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「人新世の『資本論』」読書ノート①

 斎藤幸平さんの「人新世の『資本論』」を読んでいます。
 今日から少しづつこの本の感想を書いていきたいと思います。
 斎藤さんは、大阪市立大学大学院の准教授です。1987年生まれですので、33歳です。親子ほど違う斎藤さんですが、この本から学ぶことは大です。
 ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンさんが地質学的に見て、地球は新たな年代に突入したと言い、それを「人新世」と名づけました。
 「人新世」の意味について斎藤さんは、「はじめに」で「人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代」と書いています。
 齋藤さんは、近代化による経済成長は、「豊かな生活を約束していたはずだった。ところが、『人新世』の環境危機によって明らかになりつつあるのは、皮肉なことに、まさに経済成長が、人類の繁栄の基盤を切り崩しつつあるという事実である。」と指摘しています。
 齋藤さんは、「より良い未来を選択するためには、市民の一人ひとりが当事者として立ち上がり、声をあげ、行動しなければならないのだ。そうはいっても、ただ闇雲に声を上げるだけでは貴重な時間を浪費してしまう。正しい方向を目指すのが肝腎となる。この正しい方向を突き止めるためには、気候危機の原因にまでさかのぼる必要がある。その原因の鍵を握るのが、資本主義にほかならない。なぜなら二酸化炭素の排出量が大きく増え始めたのは、産業革命以降、つまり資本主義が本格的に始動して以来のことだからだ。そして、その直後に、資本について考え抜いた思想家がいた。そう、カール・マルクスである。」と書いています。
 更に斎藤さんは、「これまでのマルクス主義の焼き直しをするつもりは毛頭ない。150年ほど眠っていたマルクスの思想のまったく新しい面を『発掘』し、展開するつもりだ。」と書いています。
 斎藤さんは、スウェーデン人の環境活動家グレタ・トゥーンベリを登場させています。
 斎藤さんは、グレダの主張は、「資本主義が経済成長を優先する限りは、気候変動を解決できないというものである。」と述べ更に「ここまできたら、今のシステムのうちには解決策がない、だから、『システムそのものを変えるべきだ』とグレタは、COP24の演説を締めくくった。世界中の若者たちは、グレタを熱狂的に支持した。子どもたちの声に応えようとするなら、私たち大人は、まずは現在のシステムの本質を見極め、次なるシステムを準備しなけれならない。もちろん、グレタの言う無策のシステムとは、資本主義のことである。」と指摘しています。
 斎藤さんは、「はじめに」で、「SDGsはまさに現代版『大衆のアヘン』である。」と指摘し、その意味について「アヘンに逃げ込むことなく、直視しなければならない現実は、私たち人間が地球のあり方を取り返しのつかないほど大きく変えてしまっているということだ。」と書いています。
 「SDGsはアヘン」だという言葉は、資本主義というシステムそのものを問題にしていかなければ、地球環境は維持できないという斎藤さんの強いメッセージを表現したものだと私は理解しました。
 この本には、「ポイント・オブ・ノーリターン」という言葉が繰り返し使われています。「以前の状態に戻れなくなる地点」は、もうすぐこそに迫っていると言う斎藤さんの気迫が迫ってくる本書です。
 菅政権が、「2050年までの温室効果ガス排出ゼロ」を提起し、アメリカ大統領選で勝利確実にしたと報じられているバイデン氏も「2050年までの温室効果ガス排出ゼロ」を提起しています。
 「ポイント・オブ・ノーリターン」を目前にした私たちが、学ぶべき示唆を与えてくれるのが本書です。
 引き続き、この本の感想について述べていきたいと思います。
 この本は、6万部を突破したそうです。
 この本を読まれた皆さんの感想をお聞かせ下さい。

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9 Comments

  1. 斎藤幸平で検索したらこのページに到達しました。
    私も久々に(学生時代以来かな)わくわくした本で、74歳になって新しい活力と希望をもらいました。赤旗で不破さんとの対談を1年にわたって掲載してほしいと手紙を出すつもりです。人新世の資本論、脱成長コミュニズムがきっとそのうちに大きなブームになってくると期待しています。

    by 加藤憲 — 2021年1月14日 22:45 PM

  2. 「人新生『資本論』」はつい昨日買ったばかりでまだ読んではいないが、著者の斎藤浩平さんに注目したのは東京新聞(2021年月20日付)に「コミュニズムが人命と環境守る」という文字が大きく踊っていたからだ。インタビュー記事なのですが、そこで斎藤さんは「資本主義に緊急ブレーキをかけることです」といっている。以前水野和夫や野口悠紀雄は共に、資本主義の終焉が始まったとその著書で言っていた。だが、いずれもその次に来る社会システムについては一言も言っていない。斎藤浩平はそれがコミュニズムだと明確に説いている。そこが非常に新鮮で、これから読むのが楽しみだ。

    by 鈴木敏督 — 2021年3月29日 22:46 PM

  3. はじめまして。
    ご紹介の本と赤旗で検索しこちらにお邪魔しました。
    感想の続きは書かれないのでしょうか?
    ご事情がおありでしようか。

    by Ky — 2021年5月4日 4:51 AM

  4. はじめまして。
    生産力至上主義(?)のようなものには社会人となるころから疑問を持っていました。資本論もまともに読んでいないのですが、脱成長コミュニズムと未来社会論との兼ね合いを探ることが今後の生きがいとなりそうです。

    by 宮内義明 — 2021年5月8日 10:22 AM

  5. カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルスの共作、共産党宣言の和訳を若い頃に読んだ事があります。マルクスの資本論も読みましたが、思想書としてなら面白いかも?当時は工場労働者は少なくほとんどの国に圧倒的に多い生産階層は農民です。
    ヨーロッパ列強諸国は、どこから富を吸い上げていたかはマルクスも知っていたと思いますね。海外の植民地から非人道的な手段で莫大な利益を上げていました。私は経済学を大学で学び、今でも学生時代の一般教養など歴史や文化を延長で独学しています。マルクスはユダヤ人ですので、一族に莫大な富を持つ富豪から生活支援を受けていました。だから英国立図書館に毎日通いながら、遊んで暮らしていました。今ではカール・マルクスの人生を学ぶ者では常識です。しかし搾取される植民地の人々の事は一切触れていません。資本家の手先はカール・マルクスであり世界を二分化し、対立させて二者を操る事で大資本家は益々儲けるのです。彼らの合言葉は「ルークラですか?」早い話「儲かりまっか?」ですね。二酸化炭素の排出が問題だとされる地球温暖化は不思議です。植物は特に藤本さんは稲作をされているそうですが、二酸化炭素を吸入してお米と言う炭水化物を実らせてくれます。私はありがたくお米を食べています。書けば長くなるので今日はこれで終わります。7月1日行ってみようかな?

    by 藤井 守 — 2021年6月28日 19:31 PM

  6. 斎藤幸平氏を最近知りました。本もパラパラ読んでいます。この若さで、すごいなと、その勇気にも絶賛です!!私もそんな世界を望んでいて、日本共産党や市民と野党の共闘を応援しています。是非、斎藤氏とも手を組んで、リーダーシップをとっていただくことを切に切に希望いたします!!

    by 小西ともえ — 2021年9月23日 17:38 PM

  7. 私は特に213ページ後ろからの「政治主義の代償–選挙に行けば社会は変わる?」の節に注目しています。デモやストライキという「直接行動」の重要性を説いています。ブログに約1ページ分を引用しています。
    https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2021-09-14#p213
    今は選挙の真っ最中で、とても大事な戦いですが、普段、左翼やリベラルで国政の変革を議論するとき、たいてい「とにかく選挙が大事」という言い方がよく聞かれ、直接行動のウェイト、意味を十分理解していないようの思われます。この一節で我が意を得たり、と思いました。

    by 豊島耕一 — 2021年10月23日 13:21 PM

  8. 「人新世の資本論」を読みました。
    若い世代の研究家がこれを書き、ベストセラーになっていることにも驚き、その内容にも「目から鱗…」です。
    資本論をかじったこともあるし、資本主義が高度に発達しないと社会主義には進めないとずっと思っていたので、これからは「脱成長」が条件だという理論に共感しました。
    でも、日本共産党がいまだに沈黙しているのが不思議です。「経済」の11月号と12月号に「人新世と唯物史観」というタイトルで載りましたが、斉藤幸平氏の著作に対してのものではないようです。
    日本共産党はどういう見解なのか、早く示していただきたいと思います。

    by 中村由紀男 — 2022年1月28日 22:51 PM

  9. "「人新世の『資本論』」読書ノート①
    2020年11月16日
     斎藤幸平さんの「人新世の『資本論』」を読んでいます。
     今日から少しづつこの本の感想を書いていきたいと思います。"
     これから始めていながら、1年以上も続きが出せないのはどういう理由があるのか?不思議な事ですね!

    by 長堂朝圭 — 2022年2月6日 20:33 PM

コメント

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