月別アーカイブ:2020年8月

宇宙監視レーダーの役目はスパイ衛星の監視も

 山田伸幸山陽小野田市議が発行する「山陽小野田明るいまち」(No,759 2020年8月9日)は、埴生地区の宇宙監視レーダーを特集しています。山口県民の命と暮らしに関わる重大な内容なので、全文紹介したいと思います。
 「7月31日午後から、議会議員連絡会が開催され、埴生地区に建設が進められている宇宙監視レーダーについて、防衛省の説明がありました。会議は非公開でした。◆会議の冒頭山田議員は、市民に公開されていない場での説明会について議長にたいして、『なぜ市民に公開される場で開催しないのか』と詰め寄りましたが、満足な回答もなく事前の資料が配布されなかったことについても『内容が変わってしまうこともあるから』と納得ができない回答でした。◆防衛省の説明では『これまでの説明では宇宙ゴミ(デブリ)の除去としか説明しなてこなかったことを謝罪する』ことから始まりました。説明ではハッキリと中国、ロシアのスパイ衛星やキラー衛星の監視が任務に含まれることや米軍の宇宙作戦部隊への情報を提供することなどが説明されました。◆質疑では山田議員から、Q、最初の説明では宇宙ゴミしか言わず、今になって他国のスパイ衛星が監視対象とするなどまさに後出しじゃんけんではないのか。A、言われることはごもっともである。Q、レーダー基地がテロの標的になった際にどうするのか。A、今後の検討事項となる。Q、レーダーの向きは航空路に当たるが航空機にむかって照射するのか。A、航空機の航路には当たらない。Q、前回の説明で仰角20度としていたが、航空路の上をとおるか下をとおるのか。A、航空路には当たらない。6機のレーダーをまとめて照射するので電磁波が集中し、大丈夫。Q、6機のパラボラアンテナの電波位相を揃えて照射するとなるとかなり強力な電波になり、サイドローブ(漏れる電波)も強力になり影響が広がりはしないのか。A、電波防護指針に沿って設計されているので問題にならない。Q、6機のレーダーで観測するのは静止衛星のうちどこを飛んでいるものを対象とするのか。A、赤道上の日本の静止衛星が対象。Q、赤道上の静止衛星と言っても30程度の衛星が飛んでいるが、どの衛星を対象とするのか決まっているのか。A、※※※ Q、赤道上と言っても、インド洋上空から日付変更線付近まで幅があるので、一定方向だけを監視するのはあり得ないと思うがどうか。A、※※※ Q、レーダー電磁波の影響は市民生活で必要な携帯電話や漁業無線、ドクターヘリなどに及ぶが問題ないと言えるか。A、設計が済んでないので答えられない。Qイージスアショアでは、基地からの保安距離が700メートルとされていたし、米軍では2キロとしていたが、イージスアショアの数百倍強力な電磁波が出力されるが、保安距離はどれほどの距離か、ちなみに600メートルのところに小学校や民家がある。A、設計が済んだ後でないと今ここでは答えられない。◆多くの質問にまともに答えられない状況でした。」
 防衛省は、7月31日、山陽小野田市議会議員連絡会に非公開で説明会を開きました。これだけ重大な内容であるにも関わらず、一部の議員だけに非公開で説明会を行うことだけで済ますわけにはいきません。
 私は、昨年9月県議会で、この問題を取り上げ、再度の住民説明会の開催を求めました。これに総務部長は「国においては、先の地元説明会での意見を踏まえ、今後、山陽小野田市と相談あるいは調整の上、更なる説明会の開催について検討するとされています。」と答えました。ここで言う「説明会」が、山陽小野田市議会の一部の議員への説明で済まされるものではありません。公の議会での答弁であり、県は責任をもって国に住民参加の説明会の開催を求めるべきです。
 次に、防衛省が「中国、ロシアのスパイ衛星やキラー衛星の監視が任務に含まれることや米軍の宇宙作戦部隊へ情報を提供する」ことなどを山陽小野田市議会で説明したことについてです。
 昨年9月県議会で私は、「山陽小野田市のレーダー基地の位置づけをどう理解しているのか」質しました。これに総務部長は「8月28日に地元説明会が行われたところでありますが、それに先立って8月21日に、県の方にもその説明会についての説明がございました。その中で、国の方からは、使用済みの衛星やロケット、あるいはその破片といったような宇宙ゴミ、いわゆるスペースデブリでありますが、それが急増している中で、宇宙空間の利活用が重大な危機にさらされていることから、その安定的利用を確保するために、宇宙ゴミ等の探索・追跡を行うことが必要であり、これを目的として宇宙監視レーダーを整備するということで、その必要性のご説明がありました。」と答えました。
 防衛省は、昨年、山口県や地元に「宇宙ゴミの除去」だけが任務と説明してきました。防衛省は、山陽小野田市議会議員だけではなく、県行政と地元住民に対して、違う説明を行ったことを「謝罪」すべきです。この点からも、防衛省は、再度の地元説明会を開催すべきです。
 次に、防衛省が「レーダー電磁波の影響」や「保安距離」について「設計が済んだ後でないと答えられない」と答えたことについてです。
 昨年の6月県議会で私は、「山陽小野田の宇宙レーダーの影響はどうなのかと(防衛省に)聞いたら、レーダーの機種がまだ選定されていないということを理由に説明できないと答えた。」ことを指摘し、「レーダー選定後に、防衛省に地元で説明会を開くように県として求めるべき」と質しました。これに総務部長は「国において今からいろんな形で、更なる説明をするとされているので、その中で適切に対応されるものと考えている」と答えました。
 防衛省は、7月31日の段階では、「設計が済んでない」ことを理由に、レーダーの具体的な影響について説明を行いませんでした。
 山口県は、防衛省に対して、適切な時期に、レーダーの影響について、県と山陽小野田市と地元住民に説明するよう求めるべきです。
 防衛省は、先月末、山陽小野田市議会の一部の議員に、宇宙監視レーダーについて非公開で説明を行いました。
 この問題に関する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
 

(仮称)阿武風力発電事業に係る計画段階配慮書に対する意見答申(案)を審査

 昨日、令和2年第3回山口県環境影響評価技術審査会が行われました。議題の一つは、(仮称)阿武風力発電事業に係る計画段階環境配慮書についてです。
 日立サステナブルエナジー株式会社が、阿武町において、最大総出力54600kW(4200kW×13基)の風力発電所を設置する事業「(仮称)阿武風力発電事業」を進めようとしています。
 昨日の山口県環境影響評価技術審査会には、阿武風力発電事業に係る環境影響評価法に基づく計画段階環境配慮書に対する意見答申(案)が示され、審議が行われました。
 意見答申(案)は、同事業について次のように評価しています。
 「事業実施想定区域は、全域が平成30年に『萩ジオパーク』として認定されているエリアであり、キヤマウメモドキ群落や奈古鳥獣保護区といった重要な自然環境のまとまりの場が認められる。更に、周辺には北長門海岸国定公園のほか、複数の住居や学校等が存在しており、本事業による環境保全上の影響が懸念される」
 意見答申(案)は、全体的事項として「本配慮書では、工事の実施に伴う環境影響を評価の対象としておらず、また、事業実施想定区域外の動植物等については、直接改変がないことを理由に、影響はないなどと評価しているが、これらは計画熟度の低い現段階における評価である。このため、今後の手続きに当たっては、風力発電施設の配置及び構造・機種(以下『配置等』という。)並びに取り付け道路、送電線ルート等を含めた具体的な工事計画を明らかにした上で、最新の知見をもとに、専門家や関係自治体等の意見を踏まえて必要な評価事項を選定し、適切に調査、予測及び評価を実施すること」などを指摘しています。
 意見答申(案)は、個別的事項としていくつかの問題を指摘しています。
 まず、騒音等については次のように指摘しています。
 「騒音及び低周波音については、風力発電施設の配置予定地点における時間帯別の風向・風速等の気象条件を詳細に把握し、風車騒音の特性はもとより、高度地形等による影響にも十分に配慮するなど、最新の知見に基づいた適切な方法で、調査、予測及び評価を実施すること。」
 動物、植物では、次のように指摘しています。
 「事業実施想定区域内には、県自然記念物であるミヤマウメモドキ群落が自生していることから、ミヤマウメモドキの雌雄異株といった特徴を踏まえ、専門家等からの助言を得ながら、その生態及びそれを含めた生態系を的確に把握するとともに土地改変箇所からの距離を確保するなどの措置を検討するほか、適切な方法で予測及び評価を実施し、生育環境への影響を回避又は十分に低減すること。」
 動物では、アブサンショウウオ、オオワシ、クマタカ、サシバ等についても「専門家等の助言を得ながら、調査、予測及び評価を実施し、鳥類等への影響を回避又は十分に提言すること。」としています。
 県環境影響評価技術審査会では、ミヤマウメモドキの生態について意見が出されるなどした模様です。
 近く答申がまとめられ、知事に届けられる見込みです。
 答申を受けた知事意見は来月上旬頃には明らかにされる見込みです。
 徳島県那賀郡那賀町、海部郡海陽町及び高知県安芸郡馬路村周辺に、那賀・海部・安芸風力発電合同会社が、最大96000kW程度の事業規模で風力発電を行う(仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業を進めています。
 (仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業は、環境影響評価法に基づく、計画段階環境配慮書を提出し、6月5日、徳島県環境影響評価審査会が行われ、答申がまとめられました。
 答申は総論で「あらゆる措置を講じてもなお、重大な影響を回避又は低減できない場合は、本事業の取り止めも含めた計画の抜本的な見直しを行うこと」としています。
 7月8日に明らかにされた徳島県知事意見は、答申を踏まえ総論で「あらゆる措置を講じてもなお、重大な影響を回避又は低減できない場合は、本事業の取りやめも含めた計画の抜本的な見直しを行うこと。」としています。
 知事意見は各論の中で、騒音及び低周波音による影響として次のように指摘しています。
 「風力発電機から発生する騒音及び低周波音(超低周波音を含む。)による影響については、多くの被害例が報告されている。コージェネレーションシステムの室外機から発生する低周波音による健康被害との関連性について、消費者庁の調査報告書では、『この関連性は否定できない。』としている。また、この問題に対して、環境省は『低周波音に関する感覚については個人差が大きく、参照値以下であっても低周波音が許容できないレベルである可能性が残されているため、個人差があることを考慮し判断することが極めて重要である。』としている。なお、風力発電機からの音の到達レベルに関しては、環境省は、地形や植生による影響のほか、季節によって気象条件が異なるので、1年間の測定を求めている。したがって、風力発電機から発生する騒音及び低周波による健康被害については、十分な調査を行い、地域住民に被害が生じない計画とすること。」としています。
 徳島県知事は、知事意見で、希少生物・生態系に対する影響について、次のように指摘しています。

 「事業実施想定区域及びその周辺は、県内屈指の優れた自然環境を有し、日本屈指の清流海部川の源流の森でもあり、自然度が高い植生が残存する重要な地域である。その多くは水源かん養保安林に指定されており、本事業の実施により希少生物や生態系に重大な環境影響を受けると懸念される。」

 徳島県知事は、環境影響評価法では最大級の「本事業の取りやめも含めた計画の抜本的見直し」を答申した理由として次の点を指摘しているのです。

 ①低周波音と健康被害の関連性について十分な調査が必要であること

 ②本事業の実施により希少生物や生態系に重大な環境影響を与えることが懸念されること

 山口県と徳島県の風力発電事業は、違う計画ですが、徳島県知事が指摘する2点は、山口県の計画にも共通する問題だと思います。

 山口県環境影響評価技術審議会の答申(案)でもこの2点について一定の言及は行われている所です。

 県審議会の答申段階では、この二つの問題を最大限に重視し、徳島県審査会同様に「本事業の取りやめも含めた計画の抜本的見直し」を明記したものになることを期待したいと思います。

 更に、山口県知事意見は、この二つの問題を最大限に重視して、徳島県知事意見同様に「本事業の取りやめも含めた計画の抜本的見直し」を明記したものになることを期待したいと思います。

 昨日、山口県環境影響技術審査会が開かれ(仮称)阿武風力発電事業に係る計画段階配慮書の答申(案)の審議が行われました。

 来月、上旬に、この問題で、山口県知事意見が出される見通しです。この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

宇部港港湾計画改定(目標年次は2030年代前半)

 昨年6月県議会で、私は、宇部港長期構想について次のように質しました。
 「ことし3月、30年後の整備方向を示した、新たな宇部港長期構想が策定されました。2011年、宇部港が国際バルク戦略港湾に選定されて、最初の構想改定であります。現行の港湾計画の目標年は平成20年代後半で、目標年の取扱量は3580万トンです。この目標に近い平成29年の実績は3347万トンですから、目標を下回る貨物量で推移しています。第四回検討委員会資料では、目標年度を今度は平成40年代半ばとして、現況の取扱貨物量を1.5倍にし、公共バルク貨物は実に7倍にする、貨物量の実に98.4%をバルク貨物とする計画です。第四回検討委員会資料では、新沖の山地区の埋め立ては、現行の港湾計画では、72.3ヘクタールでしたが、92ヘクタールに拡大され、推進13メートルだった本港航路は16メートルとなり、水深16メートル、長さ700メートル程度の岸壁が計画案として示されています。現行の港湾計画における新沖の山地区の事業費は390億円でしたが、この長期構想での事業をお示しください。水深16メートルの本港航路と泊地の事業費と事業主体をお教え下さい。第三回検討委員会資料では、新沖の山地区の大水深護岸の必要性は、宇部港をケープサイズ級、世界最大級の石炭バルク船を二港目として入港させる、そしてパナマックス級の石炭バルク船の一港目として、新沖の山に寄港させることにあると書かれてあります。パリ協定を受けて、世界は脱炭素に向かっています。宇部港長期構想に、環境省の気候変動長期戦略懇談会の資料が参考に提示されています。これには、2050年の石炭供給量は2010年の半分程度になると書かれています。脱炭素が加速する中、世界から石炭バルクを集積させるために、宇部港新沖の山地区に大水深岸壁をつくる必要性についてお尋ねします。
 長期構想をもとに、これから15年後を展望した宇部港港湾計画が策定されるわけですが、計画策定の中で、改めて石炭バルクの需要見込みを精査し、新沖の山地区周辺の整備計画を私は抜本的に縮小すべきと思いますが、お尋ねします。」
 この質問に、森若土木建築部長(当時)は次のように回答しました。
 「まず、長期構想における新沖の山地区の事業費及び本港航路・泊地の事業費と事業主体についてです。長期構想は、あくまでも宇部港の将来のあるべき姿を構想、ビジョンとして取りまとめたものであり、事業費や事業主体を定めるものではありません。次に、脱炭素が加速する中、新沖の山地区に世界から石炭バルクを集積させるための大水深岸壁をつくる必要性があるのか、また宇部港港湾計画を策定するに当たって、新沖の山地区周辺の整備計画を抜本的に縮小すべきではとのお尋ねにまとめてお答えします。県内企業の国際競争力強化を図るためには、物流コストの削減に寄与する産業基盤の整備を進めていくことが極めて重要であることから、県では、国際バルク戦略港湾など、港湾の機能強化に取り組んでいるところです。新沖の山地区の大水深岸壁については、企業ヒアリングやパブリックコメントの結果等を踏まえた上で、関係市や学識経験者等の意見をお聞きしながら策定した長期構想の中で、バルク貨物の広域供給拠点の形成と機能強化のために必要としたものです。また、港湾計画については、今後、新沖の山地区を含め、長期構想に示された方向性を踏まえ、取扱貨物量の動向や企業ニーズ等を適切に把握し、策定することとしています。」と答えました。
 県港湾課は、7月21日、改訂した新たな「宇部港港湾計画」を県ホームページで明らかにしました。
 宇部港港湾計画は、2030年代前半を目標年次とするものです。
 県港湾課は、宇部港長期構想には、取扱貨物量の目標値は示していませんが、長期構想を策定する過程で、取扱貨物量の概略値を4700万トンと検討委員会に示していました。
 宇部港港湾計画の取扱貨物量の目標値は、2030年代後半で4070万トンとしています。私の一般質問を受けて、4700万トンより低い4070万トンに縮小されたことは評価しますが、平成29年度の取扱貨物量は、3347万トンですから、現状より700万トン以上増やす計画です。
 次に、新沖の山地区についてです。
 宇部港長期構想には、新沖の山地区の面積は示されていませんが、昨年6月県議会の私の質問の中にあるように、第四回検討委員会資料に、面積92ヘクタール、水深16メートル、長さ700メートルの護岸が計画案として示されています。
 今回の宇部港港湾計画は、開発面積が、90.9ヘクタール。水深16メートル、長さ390メートルの護岸となっています。私の一般質問を受けて、検討委員会で示された計画案より、開発面積で、1.1ヘクタール減、水深16メートルの護岸の長さが、310メートル減となったことは評価しますが、2030年代前半までに、宇部港に推進16メートルの大水深護岸を1バース建設する計画です。 
 次に、水深16メートルの本港航路と泊地についてです。宇部港港湾計画では、長期構想の検討委員会資料で示された通り、水深16メートルの本港航路と泊地が計画されています。
 先日、宇部港港湾計画の説明を県港湾課の担当者から受けた際に担当者は「現時点においても、本港航路と泊地の事業費及び事業主体は明らかになっていない」と答えました。
 宇部港では、現在、本港航路を水深13メートルにする工事が行われている最中です。本港航路の水深を13メートルとし、更に16メートルにする工事が、宇部港港湾計画の目標年である2030年代前半に完了できる見通しは現時点で立っていないと考えます。同時に、本港航路の大水深工事について、引き続き国が実施する見通しが立たない場合、県が本港航路の事業主体になる可能性が否定できません。その場合においても、事業を計画通り行うのかその際は再検討が必要だと思います。
 そもそも、私が、昨年の6月県議会で指摘をした通り、世界の地球温暖化防止と脱炭素化の流れは、今年の豪雨や猛暑を受けて更に強まっています。
 にも関わらず、国際バルク戦略港湾の石炭バルクの受け入れ港として、徳山下松港と宇部港に巨費をかけて、世界最大級のケープサイズ級の船を受け入れる巨大公共工事を行う是非について、更に、慎重な検討が必要だと思います。
 私の一般質問を受けて、宇部港港湾計画が当初計画より若干縮小されたものとなりましたが、宇部港が石炭バルクの受け入れ港として巨額を投資する港湾計画については引き続き、地元選出議員としてしっかり発言していきたいと思います。
 宇部港港湾計画が改定され、県ホームページにその概要が掲載されています。
 この計画の改訂について、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

映画「レ・ミゼラブル」

 映画「レ・ミゼラブル」と言えば、2012年に公開されたミュージカル映画を想起します。

 私は、2012年公開のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」に心躍らされた一人です。

 私は、昨日、山口市のワイカムシネマで2019に製作された映画「レ・ミゼラブル」を観て度肝を抜かれました。

 ワイカムシネマのチラシから作品紹介を引用します。

 「舞台は、ヴィクトル・ユーゴの傑作『レ・ミゼラブル』で知られているフランスのモンフェルメイユ。ある少年の引き起こした些細な事件をきっかけに、取り返しのつかない事態へと陥っていく様をリアルに描く。」

 清藤秀人さんはこのような感想を寄せています。

 「フランスで社会問題になっている都市近郊のスラム化が、ヨーロッパ全土に、ひいては全世界に広がっていく。発展から取り残された低所得者用住宅、通称バンリューには、アフリカ移民の2世、3世はもちろん、麻薬ディーラー、イスラム教徒、ロマのサーカス団たちが、一触即発の状態でひしめき合っている。街をパトロールする警官たちはすでに正義のなんたるかを忘れ去り、差別や恐怖を通り越した荒廃が彼らの心を蝕んでいる。ある日。そこで発生した警官による無防備な移民少年への発砲事件が、遂に、積もり積もったフラストレーションに火を付ける時、そこにあるカオスは今の世界共通の問題であることに気づかされる。皮肉にも、文豪ヴィクトル・ユーゴによる代表作の舞台になった同じ街で展開する物語は、実際にそこに住む監督、ラジ・リの実体験に基づいているとか。『レ・ミゼラブル(悲惨な人々)』と言うタイトルが、これほどまでにリアルに響くとは驚きだが、監督の目には彼らの個々人でももちろんなく、人々をそうしてしまった犯人、つまり、政府と社会に向けられている。」

 「フランスで社会問題になっている都市近郊のスラム化が、ヨーロッパ全土に、ひいては全世界に広がっていく。」

 この言葉から想起したのが、ブレイディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」です。

 イギリスの郊外の街の集合団地が舞台で、様々な民族の人々が暮らしている様子がリアルに表現された名著です。

 映画「レ・ミゼラブル」は、フレデリィさんの本の内容を超えるリアルで深刻なフランスの様子が描かれていました。

 映画の最後に、題材となったヴィクトル・ユーゴの小説「レ・ミゼラブル」より「世界の名には悪い草も悪い人間もいない。ただ育てるものが悪いだけなんだ」の一節が引用されています。

 日本共産党の志位委員長は、党創立記念講演で、「格差拡大は、パンデミックのもとで急速に加速しています。富める者はより富み、貧しい者はより貧しくなっています。」「パンデミックは、資本主義というシステムをこのまま続けていいのかという重大な問いを、人類に突き付けているのです。」と語りました。

 映画の後半は、少年たちの反乱です。少年たちは、警察官たちにも自治組織の大人たちにも、麻薬ディーラーの大人たちにも、平等に、暴力の牙を向けています。

 少年らの起こした手段は間違っていることは大前提とした上で、少年たちから伝わってきたメッセージは「大人たちは僕たちを理解していない。良くしようとしていない。」でした。

 少年たちは悪い草ではない。育てる私たちの側が悪いのだ。

 私は、子を持つ親の一人として、一人の大人として、一人の政治家として、この映画を観てそのことを実感しました。

 この映画が描く、子どもたちを取り巻く状況の深刻さは、資本主義が抱えた問題の深刻さに通じると感じました。

 「富める者はより富み、貧しい者はより貧しくなっている」社会を変える連帯こそが解決のカギだと痛感しました。

 映画「レ・ミゼラブル」一人でも多くの方に観ていただきたい作品です。

 皆さんが最近観られた映画の感想をお聞かせ下さい。

県内の要配慮者利用施設の避難確保計画の策定率60.8%

 鹿児島県・熊本県を襲った豪雨災害で、熊本県の特別養護老人ホーム「千寿園」が浸水し、多くの人的被害が出ました。

 山口県においても、2009年に県央部で土石流災害が発生し、防府市の特別養護老人ホームライフケア高砂で、14名が死亡する災害が発生しました。

 2013年の山口・島根豪雨災害では、奇跡的に人的被害は出ませんでしたが、萩市の特別養護老人ホーム阿北苑に川の氾濫流が流れ込み、甚大な被害が出ました。私は、県内で発生した老人施設を襲った二か所の災害、どちらにも、発災直後に、国会議員などとともに現場を訪ねました。

 この経験から、6月県議会の環境福祉委員会の質疑で、福祉・医療施設防災マニュアルの各施設での策定状況について質しました。

 山口県は、県内の福祉・医療施設の防災マニュアル作成指針を作成し、県内の福祉・医療施設の防災マニュアル作成を促してきました。

 私は、新型コロナウイルス感染症対策を含めた作成指針となるように、県の福祉・医療施設の防災マニュアル作成指針を改定するよう求めました。

 これに、山﨑厚政課長は「新型コロナに関して全体的な検証も終わっていないので、今後、そういうものも踏まえて、改正の是非も含めて、検討したい」と答えました。

 私は、県内施設の防災マニュアルの策定状況について質しました。

 山﨑課長は「後日、回答する」と答えました。後日、県厚政課から私に「県内全ての施設で、防災マニュアルが作成されている」との回答が寄せられました。

 次に私は、要配慮者利用施設における避難確保計画の策定状況について質問しました。

 2019年3月31日時点で、県内の要配慮者利用施設563の内、策定数は295で策定率は52.4%です。

 私は、健康福祉部として、各施設に避難確保計画作成を進める援助を行うよう質しました。

 山﨑課長は「防災マニュアルは、避難確保計画の内容を網羅している。今ある防災マニュアルを避難確保計画という形で市町に届ければOKということになる。指導監査等を通じて、県としても、核施設に、市町の防災担当の方に届け出るよう言っていきたい。」と答えました。

 この程、国土交通省が、今年1月1日現在の要配慮者利用施設における避難確保計画の策定状況を公表しました。

 山口県は、要配慮者利用施設645の内、策定数は、392で策定率は60.8%でした。

 策定率が低いのは、美祢市が9.5%、萩市16.4%、岩国市が21.8%などです。

 厚政課と防災危機管理課が連携し、県内の要配慮者利用施設における避難確保計画策定が100%となるよう市町や施設を指導すべきだと思います。

 また、福祉・医療施設の防災マニュアル作成指針を新型コロナ感染症に対応した内容に早急に改定すべきだと思います。

 施設が諸計画を持つことは当然ですが、実際の災害で効果を発揮し、人的被害を生まないための日頃の点検や訓練が不可欠だとも感じます。

 防災対策を進める上で、各施設で何が求められているのか施設の方々のご意見もお聞かせいただきたいと思います。

 福祉施設等での防災対策に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

2018年の米軍機墜落事故の再調査結果が示される

 2018年、12月6日、高知県沖で、米海兵隊岩国飛行場所属F/A-18Dの戦闘攻撃機とKC-130空中給油機の空中接触・墜落事故について、昨年9月に米側の事故調査報告書が公表されましたが、この程、米側の統合処分担当官(CDA)による再調査が行われ、12日、中国四国防衛局が、その概要を福田岩国市長と藤田県総務部理事に説明しました。
 防衛省による「米海兵隊岩国飛行場所属機2機の空中接触による墜落事故に関する再調査結果の概要」には看過できない様々な問題が指摘されています。
 まず、事故要因の人員配置についてです。防衛省の「結果の概要」には次のように書かれています。
 「米本土の部隊に比べ、育成過程での成績の低い初回勤務の飛行士が、第242海兵全天候戦闘攻撃飛行隊に、意図せず数多く配置されていた。また、2回目・3回目の勤務の飛行士についても、第242海兵全天候戦闘攻撃飛行隊や飛行環境及び訓練制約に鑑み、これに十分対応するために必要となる各種資格や技能認定を有する者が少なかった。」
 7月11日の山口新聞はこの問題を次のように指摘しました。
 「米海兵隊が公表した報告書は中堅の航空操縦士らも米国外で唯一、常駐の戦闘機部隊を置く日本での勤務を敬遠する傾向にあると明らかにした。駐在部隊は、慢性的な人材不足で、能力向上に時間を取られ即応性が低下する悪循環に陥っている。太平洋地域での展開力を重視する上層部の危機感は強い。『ほとんどの操縦士は海外派遣を望んでいない』。報告書は配属2、3カ所目の中堅にとって日本駐在は人気がないと断言した。空域の制限や緊急輸送で訓練が十分にできないことなどを理由に挙げ、FA18戦闘攻撃機で作戦遂行に必要な資格を持つ人材が不足していると問題視した。」
 防衛省の「結果の概要」には、再発防止策等として米海兵隊総司令部から次の改善策が示されたと書かれています。
 「航空要員及び整備要員の配置に関し、海兵隊員個人の専門性のみならず、航空資格等を考慮することを含め、人員配置方針を変更すること。(例えば、育成課程修了後の初回勤務飛行士について、西太平洋地域を含む前方展開部隊に、最も能力の高い者を配置する等。)」
 しかし、山口新聞が指摘するように、空域の制限などにより「日本駐在は人気がない」状況が変わらないのなら、海兵隊総司令部の改善策が功を奏するのか疑問が残ります。
 次に「2018年事故の部隊調査について不正確な記述とされた主な事項」として次のように書かれています。
 「前回報告書で問題とされた一部搭乗員から検出された薬剤成分は、事故原因ではなかった(要因であった可能性はある)。」
 この点、防衛省の「結果の概要」には「睡眠管理研究を行い、必要であれば航空運用に関する方針を修正すること。また、薬剤に関する方針等を変更し、全ての航空要員等が確実に十分な訓練を受けられるようにすること。」とあります。
 米側及び防衛省は、今回の事故と薬物との関係について(要因であった可能性はある)とするなら、その内容を示し、薬剤に関する方針等の変更の内容を詳細に示すべきです。そうでないと、どのような問題がどう解決される見通しなのかを検証することが出来ないからです。
 日本の民間機で、操縦士から一定の薬物が検出されたら、操縦士だけではなく、航空会社にも甚大な影響を及ぼすものだと思います。
 日米地位協定でこの点でも米軍が特別扱いを受けることは許されません。薬物の問題も含めて、日本の航空法に米軍も準じるクリアな問題の検証と再発防止策が必要だと感じます。
 2018年の米側の事故報告書もそうですが、今回の統合処分担当官による再調査報告書も防衛省が公表するのは、「概要」です。
 防衛省は、総合処分担当官による再調査報告書全文(日本語訳)を、岩国市と山口県に示すべきです。
 引き続き、この問題の検証が必要です。皆さんのご意見をお聞かせ下さい。