクープの秘密)を赤旗編集局社会部三浦誠部長が語る「日本共産党を応援する集い」が、3月30日、宇部市湖水ホールで開かれ、約150人が参加しました。

 会場いっぱいの150人が参加し、三浦さんの話に耳を傾けました。

 三浦氏は、しんぶん赤旗が、スクープを暴けるのは、「いつも国民目線で取材するから」と強調し、実例を紹介しました。「桜を見る会」は総理主催の公的行事。一般の記者の関心は出席した「著名人の顔ぶれ」なのに対し、赤旗記者は、参加した一般人に着目し、安倍晋三首相の地元後援会員がツアーを組んで参加し、前夜祭まで開催していることを突き止め、安倍首相による「私物化」を白日の下にしました。 

 三浦さんは、厚南小中学校出身です。馴染みの方も多数かけつけました。

 自民党議員は、様々な名称で開催する「集い」の参加券(パーティー券・1枚2万円)を企業団体に購入してもらっているが、会場で提供されているのは軽食程度で、コロナ下では何もでなかった。一般紙の記者は「当たり前」と問題視しなかったが、赤旗記者は「対価がないのは法令上、問題がある」と取材を開始。買わされた企業・団体は政治資金収支報告書に記載していたが、受け取った政治家は記載しておらず、裏金になっていることを突きとめて報道してから、ようやく一般紙も取り上げ、捜査当局が動き始め、事実上の政治献金だったことが明らかになりました。

 昨秋の衆議院選挙で、自民党から非公認の処分を受けた無所属候補の選挙ポスターに「自民党支部長」と書いてある、と情報提供があったので、調査すると、一人ではないことが判明。赤旗記者が、非公認候補に「公認料」を振り込むという通知文書を入手し、ある非公認候補の陣営に取材して、その事実を認めたことで裏が取れ、「ウラ公認に2000万円」のスクープになりました。衆院選で共産党が議席を減らしたことは残念ですが、一般紙の記者や立憲の議員から「与党過半数割れは赤旗さんの勝利」と言われました。

 三浦氏は、「赤旗がスクープできるのは、記者だけの力ではない」と強調し、取材に協力してくれた人は、「家族が地元の党議員にお世話になったことがある、家族が赤旗を購読していて、時々、読ませてもらっていた」などと話していることを紹介しました。

 三浦氏は、会場から出た様々な質問に丁寧に応答し、「しんぶん赤旗は、まだ一般的には認知度が低い。もっと身近な新聞にするための改善が必要。特に若い世代には伝わっていない。みなさんの努力に応えられるよう努力したい」と話しました。

避難所運営部会が設置され、年度内に、避難所運営の基本指針、ガイドランの策定や見直しなど行う計画

 20日、読売新聞は、県の防災対策について次のように報じました。
 「能登半島地震を踏まえ、県は18日、有識者らでつくる県地震・津波防災対策検討委員会を開き、迅速な避難所環境の確保や広域避難の実施に向けて準備を進める『避難所運営検討部会』を委員会内に設置することを決めた。同地震では避難所の劣悪な環境が災害関連死の増加の一因となった。また、避難生活の長期化を見据えて希望者を被災地以外の場所に移送する『広域避難』も実施された。部会では、女性やペット同行者といった多様な視点を取り入れた避難所の運営について2025年度中に検討する。また、県が設置して運営する広域避難所の解説・運営手法を盛り込んだ『広域避難調整・運営マニュアル(仮)』の作成などにも取り組む。」
 当日、配布された資料の内、「避難所運営検討部会の設置について(案)」に、検討部会での検討内容(案は、次の3つだと示されています。
 第一は、「避難所運営マニュアル策定のための基本指針」の見直しです。
 第二は、「地域住民による自主的な避難所運営ガイドライン」の見直しです。
 第三は、「広域避難調整マニュアル」の作成です。
 今後のスケジュール(案)として、新年度の春に第1回検討部会を行い、夏以降ワーキンググループを開催し、年度内に第2回検討部会を開催し、先述した指針やガイドラインの改正案のとりまとめを行うとしています。
 どの指針やガイドラインも県民の安心安全にとって重要なものです。
 よりよい指針やガイドラインとなるよう必要な発言を続けたいと思います。
 これらの問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

ホランド監督の映画「人間の境界」は、平和な世界を願う作品です。

 昨日、西京シネクラブの例会で、アグニエシュカ・ホランド監督の「人間の境界」が上映されました。
 昨年5月10日、朝日新聞は、この映画について次のように報じました。
 「アグニエシュカ・ホランド監督の『人間の境界』が公開中だ。ポーランドとベラルーシの国境で立ち往生する難民の苦境が克明に描かれる。ホランド監督は難民だけではなく、彼らの前に立ち塞がる国境警備隊員や、難民の支援する市民活動家の複数の視点から、国境地帯で何が起こったのかを訴えようとしている。2021年秋、ポーランド政府はベラルーシ国境に非常事態宣言を出し、中東などからの難民を強制的に押し戻す政策を取る。ベラルーシ政府がEUを混乱させようと、難民を送り込んでいるというのだ。映画は、シリアから逃げてきた家族6人の過酷な運命を中心に展開する。『難民受け入れは現代の欧州にとって最大の問題です』とホランド監督は言う。『日本もそうではないですか。EUはこの問題に対する準備が出来ておらず、混乱したリアクションを取ってしまった』冒頭、森林の濃い緑が映し出される。しかしすぐモノクロに変わり、ラストまで色が戻ることはない。『ポーランドでも最も美しい土地で、悪夢が起きていることを伝えたかった。モノクロは時代の間隔を溶けさせる効果があります。シリア難民の苦境を見て、第2次世界大戦時のユダヤ人のことを思い出してもらいたいとも考えました』難民に規模しい態度を取る国境警備隊員の苦しみにも迫っているところも特徴だ。『彼らも普通の人間です。密輸業者を取り締まる覚悟はしていても、幼い子どもを捕まえて国境の向こう側に放り投げる仕事をさせられるとは思ってもいなかった。だから彼らの中に、葛藤に耐えきれない人が少なからず現れました』昨年のベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。『この作品は今の世界に対する私自身の声明です。映画祭での受賞によって、ポーランドの国境でこんなことが起きていると、多くの観客に知っておらえることがうれしい」
 映画の上映に対し、当時のポーランド政権は本作を激しく避難し、公開劇場に対し上映前に「この映画は事実と異なる」という政府作成のPR動画を流すよう命じるなど異例の攻撃を仕掛けましたが、ほとんどの独立系映画館がその命令を拒否ししたと、映画のパンフレットに書かれてあります。
 映画のパンフレットで久山宏一さんは「ポーランド・ベラルーシ国境における不法越境件数は、2021年8月は3500人、9月は7700人、10月が17300人と増大を続ける。11月には8900人に減少し、12月以降はほぼ1000件前後で推移している。『国境グループ」HPによると、2024年3月現在、『ポーランド・ベラルーシ国境で57名が命を落とした』という」と書いています。
 映画のパンフレットで、ホランド監督は、この映画の意義について次のように語っています。
 「私個人に世界を救う力があるなんて幻想を抱いているわけではなく、私は理想主義者ではありません。私は、マルク・エデルマンが言った『悪はいつでもどんな人の中にも目覚める可能性があり、それをコントロールする者は大きな責任を負う』という言葉に同意します。私一人だけで、あるいは同じような考えの人とだけ協力することで、この状況を変えることが可能だと信じられるでしょうか?私はそうは思えません。しかし、努力することが私の義務であると信じています。最近、私はよくヴィスピャンスキの言葉を思い出します。『可能な限り、私たちはコントロールしなければならない。あまりに多くの人々が、多くの出来事に対するコントロールを放棄してることを考えると』。世界を変える方法は分かりませんが、映画を使って物語を伝える方法は分かります。それが私の仕事です。」
 世界は、コントロールを失おうとしている側面が強まっていると私も痛感します。
 私は、個人の尊厳を守るためのコントロールが失われようとしていると思います。
 簡単に人の命が失われてしまう社会を変える必要があると思います。
 そのためには、他者をリスペクトすることが大切だと思います。
 国同士も同じで、相手をリスペクトし、可能なかぎり対立関係を築かない努力を続けることが必要だと思います。
 対決から包摂の世界となるよう、私は一人の市民として、県議会議員として、私の仕事を通じて社会や世界の平和に貢献していきたいとこの映画を観て決意を新たにしました。
 勇気ある映画を作成していただいたホランド監督に感謝したいと思います。
 一人でも多くの方にホランド監督の映画「人間の境界」を観ていただきたいと思います。

窪田新之助著「対馬の海に沈む」は、圧巻のノンフィクション小説です。

 22日付、朝日新聞は、読書コーナーで、窪田新之助著「対馬の海に沈む」を取り上げていました。評を行ったのは、ノンフィクションライターの安田浩一さんです。
 「とり憑かれたように深い闇の中を進む著者の足音が響く。動悸が伝わる。底のない穴に落ちていくような感覚に襲われる。その先に何があるのか。私もまた、著者の耳目となって追体験を重ね、真実の行方を探す。並々ならぬ熱量を感じさせる、凄絶というほかないノンフィクションだ。国境の島、対馬(長崎県)で44歳の男が死んだ。運転していた乗用車もろとも、岸壁から海に向かって転落した。男は対馬農業協同組合(JA対馬)の職員だった。彼の死はJA対馬だけでなく、JAグループ全体にも衝撃を与える。男はJAの共済事業において、全トップクラスの実績を持つ凄腕営業マンだったからだ。人口3万人ほどの離島である。過疎化も進む。そんな島で、トップセールスの座を維持してきた。『モンスター』『神様』『天皇』の異名を持ち、いつしか絶大な権力を掌中に収めてもいた。一方、男には巨額横領の疑惑もあった。実際、死後明らかとなった被害総額は約22億円にものぼる。彼を死に至らしめたものは何か。横領の真相は何か。組織はなぜ『モンスター』の存在を長きにわたって許容してきたのか。様々な疑問を抱えて著者は奔る。ミステリー小説のような展開だ。細かなピースを繋ぎ合わせるようにして、薄闇で視界が遮られた風景に明かりを灯していく。男の上司や同僚だった人物をはじめ、関係者に片端から『当てて』いく。何も知らないのだと取材を拒むものがいる。離島ならではのムラ社会は、突然飛び込んできた取材者というヨソ者に拒否反応を示す。他方で、おそるおそる口を開く者もいた。不正の手口には唖然とするしかない。多額の歩合給と顧客に支払われるべき共済金を手にしていた。さらには『軍団』と称するインフォーマルグループをつくり、強固な団結で沿わない職員を排除する一方、仲間内に様々な恩恵を与えてもいた。一介の営業マンでありながら、アメとムチで支配体制を築き上げた。複雑難解な共済の仕組み、JAの特異な体質については、農業専門紙の記者だった著者のていねいな解説が読み手の理解を助ける。執拗な取材の果てに、海の底に沈んだ真実が見えてくる。薄氷上で踊り続けた男の破滅は、『共犯者』とhして利益を得てきた組織の病根をもあぶりだしたのだ。」
 私は、ここ十数年、書店に行くと、ノンフィクションコーナーに足を向け、多くの書物を手に取ってきました。本ブログにも多くのノンフィクション作品の感想などを書いてきましたが、今年に入って読んだ、ノンフィクション作品の中では最も心に残る秀逸な作品だと言えます。
 私は、山口県内の農村地域のど真ん中で生まれ、家には、「家の光」があり、農協を通じて、様々な商品を購入していました。父は、公務員でしたので、農協から商品を買わされているなあと子ども心に感じる時もありました。
 我が家は、米作の兼業農家で、農協の組合員でした。小学校区には、営農を支える部署や金融機関もありましたが、今は、そのほとんどが集約され、今では、ほとんど何もなくなってしました。
 ですから、本書で取り上げられている農村文化とその中での農協の存在について、理解できる環境で私は育ったのだと自負しています。
 作者は、44歳で亡くなったJA対馬の男性職員は「ノルマの達成や営業の実績を至上とする舞台で」「踊らされてきた」と書いています。
 その舞台を作ってきたのは「JAグループの関係団体に加え、JA対馬の役職員と組合員」と書いています。
 男性職員の不正を質そうとした職員が取り上げてられています。
 しかし、組織は、その都度、まともに取り上げず、44歳で亡くなった男性職員の踊りを止めようとしませんでした。
 作者は、「JAグループが抱える組織の構造に関する問題や弱点を見つけ出していったのではないだろうか」と書いています。
 折しも、「令和の米騒動」と言われる時代の中で、本書が発表されました。
 私の知人に、農協の米の供出場でアルバイトをしている方がおられます。
 その方は、「去年は、農協へ供出する農家が激減した」とおしゃっていました。
 農協が農家を支え、農業を振興させる事から遠ざかっている事が、本書に書かれた事件を生む背景になっているし、米作農家の農協離れを生む背景になっているように感じます。
 一人でも多くの皆さんに窪田新之助著「対馬の海に沈む」を読んでいただきたいと思います。
 読まれた方は、感想をお聞かせください。