議員日誌

晴れときどき涙雨―高田郁のできるまで―

 高田郁さんのエッセー「晴れときどき涙雨」を読み終えました。

 高田郁さんは、私が今、最も応援している時代小説作家です。

 代表作の「みをつくし料理帖シリーズ」は、私だけでなく、長男の愛読書ともなっています。

 高田さんの時代小説を読みつくし、待ちに待ったエッセー集です。

 彼女のこれまで生きてきた道のりが丁寧に描かれています。

 子どもの頃のいじめられた体験。

 法曹界を目指した20代の頃。

 塾の講師をしていた会社が倒産したこともありました。

 そして、ようやく、漫画の原作者としての地位を獲得します。

 その間にも、阪神淡路大震災で被災したり、目の病気や交通事故にも遭遇します。

 お父さんが好きだった山本周五郎の短編の世界に改めて触れ「あの世界に行きたい」と時代小説作家に転身します。

 漫画原作者時代を中心に書かれたエッセーの一つ一つが私の心に沁み渡りました。

 彼女自身様々な壁を乗り越えた人だからこそ、周りの人に温かくなれるのだろうと思わされる文章の数々でした。

 そんな彼女が紡ぎ出す文章だからこそ、彼女が描く江戸の時代を越えて今の私たちの心を打つのだと思いました。

 彼女のエッセーの中で、私の心から消えないのは、「幸せになろう」です。彼女自身のいじめ体験が綴られたものです。

 中学時代、彼女は、同級生の暴力で肋骨骨折・内蔵損傷で入院します。いじめのきっかけは、ある体育教師から「このクラスで一番気にくわんのはお前や」と名指しされたことでした。

 彼女は、小児病棟で入院中、子どもに先立たれて悲しむ親たちの姿を見ました。その親の姿が「死」の誘惑を振り払ったと書かれています。

 「いじめられる側にも責任がある」。彼女は、この言葉の間違いを厳しく戒めています。

 大津市でのいじめ死亡事件が社会問題となっていますが、いじめ問題を考える時の私たちへの示唆が十分に含まれたエッセーでした。

 また、子どもたちに接する親としての心構えにも今一度気付かされたエッセーでした。

 私は、これからも時代小説作家高田郁さんを応援していこうと決意を新たにしたエッセー集でした。

 彼女の漫画の原作者・富士川立夏としての時代の作品にも触れていきたいと思いました。

 また、彼女にこの世界に行きたいと言わせしめた山本周五郎作品にも触れていきたいと思います。

 なによりも高田さんの次回作を早く読みたい私です。

 川富士・高田ファンの皆さん、感想をお聞かせ下さい。

 

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