この春から、やなせたかしさんご夫婦をモデルにした朝のテレビ小説「あんぱん」が始まりました。
私は、1996年に、やなせたかしさんの故郷・高知県香美市設置された「やなせたかし記念館アンパンマンミュージアム」を開館されてまもない頃に尋ねています。この頃から、やなせたかしさんに興味を持ち、この程、朝ドラで取り上げられることにとても喜んでいる一人です。
朝ドラを契機に、やなせたかしさんの関連本が相次いで出版されていますが、評伝物の中で、私は、梯久美子さんの「やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく」を推薦したいと思います。
やなせたかしさんの仕事のひとつに「詩とメルヘン」誌の編集長をつとめたことがあると思います。私は、詩小学校の頃から、美術が大好きで、中学校の時の美術教師であった臼杵先生の控室に、「詩とメルヘン」があり、廃刊されるまでの間、社会人になってからも時折購入していました。詩もそうですが、葉祥明さんや黒井健さんなどのイラストが大きく描かれていて、これを鑑賞するのが楽しみでした。
私が、梯さんの作品を推薦する理由の第一は、梯さんが大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、今や日本を代表する作家であることです。同時に、梯さんは、大学を卒業し、「詩とメルヘン」の編集部に在籍しておられたことです。
梯さんは、「学生時代、師と呼べる人に出会うことができなかった私は、やなせ氏のもとで仕事をするようになってはじめて、心から『先生』と呼べる人をもつことにな』った書いています。梯さんは、やなせさんの「天才であるより、いい人であるほうがずっといい」という言葉が忘れられないと語っています。
梯さんは、この言葉は、「身近な人に親身に接し、地道に仕事をし、与えられた命を誠実に生き切る」ことをがやなせさんの考えだと語ります。私にとっても心に残る言葉となりました。
やなせさんの生涯で、戦争で弟の千尋を失ったことが、彼が生み出す作品に大きな影響を与えています。
やなせさんは、戦後、戦争についてこう語っています。
「どの国も、自分たちこそが正しいと思って戦争する。だが、戦争は結局、殺し合いだ。それぞれがいろいろ理屈をつけて戦うが、正義の戦争などというものはなんだ」「ある日を境に逆転してしまう正義は、本当の正義ではない」
梯さんは「もし、ひっくり返らない正義がこの世にあるとすれば、それは、おなかがすいている人に食べ物を分けることができることではないだろうかー嵩はそう思うようになった。命が大切であるということは、世界中どこへ行っても、またどんな時代にあっても変わらない。戦争は人を殺すことだが、食べ物を分けることは人を生かすことだ。」
やなせさんの「ある日を境に逆転しない正義」が我らがヒーローアンパンマンを生みました。
沖縄には、「命どう宝」という言葉があります。命こそ宝。命を大切にする社会こそが、戦争をしない社会だということをやなせさんの人生を描いた梯さんの文章で学びました。
朝ドラ「あんぱん」を応援していきたいと思います。
やなせたかしさんや、朝ドラ「あんぱん」への想いをお聞かせください。
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