昨日、山口県障がい児の教育を進める会の県教委交渉が行われました。
交渉の中で特別支援教育に関わる教員や保護者から様々な問題が指摘されました。
その一部を報告します。
第一は、障がい児の高校受験への合理的配慮についてです。
今年度山口県公立高等学校入学者選抜実施要領(抄)には、「障害のある者の受検に当たっては、障害のあることをもって不合理な取扱いをすることがないように十分に留意し、公正かつ適切に手続等を行う。障害等のあることにより特別な配慮を必要とする志願者は、希望する配慮の内容を特別配慮申請書により、出願締切日までのできるだけ早い時期に、中学校長を経由して、高等学校長に申請する。」とあります。
参加者から「障害のある者の受検における配慮申請書が提出された件数は。」との質問が出されました。
担当者は、「今年度の効率高校入学者選抜で、障害のある者の配慮申請者数は、54人だった。申請者数は増加傾向にある。」と答えました。
第二は、特別支援教育支援員についてです。
参加者から、「特別支援教育支援員が中々集まらない状況にある。香川県や和歌山県、長崎県では、支援員の手引きを県独自で作成している。山口県でも作成すべきではないか。」との質問が出されました。
担当者は、「まずは、市町での手引きの作成状況を調査したい。」と答えました。
第三は、特別支援学級の児童生徒の学力テストへの参加についてです。
情緒障害児学級に在籍していた子どもさんを抱える保護者の方から「数年前、情緒障害児学級に在籍していた子どもが、全国学力テストへの参加が認められたが、集計には入れない。マニュアルがあるから。」との説明を受けたとの告発がありました。
担当者は、「国のマニュアルはないと考える。」などの回答がありました。私は、当時、マニュアルはあったのか。現在は、どのように対応しているのか、県教委に質問書を提出しました。
第四は、総合支援学校と近隣の小中学校との交流活動についてです。
県東部の総合支援学校において、近隣の小中学校との交流活動において、交流場所が3階で、総合支援学校の車いすの子どもが参加するのに苦労した事例が関係者から示されました。
私は、事実関係と、合理的配慮した交流活動の徹底をどう行うのかについて県教委に質問書を提出しました。
第五は、医療的ケア児についてです。
県東部の総合支援学校で、1クラスの医療的ケア児が2名在籍するクラスがあるが、担任と看護職員の2名に対応しているとの実態が出されました。
私は、県内で同様の実態がどれだけあるのか、医療的ケア児一人に対し、看護職員を1名配置することはできないのかについて県教委に質問書を提出しました。
第六は、県立高校での通級指導教室の体制強化についてです。
今年5月1日現在、通級指導教室に通学している中学生は662名であること、公立高校で通級指導教室に通級している生徒は2校2名(昨年度は4校7名)であったことも明らかになりました。
県立高校での通級指導教室の抜本的な体制の強化が求めらる実態が明らかになりました。
第7は、総合支援学校の通学バス60分以上の路線についてです。
今年5月1日現在、県内の総合支援学校の通学バスの60分以上の路線が13路線あることが判明しました。
70分を超える路線が、岩国総合支援学校1、田布施総合支援学校2、防府総合支援学校1、宇部総合支援学校2、下関総合支援学校1、萩総合支援学校2の計9路線あります。
運行時間が60分という路線が13あります。参加者から「運行時間を60分にするために、子どもたちに停車場まで遠距離通学を強いているケースがあるのではないか。」との指摘も出されました。
私は、今回の交渉で出された意見、それを受けて、質問書を出している問題に対する回答を今後の県議会の質問や文教警察委員会で、質していきたいと思います。
特別支援教育に関する皆さんのご意見をお聞かせください。
今朝のしんぶん赤旗日刊紙は、広島県教育委員会が進める県立高校再編計画に対する広島県での反対運動と成果について次のように報じました。
「広島県教育委員会が県立高校の統廃合を進めています。この中で上下(じょうげ・府中市)、西城紫水(さいじょうしすい・庄原市)、湯来南(ゆきみなみ・広島市佐伯区)の3校は来春の生徒募集の停止(3年後に廃校)が見送られました。県教委が2014年に策定した高校統廃合の基本計画(14~23年度)では、中山間地域の1学年1学級規模の小さな学校は『生徒数が2年連続で80人未満』になると廃校としていました。19日の県議会文教委員会で発表された新たな県教委の基本計画案(24~33年度)は『2年連続で新入生が20人または全校生徒数が60人未満』へ変更しました。さらに『近隣に高校がなく、他地域への通学が困難な学校については別途検討する』という基準が盛り込まれました。この県立3校はいずれも中山間地域にあるため一定の歯止めになります。しかし、それぞれの現在全校生徒数は上下52人、西城紫水60人、湯来南46人。新基準でも統廃合の火種が残ります。生徒数によって統廃合を狙う乱暴なやり方に、3校の地元住民たちは議会への要請行動や署名活動など高校存族に向けた運動を粘り強く続けてきました。上下高校ではわずか1カ月余で約7千筆の署名を集めて、県教委へ提出(7月)。同校を支援する会代表の黒木秀尚氏(上下町でクリニック開業)は語ります。『存続に向けての地域住民や卒業生らの寄付や署名などの運動が高まり、地元選出県議らも連携・協働してくれた。今後も(高校統廃合させないためには)住民運動の継続が必要だ』湯来南高校の地元の日本共産党湯来支部は、佐伯区選出の藤本聡志市議とともに要請書を提出(8月)。同行した県立廿日市高等学校砂谷分校(湯来南高校の前身)の元教員の高東征二氏は、『どこに住んでいても十分な教育が受けられることが必要だ』と訴えました。4月の県議選で議席を勝ち取った日本共産党の藤井敏子県議は文教委員会でこの問題を取り上げ、統廃合の対象校を訪れ校長と懇談を重ねてきました。『60人に基準が緩和され、市町から高校がなくならないなどの留意事項が入ったことは大きな成果』と評価します。今回の計画案には見過ごせない問題があります。中山間地域以外の高校について、『1学年3学級以下』だった旧基準から『1学年4~8学級以下』と統配合の対象を拡大しています。『この基準では、どの高校が統廃合されてもおかしくない』と藤井氏は指摘します。『数字で切り捨てるやり方をやめるべきです。どこに住んでいても安心して学べる環境を守り広げていきたい』」
記事にある広島県教委の高校再編の基本計画案(24~33年)に「中山間地域以外の高校ついて、『1学年3学級以下』だった旧基準から『1学年4~8学級以下』との統廃合の対象を拡大して」とされた点は重大な後退です。
その上で、記事にあるように広島県教委の高校再編の基本計画案に「近隣に高校がなく、他地域への通学が困難な学校については別途検討する」という文章を明記したことは大きな前進です。
私は、9月県議会一般質問で、「山口県の高校再編基準は、4学級以上としているだけだ。中山間地域に学校を残す基準を明記すべきだ」と指摘しました。
この点から、山口県教委は、広島県教委が中山間地域の学校を残す基準を明記したことを見習うべきです。
更に、広島県教委の対応で見習うべきは、高校再編計画を住民の意見を聞いて見直したことです。
山口県教委が、宇部西高校と高森みどり中学の募集停止を提案した時、それぞれの住民から多数の学校を残せの署名が県教委に提出されました。宇部西高校を残せの署名は最終的に2万筆が県教委に提出されましたが、県教委は、これら住民の声を顧みることなく、募集停止を強行しました。
現在、柳井・周南地域の5校の高校を2校にする再編計画案が示され、住民説明会が開催されています。県教委は、住民の声を十二分に聞き取り、再編計画を見直すべきです。
9月県議会を通じて、解せないのは、県立周防大島高校を再編対象にしなかったことです。
山口県教委が、県立周防大島高校を周辺地域の学校を配慮して再編統合の対象にしなかったというのなら、その事を堂々と、高校再編基準に明記して、柳井・周南地域の高校再編に対する基準として適応すべきです。
その立場から、平生町から県立高校がなるなるなどの事態は回避すべきだし、現在の提案をこの点から見直すべきです。
広島県教委が高校再編基準を中山間地域の学校に配慮したものに変更しました。
高校再編に関する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
10月19日、読売新聞は、県弁護士会が、性的指向による差別を許さないための施策の声明を出し、知事あての声明文を提出したと次のように報じました。
「性的少数者(LGBT)への理解増進法が6月に施行されたのを受けて、県弁護士会(松田訓明会長)は、各自治体に向け、性的指向による差別を許さないための施策を求める声明を出した。声明文では、ネット空間を中心にLGBTへの偏見が広がっていると指摘。基本的な知識が不足していることが原因とし、自治体が職員や住民に対して啓発活動を行うとともに、パートナーシップ宣誓制度など公的な制度を設けることで、『誰もが住みやすい地域社会をつくるべきだ』とした。18日、松田会長ら3人が県庁を訪ね、村岡知事宛ての声明文を藤田昭弘・環境生活部長に手渡した。県内19市町には12日に郵送したという。松田会長は『県内では、LGBTへの理解が進んでいないと感じる。行政は迅速族に対応してほしい』と話した。」と報じました。
県弁護士会の会長声明は以下の通りです。
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理解増進法の制定を受け、改めて、性の多様性を尊重し、LGBTsの人権を擁護する地域社会の実現を求める会長声明
2023/10/12
山口県弁護士会は、理解増進法の制定を受けて、改めて、山口県及び県内全自治体に対して、性の多様性を尊重し、LGBTsにとっても住みやすい地域社会を実現するべく次の施策の実施を求める。
1.各自治体の選挙、教育、福祉、医療、雇用、被害者支援その他の行政活動において、議会の議員、自治体の職員及び自治体内の住民に対して教育・啓発活動を行って理解促進に努めるとともに、性自認及び性的指向による差別を許さないための諸施策を講じること
2.各自治体において、いわゆる同性パートナーシップ認証制度の導入を進めるとともに、各自治体の行政サービスのうちでLGBTsとそのパートナーを含む家族に適用可能なものを平等に提供すること
当会はこれまで、性的少数者(なお、多様な性のうち、割合として少数の側となる人々を総称する呼び方は様々あるが、以下、「LGBTs」と呼ぶ。)の人権擁護の観点から、性的指向及び性自認に基づく差別を含め、あらゆる差別や不利益取扱いを社会からなくし、個人が尊厳を持って生きることができる社会を実現するべく、取組みを進めてきた。
また、当会は、2021年(令和3年)5月31日には「民法・戸籍法等の婚姻等に関する諸規定の速やかな改正を求めるとともに地方自治体における同性パートナーシップ制度の制定を推進する会長声明」、2023年(令和5年)3月30日に「内閣総理大臣秘書官による性的少数者に対する差別発言に抗議し、改めて、法令上の性別が同じ者の婚姻を可能とする早期の法律改正を求めるとともに、地方自治体における同性パートナーシップ制度の制定を推進する会長声明」をそれぞれ発出し、これらを山口県及び県内全自治体にも送付した。
当会が所属する中国地方弁護士会連合会においても、当会の発議により、2021年(令和3年)11月26日に開催された中国地方弁護士大会にて「性の多様性を尊重し、LGBTsの人権を擁護する地域社会の実現と法的整備を求める決議」がなされ、中国地方5県及び5県内の全自治体に要請がなされた。
さらに、当会は、本年5月5日に山口市で開催された「山口レインボープライド」というLGBTsの理解者(アライ)を増やし、山口県内外のLGBTsが暮らしやすい地域を目指すためのイベントについて後援し、会長等がパレード行進にも参加し、本課題の重要性を市民の前でアピールした。
このような状況の中、本年6月23日、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(以下、「理解増進法」)が施行された。
理解増進法は、第3条において、LGBTsが基本的人権を享有する個人として尊重されるという人として当然の理念及びLGBTsに関する国民の理解の増進に関する施策が「不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資すること」との基本理念を定めている。そして、同法第5条には、地方自治体の役割として「地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。」との規定が、同法第10条1項では「国及び地方公共団体は、前条の研究の進捗状況を踏まえつつ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が」「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する知識の着実な普及、各般の問題に対応するための相談体制の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。」との規定が設けられた。これらはまさに当会が求めてきた自治体の役割が明確に立法されたものといえる。
しかし、今年の内閣総理大臣秘書官発言以来、特にインターネット空間を中心にLGBTsの人権を無視した差別や偏見に基づく声が広がり続けている。LGBTsについての基本的な知識や理解がないことが原因であり、理解増進法の基本理念とは真反対の動きといえる。
当会としては、これらの声におされて、山口県及び県内の各自治体において、理解増進法に基づく施策策定の歩みが止まることを非常に懸念している。
以上より、改めて、山口県及び県内の全自治体において、LGBTsの個人の尊厳を守るため、人権擁護のためにも各施策の策定を積極的に推進することを強く求めるものである。
2023年(令和5年) 10月12日
山 口 県 弁 護 士 会
会 長 松田 訓明
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私は、6月県議会で、パートナーシップ宣誓制度を導入すべきと質問しました。
藤田環境生活部長は「パートナーシップ宣誓制度の創設については、創設するかどうかを含め、まずは、ワーキンググループにおいて、検討していきたい」と答えました。
現在、パートナーシップ宣誓制度のある人口カバー率は7割を超えました。
県内では、宇部市に続いて山口市でも制度の検討が始まっています。
都道府県単位では、青森県、秋田県、茨木県、群馬県、栃木県、東京都、富山県、長野県、岐阜県、静岡県、三重県、大阪府、鳥取県、島根県、福岡県、佐賀県の16府県で制度が導入されています。
私は、引き続き、山口県でパートナーシップ宣誓制度が一日も早く創設されるように、必要な発言を行っていきたいと思います。
10月14日の読売新聞は、JR美祢線の利用促進策検討へ向けて「JR美祢線利用促進協議会」に作業部会を設置すると次のように報じました。
「県や美祢、長門、山陽小野田市などでつくる『JR美祢線利用促進協議会』(会長=篠田洋司・美祢市議)は13日、美祢市で臨時総会を開き、運休が続く美祢線の復旧後を見据え、作業部会を設置して利用促進策を検討していくことを決めた。復旧の見通しが立たない中、行政側から利用促進策を示すことで早期復旧につなげたい考えだ。美祢線は6月30日~7月1日の記録的な大前に伴う厚狭川の氾濫で鉄橋の崩落といった深刻な被害を受け、全線不通となっている。JR西日本によると、被災地点は計80か所。県や沿線自治体はJR西に早期復旧を要望しているが、JR西は復旧の可否について明言していない。運休によって協議会の事業計画を変更することが必要になったため、臨時総会を開いた。村岡知事は冒頭、復旧に向けて厚狭川の改修に重点的に取り組む姿勢を強調。その上で『実効性のある利用促進策の検討をスピード感を持って進めていくことが必要だ』と述べました。この後、作業部会の設置などが承認された。協議会事務局の美祢市地域振興課によると、3市やJR西、公共交通に詳しい有識者らで構成する方針で、篠田市長は終了後、『運休が続くことで住民が感じている不安感を払拭するため、協議会としてやるべきことをやっていく』と語った。美祢線は利用者数の減少に伴う慢性的な支出超過が問題となっており、2019~21年度平均は年間4億6000万円の赤字だった。1924年(大正13年)に全面開通し、来年は開通100周年にあたるが、協議会は運休の影響で計画していた記念イベントを中止することも確認した。」
私は、9月26日、一般質問で登壇し、JR美祢線の早期復旧について質しました。
京牟礼観光スポーツ文化部長は「(JR美祢線利用促進)協議会の中に新たな検討チームを設ける」と答弁しました。
この「新たな検討チーム」が、この報道にある「作業部会」となりました。
一般質問を行った議員として、JR美祢線利用促進協議会の中で、新たな作業部会が設置されたことを評価したいと思います。
引き続き、美祢線の早期復旧に向けて、必要な発言を続けていきたいと思います。
この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。
昨日の中国新聞は、中間貯蔵施設に対する県内19自治体首長アンケートの結果が公表され、次のように報じていました。
「中国電力が原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設を山口県上関町で検討していることを巡り、山口県内の全19市町のトップに賛否を尋ねたところ、『どちらでもない』『分からない』が9割を占め、『賛成』が上関町だけだったことが21日、中国新聞の調べで分かった。岩国市は『どちらかというと反対』と答えた。8月に突如浮上した計画に対して、周辺自治体を中心に、情報不足などから賛否のスタンスを明確にしていくトップの苦悩がにじむ。調査は今月初旬から中旬、19市町の首長を対象に実施。調査自体に無回答だった下関市を除く18市町から回答を得た。回答者のうち、『賛成』は上関町で、理由(選択式、複数回答)は『自治体の財政が安定する』『施設の安全性が一定に担保されている』『経済波及効果がある』とした。『どちらかというと反対』は岩国市のみで『農林水産業や観光、移住への影響を懸念』『電力会社の説明が不足』『国の説明が不足』を理由に選んだ。『どちらかと言うと賛成』『反対』とした市町はなかった。16市町(約89%)は『どちらでもない』『分からない』と賛否を明確にしなかった。『情報量が少ない』『国や電力会社から説明がなく判断しかねる』などの声があった。建設計画を巡る意思決定の在り方について選択式で尋ねたところ、『周辺自治体の意見を反映させるべき』が6市町(約33%)、『山口県も意思決定に加わるべき』が1市(約6%)。『その他』を選んだ市町は、計画が調査段階にあることなどを理由に『具体的に答える状況にない』などとした。中電は8月、中間貯蔵施設の建設を関西電力とともに検討し、上関町で調査に乗り出すと表明。同町は国の交付金による財政安定などを理由に調査受入れを決めた。中電が調査で『適地』と判断した場合、同町はあらためて建設を進めるかどうかを決める方針だ。」
中間貯蔵施設「賛成」は上関町だけというのは、驚きでした。
注目すべきは、「どちらかというと反対」とした岩国市の理由です。
「農林水産業や観光、移住への影響を懸念」これを岩国市長は反対の理由にあげました。
一方、上関町長は、賛成の理由に「経済波及効果がある」としたことです。
上関町でも、私が訪ねた青森県六ケ所村でもむつ市でも人口が減少しています。
これまで原発施設に関する交付金を交付されても、人口減少に歯止めがかからなかった原発に依存してきた自治体が、これからも原発の交付金に頼る方向しか選択できないのは残念です。
対馬市長は、岩国市長同様に、原発施設による交付金よりも「農林水産業や観光」などへの影響を考慮して原発施設誘致を拒否したのです。
昨日、上関町で、脱原発デー県民集会が行われ、講師の「はんげんぱつ新聞編集長」である末田一秀さんが、むつ市の中間貯蔵施設であるリサイクル燃料貯蔵(株)の従業員は88人と言われていました。
私は、この集会に参加し、デモ行進にも参加しました。
昨日、上関町で行われた脱原発デー山口県民集会のデモ行進の様子 出発前に撮影しました。右端が私
原発に頼らない地方自治を選択する方が、持続可能性が維持されると思います。
また、末田さんは、2000㌧Uの中間貯蔵施設規模では、「広島原爆の6~8万発分の死の灰」が貯蔵されることになると話しました。
上関町長は、「施設の安全性が一定に担保されている」と賛成理由を述べましたが、ならば、福井県や青森県知事が、繰り返し、当県を使用済み核燃料の最終処分地にすることがないようにと言うのでしょうか。やはり危険性が排除できないからです。
六ケ所サイクル施設を見学しました。近くに、米軍三沢基地があることから、施設を分厚いコンクリートで覆っているとの説明がありました。
上関町の近くにも米軍岩国基地があります。万が一の危険は、十分に考えて原発施設を誘致すべきかどうか考えるべきです。
上関町長は、8月の臨時議会の際に、あくまでも調査を受け入れた段階で、施設の賛否を述べたのではないという趣旨の発言をしています。
にも関わらず、中国新聞のアンケートに「賛成」としたことに対する上関町長の説明をお聞きしたいと思います。
産業・観光振興にはむしろ逆行し、重大な危険性がある、使用済み核燃料の中間貯蔵施設は山口県上関町に誘致すべきではありません。
18日、青森県庁を訪ねた後に、日本共産党青森県議団控室に立ち寄りました。
その際に、小山内孝著「六ケ所村核燃料サイクルの今」を購入し、移動中の交通機関の中で読了しました。
筆者の小山内さんは、青森県立高校の理科教員をされていた経験もおありのようです。専門用語の解説が丁寧で、分かりやすい記述がされていました。原子力政策を理解する上でバイブルになる本だと思います。
小山内さんの結論が「はじめに」で明確にされています。
「世界は10ほどの大きなプレートから成っています。そのなかで島弧日本列島は、4つのプレートで成り立ち、そのきしみ合いで誕生しました。しかもそのプレートは、年間約7~8センチも移動しています。北は亜寒帯・南は亜熱帯に位置する日本列島は、地震や火山噴火が頻発する世界でも危険な災害列島です。また、気候上も、ヒマラヤ山脈に端を発し、モンスーン地帯となり、現在は、地球温暖化の影響による『爆弾低気圧』と呼ばれる風速50メートル以上の台風と大雨や大雪による大災害列島です。原子力発電、再処理工場、核燃料サイクルなどをおこなうところではありません。リニア新幹線を走らせるところでもありません。また、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)を処分する地層もありません。」
まず、六ケ所村近くの活断層についてです。
小山内さんは、次のように書いています。
「六ケ所村を含む下北半島の東方沖の太平洋の海底には、活動が否定できないものとした大陸棚外外縁断層が100キロメートル近く南北に走っています。この活断層は、池田安隆『下北半島沖の大陸外縁断層』(科学 82巻6号)など、多くの科学者が活断層と考えています。活断層研究会編『日本の活断層ー分布図と資料』(1980年2月/東京大学出版会)にも掲載されています。文部科学省の検定教科書(基礎地学)では、活断層は、『最近数万年間に繰り返し活動していた根拠があり、今後も活動性が高い断層』としています。原子力規制委員会が、2006年改訂指針において、耐震設計上考慮する活断層は、後期更新世以降(12~13万年以降)のことです。それは、最近12~13万年間活動していない証拠がなければ、活断層として考慮することを求めているのです。この活断層は、高さ200メートル以上も東方に傾斜しています。もし、この活断層が動くとM9に近い大地震となります。日本原燃は、この活断層を認めると、再処理工場や高レベル放射性廃棄物等の施設の耐震設計ができなくなるので認めていません。」
「図は、日本原燃サービス(株)の『内部資料』の『再処理施設の配置図』の部分です。やや斜めに引いてある縦の日本線は、施設を通る活断層を表しています。東側f-1、西側f-2断層で、断層上に施設があることを明確に示しています。はじめからとても再処理工場を建設すべき所ではないのです。その後の県議会に提示された図ではなくなっています。」
次に、高レベル廃棄物についてです。
小山内さんは、次のように書いています。
「当面問題になっているのは、フランスとイギリスで再処理され、搬入されている高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)です。現在、フランス、イギリス両国で再処理された使用済み核燃料は、1万228体あり、今後は約1万380体になるといわれています。貯蔵は、図ー『高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の貯蔵』のようになっています。ガラス固化体の1本あたりの重さは5000キログラムで、2・5キロワット程度の熱を持ち、キャニスター湿度は200度から280度です。中心湿度は400度もあります。これが9本ずつ筒状に縦に並んでいて、外気によって冷却されています。外気温が30度を超えると、90度近い熱風が吹き出します。施設は外気温+50度~55度で設計されています。再処理工場近くに、活断層があり、通風菅が数ミリ歪んだだけで、ステンレス容器のキャニスターは崩壊し、外気に高レベル放射性廃棄物が放出されます。思っただけでゾ―ッとします。フランク・フォンヒッペル氏(核物理学者、米国プリンストン大学公共・国際問題教授。非政府団体『国際核分裂性物質パネル』共同議長)は、事故がなくても50年位で危険な状態になると言っています。また、核物理学者の高木仁三郎氏もステンレスからできている容器キャニスターは、粒界応力腐食割れ(IGCC)を起こし、耐用年数は極めて短いと言っています。すぐにでもキャスク容器に入れ替えるべきです。」
「3・11福島事故以来、低レベル放射性廃棄物でさえ受け入れる所がないのに、高レベル放射性廃棄物に至っては、スタートの処分地さえできないままに、50年を経過してしまうことが確実です。六ケ所が高レベル放射性廃棄物の置きっ放しになるのは必然です。高レベル放射性廃棄物を受け入れる自治体などあるとは考えられません。村民も県民もキャスクに入れ直して、搬出を迫る時です。」
小山内さんは、むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設については、次のように言及しています。
「現在むつ市はリサイクル核燃料貯蔵施設(RFS)として、事業開始を待っています。事業開始時期を、これまで2018年後半としていたものを2021年と修正し、再処理工場が操業する見通しがないまま、規制委員会は認可しようとしています。が、六ケ所再処理工場では必要がないので、搬入されるとむつに永久貯蔵されます。使用済み燃料は各原発サイトに貯蔵すべきです。」
2014年に山口大学名誉教授である増山博行さんが「日本の科学者」で発表された「上関原発計画の現段階と諸問題」には、上関原発の活断層について次のようにあります。
「上関町長島の陸域には活断層の露頭は報告されていないが、図で示したように予定地の数キロメートル西の海域を含め、海底には多数の活断層が見つかっている。これらの活断層は、西日本に特有な東北ー南西方向のリニアメント(棒状模様)を示す。海底活断層の延長線上には安芸灘断層群があり、北側には岩国断層帯、南側には伊予灘北西断層帯、中央構造線断層がある。1㎝/年で東進するユーラシアプレートに、1年あたり4㎝で北西に進むフィリピン海プレートが沈み込む影響で、大陸プレート内部で地盤のズレが生じることになる。プレート境界型巨大地震に比べると地震の規模は小さいが、原発敷地の近辺、直下で動くと、甚大な被害が懸念される。図に示した長島周辺にある、F-1、F-3、F-4、F-5の四つの断層帯が個別に活動するとして中国電力は基準地震動を算定した。しかし、素人目にも数多くの活断層が無関係であるとはとうていに読めない。原子力安全保安院の地盤耐震意見聴取会でも、専門家からは中国電力が別物と区別した断層の連続性や連動性、さらには岩国断層などの大きな活断層と関わりを指摘されており、基準地震動の見直しは必須と思われる。」
中間貯蔵施設を建設しようとする長島周辺に複数の活断層が存在しています。建設ありきではなく、周辺住民は県民の命を最優先した活断層の調査が必要です。
活断層の存在が明らかなら、中間貯蔵施設の建設は行うべきではありません。
現在、六ケ所リサイクル施設内に、高レベル放射性廃棄物が大量に保管されていることへの危険が存在することと同時に、六ケ所再処理工場が稼働すれば、更に大量の新たな高レベル放射性廃棄物が発生します。これら高レベル放射性廃棄物を長期的に埋蔵する場所が決まっていない以上、小山内さんの指摘の妥当性は高まっています。
小山内さんのむつ中間貯蔵施設に対する指摘も重大です。
むつに搬入された核燃料廃棄物は、「永久保存になる」のなら、上関町の中間貯蔵施設に搬入された核燃料廃棄物だけが、永久保存にならないとは言えないのではないでしょうか。
核燃料サイクルシステムは、あらゆる面で破綻しています。
破綻しているシステムを破綻していないとして、中間貯蔵だけを進めても、中間が永久になることは必然だと、青森県の各原発関連施設を見学し、小山内さんの著作を読み痛感する私がいます。