月刊「保育情報」No.513は、保育料等の「無償化」の一方、補助対象から外れる副食費について地方自治体の補助が広がる実態を次のように報じています。
「『無償化』対象から外れ、新たに実費徴収化される2号認定こどもの副食(材)費については、徴収義務が付加される保育所にのみ責任を押し付ける問題点等を指摘してきました。この課題を解消するためにも、子どもに平等で豊かな食を保障する観点から、自治体が独自補助事業を創設し、副食(材)費を無償ないし軽減することが求められています。徐々にその動きが広まっているようです。」
全国民間保育園経営研究懇話会のホームページは、保育園等の副食費への自治体の対応について、7月31日付けの新着情報で以下のように報じています。
「国は、各施設が副食材費を実費徴収すると定めました。これに対し、独自の対策を検討している自治体も出てきました。兵庫県加西市では、保育所・認定こども園等で3~5歳児の副食費を実費徴収せず無料にします。明石市でも保育所・認定こども園の3~5歳児の副食費について、『明石市独自の補助を行い、無償化する』方針が示されています。県レベルでは、秋田県が市町村を実施主体とする、県の副食費助成事業を創設します。」
秋田県では、6月県議会に副食費助成事業を提出しています。
秋田県の資料によると、保育所(2号認定)の3歳~5歳児であり、世帯年収360万以上の子どもの副食費は、これまで保育料に含まれていましたが、「無償化」後、月額4500円実費徴収となります。
また、幼稚園(1号認定)の3歳~5歳児であり、世帯年収の360万円以下の子どもの副食費は、これまで実費徴収でしたが、「無償化」後、全額無償化となります。
秋田県は、県2分の1、市町2分の1の負担割合で、副食費助成制度を創設しました。
対象は、保育所(2号認定)の3歳~5歳児であり、世帯年収360万円以上の子どもの副食費を月4500円を上限に補助するものです。
幼稚園(1号認定)においても、3歳~5歳児であり、世帯年収360万円以上の子どもの副食費を保育園同様に補助するものです。
山口県内で、同様の補助を行う自治体の有無について情報は得ていません。
また、秋田県以外の都道府県で、同様の補助を行う自治体の有無についての情報は得ていません。
しかしながら、子育て日本一を標榜する山口県は秋田県と同様の制度を創設すべきです。
この問題は、引き続き、県内や全国の状況を注視し、しっかり調査を行いながら、県政に必要な発言を行う決意です。
この問題に関する情報やご意見を藤本までお寄せ下さい。
今朝の山口新聞は、防衛省のイージス・アショアの再調査について次のように報じました。
「防衛省は、今月中にも業者の選定手続きを開始する予定。ずさんな調査で批判を浴びた反省から『スピードよりも正確性を重視』(同省関係者)し、慎重に進める。再調査では、新屋演習場を含め東北地方の20カ所の実地測定などを行う。むつみ演習場についても、標高データのずれが指摘された周辺の高台を実測する。」
防衛省が住民説明会のために作成した今年5月「各種調査の結果と防衛省の検討結果について」と題する資料を基に、防衛省の再調査の問題点を指摘したいと思います。
第一は、西台の標高問題です。防衛省の資料では、69ページです。
本ブログでも紹介したように、防衛省の資料では、576㍍となっています。
しかし、昨年8月の防衛省資料では、571㍍と明記していました。
防衛省はグーグルアースというソフトで標高を計算していましたが、国土地理院のデータは、574㍍となっています。
防衛省は、西台については実測を行う再調査を行うと今朝の山口新聞は報じています。
防衛省のむつみ演習場の再調査が西台の標高の実測だけでは極めて不十分です。
防衛省が再調査しなければならないと私が考える第一の問題は、地下水についてです。
防衛省の資料では、36ページに関わる点です。
7月27日に行われた学術シンポの中で、君波山口大学名誉教授の指摘を本ブログでも紹介しましたが再度紹介します。
「東台の下の地下水を北から南に流しているが、間違いだろう、逆向きの南から北が正解だと思う。」不透水層について「このエリアでボーリング調査がされていないのなら、なぜ、不透水層と言えるのか」
防衛省の資料の地下水の流れの矢印は「イメージ」とも書いているが、イメージでも、分からないことは書くべきではなく、防衛省は、改めて地下水の調査をやり直す必要があると思います。不透水層の有無についても防衛省は再調査すべきです。
防衛省は結論として「周辺の溜池には、地下水(演習場内の地中に浸透した雨水)が流れていないことが分かりました。」としていますが、君波先生は、「ボーリングが基盤まで到達していない」と指摘しています。防衛省は、ボーリング再調査を行うべきです。
防衛省が再調査すべき第二の問題は、電波環境調査についてです。
防衛省の資料は、7ページです。
防衛省の資料では、「電波による周辺への影響はないことが分かりました。」と結論づけています。
しかし、同じページの資料にあるように、レーダーは「中SAMレーダーによる実測値は、電波法令に基づく机上数値を大きく下回りました。」と防衛省が認めている通り、実際に設置される予定のLMSSRのレーダーをもとにした結果ではないのです。
この点は、週刊新潮に掲載された軍事アナリスト豊田穣士さんの指摘を本ブログで紹介しましたが、再度紹介します。
豊田さんは、LMSSRが製造中で完成は約5年後だろうと指摘した上で、「今回使用した中SAM用レーダーの探知距離は、一説によると数百キロ。一方、陸上イージス用のレーダーはその約10倍、数千キロ先の目標を探知できるとされている。」レーダー技術に詳しい専門家によれば『陸上イージス用レーダーの出力は、調査で使用した中SAM用レーダーの100倍は強いという。』」と書いています。
更に、豊田さんは「防衛省は、実際に配備されるレーダーで調査せず、言い換えれば、実際に使用される電波の影響を現地で計測せずに『理論値』と『机上の計算』をもって『LMSSRの電波は安全』である旨、宣言しているのである」と指摘しています。
防衛省は、中SAMレーダーを基に行った電波環境調査を実測調査とし、「電波による周辺への影響はないことが分かりました。」と結論づけましたが、この調査結果では、到底住民の理解を得ることは出来ません。
防衛省は、電波環境調査についても再調査すべきです。
防衛省の陸上自衛隊むつみ演習場での再調査は、西台の標高だけで終わりにさせてはなりません。
以上指摘したように、地下水や電波に関しても再調査をすべきです。
私は、来週行われる日本共産党中国ブロック主催の国会交渉に参加する予定です。
イージス・アショアの問題も取り上げる予定です。防衛省の担当者に再調査項目を増やすよう直接質問していきたいと思います。
イージス・アショアの問題について、引き続き、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
NHKETV100分DE名著「歎異抄」の講師を務めた相愛大学教授の釈徹宗さんは、私と同じ浄土真宗本願寺派の住職でもあり、最近の著作は、購入し、目を通す努力をしているところです。
釈さんの新著が上梓されました。題名は「みんな、忙しすぎませんかね?しんどい時は仏教で考える。」
なんと、お笑いコンビ「笑い飯」の哲夫さんとの共著です。
笑い飯・哲夫さんが仏教の本を出しておられるのは、どこかで聞いたことがあるのですが、直接、哲夫さんの発言や文章にふれるのは初めてでした。
哲夫さんは、関西学院大哲学科卒業という経歴もあり、深く仏教を理解して発言されていることがよく分かりました。
私は、この本の中で、釈さんの二つの文章が心に残りました。
一つは、「苦手なこと」をテーマにした一文です。
「苦手を克服した時に大きな喜びがあることは確かですが、注意しなければならないポイントがあります。先ほど『できないことができるようになる成功体験』と述べました。ここに落とし穴があります。成功体験というのは、しばしば私たちの判断を誤らせるのです。成功体験は、その背後にある無数の失敗体験を見えなくさせてしまいがちです。成功はいくつかの要素の組み合わせで、たまたま起こったひとつの現象に過ぎません。しかし、その成功体験が喜びと充実感をもたらすがために、私たちはそれを、『正しいこと』として心身に刻印してしまうのです。ですから、多様な側面が見えなくなります。何がいいたいかといえば、『苦手を克服しない人を軽蔑したり非難したりしない』ということです。苦手を克服した経験は、つい『あいつは苦手を克服する努力をしない』などと考えてしまいがちです。そして自分の成功体験を押しつけてしまうことになります。しかし、その成功体験は決して、『唯一の正しい道』ではないのです。苦手が克服できない人だってたくさんいます。自分が克服できたのだって、たまたまかもしれません。仏教を学んでいると、『自分が正しいと思った瞬間から見えなくなるもの』に気づくようになりますよ。仏教のすごいところです。そして現代人がよく学ばなければならないところです。」
私にとって、最近起きた最大の成功体験は、県議選で再選出来たことです。「有頂天」になっている自分を感じる時があります。
この体験は、私一人で出来たことではありません。多くの皆さんのまさにお陰です。
この文章を読んで、そんな、今だからこそ、周りの皆さんに温かく接する努力が必要だと感じました。
中国の古い言葉に「得意淡然、失意泰然」があります。
釈さんの言葉は、この四字熟語に通じるとも感じました。
釈さんの言葉は、子育てにも通じるものだと感じました。
二つ目は、「苦手な人」をテーマにした一文です。
「最初期の仏典『スッタニパータ』には、『四方のどこにでも赴き、害心あることなく、何でも得たもので満足し、諸々の苦難に堪えて、恐れることなく、犀の角のようにただ独りで歩め』とあります。私、この言葉、好きなんです。つらく苦しい時、この言葉を口にすると、ふつふつと体の奥底からわき上がってくるものがあります。インドでは、二つの比喩に『牛の角』を使い、一つの比喩に『犀の角』を使うことがあるようです。アフリカの犀と違って、インドの犀には角が一つですからね。仏教はとてもクールな宗教ですので、『つきつめれば、人は独りで生きて、独りで死んでいかなければならない』ことを強調します。このことを本当にしっかり自覚することができれば、むしろイヤな人や嫌いな人ともつき合えるわけです。だって、所詮独りだ、と理解しているのですから。この理解の上で、おつき合いするのです。ということは、好きな人とおつき合いする時も同じになってきます。どれほど好きな人がいても、『つきつめれば独り』なんですね。『愛別離苦』です。これも避けることはできません。」
私も50代半ばとなり、人生の後半戦を実感する日々です。
これからお会いする方は限られているだろうし、別れざるを得ない方が増えてくるだろうと思います。
そう思えば、一期一会、和顔愛語で日々を過ごしたいものだと思います。
人間、日々悩みます。判断に迫られ、最後に頼れるのは自分です。
自分が判断したことに、たして、どんな結果が出ても堂々として生きていきたいと思います。
「犀の角のようにただ独りで歩め」
ブッダのこの言葉に励まされるのは、釈さんだけではありません。
私自身、この言葉を口にするとふつふつとわき上がってくるものを感じます。
これからも釈先生から仏教について大いに学んでいきたいと思います。
釈徹宗さんや笑い飯・哲夫さん著作で感じたことがあればお教え下さい。
昨日のしんぶん赤旗「日刊紙」の「主張」は「イージス・アショア」を取り上げていました。
注目すべきは、昨年5月、米国のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が発表した「太平洋の盾 巨大なイージス艦としての日本」と題する論文から日本に「イージス・アショア」を配備しようとする米国の狙いが詳細に紹介されていることです。
日本共産党理論政治誌「前衛」9月号で、党中央政策委員会の山根隆志さんが、この論文を取り上げいくつかの指摘をしています。
今回の「主張」での指摘は、山根さんの論文の指摘と重複する部分もありますが、多くの問題点を取り上げています。
それでは、「主張」から、米国のシンクタンク戦略国際問題研究所の論文を引用した部分を紹介します。
「▽より強力な日本のイージス・アショアのレーダーは米本土を脅かすミサイルを前方で追跡する目的を果たすことができ、それによって米国は国土防衛のために高額なレーダーを太平洋地域で建設・運用する必要が軽減される。レーダーを共有することで恐らく10億ドルもの巨額な節約ができる。▽日本や北太平洋条約機構(NATO)のイージス・アショアはハワイやグアム、米東海岸といった死活的地域や戦略的な港湾・基地を防衛するために使用できる。」
「この論文は、イージス・アショアが迎撃ミサイルだけでなく長距離巡航ミサイルを搭載でき、発射前の北朝鮮のミサイルを地上で破壊できるとまで述べています。」
安倍政権は、17年12月にイージス・アショア導入の閣議決定を行いました。
当時の「中期防衛力整備計画」(14年度~18年度)にイージス・アショアは盛り込まれていませんでした。
上記引用部分の最初の▽は、トランプ政権の要求で、日本にイージス・アショアが配備されたことを裏付けるものです。
北朝鮮から見て、米軍のハワイ基地を結ぶ線上に、秋田市の陸上自衛隊新屋演習場が位置し、米軍のグアム基地を結ぶ線上にむつみ演習場があるとの指摘は、各方面からされています。
上記引用部分の二つ目の▽は、米軍主要基地を守るための日本のイージス・アショアではないかという疑問に答えるものです。
「前衛」9月号で山根隆志さんは、ロシアのラブロフ外相が「日本のイージス・アショアがINF条約に違反し、平和条約交渉を進める日ロ間の安全保障上の障害になっていると強調した。」と書いています。
上記引用部分の最後の箇所は、まさにロシアの憂慮が杞憂でないことを示しています。
「主張」は次の文章で始まります。
「米国製の陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入をめぐり、配備候補地の秋田県では、先の参議院選で選挙区の野党統一候補が勝利し、山口県でも町を挙げての反対運動が続くなど、『配備ノー』の地元の声は揺らぎません。」
岩屋防衛大臣は「できるだけ速やかに(導入を)実現する」と述べていますが、地元の意向を無視したイージス・アショアの強行は許されません。
総額6000億円の巨費を投じ、米国のミサイル防衛戦略に加担する危険極まりない配備計画は撤回するしかありません。
改めて、イージス・アショア配備に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
昨日の朝日新聞の「はぐくむ」という特集に「全ての新生児に難聴検査を」という記事が出ていました。
朝日新聞は「日本産婦人科医会によると、先天性の難聴の子は千人に一人の割合でいる。多くの病院や産院では、生後2日ごろから退院までの間に『新生児聴覚スクリーニング検査」と呼ばれる検査をして、難聴の可能性があるかどうか調べる。」と報じています。
新生児難聴スクリーニング検査について朝日新聞は、「海外では、検査を義務化し、保険で費用がまかなわれている。しかし、日本では義務ではなく保険も使えないため、保護者が5千円程度(全国平均)を負担して受けさせるかを決める。2016年度の実施率は87.6%。」と報じています。
新生児難聴検査の公費助成について朝日新聞は、「検査費の全額や一部を補助する自治体もある。厚生労働省の調査では、公費補助をしている自治体は、17年度時点で22・6%。東京都が今年度から3千円を上限に助成をはじめるなど広がっているが、今も全自治体の半数ほどとみられる。日本産婦人科医会の調べでは、公費補助がある地域の方が、ない地域よりも検査の実施率が約12ポイント高かった。」と報じました。
朝日新聞は、国の動きをこう報じています。
「厚生労働省と文科省のプロジェクトチームは6月、早期支援に向けた報告をまとめた。精密検査の実施機関や人工内耳・補聴器などの選択肢をまとめた手引を都道府県が作成▽0歳から相談・療育にあたる場所を都道府県に1か所以上設置などの対応を盛り込んだ。」と報じました。
朝日新聞の報道にある「難聴児の早期支援に向けた保険・医療・福祉・教育の連携プロジェクト会合」の日本産婦人科医会の報告書から山口県の実態を見て見ます。
2017年の都道府県別の医療機関での検査実施率は、山口県は、97%程度でした。(各県のデータはグラフで表示)
都道府県別での医療機関の検査可能率は山口県は、100%でした。
公費補助下での検査率は、山口県は、0%でした。ちなみに、鳥取県は33%、島根県は、25.6%、岡山県は91.9%、広島県は33.6%でした。
各都道府県での平均的な検査の自己負担額は、3000円を少し超える金額でした(各県のデータはグラフで表示)
都道府県における協議会の設置状況は、山口県は、2016年度以前に設置済みでした。
全ての市区町村で公費補助を実施あるいは実施予定かの調査では、山口県では未実施でした。ちなみに岡山県と四国全域が公費助成がある都道府県でした。
都道府県別での公費補助を行う市区町村の割合では、山口県は0.5%程度でした。(各県のデータはグラフで表示)
ちなみに、島根県、広島県が「公費補助を受けるため交渉中と回答した都道府県」とありました。
山口県では、軽度・中等度難聴児の補聴器購入費の助成は行われていますが、新生児聴覚スクリーニング検査への補助は行われていません。
全ての新生児に難聴検査が実施される体制を山口県として保障すべきです。
更に、厚生労働省と文部科学省のプロジェクトチームの報告にある「手引き等」などの作成についてです。
私が、各県のホームページを検索した結果、中国地方では、岡山県、島根県、鳥取県では、「手引き等」を作成しています。
山口県は、「手引き等」がホームページに掲載されていませんでした。
山口県が、「手引き等」を作成していないのなら、中国地方の他県同様、「手引き等」を作成すべきだと思います。
私は、厚生労働省と文部科学省のプロジェクトチームが報告をまとめたことは好機だと思います。
国として、新生児の難聴検査実施に責任を果たしていくことが求められていることは当然です。
その上で、山口県が、報告に基づいて、全ての新生児に難聴検査が実施されるよう公費助成を含む体制を構築していくことが強く求めれていると感じました。
この問題で、詳細な調査を進めながら、必要な発言を県行政に行っていきたいと思います。
全ての子どもたちに「新生児聴覚スクリーニング検査」が実施されるために皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
8月15日の賛同署名第一次締め切りまでに寄せられた賛同数は、約8400となったと16日付で、世話人一同が公表しました。
私も、長生炭鉱水非常を歴史に刻む会運営委員として声明に賛同する署名を行いました。
賛同署名は、8月31日まで継続されることになりました。
賛同いただける方は、ご協力をお願いいたします。
声明と呼びかけ人の方々は以下の通りです。
・・・
はじめに
私たちは、7月初め、日本政府が表明した、韓国に対する輸出規制に反対し、即時撤回を求めるものです。半導体製造が韓国経済にとってもつ重要な意義を思えば、この措置が韓国経済に致命的な打撃をあたえかねない、敵対的な行為であることは明らかです。
日本政府の措置が出された当初は、昨年の「徴用工」判決とその後の韓国政府の対応に対する報復であると受けとめられましたが、自由貿易の原則に反するとの批判が高まると、日本政府は安全保障上の信頼性が失われたためにとられた措置であると説明しはじめました。これに対して文在寅大統領は7月15日に、「南北関係の発展と朝鮮半島の平和のために力を尽くす韓国政府に対する重大な挑戦だ」とはげしく反論するにいたりました。
1、韓国は「敵」なのか
国と国のあいだには衝突もおこるし、不利益措置がとられることがあります。しかし、相手国のとった措置が気にいらないからといって、対抗措置をとれば、相手を刺激して、逆効果になる場合があります。
特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な配慮が必要になります。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした歴史があるからです。日本の圧力に「屈した」と見られれば、いかなる政権も、国民から見放されます。日本の報復が韓国の報復を招けば、その連鎖反応の結果は、泥沼です。両国のナショナリズムは、しばらくの間、収拾がつかなくなる可能性があります。このような事態に陥ることは、絶対に避けなければなりません。
すでに多くの指摘があるように、このたびの措置自身、日本が多大な恩恵を受けてきた自由貿易の原則に反するものですし、日本経済にも大きなマイナスになるものです。しかも来年は「東京オリンピック・パラリンピック」の年です。普通なら、周辺でごたごたが起きてほしくないと考えるのが主催国でしょう。それが、主催国自身が周辺と摩擦を引き起こしてどうするのでしょうか。
今回の措置で、両国関係はこじれるだけで、日本にとって得るものはまったくないという結果に終わるでしょう。問題の解決には、感情的でなく、冷静で合理的な対話以外にありえないのです。
思い出されるのは、安倍晋三総理が、本年初めの国会での施政方針演説で、中国、ロシアとの関係改善について述べ、北朝鮮についてさえ「相互不信の殻を破り」、「私自身が金正恩委員長と直接向き合い」、「あらゆるチャンスを逃すことなく」、交渉をしたいと述べた一方で、日韓関係については一言もふれなかったことです。まるで韓国を「相手にせず」という姿勢を誇示したようにみえました。そして、六月末の大阪でのG20の会議のさいには、出席した各国首脳と個別にも会談したのに、韓国の文在寅大統領だけは完全に無視し、立ち話さえもしなかったのです。その上でのこのたびの措置なのです。
これでは、まるで韓国を「敵」のように扱う措置になっていますが、とんでもない誤りです。韓国は、自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄をともに築いていく大切な隣人です。
2、日韓は未来志向のパートナー
1998年10月、金大中韓国大統領が来日しました。金大中大統領は、日本の国会で演説し、戦後の日本は議会制民主主義のもと、経済成長を遂げ、アジアへの援助国となると同時に、平和主義を守ってきた、と評価しました。そして日本国民には過去を直視し、歴史をおそれる勇気を、また韓国国民には、戦後大きく変わった日本の姿を評価し、ともに未来に向けて歩もうと呼びかけたのです。日本の国会議員たちも、大きく拍手してこの呼びかけに答えました。軍事政権に何度も殺されそうになった金大中氏を、戦後民主主義の中で育った日本の政治家や市民たちが支援し、救ったということもありました。また日本の多くの人々も、金大中氏が軍事政権の弾圧の中で信念を守り、民主主義のために戦ったことを知っていました。この相互の敬意が、小渕恵三首相と金大中大統領の「日韓パートナーシップ宣言」の基礎となったのです。
金大中大統領は、なお韓国の国民には日本に対する疑念と不信が強いけれど、日本が戦前の歴史を直視し、また戦後の憲法と民主主義を守って進むならば、ともに未来に向かうことは出来るだろうと大いなる希望を述べたのでした。そして、それまで韓国で禁じられていた日本の大衆文化の開放に踏み切ったのです。
3、日韓条約、請求権協定で問題は解決していない
元徴用工問題について、安倍政権は国際法、国際約束に違反していると繰り返し、述べています。それは1965年に締結された「日韓基本条約」とそれに基づいた「日韓請求権協定」のことを指しています。
日韓基本条約の第2条は、1910年の韓国併合条約の無効を宣言していますが、韓国と日本ではこの第2条の解釈が対立したままです。というのは、韓国側の解釈では、併合条約は本来無効であり、日本の植民地支配は韓国の同意に基づくものでなく、韓国民に強制されたものであったとなりますが、日本側の解釈では、併合条約は1948年の大韓民国の建国時までは有効であり、両国の合意により日本は韓国を併合したので、植民地支配に対する反省も、謝罪もおこなうつもりがない、ということになっているのです。
しかし、それから半世紀以上が経ち、日本政府も国民も、変わっていきました。植民地支配が韓国人に損害と苦痛をあたえたことを認め、それは謝罪し、反省すべきことだというのが、大方の日本国民の共通認識になりました。1995年の村山富市首相談話の歴史認識は、1998年の「日韓パートナーシップ宣言」、そして2002年の「日朝平壌宣言」の基礎になっています。この認識を基礎にして、2010年、韓国併合100年の菅直人首相談話をもとりいれて、日本政府が韓国と向き合うならば、現れてくる問題を協力して解決していくことができるはずです。
問題になっている元徴用工たちの訴訟は民事訴訟であり、被告は日本企業です。まずは被告企業が判決に対して、どう対応するかが問われるはずなのに、はじめから日本政府が飛び出してきたことで、事態を混乱させ、国対国の争いになってしまいました。元徴用工問題と同様な中国人強制連行・強制労働問題では1972年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、2000年花岡(鹿島建設和解)、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解がなされていますが、その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟みませんでした。
日韓基本条約・日韓請求権協定は両国関係の基礎として、存在していますから、尊重されるべきです。しかし、安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」では決してないのです。日本政府自身、一貫して個人による補償請求の権利を否定していません。この半世紀の間、サハリンの残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、植民地支配に起因する個人の被害に対して、日本政府は、工夫しながら補償に代わる措置も行ってきましたし、安倍政権が朴槿恵政権と2015年末に合意した「日韓慰安婦合意」(この評価は様々であり、また、すでに財団は解散していますが)も、韓国側の財団を通じて、日本政府が被害者個人に国費10億円を差し出した事例に他なりません。一方、韓国も、盧武鉉政権時代、植民地被害者に対し法律を制定して個人への補償を行っています。こうした事例を踏まえるならば、議論し、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だと思います。
現在、仲裁委員会の設置をめぐって「対立」していますが、日韓請求権協定第3条にいう仲裁委員会による解決に最初に着目したのは、2011年8月の「慰安婦問題」に関する韓国憲法裁判所の決定でした。その時は、日本側は仲裁委員会の設置に応じていません。こうした経緯を踏まえて、解決のための誠実な対応が求められています。
おわりに
私たちは、日本政府が韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始することを求めるものです。
いまや1998年の「日韓パートナーシップ宣言」がひらいた日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。BTS(防弾少年団)など、K-POPの人気は圧倒的です。テレビの取材にこたえて、「(日本の)女子高生は韓国で生きている」と公然と語っています。300万人が日本から韓国へ旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです。
安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか。
2019年7月25日
呼びかけ人
<呼びかけ>(*は世話人) 2019年7月29日 現在78名
青木有加(弁護士)
秋林こずえ(同志社大学教授)
浅井基文(元外務省職員)
阿部浩己(明治学院大学教授)
庵逧由香(立命館大学教授)
石川亮太(立命館大学教員)
石坂浩一(立教大学教員)*
岩崎稔(東京外国語大学教授)
殷勇基(弁護士)
内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)*
内田雅敏(弁護士)*
内橋克人(評論家)
梅林宏道(ピースデポ特別顧問)
大沢真理(元東京大学教授)
太田修(同志社大学教授)
大森典子(弁護士)
岡田充(共同通信客員論説委員)*
岡本厚(元「世界」編集長)*
岡野八代(同志社大学教員)
荻野富士夫(小樽商科大学名誉教授)
小田川興(元朝日新聞ソウル支局長)
大貫康雄(元NHKヨーロッパ総局長)
勝守真(元秋田大学教員)
勝村誠 (立命館大学教授)
桂島宣弘(立命館大学名誉教授)
金子勝(慶応大学名誉教授)
我部政明(琉球大学教授)
鎌田慧(作家)
香山リカ(精神科医)
川上詩朗(弁護士)
川崎哲(ピースボート共同代表)
小林久公(強制動員真相究明ネットワーク事務局次長)
小林知子(福岡教育大学教員)
小森陽一(東京大学名誉教授)
在間秀和(弁護士)
佐川亜紀(詩人)
佐藤学(学習院大学特任教授)
佐藤学(沖縄国際大学教授)
佐藤久(翻訳家)
佐野通夫(こども教育宝仙大学教員)
島袋純(琉球大学教授)
宋 基燦(立命館大学准教授)
高田健(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)
髙村竜平(秋田大学教育文化学部)
高橋哲哉(東京大学教授)
田島泰彦(早稲田大学非常勤講師、元上智大学教授)
田中宏(一橋大学名誉教授)*
高嶺朝一(琉球新報元社長)
谷口誠(元国連大使)
外村大(東京大学教授)
中島岳志(東京工業大学教授)
永田浩三(武蔵大学教授)
中野晃一(上智大学教授)
成田龍一(日本女子大学教授)
西谷修(哲学者)
波佐場清(立命館大学コリア研究センター上席研究員)
花房恵美子(関釜裁判支援の会)
花房敏雄(関釜裁判支援の会元事務局長)
羽場久美子(青山学院大学教授)
平野伸人(平和活動支援センター所長)
広渡清吾(東京大学名誉教授)
飛田雄一(神戸学生青年センター館長)
藤石貴代(新潟大学)
古川美佳(朝鮮美術文化研究者)
星川淳(作家・翻訳家)
星野英一(琉球大学名誉教授)
布袋敏博(早稲田大学教授・朝鮮文学研究)
前田哲男(評論家)
三浦まり(上智大学教授)
三島憲一(大阪大学名誉教授)
美根慶樹(元日朝国交正常化交渉日本政府代表)
宮内勝典(作家)
矢野秀喜(朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動事務局長)
山口二郎(法政大学教授)
山田貴夫(フェリス女学院大学・法政大学非常勤講師、ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク事務局)
山本晴太(弁護士)
和田春樹(東京大学名誉教授)*
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今朝のしんぶん赤旗「日刊紙」の「シリーズ日韓関係を考える」で、古賀茂明元経済産業省官僚は次のように語っています。
「安倍政権は、韓国の徴用工問題を『蒸し返す』ひどい国であり、文在寅大統領は、『反日』なので懲らしめるという考えで、国民の支持率も稼ぐという状況です。しかし、日本のマスコミはきちんと述べていませんが、米国のNBCも『文在寅は反日ではない。安倍政権が問題だ』という見方を示しています。世界は、ヒトラー、ムソリーニ、ヒロヒトが世界大戦で大きな誤りを犯したとみており、これはいくら年月がたっても変わりません。そのうえ安倍政権は歴史修正主義ではないかと疑われています。今回の一件はこれを増幅する危険な『発信』となりかねません。韓国は、歴史認識の問題で日本が居直り、徴用工問題で『報復』で韓国たたきに走り、経済圧力を強めていると主張しており、政界はその通りに受け取る可能性が高いのです。」
「経済分野で韓国に制裁を加えたとき、何が起きるか。韓国が日本製品はリスクがあると判断し、中国や台湾に最先端の情報を渡して材料、部品のグレードアップの関係を築く方向に動く。韓国との関係が途絶すると、日本の技術と経済は、深刻なダメージを受けます。ところが、世耕弘成経済産業相にはこういう『都合の悪い』情報は上がらず、政権は『韓国をたたきのめせ』となっています。日本の企業が困って、『何とかしてほしい』と言えば村八分にされかねません。政治的・経済的に、日本が間違った方向に進んでいても、正しい情報や意見が上がらず、突き進むしかないという状況になっており、そこにもっとも大きな問題があります。」
安倍政権の外交の行き詰まりが経済にも悪影響を及ぼしかねない事態との元経済産業省官僚の古賀さん指摘は重大です。
未来を見据えて、日韓の友好関係の再構築を強く望む一人です。
日韓関係に関する皆さんご意見をお聞かせ下さい。