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米軍岩国基地のコロナ情報を公開せよ

 先日のしんぶん赤旗日刊紙は、在日米軍基地と在韓米軍基地のコロナに関する情報の公開の違いについて次のように報じました。
 「米軍の新型コロナウイルス感染をめぐり、米国国防総省が3月末に基地ごとの感染状況を非公表とする方針を決めたことを受け、在日米軍は国内の米軍基地での感染者数を非公表としています。ところが、在韓米軍は4月以降も逐一、基地ごとの感染状況を公表しています。4月以降、公表している感染情報は18件におよび、兵士だけでなく軍属や家族・請負業者にいたるまで公表しています。最新の情報は今月2日付。それによれば『米政府のチャーター便で5月30日、オサン空軍基地に着任した米兵の感染が確認された。彼はキャンプ・ハンフリーの隔離棟に隔離された』としており、感染者の属性や基地、日付、感染対象などをすべて公表しています。これに対して日本では、こうした情報は一切非公表となっており、米軍の感染状況はまったく明らかになっていません。このため、米軍基地を抱える15都府県でつくる渉外知事会は5月27日、新型コロナの感染状況や米側の感染対策を公表するよう求める緊急要請を外務省、防衛省に対して行いましたが、政府は応じていません。コロナ感染に関する米軍の検疫実績も報告を受けていますが、公表を拒んでいます。国内の米軍基地でも、各基地の司令官がSNSを通じて断片的に感染状況を明らかにしています。韓国の実例を見ても、政府が米側に対する屈従的な姿勢を改めれば、感染状況の公開は可能なはずです。」
 更に、14日付のしんぶん赤旗日刊紙は、在日米軍三沢基地をかかえる青森県三沢市長の議会での発言を次のように報じています。
 「在日米軍基地の新型コロナ対策の公表を求める世論が広がる中、青森県三沢市の小檜山吉紀市長は11日、米軍三沢基地内の情報を必要に応じて市民に発信する考えを明らかにしました。日本共産党の奥本菜保巳市議の質問に答えました。米軍関係者の感染者は1万1000人を超え、5000人が療養中(5月8日時点)と歯止めがかからない状況です。しかし米国防総省は非公開の態度を取り続けています。同22日の穀田恵二衆議院議員の追及で、厚労省は米側通報を記録していると認め、米軍基地を抱える15都道府県の渉外知事会が同29日、感染状況を公開するよう政府に要請しました。『基地内の感染情報を定期的に公表するよう求め、市民の安心・安全の確保に努めるべきだ』と迫る奥本氏に小檜山市長は、入門時の検査、基地外での店内飲食禁止の制限に加え、現在も行動記録を義務付ける対策を取っていると答弁。『市と基地、関係機関の意見交換の場を設けて連携を強化し、可能な範囲での情報提供を求めていきたい』と語りました。奥本氏は再質問で、15都道府県の渉外知事会同様に「市も米側の状況や対策の公表を求め要望すべきです』と強く求めました。市は17日に米軍司令官、防衛事務所長、医師会長を交えた対策本部で情報交換するとし、『合意があれば(公表を)求めていきたい』と答えました。」
 山口県知事の加わる渉外知事会は、5月27日、在日米軍基地における新型コロナウイルス感染症の情報の開示を政府に求めました。
 山口県は、4月30日の私の質疑に「米軍岩国基地とは、これまでの情報交換を通じて、感染者が発生した場合に公表する、ということを確認している」と答えました。
 岩国基地からの情報は未だに県保健所に届いていないものと思いますが、それは、本当に情報がないのか、非開示だからないのかわかりません。
 県は、三沢市長のように、米軍岩国基地に、感染症の情報の開示を求めると同時に、県・市・地元医師会が参加し、在日米軍司令部と防衛省など関係者が参加するコロナ対策会議を在日米軍岩国基地関連で設けるよう関係者に働きかけるべきだと思います。
 日本共産党山口・鳥取県委員会は、大平よしのぶ前衆議院議員、松田一志衆院山口2区予定候補らとともに、18日、この問題などで中国四国防衛局に申し入れを行う予定です。
 基地内の感染症に関する情報が、韓国のように、しっかり地元自治体に公開されるよう、今後ともしっかり発言していきたいと思います。
 この問題に関する皆さんのご意見をお聞かせください。

6月補正予算の概要が報じられる

 6月県議会は、今月24日に開幕する予定です。17日に議会運営委員会が行われます。議会運営委員会の中で、予算概要が報告される予定です。
 毎日新聞は、13日、6月県議会に提出される補正予算の概要を次のように報じました。
 「補正として県政史上最大の約2132億円で、新型コロナウイルス第2波、第3波に備え、感染拡大防止▽県民生活安定▽経済下支え▽消費需要喚起▽社会変革推進ーの5本柱を立てた。4月補正で、リーマン・ショック対策時を超える686億円を計上したが、更にその3倍を超える規模だ。感染拡大防止策として2億8000万円を計上した。感染の有無を調べるPCR検査装置を5台増設し、1日の検査数を160件から310件に倍増する。判定時間の短い抗原検査も導入する。感染リスクの中、医療施設や放課後児童クラブ、保育所などに従事する職員に一人5万円の慰労金・応援金を贈る支給事業も95億円を計上した。県民生活安定に関し、高校総体や高校総合文化祭に代わる独自大会『やまぐち高校生メモリアルカップ・メモリアル文化発表会』開催費に4500万円を計上した。経済下支えと消費需要喚起は1840億円を充てた。和牛、日本酒など県産品を飲み食べるキャンペーン『みんなでたべちゃろ!』に5億円、感染防止対策を施した飲食店をウェブで紹介する応援事業も始める。社会変革推進では、県立校の生徒に一人1台パソコンを提供し、オンライン授業を進める教育ICT推進事業に50億円。中小企業のオンラインによる採用活動やウェブでの就職フェアなどを支援する『就職採用活動オンライン緊急支援』も2800万円を充てた。」
 以上の報道を受けて、二つの問題提起をしたいと思います。
 第一は、PCR検査装置の増設についてです。
 1日の検査数を今の倍の310件にする点は評価します。

 その上で、山口県のPCR検査数が他県と比べて低い実態があることを指摘したいと思います。

 私は、4月30日の臨時議会の質疑で、帰国者・接触者相談センターへの相談件数に占めるPCR検査実施件数の割合が、他県と比べて低いことを指摘しました。

 厚労省の資料(4月1日~6月4日)より、相談件数に占めるPCR検査件数の割合を山口県で見ると6.6%、岡山県は、20.8%です。

 依然、山口県のPCR検査件数が少ないことが分かります。
 私は、県・郡市医師会の協力を得たPCR検査センターを県内に複数設置すべきだと思います。

 依然として、PCR検査をしてほしいと思ってもなかなかしてもらえない実態があることを医療関係者や県民の方からお聞きします。

 今の保健所を通しての体制に加え、かかりつけ医が検査の必要性を認めた場合、地域のPCR検査センターで検査ができる体制を山口県で構築すべきだと思います。

 先日の、中国地方県議政令市議のZOOM会議の中で、岡山県と鳥取県では、PCR検査センターが設置されていることが報告されました。

 最近、共産党議員の交流サイトで、福岡県でもPCR検査センターが稼働しているようすが紹介されていました。

 山口県でも、PCR検査機器を増設することに加え、PCR検査センターを県内に複数配置すべきです。

 第二は、医療施設や放課後児童クラブや保育所に従事している方々への慰労金についてです。
 慰労金の創設を評価した上で、一点指摘します。
 慰労金は、山口朝鮮初中級学校附属幼稚班や同初中級学校の学童保育の関係者にも届けられるべきだと思います。

 近く、山口朝鮮初中級学校として県知事に、この点に関する要望が行われる運びだとも聞いています。

 昨年12月、日弁連会長が「外国人学校の幼児教育・保育施設を無償化措置の対象とすることを求める会長声明」を発出しました。

 会長声明は「外国人学校の幼児教育・保育施設に通っている子どもを無償化制度の対象から除外することは、憲法14条、自由権規約2条1項、社会権規約2条2項、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約2条1項などが禁止する差別的取扱いに該当するおそれがある。」と指摘しました。

 県が実施しようとしている子どもに関わる職員への慰労金の制度設計が現時点で鮮明ではありませんが、報道で言われている制度を作るのではあれば、外国人学校だということを理由に制度から除外することは許されないと私は考えます。
 現在、補正予算の最終調整が行われているものと思います。
 取り急ぎ、私の意見を述べさせていただきました。
 引き続き、補正予算の状況を調査していきたいと思います。
 6月議会に向けて、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

イージスふあんクラブが県知事へ要請

 昨日、「イージスふあんクラブ・山口」が村岡知事へ要望書を提出しました。

ふあんクラブ2

 藤井郁子ふあんクラブ共同代表が要望書を提出

 要望項目の第一は、山口市など県内での住民説明会開催を国へ要請することです。

 総務部防災危機管理課は、「住民説明会は、その開催場所等、国において判断されるものであり、県において、お示しの住民説明会の開催を求める考えは」ないと答えました。

 要望項目の第二は、むつみ演習場使用に関する覚書についての県の見解についてです。

 防災危機管理課は、「陸上自衛隊山口駐屯地と地元萩市、阿武町の間で結ばれているものであり、県としては見解を申し上げる立場にない」と答えました。

 要望項目の第三は、山口県知事の説明責任と認否判断についてです。

 防災危機管理課は「県民の安心・安全を守る立場から、言うべきことは言うとの姿勢で、引き続き、地元市町と連携しながら、国に対し、住民の思いを踏まえた真摯な対応を強く求めていく」と答えました。

 要望項目の第四は、反対を表明している阿武町長の意思をどう捉えているかについてです。

 防災危機管理課は、「現在、まだ、国による説明の途中段階であり、阿武町長の発言はそうした中で現時点の思いを述べられたものと考え」ていると答えました。

 私は、住民説明会の山口市などでの開催を国に求めようとしない県の姿勢と阿武町長の反対表明を「現時点の思い」と評価している県の姿勢に共通するものを感じます。それは、住民の意向よりも国の姿勢を忖度しようとする姿勢です。

 この県の姿勢は、岩国基地問題に対する姿勢にも共通するものを感じます。

 その上で、県が「県民の安心・安全を守る立場から、言うべきことは言うとの姿勢で、引き続き、地元市町と連携しながら、国に対して、住民の思いを踏まえた真摯な対応を求めていく」としている点には、期待をしたいと思います。

 私は、この点に関して「昨年12月に第四目の県・萩市・阿武町の照会に対して国からの回答が寄せられた。県としてどのような検証をこの半年行ってきたのか、第五回目の国への照会を行うのか」と質しました。

 防災危機管理課の担当者は、「国からの回答について、県として十分な検証を行っていない」と答えました。

 山口大学の先生方を始め、昨年12月の国の説明資料に対して様々な問題点が指摘されています。

 県は、今こそ、国に言うべきことは言うべきです。

 参加者から萩市の専門家会議へのメンバーについて、県は、萩市の要請を受けて、専門家を紹介した点について指摘がされました。

 県が萩市に専門家を紹介したのか経緯について、後日、防災危機管理課が私に説明を行うことが、昨日の要請行動の中で確認されました。

 県は、今こそ、「国に対し、住民の思いを踏まえた真摯な対応」を求める時だと要請行動に参加して痛感しました。

 

夏目漱石「三四郎」読書ノート①

 NHKラジオ第二「朗読」の聞き逃しサービスで、夏目漱石「三四郎」を聴いています。
 「三四郎」は、夏目漱石が東京大学の教職の仕事を辞めて、朝日新聞の記者として、職業作家になってから二年目の作品です。
 「三四郎」が熊本から大学に入学するために、東京に出てきて、最初に広田先生に会った時、広田先生は、このように言います。
 「『あなたは東京が始めてなら、まだ富士山を見た事がないでしょう。今に見えるから御覧なさい。あれが日本一の名物だ。あれより外に自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだから仕方がない。我々が拵へたものじゃない』と云って又にやにやわらっている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出逢うとは思いも寄らなかった。どうも日本人じゃない気がする。『然しこれからは日本も段々発展するでしょう』と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、『亡びるね』と云った。」
 新潮文庫「文豪ナビ・夏目漱石」の「評伝 夏目漱石」は、「新訳 更級日記」の著者である島内景二さんが書いておられます。
 島内さんは、「三四郎」の中で、広田先生が、三四郎に「亡びるね」と言ったシーンを次のように書いています。
 「漱石は、もともと英文学者だったので学究肌だが、ジャーナリスティックな問題提起力にも優れていた。急ピッチで発展途上にあった日本を、『亡びるね』と言ってのけた『三四郎』の広田先生の言葉は、漱石の評論家的要素をよく示している。講演も、すぐれていた。『現代日本の開花』など、今でも通用するほど現代的であり、かつアジテーショナルだ。漱石に心酔する愛読者が絶えないのは、彼の作品が百年も前に『日本文化と日本人の致命的欠陥』を鋭く言い当てていたからだろう。その欠陥は、百年後の今でも、まだ改まっていない。巨視的な文明批判の魅力。すなわち、評論を内在した小説のおもしろさ。それが、漱石文学の魅力の一つだ。」
 集英社新書「漱石のことば」で著者の姜尚中さんは、広田先生が「亡びるね」と云ったシーンについてこう書いています。
 「当時の日本は欧米列強に追いつき追い越せで近代化への道を突っ走っていました。が、漱石はそのありようを疑問の目で眺めていました。広田先生は漱石の分身的な人物であり、つまり、彼は漱石の気持ちを代わりに語っています。」
 その上で、姜さんは、漱石について次のように書いています。
 「私が漱石を愛するのは、彼が隠遁的な態度にならず、懐旧にも向かわず、あくまでも目の前の現実を見つめ、そこで苦悩する人たちを描いたからです。なおかつ、その中で人間がいかによく生きるかを考え続けたからです。上滑りに滑りながらも、ギリギリの抵抗をして前を向く。その姿勢を私は尊敬するのです。」
 6月7日のしんぶん赤旗日曜版に、芥川賞作家の中村文則さんによる、最新作である「逃亡者」についてのインタビュー記事が掲載されています。
 中村さんは、今の時代をこう述べています。
 「この大変なコロナ時代を安倍政権で迎えるのは恐怖であり悲劇です。安倍政治であるがゆえに、国難は倍増するでしょう。僕は大変に憂鬱です。この本でも書いたように、『公正世界仮説』という心理学用語があります。自分たちが生きる社会が間違っていると思うと怖いので、大丈夫だと思いたい。だから、社会のせいで被害を受けた個人をみると、社会ではなく個人のせいにする。社会の問題を個人に還元する習性のことで、自己責任論にもつながります。安倍政権が国民に求めているのはこの発想だとも感じる。コロナ時代に安倍政権。これは最悪の組み合わせです。」
 富国強兵が跋扈する日露戦争の時代に、「亡びる」と配役に言わせた夏目漱石の「ギリギリの抵抗」に、今、注目したいと思います。
 自己責任論が跋扈する今の時代に、時の政権にはっきり自分の意見を述べる芥川賞作家の中村文則さんに、現代の漱石を見るようでした。
 引き続き、夏目漱石から、しっかり学んでいきたいと思います。中村文則さんの「逃亡者」にも注目していきたいと思いました。
 皆さん、夏目漱石のどの作品がお好きですが、ご意見・ご感想をお聞かせ下さい。
 

県内一級河川関連ダムで事前放流のため治水協定締結される

 5月11日の本ブログに記したように、私は、昨年11月県議会と今年2月県議会で、県管理ダムの事前放流を進めるよう質問を行いました。
 2月県議会での私の質問に対し、森若土木建築部長(当時)は、「現在、国において、ダム管理者および関係利水者の理解が得られる、事前放流の実施にあたっての基本的事項を定めるガイドラインの策定に向けた検討が進められています。県では、引き続き、こうした国の動向の把握につとめてまいります。」と答えました。
 4月22日、国土交通省水管理・国土保全局は「事前放流ガイドライン」を明らかにしました。
 国の「事前放流ガイドライン」に基づき、県が、県管理ダムについて「事前放流」をどのように進めていくのかを県土木建築部河川課に照会していたところ、口頭での回答が先日行われましたので報告します。
 河川課の担当者は、県管理ダムの事前放流について「国のガイドラインに基づき、県管理ダムで事前放流を行うため関係利水者と治水協定を締結することとなる。現在、河川課として、県管理ダムの事前放流を行うため関係利水者との治水協定をどのように締結していくのかについての基本方針を検討している段階だ」と答えました。
 また、河川課の担当者は、「県内の国が管理するダムや国管理の一級河川にある県管理ダムで、事前放流を行うため関係利水者との治水協定が、5月末までに締結された」と答えました。
 内閣府の既存ダムの洪水調節強化に向けた検討会議は、昨年12月「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針」は「河川管理者である国土交通省と全てのダム管理者および関係利水者との間において、水系毎の協議の場を設け、ダム管理者及び関係利水者の理解を得て(中略)治水協定について、令和2年5月までに、一級水系を対象に、水系毎に締結する。」としていました。
 県内で、事前放流を行うため関係利水者との治水協定が締結されたのは、国管理の一級河川である佐波川にある国管理の島地川ダム、国管理の一級河川である小瀬川にある県管理の小瀬川ダム、国管理の一級河川である佐波川にある県管理の佐波川ダムです。
 広島県は、6月3日に行われた広島県議会建設委員会において、広島県内の一級河川にあるダムで事前放流に係る治水協定の締結状況を報告しました。
 同時に、県管理の二級河川について「現在、利水関係者等と協議を進めており、協議が整い次第、県も順次協定の締結を行う」と報告しました。同時に、県管理12ダムの内、7ダムを治水協定対象ダムとすることを明らかにしました。
 山口県においても、県管理の二級河川について、治水協定対象ダムを明らかにし、事前放流に向けて、利水関係者との治水協定が順次締結されることを望みます。
 この問題は、今後の議会で取り上げたいと思っています。
 事前放流に向けた治水協定が県内の一級河川で締結されました。皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

更級日記読書ノート①

 NHKラジオ第二の「古典講読」の「聞き逃し」サービスを移動中の車の中で聴いています。
 4月から「王朝日記の世界」と題し、日記文学の最高傑作と言われる菅原孝標女作の「更級日記」の朗読と現代語訳と解説が行われています。
 朗読は、元NHKアナウンサー加賀美幸子さん、現代語訳と解説は、電気通信大学名誉教授の島内景二さんです。
 島内景二さんは、今年3月、花鳥社から「新約 更級日記」を上梓されました。
 この本は、「原文」「現代語訳」「解説」が章ごとに行われています。島内先生の解説と加賀美さんの朗読に加え、解説をされている島内先生自らの「新約 更級日記」を読めば、千年前の日本の風景が目の前に蘇ってきます。
 古典全般に親しんでこなかった私ですが、日本を代表する王朝日記文学研究の第一人者の島内先生の講義を直接聞くことができることに幸せを感じています。
 これまでに島内先生が講義された部分は、「東海道紀行」です。
 孝標の女(以下、作者)が上総の介として赴任した父親とともに、上総の国で暮らし、父親の任期が終わり、都に向かって出発する頃から物語が始まります。
 更級日記を作者が書いたのは、52歳の時ですが、物語がスタートするのは、作者が13歳の時です。
 13歳の作者が、都に向け下総を出発したのが、寛仁四年(1020年)の秋です。ちょうど千年前です。
 まず、驚いたのは、作者ら高貴な女性たちは、車で移動したということです。島内先生は、車を引いたのは、牛馬ではなく、人間だったと解説しています。
 当然、舗装もされていない悪路を、人力で三カ月かけて都まで車で移動することを想像しただけで、車を引いた従者たちの苦労はいかばかりだったかと感じます。
 幾本もの川を渡ります。大きな川は、車を船で渡したとあります。どれほどの労力をかけて移動したのだろうかと想像できるのも、「更級日記」を読んでみてリアルに分かることです。
 作者は、沿道で出会いと別れを経験します。
 別れは、作者が生まれた時にお乳を飲ませてくれた乳母との別れです。乳母は、作者らとともに、上総の国に付いてきて作者の世話をしてくれました。都に帰る途中で出産して、上総の国と武蔵の国との国堺で、一行とは別れ一人あばら屋に臥しています。乳母と作者との対面と別れのシーンは、千年の時を超えて私の心にも響くものです。
 出会いは、足柄山の遊女とのものです。作者は、彼女らの歌声をこう評しています。
 「その歌声は、秋の夜空に吸い込まれるように、澄み昇ってゆく。」(現代語訳)
 彼女らとの別れをこう書いています。
 「彼女らが遠ざかってゆくのを、皆は、まだまだもっとここにいてほしかったと名残惜しくて、泣くのである。まだ子どもである私も、幼な心に、彼女たちが立ち去ってゆくのに加えて、自分たちが明日の朝、ここを旅だってゆくことまでも、名残惜しく思われるのだった。」
 人を想う気持ちは、千年の時を超えても同じなのだと感じました。
 いや、千年前の人々の感情の方が、より素直だということが分かりました。

 十三歳の作者ら一行は、上総、下総、武蔵、相模、駿河、遠江、三河、尾張、美濃、近江、山城と3カ月かけて京に到着しました。

 武蔵は、現在の東京都周辺ですが、背丈以上の草に覆われていました。

 箱根ではなく足柄山を越えていました。

 相模、駿河の海岸は、延々と砂浜が続いていました。

 浜名湖は、今より、海と湖が離れていました。

 などなど、千年前の東海道の様子が、作者の目を通じて生き生きと描き出されているのも、更級日記の魅力の一つでしょう。
 島内先生は「『更級日記』という作品が持っている可能性は、中世文化の開幕を告げた藤原定家の予感を大きく超えて、二十一世紀の現代にこそ発芽し、開花・結実できると信じている。」と「新訳 更級日記」の「はじめに」で書いておられます。
 まずは、千年前の作者の言葉に共感できた自分に驚いています。

 私は、島内先生という最良のガイドを得て、ようやく「更級日記」の入り口に立つことができました。
 今年前半は、島内先生のラジオでの解説と本から「更級日記」の世界をじっくり学んでいきたいと思います。その先のいつか「源氏物語」にも挑戦してみたいと思えるようになりました。
 「更級日記」に対する皆さんの想いをお聞かせ下さい。