昨日、厚南中学校人権教育参観日で、山口県立大学社会福祉学部教授の内田充範さんによる「子どもの貧困について」と題する講演をお聞きしました。
OECDの2013年の相対的貧困率の調査で、日本は、全体で16.1%、子どもで16.3%という結果でした。
大人が一人の子どもがいる現役世代の相対的貧困率は54.6%でOECD加盟34カ国中4位という状況です。
内田先生は、「平成バブル景気までの好景気期間には、生活保護受給者は増加しなかったが、2000年から6年間の戦後最長の好景気期間は、生活保護受給者は増加している」と指摘し、その背景として「人員削減や海外移転等の成果としての好業績」があると話しました。
立教大学教授の浅井春夫さんの「子どもを大切にする国・しない国」(2006年)の第一章「子どもを大切にする国への道を阻むもの-新自由主義がもたらす人間不在の子育て政策-」に「新自由主義は地域の子育てにどのような影響を与えるか」があります。
この中で、浅井さんは「新自由主義の拡大・進行は、わが国の人間を大切にしない国への道をいっそう突き進むことを余儀なくさせます。」「福祉分野ではより鮮明に、人間を大切にしない国=『福死国家』へと変質していくことになるのです。」として、「福死国家」への変質の特徴をいくつか挙げています。以下引用します。
第一に、保育などの社会福祉分野に、確実に新自由主義が浸透し、競争原理と市場原理によって運営することで優勝劣敗の鉄則が貫徹するようになります。
第二に、民間事業体による生き残りのための必死の事業展開も多くの問題を生み出すことになります。儲けと保育サービス水準を天秤にかける状況のもとで、各事業体で利用者の人権侵害も露わになっていくでしょう。
第三に、競争が激化すればするほど地域におけるネットワークの視点が欠如することになります。地域住民の総合的生活保障という視点は、ますます希薄化していくとともに、民間社会福祉事業間の競争によってバラバラ化が促進していくことになることも、すでに進行しています。
第四として、競争に勝ち残るためには各事業体は経営効率を重視し、そのことで業績主義の強化、福祉実践のマニュアル化をすすめ、福祉労働の質的低下を招くことも否めません。
第五に、過疎地や利潤のあがりにくい地域の住民は、低福祉に甘んじなければならない可能性があることも重要な問題点です。
第六に、利潤があかりにくくなれば、営利企業はリストラ政策を大幅に展開していきます。その果てには倒産という決定的な問題があります。
特に、内田先生の指摘と浅井先生のこの第六の点は共通するものがあります。
全国で山口県で2010年代前半に、電機産業を中心に大リストラの嵐が猛威を振るいました。
浅井先生は第六の中で「わが国の生活保護受給者数の増加に観られるように、実際には社会保障・社会福祉の対象の増大を生む出すことになるのです」と指摘しています。
更に浅井先生は、「新自由主義の現実は、戦後社会保障・社会福祉の到達点を掘り崩し、確実に日本社会を弱肉強食の社会へと導いているのです。弱肉強食の社会とは、少数の『勝ち組』と大多数の『負け組』を生み出す社会構造であり、人間を大切にしない国へのいっそうの傾斜を意味します。」と書いています。
日本の子どもの貧困率が2002年で14%だったものが、2013年に16.3%となっているように、新自由主義が跋扈する社会の中で、子どもの貧困が深化していることは明らかです。
内田先生は、「子どもの貧困問題は大人の貧困問題であり、自己責任ではない社会問題」として「労働政策、社会保障制度の充実が必要」と話され、その上で、地域での取り組みを強めていこうと話されました。
浅井先生は、この章の最後で「新自由主義の克服は、EU諸国がそうであったように、その推進者たちを政治の舞台から退場させることが最も確実な方法であるのです。」と述べています。
日本の国で6人に一人の子どもが貧困状態であるという現実を私たちは真剣に考えていかなくてはならないことを痛感しました。
子どもの貧困について皆さんはどうお考えですか。
・・・
さて、今日から東京都議選の応援に東京に出発します。
20日の夜に帰ってきます。明日のブログはお休みします。
都議選の応援報告を乞うご期待下さい。
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