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山陽小野田市の宇宙監視レーダーが特別注視区域に指定 周辺1㌔の土地の売買などが規制される

 KRY山口放送局は、26日、山陽小野田市の宇宙監視レーダーについて、重要土地等調査法の特別注視区域に指定されたと報じました。
 「安全保障上、重要な土地の利用を調査・規制する重要土地等調査法の『特別注視区域』に、山陽小野田市に防衛省が設置した宇宙監視レーダーが25日、新たに指定されました。この法律は、防衛や原子力など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を調査・規制するものです。山口県内ではこれまで、アメリカ軍岩国基地など5施設の周辺が『特別注視区域』に指定されていますが、県によりますと、山陽小野田市にある宇宙監視レーダーの周囲が25日に新たに指定され、8月1日に施行されると内閣府から連絡があったということです。宇宙監視レーダーは直径13メートルのアンテナ6基で構成され、宇宙ゴミや不審な衛星などを監視するためとして防衛省が山陽小野田市埴生の海上自衛隊施設跡地に設置、3月3日に運用が始まっています。法律の指定区域内では土地・建物の所有者の名前や国籍などを国が調査することができるほか、『特別注視区域』では一定の面積以上の土地などを売買する際、事前の届け出も必要となります。」
 県政策企画課のホームページによると、県内で、注視区域は、次の施設です。
・華山送信所(下関市)
・下関基地隊(下関市)
・小月航空基地(下関市、山陽小野田市)
・六連島SIF局舎(下関市)
・山口駐屯地(山口市)
・大平山無線中継所(防府市、周南市)
・防府送信所(防府市)
・艦艇装備研究所岩国海洋環境試験評価サテライト(岩国市)
・祖生通信所(岩国市)
 特別注視区域は次の施設です。
・岩国航空基地、岩国飛行場(岩国市)
・見島分屯基地(萩市)
・防府北基地(防府市)
・美川通信所(岩国市)
・銭壺山無線中継所(岩国市、柳井市)
・防府北基地レーダー地区(山陽小野田市)
 防府北基地レーダー地区というのが、宇宙監視レーダーのことです。
 施設周辺の概ね1㌔の範囲内が指定区域です。
 特別注視区域内において、面積200平方㍍以上ある土地などの所有権などの移転等をする契約を締結する場合、契約の当事者は国への届け出が必要です。
 「機能阻害行為」が確認されれば国が中止を勧告・命令できます。従わなければ、刑事罰が科されます。基地監視活動など国民の運動に委縮効果をもたらすことが懸念されています。
 今年6月9日に行われた内閣府の第12回土地等利用状況審議会において、防府北基地レーダー地が新たに特別注視区域として指定する意向が示され、施設が移転した那覇海上保安部が区域を変更する意向が示されました。
 審議会の資料に、自治体からの意見が示されています。5件の意見の内4つは、米軍基地に関する内容であり、沖縄県からの意見ではないかと思われます。
 私は、明日から開かれる総務企画委員会で、山口県は、宇宙監視レーダーの特別注視区域の指定の意向が国から示された際に、どのような意見を述べたのか質したいと思います。
 最後の意見が、住民説明会の開催です。国は、様々な資料を示しているので、説明会の実施は考えていないと答えました。
 今回の宇宙監視レーダーの区域指定にあたって、山陽小野田市埴生周辺の住民の意見が事前にどこまで集約されたのか質したいと思います。
 日本共産党は、区域指定は、土地の売買といった住民や事業者の経済活動、まちづくりへの影響の懸念やプライバシー権、財産権、思想・良心の自由への侵害を懸念し、大本の土地利用規正法の廃止を求めています。
 この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。

中国新聞に、私が昨日、一般質問で取り上げた、村岡知事への献金問題が掲載されました。

 今朝の中国新聞は、私が、昨日、一般質問で取り上げた村岡知事への献金問題を次のように報じました。
 「山口県の村岡知事は27日、自身の資金管理団体への個人献金を巡り、一部の寄付者が2023年の政治資金収支報告書で自宅を書くべき住所欄を実態と異なる企業や団体の所在地としていたことについて、実態調査や陳謝をする考えはないとの考えを明らかにした。政治資金規正法に記載住所の定義がないことを理由に挙げた。県議会一般質問で、長野県知事が同様の実態で調査し陳謝したことを踏まえた対応を問われ、答えた。『村岡知事も調査して修正し反省の弁を述べるべきだ』との山口県議の指摘に、村岡知事は『政治資金規正法に収支報告書に記載する住所の定義はないことからそのような考えはない。寄付者から修正の申出があれば応じる』と述べた。総務省政治資金課は、収支報告書の内容は『実態に即して記載する必要がある』としている。村岡知事の資金管理団体を巡っては、23年の収支報告で少なくとも8人(計23万円分)の住所欄が、寄付者の自宅ではなく、代表を務める企業や団体の所在地にとなっていることが中国新聞の取材で明らかになっている。」
 私は、一般質問で、政治資金規正法第22条の問題について、中公新書の竹内彰志著「政治資金規正法」の次の部分を引用して選挙管理委員長の見解を質しました。
 「地方公共団体から補助金、負担金、利子補給金などの給付金交付決定を受けた企業は、交付決定通知から1年が経過するまでの間、当該地方自治体の首長や地方議員、それら候補者、政治団体について、政治活動への寄付ができない」
 私が、政友会に献金した者の住所が企業団体の住所であった企業団体が、県から補助金を受けているかどうかを情報公開請求した結果、新型コロナ感染症対応資金利子交付金が交付されていたという団体がありました。
 私は、選挙管理委員会に、「政治資金規正法は、県から利子補給金などを受けている企業は、知事に寄付することは禁止ていると思うが、法解釈について尋ねる」と質しました。
 黒瀬選挙管理委員長は「政治資金規正法の22条の3では、国又は地方公共団体から補助金、助成金、交付金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付もしくは資本金などの出資を受けている会社その他の法人は、政治活動に関する寄付をしてはならないことが規定されているが、個人に関しては、そのような規定はない」と答えました。
 私が情報公開請求を行い、開示された文書は黒塗りでしたが、知事として調査すれば団体は特定できます。
 村岡知事は、県から利子補給金を受けている団体からの献金が判明した場合は、返金するなど収支報告書の修正を行うべきです。
 記事にあるように、同様の状態に対して、阿部長野県知事は、調査し、県民に謝罪し、修正しているのです。
 村岡知事の姿勢は、重大です。引き続き、この問題を追及していきたいと思います。
 村岡知事への献金問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

自衛隊新田原基地にF35B2機が緊急着陸する事案が発生しました。

 6月19日、NHK宮崎放送局は、米軍の戦闘機F35Bが2機が自衛隊新田原基地に緊急着陸したと次のように報じました。
 「アメリカ軍のステルス戦闘機F35B2機が17夜、宮崎県新富町の航空自衛隊新田原基地に緊急着陸したことが分かりました。県には九州防衛局から『安全確保のため予防的に着陸した』との説明があったということです。県と新富町によりますとアメリカ軍のF35B2機は17日の夜10時ごろ、新田原基地に緊急着陸しました。さらに18日の午後6時ごろには着陸した機体の整備のためアメリカ軍の輸送機1機が着陸しました。県には九州防衛局から『安全確保のため予防的に着陸した』と説明があったということです。2機のうち1機は19日午前8時すぎに機体の整備を終えて離陸し、午前11時すぎには2機目も離陸するのが確認できました。新富町によりますとアメリカ軍のF35Bが新田原基地に緊急着陸したのは今回が初めてとみられます。九州防衛局によりますと、着陸したのはアメリカ・アリゾナ州にあるユマ基地の第214海兵隊攻撃中隊に所属する機体だということです。」
 第214海兵隊攻撃中隊の所属機であるF35Bは、岩国基地にローテーションで配備されている戦闘機だとみられます。
 岩国基地所属のF35Bに関する最近のトラブルは、高知空港に今年3月25日に着陸し長期間修理のために滞在した事例があります。
 昨年の岩国基地における機種変更に対し、県は、7月22日、F35Bの事故の発生状況について国に照会しています。国は8月20日に次のように回答しています。
 「2018年9月に米国サウスカロライナ州において、2020年9月米国カリフォルニア州において、2023年9月に米国サウスカリフォルニア州において、それぞれ米軍が運用するF35Bが墜落したものと承知しています。また、墜落以外の事故として、2016年10月に米国サウスカロライナ州で飛行中に出火、安全に着陸し、死傷者はなかったものと承知しています。」
 岩国基地に配備されたオスプレイも事故が多い戦闘機だと指摘されていますが、F35Bについても、墜落事故が相次ぎ、国内でも緊急着陸が続いています。
 私は、4月に沖縄県を視察しました。その中で、1959年に、アメリカの戦闘機F100Dが墜落し、小学生など17人が亡くなった宮森小学校の追悼碑を尋ねました。
 米軍岩国基地には、事故が頻発しているオスプレイとともに、F35Bが、現在、4部隊配備されています。とても危険な状況であることを、来週から行われる県議会総務企画委員会がしっかり取り上げていきたいと思います。

阿部長野県知事が、個人献金した人の住所が企業事務所などの記載54件を修正 

 5月28日、NHK信州放送局は、阿部知事が、資金管理団体の政治資金収支報告書の修正を行いました。
 「阿部知事が代表を務める資金管理団体の政治資金収支報告書で、個人献金をした人の住所欄に自宅以外の住所が記載されていた問題で、阿部知事は調査の結果、あわせて54件で誤りが見つかったとして報告書を修正したと明らかにしました。この問題は、阿部知事が代表を務める資金管理団体『信立会』の2022年分の政治資金収支報告書で、個人献金をした人の住所欄に企業の事業所など、自宅以外の住所が記載されていたもので、阿部知事は27日、調査の結果、あわせて54件、金額にして93万円分について誤りが見つかったと明らかにしました。これらについて、今月22日までに正しい住所に報告書を修正したということです。この問題を巡っては、県建築業協会に加盟する建設会社の代表らあわせて26人が同じ日に献金を行っていて、その多くの住所欄に企業の事業所などの住所が記載されていたことから、専門家から『個人献金を装う(振り替え献金)の疑いがもたれてしまう』などと指摘されていました。また阿部知事は、『信立会』の会計責任者を県建設業協会の特任理事が務めていることについて、『体制を刷新してしっかり政治資金の確認を行えるようにしたい』と話しました。」
 私は、長野県が公開している、阿部知事の政治資金管理団体の信立会の2022年分の政治資金収支報告書を閲覧しました。記事にあるように、5月22日付で、報告書が修正されていました。
 阿部知事は、5月7日の記者会見で、「県民の皆様にはまずおわびを申し上げます。」と発言し、報告書の修正を約束し、その事を5月22日に実行しました。
 村岡知事にも阿部知事と同様に、企業団体の住所からの献金が複数あることが指摘されています。私は、明日の一般質問で、村岡知事も報告書を修正すべきだと質すことにしています。
 この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。

国民民主党が参院政策に「地上配備システムを含むミサイル防衛体制の整備」と明記 住民の会申し入れ

 24日、毎日新聞は、国民民主党の参議院選挙の政策に「地上配備システムを含むミサイル防衛体制の整備」と書かれている問題に、市民団体が、同党に要請書を提出したと次のように報じました。
 「市民団体『イージス・アショア配備計画の撤回を求める住民の会』(森上雅昭代表)は23日、国民民主党が参院選に向けて発表した2025年製作パンフレットに『20年に取りやめとなった陸上配備型迎撃ミサイルシステム(イージス・アショア)の配備を再検討する公約がある』として、党山口県連の大内一也代表に撤回を求める申し入れ書を手渡した。22年の党安全保障政策や24年衆院選政策パンフレットには『イージス・システム搭載艦の有効性を検証し、中止が決定されたイージス・アショアの配備についても再検討する』と記載され、住民の会は5月、党本部に撤回と説明会の開催などを申し入れていた。25年政策パンフレットは『イージス・アショア』の表現は使わず、『地上配備システムを含む包括的かつ最適なミサイル防衛体制の整備を行う』に変わったが、住民の会は『地上配備システムはイージス・アショアのこと』と指摘し、再度説明を求めた。森上代表は『ごまかしのような文言の削除は認められない。イージス・システム搭載艦配備の後に、さらに陸上にイージス・アショアも配備されるような際限のない軍備増強につながりかねない』と批判した。」
 23日に、イージス・アショア配備計画の撤回を求める住民の会(森上雅昭代表)が国民民主党に提出した申し入れ書は以下の通りです。
・・・

2025年6月23日

国民民主党政務調査会長 浜口 誠 様
国民民主党山口県連代表 大内一也 様

イージス・アショア配備計画の撤回を求める住民の会
                 代表 森上雅昭

 

『ご回答』と『政策パンフレット2025』に関する申し入れ

 

 2025年6月6日付の『質問状へのご回答』には、「2025年参議院選挙に向けた政策を再検討する中で、イージス・アショアという文言は削除することとなりました」と書かれています。
2025年6月17日発表の『国民民主党の政策2025パンフレット(7)ミサイル防衛の強化』を、『2024パンフレット』と比較してみると・・・

 『2025パンフレット』-この際、現在進めている「イージス・システム搭載艦」の有効性を検証・評価するとともに、地上配備システムを含む包括的かつ最適なミサイル防衛体制の整備を地域住民の声を尊重したうえで、行います。

 『2024パンフレット』-この際、現在進めている「イージス・システム搭載艦」の有効性を検証するとともに、中止が決定された「イージス・アショア」の配備についても再検討します。
 
 しかし、地上配備システム=地上配備型迎撃ミサイルシステム=陸上配備型イージス・システム=イージス・アショアなのです。かようなごまかしの「削除」に対して、以下、文書回答を求めます。

① なぜ、「イージス・アショアという文言は削除する」としたのか、説明を求めます。
② なぜ、「地上配備システム」という文言にしたのか、説明を求めます。
③ あらためて、「イージス・アショアの配備の再検討」という国民民主党の政策・公約の撤回と謝罪を求めます。
・・・
 国民民主党が7月1日に発効した「国民民主党 政策パンフレット」政策各論の2「自分の国は(自分で守る)」の5「危機から国民と国土を守る」の(7)ミサイル防衛の強化に、こう書かれています。(政策パンフレット26ページ)「『イージスシステム搭載艦』を検証・評価するとともに、地上配備システムを含む包括的かつ最適なミサイル防衛体制のを整備を地域住民の声を尊重したうえで、行います。」
 イージス・アショアのことを「陸上配備型迎撃ミサイルシステム」と呼んでいます。引用した記事にあるように、国民民主党の公約にある「地上配備システムを含むミサイル防衛体制」とは、イージス・アショアのことであるとの指摘に私は賛同します。
 国民民主党は、政策パンフレットで「地域住民の声を尊重したうえで」と書いていますが、2020年にイージス・アショア計画が中止になったのは、国が、地域住民の声を尊重したからです。国民民主党は、その事実を理解せず、再度、陸上配備システムを含むミサイル防衛体制を整備するというのでしょうか。国民民主党は、2020年に国がイージス・アショアを中止する判断をするまでに、山口県と秋田県でのどのような住民運動があり、各自治体の首長の発言があったのかをどこまで承知しているのか疑問です。
 住民の会への申し入れに、国民民主党は、6月6日に「イージス・アショアという文言は削除する」と回答しながら、7月1日の政策パンフレットに、「陸上配備システム」を含むミサイル防衛体制の整備するとの文言を入れたのか私も疑問です。
 国民民主党は、住民の会の再度の質問に丁寧に回答することを私も希望し、動向を注視していきたいと思います。
 この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。

2025年本屋大賞受賞作 阿部暁子著「カフネ」を読んでいます。

 5月19日、しんぶん赤旗日刊紙に歌人の盛田志保子さんの「話題作を読み解く」で、阿部暁子著「カフネ」が取り上げられていました。盛田さんは、「カフネ」を次のように解説しています。
 「2025年本屋大賞受賞作である。主人公の野宮薫子は41歳、法務局に勤務している。数年にわたる不妊治療は実を結ばず、夫は出ていき、一人で苦労していた矢先、最愛の弟、春彦を失う。突然死だった29歳の春彦は遺産の相続人として、元恋人である小野寺せつなの名前が記されていた。薫子は手続きを進めようとせつなを呼び出す。『遺産は受け取らない』と一点張りのせつなに、薫子は頭に血をのぼらせて倒れてしまう。仕事柄、外では常にきちんとしている薫子だが、本当は心身ともに限界を超え、独り暮らしの部屋では家事も食事もままならず、たまったゴミの中でぼろ雑巾のようになっていた。そのことに本能的に気づいたせつなは、そっけないが素早く的確な行動力で薫子を底なし沼から引っ張り上げる。『おいしいものを作る』という最強の武器を使って。一番弱っている時に、一番大切な『安心』と『おいしい』をほぼ初対面で一回り年下のせつなから受け取ってしまった薫子。偶発的な、つかの間の、しかし決定的なこの出来事が最後まで物語の根幹にあり、かなしみの真っただ中にあっても薫子の命を燃やし、動かし続ける。薫子にとってせつなは命の恩人なのだ。せつなは家事代行サービス会社カフネに勤務するプロの料理人だ。カフネはポルトガル語で『愛する人の髪に指を通すしぐさ』という意味。カフネでは毎週土曜日、困っている人に2時間の家事サービスを提供するボランティア活動も行っている。薫子はそれを手伝うことになった。料理担当のせつなと掃除担当の薫子、二人組の働きぶりが気持ちいい。行く先々の家には事情があり、そこには踏み込めないルールだが、二人はできる限り役に立とうと奮闘する。疲弊した依頼者たちに、二人の仕事は喜ばれる。貧困や介護、子育て、孤立の問題を個人の力だけで解決することは難しい。今日この世界で、おいしいごはんを食べ、整った部屋で眠れることがどれほど幸せか。そこからしか人は立ち上がれない。だからこそ助けてほしいときに助けてと言える社会であってほしい。訪問先で、自分たちの未来は暗いと息巻く5年生の少女の言葉に、せつなは静かに共感し、でも・・・と続ける。『おにぎりを作れるようになると、人生の戦闘力が上がるよ』。おしゃべりしながら、みんなで握ったチャーハンおにぎりー。おいしいものは味覚だけでなく、色や匂い、感情や記憶など様々な感覚に訴え生きる力を呼び起こす。せつなの料理が誰かの人生を変えるのは、根底に相手を思う優しさがあるからだ。春彦が二人に残した本当の贈り物はなんだったのか。形のないものを形にすることのすてきさに胸がいっぱいになる。春の光のような余韻が残る一冊だ。」

 料理をテーマに扱っているレシピ本かのような先入観を持って読んでいると、人生にとって料理がいかに大切かが分かる本です。

 順風満帆ではない時こそ、食を見つめなおすことは、人生を見つめなおすことになることが分かりました。

 私のパートナーが、この春から自宅でカフェを始めたこともあり、人生と食を考えながらこの本を読んでいます。

 薫子の人物像の掘り下げ方に、阿部さんの筆致が冴えわたっています。そのことが、この本をより多くの人に共感させる力となっています。

 圧巻は、せつなという人物の描写です。鉄のような人だと思っていたら、陶器のような人に思えてきて、読み進むほどに、見え方が変わってきます。この辺りが、この本を本屋大賞に押し上げた力だと思います。

 ほぼ毎年、本屋大賞の大賞作を読んでいますが、この作品も、私の人生を豊かにさせる一冊になることは間違いありません。

 人間は、人間との間で、成長できることが分かる一冊です。ボロボロになっても、きっと支えてくれる人がいる。敵だとか、苦手だとか思っている人が、意外に、味方になってくれることにも気づかせてくれる本です。

 食の貧困と格差など、社会的な問題にも向き合っている所も興味が湧く一冊です。

 阿部暁子さんの他の本も読んでみたいです。「カフネ」を読まれたみなさん感想をお聞かせください。

 春彦が、薫子とせつなに残した本当の贈り物が何だったのか 知りたいです。

 このことを心に置きながら読み進めています。