月別アーカイブ:2020年7月

一級河川で今年度末までに「流域治水プロジェクト」を策定

 29日付毎日新聞は、国土交通省が提起している新たな防災・減災施策「流域治水」について次のように報じています。

 九州で猛烈な雨が降っていた7月6日。東京・霞が関の庁舎会議室に、赤羽一嘉国土交通相ら国交省幹部が集まり、新たな防災・減災施策を取り求めた。その主要項目の最初に「あらゆる関係者に流域全体で行う『流域治水』へ転換する」との方針が明記された。急勾配の川が多い日本は、大雨になると川の流れが一気に強まり、洪水になるリスクが高い。その防止に中心的な役割を担ってきたのがダムや堤防だ。だが、ダムの貯水容量や堤防の高さは過去の降水量を基にしており、近年の豪雨への対応が難しくなっている。例えば川で洪水が起きる一歩手前の「氾濫危険水位」。これを超えた川の数は2014年は83だったが、19年は403と5倍近くになっている。今世紀半ばには洪水発生の頻度が2倍になるとの試算もある。予算不足の問題もある。00年代前半に1兆6000億円程度あった治水関連予算は、10年代前半に6000億円台に減少。19年度は1兆円超に回復したものの、洪水を防ぐための川の掘削や堤防整備は徐々にしか進まず、洪水を招く一因になっている。国が新たに打ち出した流域治水は、企業や住民にも洪水防止や被害軽減に協力を求めるものだ。ビル地下に貯水施設を整備してもらい、水をためる場所を増やす。田んぼや農業用ため池も非常時には水の出口を塞ぎ、臨時の貯水池として活用。川の流域での水害リスクが高い場所では、改正都市計画法に基づき22年から開発を抑制する。洪水や崖崩れの災害危険区域などは現在、老人ホームや病院を知事らの許可があれば建てられるが、原則禁止する。市街地調整区域にある浸水想定区域のうち命に危険を及ぼす可能性の高いエリアでは、盛り土を施しているか、避難施設が近くにあるかなど安全対策を考慮し、住宅開発の可否を決める。既存の住宅は移転を促す。

 国土交通相のホームページに、「流域治水プロジェクト」があり、こう書かれてあります。

 「気候変動による水害リスクの増大に備えるためには、これまでの河川管理者等の取組だけでなく、流域に関わる関係者が、主体的に治水に取り組む社会を構築する必要があります。河川・下水道管理者等による治水に加え、あらゆる関係者(国・都道府県・市町村・企業・住民等)により流域全体で行う治水『流域治水』へ転換するため、令和元年東日本台風で甚大な被害を受けた7つの水系での『緊急治水対策プロジェクト』と同時に、全国の一級水系でも、流域全体で早急に実施すべき対策の全体像を『流域治水プロジェクト』として示し、ハード・ソフト一体の事前防災対策を加速してまいります。『総力戦で挑む減災・防災プロジェクト』のとりまとめ(令和2年7月6日)を踏まえ、今後、各一級水系において、国・都道府県・市町村等との協議会を設置し、議論を進め、令和2年度末までに、流域治水プロジェクトを策定する予定です。」

 山口県においても、今年度中に、一級河川の佐波川で、国、県、市町等との協議会が設置され、今年度末までに、流域治水プロジェクトが策定される見通しです。

 国・県・市町の公的役割はしっかり果たしつつ、ダムに頼らない総合的な治水対策を講じることは必要だと考えます。

 山口県で、一級河川の流域治水プロジェクトをどう策定しようとしているのか、県土木建築部からレクチャーを受けることにしています。

 レクチャーの結果は、後日、報告いたします。

 豪雨災害から、皆さんの命と財産を守るために、何ができるのか、ともに考え、提案していきたいと思います。

 この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

 

宇部・小野田医療圏に地域外来・検査センター来月設置へ

 県は、6月県議会で、県内8医療圏に1カ所以上の地域外来・検査センターを設置する補正予算を計上しました。

 地域外来・検査センターは9月中に設置するとしながら、宇部・小野田医療圏への地域外来・検査センターは8月中に設置する方針を示しました。

 私は、昨日、宇部・小野田医療圏の地域外来・検査センターの業務を受託した宇部市の責任者の一人である宇部市健康福祉部参事の加生明美さんから現時点での準備状況をお聞きしました。

検体採取機械

宇部市保健センターに設置された検体採取ボックス

 コロナ感染を確認する方法として、現時点で、県民は、帰国者・接触者相談センター(保健所)に相談することになります。

 帰国者・接触者外来で、診察・PCR検体採取を行い、検体は、環境保健センターで行われています。

 新しく設置される地域外来・検査センターは、県民が、かかりつけ医で診断を受け、かかりつけ医が地域外来・検査センターに検査実施を要請します。

 地域外来・検査センターでは、PCR検体採取を行い、地域の民間検査機関で、検査を行います。

 検査結果は、地域外来・検査センターに返されます。陰性の場合は、その旨が患者に伝えられます。

 陽性の場合は、結果が、保健所に伝えられ、保健所から患者に、入院先等が伝えられます。

 加生参事は、「現在、圏域の宇部市、山陽小野田市、美祢市の関係者及び、宇部医師会、山陽小野田医師会、美祢市医師会、美祢郡医師会の関係者と最終調整を行い、8月中にはスタートさせたい」と述べました。

 加生参事は、調整中とした上で、「検体採取を行う場所は、宇部市保健センターの旧夜間休日診療所玄関付近(市道側)を検討している。また、PCR検体採取は、唾液による方法を検討している。体制は、看護師と事務で対応し、医師による支援を考えている。」などと話しました。

 検体の数で、職員体制などの増減が想定されます。検体採取が少ない場合も多い場合も、感染防止体制と人的体制が適切に捉える必要があることを感じました。そして、委託する県が、その都度、適切に、物的、財政的支援を行うべきだと感じました。

 7月1日、村岡知事ら114人が、国に、「積極的感染拡大防止戦略による経済社会活動の正常化に向けた緊急提言」を発表しました。提言は、第二波に備え、1日当たりのPCRなどの検査件数を9月末までに10万件、11月末までに20万件おこなえる態勢の整備が不可欠だとしています。

 1日10万件を山口県にあてはめると約1000件になります。7月29日現在で、感染者が県内で、53例と増加傾向ですが、PCR検査件数は、ここ数日で一番多かったのが147件、通常は、数十件で推移しています。県内で、現在の10倍以上のPCR検査件数としなければなりません。

 厚生労働省は、15日、都道府県に対し、新型コロナウイルス感染症の行政検査について、有症者と「濃厚接触者」などに制限してきた方針を改め、特定の地域や集団、組織等で、①患者が複数発生するなど感染の確率が高い②接触を生じやすいなどクラスター連鎖が生じやすい状況-の条件に該当する場合を新たに対象に加える方針を示しました。

 昨日は、全国の感染者数が1200人を超えるなどコロナ第二波の状況となっています。

 日本共産党の志位和夫委員長は、28日、安倍晋三首相に対して、新型コロナウイルス感染症の急拡大を防止するために、感染震源地(エピセンター)を明確にし、PCR等検査を大規模に拡充することなどを求める4点の緊急申し入れを行いました。

 山口県では、各医療圏にPCR等検査を行う地域外来・検査センターの設置を始めました。

 県のこの姿勢を評価しつつ、山口県にPCR等検査を抜本的に増やすよう引き続き、要望を強めていきたいと思います。

 宇部・小野田医療圏に地域外来・検査センターが来月中に開設される見通しとなりました。

 この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

 

岩国基地の感染拡大防止で防衛局に要請

 昨日、前衆議院議員・大平喜信さんと日本共産党広島県委員と日本共産党山口県委員会は、米軍岩国基地で発生している新型コロナ感染拡大問題で、河野太郎防衛大臣に要請書を提出しました。
 要請書提出には、大平前衆議院議員、辻広島県議、木佐木山口県議、松田衆院山口2区予定候補と私が同席しました。

中国四国防衛局(2020年7月)

  中四防に要請書を提出(左から二人目が私)

 要望書について、中国四国防衛局地方調整課の中村さんが回答しました。
 要望項目の第一は、米軍基地での新型コロナウイルスの大規模感染情報の公表についてです。
 この項目の第一は、岩国基地、広弾薬庫、川上弾薬庫、秋月弾薬庫など米軍基地内での感染状況(感染者数、感染者の行動履歴)を公表するよう米軍に求めることです。
 防衛局は「米国防総省は、各施設の現在の感染状況を公表することにした。米軍岩国基地では、地元の保健所との間で緊密な連携をとり、陽性の場合は公表している。」と答えました。
 第二は、5月27日の渉外知事会が提出した「新型コロナウイルス感染症に係る感染者情報の取り扱いに関する緊急要請」に沿って米軍に強く迫ることです。
 防衛局は「米側は、在日米軍関係者が入国する際に全ての者にPCR検査を義務付ける対応を始めた。」と答えました。
 第三は、米軍岩国基地関係者の米国人家族3人の羽田空港での虚偽申告問題に関して防衛省として抗議し、説明を求めることについてです。
 防衛局は「当該行為は、定められた手続きに従わなかったものであり、防衛省として米側に対して、遺憾の意を申し入れた。米側は、当該者に対して処分も含めて適切な対応を行うとの回答を得た。」と答えました。
 要請項目の第二は、今後の感染防止策についてです。
 この要請項目の第一は、米軍基地内での感染防止策を直ちに行うよう米軍に申し入れすることです。
 防衛局は「米軍は、適切に対応を行っていると考えている。」と答えました。
 第二は、基地内で働いている日本人従業員の感染防止策を直ちにとることです。
 防衛局は「米側は、在日米軍で感染防止策を行う場合、日本人従業員に対しても、対策を共有して行っていると認識している。」と答えました。
 松田衆院山口2区候補は「米軍基地内のPCR検査体制はどうなっているのか」と質しました。
 防衛局は「検体を米軍横須賀基地の海軍病院に送り検査している。岩国基地の検査結果は、岩国基地に戻される。仮に陽性だったら、地元の保健所に連絡を行い、公表することとなる。」と答えました。
 松田候補は、「日本人従業員に対して、PCR検査を実施すべきだ」と質しました。
 防衛局は「現在、在沖基地では、日本人従業員に対してPCR検査が実施されている。岩国基地の日本人従業員への対応は、今後の協議によって決まる。」と答えました。
 参加者から、「在沖米軍基地の日本人従業員のPCR検査は、沖縄県が基地に通知して行われている。岩国基地でも、山口県が基地に通知して、日本人従業員のPCR検査を実施する流れをつくるべきだ」との意見が出されました。
 在沖米軍基地内での新型コロナウイルス感染症の発生が、25日12時現在で、229人となっています。
 在沖米軍基地と米軍岩国基地は、日常的な行き来があります。米軍岩国基地でも感染が拡大するのではないかとの心配が岩国市民から出されるのは当然です。
 また、日本人従業員の市民の心配も広がっています。
 PCR検査の実施と公表など必要な対策が適切に取られる必要があります。
 防衛省は、「米軍は適切に対応している」との対応ではなく、米軍に対策の徹底と情報公開を強く求める時です。国の主権が問われる重大問題です。
 この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

ALS患者嘱託殺害容疑で医師が逮捕

 23日、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者からの依頼を受けて、薬物を投与して殺害した容疑で2人の医師が逮捕され、衝撃を広げています。
 26日付毎日新聞に、生命倫理や死生学を専門とする安藤泰至・鳥取大学医学部准教授がインタビューに応じました。
 安藤医師は、二人の医師の逮捕について次のように語っています。
 「一見、患者の意志に基づいて致死薬を投与しているように見えて、この医師たちは弱り切った難病患者や高齢者を生きる価値のないかわいそうな人と決めつけ、その命を絶つことを善行だと考えているように見えます。この点で、2016年にあった相模原市の障害者施設での殺傷事件に近いのではないでしょうか。」
 安藤医師は、この問題の本質について次のように語っています。
 「今回の事件の発生を聞いて、ついにこういうことが起こったか、と思いました。懸命に生きている難病の方のことを想うと胸が痛みます。重い病者や障害者、高齢者などに対し、不幸だと決めつけるような考えが進んでいるような感じがします。それは生きる価値を、仕事がどれだけできるかというような生産的な能力で考え、自分のモノというよりは、私たちがそれによって生かされている『いのち』の本質的な価値を考えることが少なくなっているためではないでしょうか。(政府の介入よりも自由競争を重んじる)新自由主義の考え方が広がる中、自己責任による生き残り競争にさらされた人たちが、より弱い人を探して攻撃するような社会になっているのかもしれません。」
 26日のしんぶん赤旗は「主張」で、この事件についてこう書いています。
 「ALS患者が、なぜ生き続けることの希望を失ってしまったのか。医療制度をはじめ社会の仕組みが患者を追い詰めていないのか。医師がなぜそのような行為に及んだのかー。難病患者の人権と尊厳、生きる権利にかかわる多くの深刻な問題が突きつけられています。『やまゆり園』事件にも通じる重大な課題も少なくありません。徹底的な解明が欠かせません。」
 障害がある人もない人も、命、人権、尊厳が保証される社会を作っていくことが急がれます。
 ALS患者を医師が殺害し逮捕される事件に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

地球的規模での環境破壊と感染症のパンデミックとの深いかかわり

 志位委員長は、15日の記念講演で、「地球的規模での環境破壊と、感染症のパンデミックとは深いかかわりがある」として次のように述べています。

 「人類の歴史のなかで、感染症の流行は、人類が定住生活を始めた時以来のものといわれています。ただ、この半世紀くらいは、新しい感染症がつぎつぎと出現しています。エイズ、エボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、ニパウイルス感染症、腸管出血性大腸菌感染症、ウエストナイル熱、ラッサ熱、新型コロナウイルス感染症などです。厚生労働省によると、この30年間に少なくとも30の感染症が新たに出現しているとのことです。出現頻度が高すぎる-これが専門家の指摘であります。この要因はどこにあるのでしょうか。多くの専門家が共通して指摘するのは、人間による生態系への無秩序な進出、熱帯雨林の破壊、地球温暖化、それらによる野生生物の生息域の縮小などによって、人間と動物の距離が縮まり、動物がもっていたウイルスが人間に移ってくる、そのことによって新しい感染症が出現しているということです。」

 デイビッド・ウォレス・ウェルズ著「地球に住めなくなる日 『気候崩壊』の避けられない真実」に「グローバル化する感染症」という章があります。

 デイビッドはこう指摘します。

 「いまの世界はグローバル化が進み、人間の移動や接触が広範囲になったとはいえ、生態系はおおむね安定しており、それがもうひとつの防護壁になっている。新しい環境に伝播しても、そこでは生きられない病原菌もいるのだ。だから未開の自然を訪ねるツアーでは、未知の病原菌との接触に備えてワクチン接種や予防注射を山ほど受けさせられる。ニューヨークからロンドンに行くだけなら、その必要はない。だが地球温暖化で生態系がひっかきまわされると、病原菌は防護壁をやすやすと乗りこえる。蚊が媒介する感染症は、いまはまだ熱帯地域に限定されている。しかし温暖化のせいで、熱帯域は10年に50キロメートル弱の勢いで拡大している。たとえば黄熱は、ウイルスを持っているヘマゴグス属やサベテス属の蚊に刺されることで感染する。ブラジルでは、こうした蚊が生息するのはアマゾン川流域だけなので、ジャングルに暮らしたり、あるいは旅をする者だけが気をつければよかった。ところが2017年に、蚊がアマゾン川から飛びたち、サンパウロやリオデジャネイロといった大都市に来ていることが判明した。劣悪な環境で暮らす3000万人に、致死率3~8パーセントの黄熱がじわじわと迫っているのだ。」「気候と感染症の関係でたしかなのは、暑い地域ほどウイルスは活発になるということだ。これゆえ世界銀行は、2030年には36億人がマラリアの危険にさらされると予測する。」

 地球温暖化と生態系の崩壊で、動物と人間の距離が縮まり、感染症が拡大しているとデイビットも指摘しています。

 本ブログでも紹介したと思いますが、京都大学学長の山極寿一さんも、同様の指摘をされています。

 デイビットは、地球温暖化を防ぐために、次のことを提起しています。

 「気候変動で予測された暗澹とした未来図を見せられたほうがやる気をかきたてられる。それは団結して行動せよという号令だし、そうあるべきだと思う、その気候の万華鏡にはもうひとつの意味がある。地球という星はすべての人のふるさとであり、そこに選択の余地はない。しかし地球を何にたとえて、そこからどんな行動を起こすかはあなたしだいなのである。」

 感染症のパンデミックで、環境破壊を食い止めることが急務だということを私たちは再認識しました。

 今こそ、団結して行動するときです。

 グレダ・トゥーンベリは、2019年1月、世界経済フォーラム年次総会(ダボス)でのスピーチをこう結びました。

 「大人はつねに、若者に希望を与えなけらばならない、と言っています。けれど私は、大人の語る希望なんていりません。大人には、希望をもってほしくない。パニックに陥ってほしい。私が日々感じている恐怖を感じたうえで、行動を起こしてほしい。危機の真っただ中にいるように、行動してほしい。家が火事になっているように、行動してほしいのです。実際、今はそうなのですから。」

 私は、常にグレダの言葉を忘れずに行動したいと思います。

伊是名夏子著「ママは身長100㎝」

 22日の朝日新聞に「今を越えて~やまゆり園事件から4年」との特集記事が掲載されていました。
 この特集記事に、伊是名夏子さんが登場しました。
 伊是名さんは、「骨形成不全症」という障害で、身長が100センチで、車イスで生活しています。
 私は、西宇部校区人権教育推進委員協議会会長を務めています。昨年度の西宇部校区人権教育推進大会で、「お互いの本当が伝わる時 -障害者ー」という人権啓発DVDを視聴しました。
 このDVDに、伊是名夏子さんが出演しています。伊是名さんは、2018年7月の自らのブログの中で、「映画の俳優デビューしました。(中略)海外事業部 吉村彩女役です。」と書いています。
 電動車イスを颯爽と動かす伊是名さんの姿を鮮明に覚えており、先述の朝日新聞の記事をじっくり読みました。この中で、伊是名さんは、「結婚し、2人の子どもを育てています。」と書いています。そして、伊是名さんの経歴に「昨年、著書、『ママは身長100㎝』」とあります。早速、宇部市で最大の書店に行くと、一冊だけ、伊是名さんの本があるではありませんか。
 一気に、伊是名夏子著「ママは身長100㎝」を読みました。
 伊是名さんは、沖縄県生まれ、乳幼児の頃から何度も手術を受けながら成長してきました。中学までは特別支援学校で学んだ伊是名さんですが、高校は、普通高校に。その後、早稲田大学に進学し、結婚して、香川大学の大学院に進みます。その頃、一人目の子どもさんを妊娠します。その後、二人目も出産。
 伊是名さんは、現在、10名のヘルパーさんとともに、子育てを続けています。
 伊是名さんは、本の中でヘルパー制度についてこう書いています。
 「私の生活に欠かせないヘルパー制度。利用できるのはありがたいのですが、困ったところもあります。『同居をしている家族が介助すべき』という考えが強く、同居人がいる障害者は、制度を使えないことが多いのです。」「私は大学卒業後、沖縄に戻り、実家の二世帯住宅の1階に住んでいました。完全に一人の生活で、2階には親が住んでいました。親は姉の住む県外に行くことも多く、いないことも普通でした。でも私がヘルパー制度を使うためには、親は普段何をしていて、どんな理由があって私を介助できないのかを、市役所で細かく説明しないといけませんでした。20歳過ぎた障害者でも、結局は家族が介助することが前提なのです。」
 伊是名さんは、その上で、「子育ても、障害者の介助も、家族だけで解決しようとすると、多くは行き詰まります。虐待や共倒れにつながることもあります。」と述べ、自民党改憲草案についてこう書いています。
 「自民党現政権の憲法改正草案を読んで、私は恐ろしくなりました。第24条の草案には『家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない』が新設され、『家族』『扶養』『後見』という言葉が追加されています。家族で支え合うことがさらに強調さているのです。改正されたとき、障害者はますます生きづらくなるのではないかと、不安な気持ちでいっぱいです。」
 昨日のブログで、英国のサッチャー元首相が、「社会なんていうものは存在しない」「自分の面倒は自分で見てくれないと困るのです」と発言したことを取り上げ、ジョンソン首相が自らもコロナに感染し、「コロナウイルスは『社会というものがまさに存在する』ことを証明した」「われわれの国民保健サービスを守れ」と発言したことを取り上げました。
 伊是名さんは、先述した新聞でこう述べています。
 「コロナによる不自由は、障害のある人の日常です。『障害者なんだからできなくて当たり前』とされてきたことが、みんなの問題となった。色々な支援や選択肢が生まれ、色々な人の生きやすさにつながってほしい。みんなの中に障害のある人も当たり前にいる社会をめざし模索しています。」
 コロナ禍が社会の脆弱性をみせると同時に、新しい社会への模索を起こしています。
 コロナ危機をのりこえ、新しい社会をつくる上で、伊是名さんの日常に学ぶべき点が多々あるように思います。
 私は、日本福祉大学のゼミで障害者福祉を選択しました。障害者福祉は私のライフワークです。これからも伊是名夏子さんからしっかり学び、新しい社会をみなさんと一緒に作っていきたと思います。

 伊是名夏子さんは。全国で講演も行っているとのことです。是非、伊是名さんの講演をお聞きしたいと思いました。

 伊是名さんの素敵な笑顔がみたいと思いました。
 一人でも多くの皆さんに伊是名夏子著「ママは身長100㎝」をお読みいただきたいと思います。