議員日誌

(仮称)阿武風力発電事業に係る計画段階配慮書に対する意見答申(案)を審査

 昨日、令和2年第3回山口県環境影響評価技術審査会が行われました。議題の一つは、(仮称)阿武風力発電事業に係る計画段階環境配慮書についてです。
 日立サステナブルエナジー株式会社が、阿武町において、最大総出力54600kW(4200kW×13基)の風力発電所を設置する事業「(仮称)阿武風力発電事業」を進めようとしています。
 昨日の山口県環境影響評価技術審査会には、阿武風力発電事業に係る環境影響評価法に基づく計画段階環境配慮書に対する意見答申(案)が示され、審議が行われました。
 意見答申(案)は、同事業について次のように評価しています。
 「事業実施想定区域は、全域が平成30年に『萩ジオパーク』として認定されているエリアであり、キヤマウメモドキ群落や奈古鳥獣保護区といった重要な自然環境のまとまりの場が認められる。更に、周辺には北長門海岸国定公園のほか、複数の住居や学校等が存在しており、本事業による環境保全上の影響が懸念される」
 意見答申(案)は、全体的事項として「本配慮書では、工事の実施に伴う環境影響を評価の対象としておらず、また、事業実施想定区域外の動植物等については、直接改変がないことを理由に、影響はないなどと評価しているが、これらは計画熟度の低い現段階における評価である。このため、今後の手続きに当たっては、風力発電施設の配置及び構造・機種(以下『配置等』という。)並びに取り付け道路、送電線ルート等を含めた具体的な工事計画を明らかにした上で、最新の知見をもとに、専門家や関係自治体等の意見を踏まえて必要な評価事項を選定し、適切に調査、予測及び評価を実施すること」などを指摘しています。
 意見答申(案)は、個別的事項としていくつかの問題を指摘しています。
 まず、騒音等については次のように指摘しています。
 「騒音及び低周波音については、風力発電施設の配置予定地点における時間帯別の風向・風速等の気象条件を詳細に把握し、風車騒音の特性はもとより、高度地形等による影響にも十分に配慮するなど、最新の知見に基づいた適切な方法で、調査、予測及び評価を実施すること。」
 動物、植物では、次のように指摘しています。
 「事業実施想定区域内には、県自然記念物であるミヤマウメモドキ群落が自生していることから、ミヤマウメモドキの雌雄異株といった特徴を踏まえ、専門家等からの助言を得ながら、その生態及びそれを含めた生態系を的確に把握するとともに土地改変箇所からの距離を確保するなどの措置を検討するほか、適切な方法で予測及び評価を実施し、生育環境への影響を回避又は十分に低減すること。」
 動物では、アブサンショウウオ、オオワシ、クマタカ、サシバ等についても「専門家等の助言を得ながら、調査、予測及び評価を実施し、鳥類等への影響を回避又は十分に提言すること。」としています。
 県環境影響評価技術審査会では、ミヤマウメモドキの生態について意見が出されるなどした模様です。
 近く答申がまとめられ、知事に届けられる見込みです。
 答申を受けた知事意見は来月上旬頃には明らかにされる見込みです。
 徳島県那賀郡那賀町、海部郡海陽町及び高知県安芸郡馬路村周辺に、那賀・海部・安芸風力発電合同会社が、最大96000kW程度の事業規模で風力発電を行う(仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業を進めています。
 (仮称)那賀・海部・安芸風力発電事業は、環境影響評価法に基づく、計画段階環境配慮書を提出し、6月5日、徳島県環境影響評価審査会が行われ、答申がまとめられました。
 答申は総論で「あらゆる措置を講じてもなお、重大な影響を回避又は低減できない場合は、本事業の取り止めも含めた計画の抜本的な見直しを行うこと」としています。
 7月8日に明らかにされた徳島県知事意見は、答申を踏まえ総論で「あらゆる措置を講じてもなお、重大な影響を回避又は低減できない場合は、本事業の取りやめも含めた計画の抜本的な見直しを行うこと。」としています。
 知事意見は各論の中で、騒音及び低周波音による影響として次のように指摘しています。
 「風力発電機から発生する騒音及び低周波音(超低周波音を含む。)による影響については、多くの被害例が報告されている。コージェネレーションシステムの室外機から発生する低周波音による健康被害との関連性について、消費者庁の調査報告書では、『この関連性は否定できない。』としている。また、この問題に対して、環境省は『低周波音に関する感覚については個人差が大きく、参照値以下であっても低周波音が許容できないレベルである可能性が残されているため、個人差があることを考慮し判断することが極めて重要である。』としている。なお、風力発電機からの音の到達レベルに関しては、環境省は、地形や植生による影響のほか、季節によって気象条件が異なるので、1年間の測定を求めている。したがって、風力発電機から発生する騒音及び低周波による健康被害については、十分な調査を行い、地域住民に被害が生じない計画とすること。」としています。
 徳島県知事は、知事意見で、希少生物・生態系に対する影響について、次のように指摘しています。

 「事業実施想定区域及びその周辺は、県内屈指の優れた自然環境を有し、日本屈指の清流海部川の源流の森でもあり、自然度が高い植生が残存する重要な地域である。その多くは水源かん養保安林に指定されており、本事業の実施により希少生物や生態系に重大な環境影響を受けると懸念される。」

 徳島県知事は、環境影響評価法では最大級の「本事業の取りやめも含めた計画の抜本的見直し」を答申した理由として次の点を指摘しているのです。

 ①低周波音と健康被害の関連性について十分な調査が必要であること

 ②本事業の実施により希少生物や生態系に重大な環境影響を与えることが懸念されること

 山口県と徳島県の風力発電事業は、違う計画ですが、徳島県知事が指摘する2点は、山口県の計画にも共通する問題だと思います。

 山口県環境影響評価技術審議会の答申(案)でもこの2点について一定の言及は行われている所です。

 県審議会の答申段階では、この二つの問題を最大限に重視し、徳島県審査会同様に「本事業の取りやめも含めた計画の抜本的見直し」を明記したものになることを期待したいと思います。

 更に、山口県知事意見は、この二つの問題を最大限に重視して、徳島県知事意見同様に「本事業の取りやめも含めた計画の抜本的見直し」を明記したものになることを期待したいと思います。

 昨日、山口県環境影響技術審査会が開かれ(仮称)阿武風力発電事業に係る計画段階配慮書の答申(案)の審議が行われました。

 来月、上旬に、この問題で、山口県知事意見が出される見通しです。この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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