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新型コロナ対策補正予算の議会で質疑行う

 本日、新型コロナ対策に関する補正予算を審議する臨時議会が開かれました。

 私は、質疑で登壇しました。

 私が行った第一質問は以下の通りです。

・・・

 日本共産党県議団を代表して、4月臨時議会に提案された議案についての質疑を行います。

 まず、新型コロナウイルス感染症に対処するために、最前線で対応されている医療従事者や県職員及び関係者の皆さんに感謝申し上げます。また、はからずも感染し、入院や療養されている皆様方の一刻も早い回復を祈念するものです。
 新型コロナウイルス感染症の拡大を一日も早く収束させ、いつもの日常を取り戻すため、わが党も全力をあげることを申し上げ、質疑に入ります。
 まず、今年度補正予算案(第2号)についてです。
 村岡知事は、総額686億円余の予算規模について、「過去最大規模の補正額」と説明されました。直近では2009年6月、国の経済危機対策に呼応して、541億円の補正予算が編成されました。
 しかし、両者には大きな違いがあります。
 09年6月補正の歳入には116億円の交付金を含め、474億円の国庫支出金が配分され、ほぼ全額が真水です。
 今回補正の歳入の国庫支出金は32億円、5%しか見込めなかったため、財政調整基金46億円の取り崩しを強いられました。しかも真水は79億円のみです。
 国の補正予算案には、地方自治体が休業要請に応えた業者への協力金などにも使える臨時交付金を計上してはいますが、総額は1兆円に留まり、制度設計の遅れで、本県の今補正予算案には計上されていません。
 国の地方への財源対策は、あまりにも小さく、遅い。そう言わざるを得ません。
 少なくとも倍の2兆円以上、そして一刻を争って交付されるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 また、財務省が27日、発表した4月の経済情勢報告では、判断を「極めて厳しい」と引き下げ、今後、法人2税や地方消費税など県税の大幅な減少が想定されます。
 国に対し、過去の減収補てん債の枠組みを超えた財政支援措置を要求することが必要と考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、補正予算(第2号)の歳出についてです。
 まず、感染拡大の防止についてお尋ねします。
 新型コロナウイルス感染拡大の防止を議論する前提として、県の対策本部、調整会議、行動計画についてお尋ねします。
 第1に、対策本部についてです。
 県は、政府が「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置したことを受け、1月31日、「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置し、これまでに12回対策本部員会議を開催しています。
 国は、3月14日、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正しました。山口県は、改正特措法に基づき、対策本部をどのように強化されたのかお尋ねします。また、本部員会議の議事録は県民に広く公表すべきですが、お尋ねします。
 第2は、調整本部等の設置についてです。
 厚生労働省は、3月6日、新型コロナウイルス感染症患者のピーク時の入院患者数及び重傷者数を受け入れるために必要な医療供給体制を都道府県が中心になり整備することを通知し、併せて、県内の患者受け入れ調整等を行うため、救急医療や感染症の専門家が参画する「調整本部」を設置するよう求めました。
 山口県は、専門家会議を持ち、2月4日の初会合以降、3回会議を開催していると説明されます。設置要項やメンバー、審議内容については公表されるべきものと考えますが、お尋ねします。
 第3は、行動計画等についてです。
 先に触れた新型インフルエンザ等特措法の改正により、国は、すでに策定済みの新型インフルエンザ等対策行動計画を、「新型コロナウイルス感染症対策行動計画としても定められたもの」とみなす方針を明らかにしています。
 しかし、新型コロナウイルスとインフルエンザでは、違いがあります。
 1つは、医療現場で診断できる迅速検査キットが現時点ではなく、現時点ではPCR検査で陽性確認を行うこととなり診断までに時間を要する。
 2つは、治療薬やワクチンがなく治療は対症療法となる。
 3つは、約80%の人が軽症で済むことから感染に気づかないまま他者へ感染させてしまうおそれもある。
 4つは、クラスター(集団発生)により一時的に多くの患者が発生する事例がある。
 このため、感染源が分からない感染者が増加していくと爆発的な感染拡大(オーバーシュート(爆発的患者急増))が生じ、「医療崩壊」をまねく恐れがあります。
 こうした違いを踏まえて、少なくない都道府県は「新型コロナウイルス」対策のための行動計画を策定しています。
 県は現時点で、既存の「行動計画」を新型コロナウイルス感染症の「行動計画」とみなしていますが、それでは不十分です。両者の違いを踏まえた「行動計画」を策定すべきです。お尋ねします。
 第4は、相談およびPCR検査についてです。
 厚労省は、帰国者・接触者相談センターに寄せられた病状等に関する相談件数と、そのうちPCR検査を実施した件数を公表しています。
 4月1日から19日を集計すると、山口県は相談3763件、うちPCR検査を実施した件数は182件、4.8%です。同じく岡山県は2520件のうち331件、13.1%。鳥取県は3305件のうち356件、10.8%です。
 山口県でPCR検査実施率が少ない理由についてお尋ねします。
 厚生労働省は、15日「行政検査を行う機関である地域外来・検査センターの都道府県医師会・郡市区医師会等への運営委託等について」を通知しました。
 通知では「既存の帰国者・接触者外来等の医療機関に加えて、都道府県医師会・郡市区医師会等に対して、行政検査を集中的に実施する機関としての帰国者・接触者外来運営委託ができる」ことを改めて示しました。
 今後、県は、感染症検査体制として今までの環境保健センターだけでなく、「県内検査実施機関へのPCR装置等の検査機器の整備」を行うとしています。また、一日あたりの検査件数を60件から160件にすることも発表しました。
 具体的に環境保健センターのPCR検査を何件にし、県内検査実施機関での検査を何件にしようとしているのかお尋ねします。
 また県内検査実施機関は、厚生労働省の通知を受けて県医師会等へ運営委託するのかお尋ねします。
 報道では、都道府県が地域の医師会などに委託して設置するPCR検査を集中的に実施する地域外来・検査センターは12府県が設置し、22都府県が検討中とされています。山口県は、どう対応されようとしているのか、お尋ねします。
 第5は、最悪の事態を想定した医療供給体制についてです。
 厚生労働省が都道府県に推計を求めた「最悪の事態」の入院患者数は、山口県で、2800余に及びます。県は感染症患者を受け入れる病床を320床確保しましたが、それでも充足率は、1割強です。
 山口県においても「最悪の事態」を想定したベッドの確保や医療スタッフ、マスクをはじめ医療従事者の感染を防護する物品の確保などの検討は急務です。今後、どのようなスケジュールで取り組んでいかれるのか、具体的に示してください。
 第6は、職員体制についてです。
 感染症対策を担う健康福祉部健康増進課、相談センターとなっている各保健所、PCR検査を実施している環境保健センターの業務は多忙を極めています。この間、人員をそれぞれ何人増やしたのかお尋ねします。
 第7は、米軍岩国基地に関わる諸問題についてです。
 在日米軍司令部は、15日、関東地方の基地や施設に限定していた公衆衛生上の非常事態宣言の対象を日本全土に拡大しました。
 2013年1月24日の日米合同委員会の覚書では、米軍岩国基地所属の米兵、軍属とその家族で感染者が判明した場合は、岩国健康福祉センターに通報がされることになっています。これまで、米軍から保健所にどのような情報が寄せられているのかお尋ねします。
 空母艦載機部隊移駐のための拡張工事と合わせ、基地内には、知事が休業要請した劇場やプール、ボーリング場、クラブ等の娯楽施設などが再整備されました。
 米軍岩国基地に対しても、休業要請を行うべきですがお尋ねします。
 第8は、県民向けの情報提供についてです。
 山口県はホームページを通じて、各種情報の提供を行っています。県民に必要な情報を丁寧に届けていくことが求められます。
 鳥取県では、「個人向けの支援」、「企業・事業者向けの支援」、「その他の支援」に分け、国の情報も含めて、制度概要や問い合わせ先を示した「鳥取県の緊急支援策」をホームページに掲載しています。山口県も同様の情報提供が必要と考えますが、お尋ねします。
 第9は、中小零細企業の支援策についてです。
 1つは、休業要請に伴う協力金についてです。
 知事は、パチンコ店など県内の遊興施設・遊技施設に休業要請を行い、休業要請に応じた事業者に最大で30万円の協力金を支給するための経費5億2500万円が計上されました。
 報道によると全国44都道府県が休業要請を行い、37都道府県で「協力金」などの金銭的な支援を行う方針を示していますが、「財政力の違いもあり、支援内容には差が出ている」と報じられています。
 「要請と補償」は一体に行われることが当然です。国が緊急事態宣言を全国に広げた今、休業要請に応じた事業者に対する補償は国が責任をもつべきです。知事は、どう対応されるのか、見解をお示し下さい。
 また、東京都など複数の自治体が、風俗業に含まれる無店舗型デリヘルを休業要請の対象施設に追加しました。わが党に、山口県も同様の対応をして欲しいとの要望が県民から寄せられました。検討すべきと考えますが、伺います。
 2つは、中小企業に対する金融支援についてです。
さきにふれたように、県内の中小零細企業の先行き不安はかつてないほど深刻であり、手厚い支援が求められています。
 県が、経営安定資金の融資枠を現行200億円から460億円に拡大し、融資枠800億円の新型コロナウイルス感染症対応資金を創設するなどの対応されていることは評価します。
 その上で例えば、鳥取県は新型コロナウイルスによる影響で、金融機関から借入れた融資については、3年間分の利子を実質ゼロ円にする措置を講じています。山口県も、もう一段階、踏み込んだ支援に乗り出せないでしょうか。お尋ねします。
 また、営業自粛しても支払いが必要な固定費の負担により、廃業を余儀なくされる事態が予測されます。いくつかの自治体が家賃補助に乗り出しています。県としても検討すべきと考えますが、伺います。
 3つは、食事提供施設に一律10万円を補助する「営業持続化等支援事業」の「持続枠」についてです。
幅広い事業者を対象にされたことは高く評価しますが、県民の方から「なぜ、食事提供施設だけなのか」との疑問も寄せられました。対象業種は拡大できないのか、お尋ねします。
 また、鳥取県は、感染症予防対策に取り組んだ中小企業を対象に「企業内感染症防止対策補助金」支給しています。山口県も同様の制度をつくれませんか。お尋ねします。
 4つは、文化芸術関係者への支援です。
 音楽や落語、講談、舞踊等の公演、コンサート、ライブの現場は密閉、密集、密接の「3密」になることが多いため、県内でも、そのほとんどがキャンセル、中止になり、プロの出演者はもとより、イベントの企画運営、機材のレンタル、舞台、照明、音響などの関連業者は途方に暮れています。
 補正予算案には文化団体のパフォーマンス等のWeb配信を行う事業として410万円計上されていますが、十分ではありません。
海外だけでなく、国内でも文化芸術関係者への財政的支援が始まっています。山口県も公演やコンサート、ライブのキャンセル、中止によって、損害を被っている関連業者に支援金を給付し、文化芸術活動の継続を支えることが必要と考えますが、伺います。
 第10は、経済的困難を抱える世帯への就学支援についてです。
補正予算案には、家計急変世帯に対する高校等の授業料減免・奨学給付金の給付として、1億1400万円余が計上されています。
 授業料減免、奨学給付金の要件や対象となる世帯数などをお示し下さい。
 これら制度の申請には、柔軟に対応し、4月に遡って対応すべきです。要件についても可能な限り緩和すべきと考えますが、お尋ねします。
 奨学給付金については、新型コロナウイルス感染症の影響により書類提出が遅れても遡って認定を行うべきと考えますが、見解をお示し下さい。
 また、広島県は、県立大学についても、新型コロナウイルスの影響で年収が270万円以下となった世帯の学生については授業料を免除します。山口県でも検討できないのか、伺います。

・・・

 執行部からの回答内容は、明日以降のブログで報告していきます。

 引き続き、新型コロナウイルス感染症対策に対するご要望をお寄せ下さい。

「アーモンド」読書ノート①

 今年の本屋大賞翻訳小説部門で1位を獲得した韓国の作家ソン・ウォンピョン著「アーモンド」を読んでいます。

 翻訳本で、これだけ感情移入でき共感できる作品は久しぶりです。

 主人公のユンジェを通して、韓国の今が見え、それに通じる日本や世界の今が見えてきます。

 本の帯に書かれた本書のストーリーを紹介します。

 「扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない16歳の高校生、ユンジェ。そのは彼を『かわいい怪物』と呼んだ。15歳の誕生日に、祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙って見つめるだけだった。母は、感情のわからない息子に『喜』『怒』『哀』『楽』などの感情を丸暗記させて、『普通の子』に見えるように訓練してきた。だが、母は事件によって植物状態になり、ユンジェはひとりぼっちに。そんなときに現れた、もう一人の『怪物』ゴニ。激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく-。」

 物語も内容も全く違う小説ですが、本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの「流浪の月」とこの小説が通底しているように感じました。

 二つの小説に共通しているのは、「普通」を強いられる現代を描いている点です。

 ユンジェは、感情表現が出来ないことに加えて、通り魔事件の家族ということで、高校に入り、強烈ないじめを受けます。

 ユンジェがスマホのアプリで対話する場面が出てきます。

 「ほかの人と似てるってどういうこと?人はみんな違うのに、誰を基準にしているの?」

 「流浪の月」の更紗も文も「普通」と格闘しながら物語が進んでいました。

 この二つの小説のテーマが共通していることは、偶然ではなく、必然であり、アジアで、世界で「同調圧力」のようなものが強まっている時だということを私たちに作家の彼女らは教えてくれているように感じます。

 そして、「アーモンド」の主人公ユンジュは、激しい感情を持つゴニと出会います。

 ユンジュは、扁桃体が小さいことが理由なのか、ゴニを恐れません。

 ユンジュは、元死刑囚のアメリカの作家ノーランの言葉を引用します。

 「救うことのできない人間なんていない。救おうとする努力をやめてしまう人たちがいるだけだ」

 そして、母たちを襲った男やゴニのことをこう書いています。

 「母さんとばあちゃんにハンマーとナイフを振り回した男は、そしてゴニも、ノーランと似てるのだろうか。それともノーランに近いのは、むしろ僕の方なのだろうか。僕は、世の中をもう少し理解したいと思った。そういう意味で、僕はゴニが必要だった。」

 このくだりを読んでいて、親鸞の教えを唯円が書いた「歎異抄」の第三章の有名なくだりを思い出しました。

 「善人なほもって往生をつぐ。いわんは悪人をや。」

 「善人さえ浄土に往生することができるのです。まして悪人はいうまでもありません。」という意味です。

 仏教学者の釈徹宗さんは、このくだりを「自分自身の中にある悪への自覚に関する問題」と指摘しています。

 ユンジュが「ノーランに近いのは、むしろ僕の方なのだろうか」と考え「そういう意味で、僕はゴニが必要だった」と考えるくだりに、うなる私でした。

 そして、この本で、「歎異抄」が少し理解できたような気にもなりました。

 人間は、善人と悪人の両面を持っている。その事を自覚することが大切であること。

 その事を自覚するために、他人を知ることが大切。他人を知る事で自分を知ることができる。

 他人を知る手段の一つは、小説を読むことでしょう。

 その意味で、「アーモンド」は最良の本です。

 今、ユンジュとゴニが出会い、衝突するところまで読みました。

 二人の関係がどう深まっていくのでしょうか。

 引き続き、この小説から学んでいきたいと思います。

 皆さんのおすすめの作品をお教え下さい。

山口県補正予算の中の中小企業支援について

 30日に臨時議会が開かれます。この中に中小企業支援策が打ち出されています。

 これまでブログで書いてきたことと一部重複しますが、中小企業支援策をまとめてレポートしたのが下の小論です。

・・・

 4月20日、村岡知事は、県内のパチンコ店などの遊興・遊技施設に休業要請を行いました。4月23日、村岡知事は、要請に応じた事業所に「新型コロナウイルス感染症拡大防止協力金」を支給することを明らかにしました。支給金額は、1店舗(事業所)が15万円、2店舗(事業所)以上が30万円です。この制度が創設されたこと自体は評価しつつ、いくつかの点を指摘したいと思います。
 第一は、協力金の金額についてです。休業要請がされた同じ業種であっても、事業所のある都道府県で協力金に大きな差が出ているのが実態です。協力金は、東京都などの協力金は100万円です。全国知事会は、自粛に伴う国の「補償」制度の創設を求めています。山口県としても引き続き国に「補償」制度の創設を求めるべき時です。
 第二は、対象となっていない事業所への補償についてです。
 この点、山口県は、食事提供施設・県下1万2千事業所に対して1事業者あたり10万円支給する補助制度を創設しました。全飲食業者に一律支給するのは全国で例がありません。
 また、山口県は、新型コロナウイルスの影響により、前年同月に比べ売り上げの減少した企業を支援する制度を創設しました。小規模事業者へは、30万円を上限とし、中小企業は300万円を上限に支給する制度を創設しました。支援対象は、約430件を想定しています。
日本共産党山口県委員会と同県議団は、中小業者への支援を要望していたので、これら制度の創設を評価します。
 その上で、新型コロナウイルスで売り上げが減少した全ての事業者へ損失を補償する国・県による制度の抜本的強化を30日行われる臨時県議会でしっかり発言していきたいと思います。

・・・

 議案の質疑をほぼ書き終えました。30日当日までしっかり準備をして質疑に臨みたいと思います。

 引き続き、皆さんの新型コロナウイルス対策に対する要望をお聞かせ下さい。

映画「永い言い訳」

 西川美和監督の映画「永い言い訳」を観ました。

 この映画は、監督である西川美和さん自らが書いた同名の小説が原作です。

 小説は、第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補、2016年本屋大賞4位を獲得しました。

 映画も大ヒットした作品です。

 主役の本木雅弘さんを始め、それぞれの役者さんの演技が自然で、際立っています。

 特に、大宮灯役の白鳥玉季さんの演技は、秀逸でした。

 白鳥さんは、この映画を契機に、日本を代表する子役の一人として、今や彼女を観ない日はないという状況です。

 原作である小説の文庫本の裏表紙からストーリーを引用します。

 「人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に会い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。悲劇の主人公を装うことしかできない幸夫は、妻の親友の夫・陽一に、子どもたちの世話を申し出た。妻を亡くした男と、母を亡くした子どもたち。その不思議な出会いから、『新しい家族』の物語が動きはじめる。」

 映画の前半、妻が旅先で不慮の事故に会うシーン。

 彼女らを乗せたバスは、極寒の川に転落しました。

 20歳の時、「犀川スキーバス転落事故」に遭遇した私は、この設定に釘付けになりました。

 文庫本の解説の柴田元幸さんは、トルストイの「アンナ・カレーニナ」の書き出し「幸せな家族はどれも同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」を引用して、この作品を次のように評しています。

 「『不幸』というのは、『幸福』という『正しさ』からの逸脱、『正しさ』の劣化を示唆する。あるべき正常な事態は幸福であって、不幸は解決・除去すべき異常な事態だという前提があるように感じられる。西川美和はそのような前提に立たない。彼女はただ、こういう家族がいます、こういう家族がいます、と、不幸とも幸福ともレッテルを貼らずに一つひとつの家族の刻々変わる姿を提示する。自分を正しさの側に置いて、したり顔で正しくない者を裁くのではない。だから厳しくても、独善はない。悪意なしの厳しさが、感傷抜きの優しさと交叉する地点において西川作品は作られる。」

 「悪意なしの厳しさ」「感傷抜きの優しさ」が、役者一人一人の演技となり、私たちに感動を届けてくれているのでしょう。

 柴田さんは、「永い言い訳」について次のように解説しています。

 「人は他人を、そして誰よりも自分自身を納得させようとして、自分について言い訳を並べつづける。それが『長い』ではなく『永い』のは、その営みが永久に終わらないことを暗示している。それでいいのだ、より誠実な言い訳を目指しつづけるなら、と作品は言ってくれていると-あくまでも僕の個人的な印象ですが-思う。」

 私自身、大学で、スキーバス事故に遭遇するとは、思いもしませんでした。

 新型コロナウイルスの影響で、高校1年生の長女は学校に行けず自宅に居ます。

 このような4月下旬を、去年の今頃は想像すらできませんでした。わが家族も刻々と変わっています。

 日々変化する営みが続くことそのものが人生なのでしょう。

 その中で「より誠実な言い訳を目指しつづける」ことが人生なのだと西川さんの映画を観て気づかされました。

 西川監督、素晴らしい映画をありがとうございました。今、同名の小説を読み始めています。

 西川美和さんには、これからも映画・小説などで私たちを楽しませていただきたいと思います。

 西川美和ファンの皆さん、お勧めの小説や映画をお教え下さい。

映画「顔のないヒトラーたち」

 村瀬広著「映画は戦争を凝視する」で紹介されている作品の内、宇部市内最大のレンタルビデオ店に在庫のある映画をこの間、観ています。

 「在庫なし」が多い中で、いくつかの作品を観ることができました。その一つ一つが貴重な作品ばかりでした。

 この中で、今日は、2014年にドイツで製作されたジュリオ・リチャレッリ監督の「顔のないヒトラーたち」という作品を紹介したいと思います。

 この映画は、ドイツ人がドイツ人を裁いたアウシュヴィッツ裁判(1963年12月20日~1965年8月10日)に至るまでを描いた作品です。

 主人公は、検察官のヨハン。検察総長フリッツ・バウアーは、検察組織の大半の反対を押し切ってヨハンに調査を命じます。

 村瀬さんは、アウシュビッツ裁判までの経過とこの映画の意義について次のように書いています。

 「紆余曲折の5年余の準備期間を経て、1963年から1965年にかけて、西ドイツ・フランクフルトで裁判が開かれ、ホロコーストに関わった22人がドイツ人自身によって裁かれたのである。これがいわゆるアウシュヴィッツ裁判であるが、戦後70年の今日、アウシュビッツ裁判自体を知らない人が多くなり、この映画を製作する意味があった。」

 村瀬さんは、西ドイツと日本の戦争犯罪の裁判での向き合い方の違いについてこう書いています。

 「西ドイツは1979年に悪質で計画的な殺人については時効を廃止し、現在も毎年のように90歳以上の元親衛隊員が逮捕され、裁判が行われている。法律解釈を厳しくし、ナチスの収容所で働いていたことが立証されると、殺人幇助と断定される。対して日本の場合はどうか。日本の司法当局が日本人を訴追したことはなく、戦争犯罪の追及は東京裁判だけで終わっている。自国の戦争犯罪と真摯に向き合わない日本は、戦後70年を経ても、中国や韓国との真の和解が得られず、相互の歴史認識の溝を深めている。ドイツに学ぶところは大きい。」

 2012年にアメリカで製作されたピーター・ウェーバー監督の映画「終戦のエンペラー」を観ました。

 この映画は、終戦直後にマッカーサーGHQ最高司令官から、フェラーズ准将が、天皇の戦争責任を10日間で調査するよう極秘命令を受けて、どのような調査を行ったのかを描いた作品です。

 村瀬さんは、この映画が触れていないことがあると次のように書いています。

 「天皇が『あと(一撃)の戦果にこだわり、降伏受諾が原爆投下以後になったことも触れられていない。」

 村瀬さんの「自国の戦争犯罪と真摯に向き合わない日本」との指摘を肝に銘じて、これまで歩んできたこの国の道を振り返り、未来を創造したいとこの二つの映画を観て考えさせられました。

 この本に紹介されている映画の数々を観ているとまさに「映画は戦争を凝視する」のだということを痛感しました。

 見逃した作品についても、別の方法で、観ていきたいと思います。

 映画は、時代を写す鏡なのでしょう。これからも多くの映画から学びたいと思います。

 さて、昨日から、30日に行われる新型コロナ対策の補正予算を審議する議会で行う質疑の原稿を書き始めました。

 今、3分の2あたりを書いているところです。

 全国の状況を調査しながら、県民の命と暮らしを守る論戦を引き続き準備したいと思います。

 引き続き、新型コロナウイルス感染症対策に対する皆さんのご意見やご要望をお聞かせ下さい。

4月補正予算(案)概要

 昨日、4月補正予算(案)の概要が明らかになりました。

 県議会議会運営委員会が行われ、30日に臨時議会が行われて、補正予算(案)の質疑・採択を行うことを確認しました。

 私は、30日午後、質疑を行う予定です。傍聴は自粛をお願いしています。インターネット中継で私の質疑をご覧いただければ幸いです。

 補正予算の概要を紹介します。

 第一は、感染拡大の防止です。

 県内の遊興・遊技施設に休業を要請しました。これら事業者に最大30万円の協力金を支給するために5億2500万円の予算を計上しました。

 PCR検査を1回あたり60件から160件に拡充します(1億2874万円余)。感染症40床から320床に拡充します(22億9127万余)。

 軽症者等の療養施設を確保します(3億8499万余円)。

 第二は、県民生活の安定です。

 学校等の臨時休業に伴って生じる課題への対応として4億3400万円余を計上しています。

 主なものは、通信環境が整っていない家庭の生徒に対して、端末を貸与するなどの事業です(1億4796万円余)。

 経済的困難を抱える世帯への支援を行うため1億5100万円を計上しています。

 主なものは、高校生等に対する授業料減免への支援や解雇された方等への県営住宅の提供です。

 個人向け緊急小口資金等の特例措置のために3億8200万円を計上しています。

 事業者の業務継続体制の支援に1億2700万円を計上しています。

 各種相談体制の整備のために800万円を計上しています。

 生活困窮者自立支援制度の利用促進のために200万円を計上しています。

 次に県内経済の下支えです。

 県内企業への支援として628億円を計上しています。

 具体的には、経営安定化資金の融資枠を200億円から460億円にします。3年間無利子の新型コロナウイルス感染症対応資金を創設し、融資枠を800億円確保します。

 更に、食事提供施設に一律10万円支給するためなどに、14億7千万円を確保します。

 観光業への支援として宿泊施設に対する感染拡大防止対策への支援として1410万円を計上しています。

 農林水産業者への支援として1600万円を計上しています。

 以上概要を説明しました。具体的な質問がありましたら、本ブログのトップページからお問い合わせください。

 また、新型コロナウイルス感染症対策に対する要望を引き続きお寄せ下さい。