昨日、山口県地方自治研究所主催の学習会に参加しました。
講師は、福島大学の今井教授。テーマは「『平成の大合併』とは何だったのか―合併検証の課題―」です。
今年3月総務省が「合併総括文書」を発表しました。それにはこう書かれています。
「各種アンケート等によれば、住民の反応としては、『合併して悪くなった』、『合併して住民サービスが良くなったとは思わない』、『良いとも悪いとも言えない』といった声が多く、『合併して良かった』という評価もあるが、相対的には合併に否定的な評価がなされている」
ついに、平成合併を推進してきた総本山が「否定的な評価」と言わざるを得ない状況に至っています。
財団法人山口県市町村振興協会は、07年3月に「山口県平成の大合併」なる本を発刊しました。
「発刊に寄せて」で二井知事は、「住民の最も身近な市町村の行財政基盤や政策能力を高めていきことが重要であり、市町村合併は、その最も有効な手段であると考え、推進に努めてまいりました。」と述べています。
市町村の行財政基盤の強化のために市町村合併が強行されましたが、合併によってむしろ行財政基盤は弱くなっているのが現状だと今井教授は話します。
その理由を今井教授は、二つの点で説明しました。第一は、合併前の財政規律の破綻です。様々な投資的経費を支出し、積立金現在高が減少し、地方債現在高が増加しているのが合併市町村の特徴だと話されます。第二は、合併15年後に訪れる財政破綻です。交付税の特例措置と合併特例債の償還が15年後にピークを迎えると説明します。
「夕張にならないために合併ではなく、合併することによって夕張のようになる」と今井教授は話します。
佐渡市では、15年後の予算規模を42.2%減と予測しています。
次に、「合併によって政策能力が高まった」のでしょうか。
今井教授は、①ぜん国の青年会議所、商工会議所、商工会、労組、農協、②宮城県内の市町村議に③福島県内の市町村議に合併について調査をしました。
①の調査で、合併によって効果はどこにあるかの中で、住民サービスはどうかという設問で、どちらかといえば「いいえ」、いいえが68%となっています。
②の調査で、合併による効果はどこにあるかの中で、住民サービスの高度化・多様化についてどちらかいえば効果はなかった、効果はなかったが、70%となっています。
また、役所と住民の関係が疎遠になったかどうかの設問で、合併自治体は、そう思う、どちらかといえばそう思うが86%となっています。
同じ設問で非合併自治体は23.8%に留まっています。
二井知事は、住民がサービスが低下してとたとえ思っても、職員の専門家は一定配置されたので、それは市町村合併の成果だと言われるのでしょうか。
役所は誰の為にあるのか、地方自治とは何かの根本が市町村合併で弱まったことは事実ではないでしょうか。
今井教授は、唯一、市町村合併の効果があったとすれば、国の財政削減だと話されます。
総務省は、「合併10年後経過以降した場合、年間1.8兆円の削減効果があるとしているが、地方財政計画の2%程度であると話されます。
2%は、地方財政計画の誤差の範囲で、地方財政計画の変動幅からすると、合併以外の要素のほうがはるかに大きい。
合併効果が10年後に得られたとしても、自治体にその恩恵はないと今井教授は断言されました。
私は平成の大合併が華やかになりだした時に県議になり、まさに議会の度に合併問題を議論してきました。
合併すれば「サービスは高く、負担は低く」なると答弁された当時の県庁の幹部の方々の顔も浮かびます。
県内の住民にとって市町村合併は福祉を向上させるものとなったのかどうか、県も率先して進めた合併だった訳ですから、県としても責任を持った総括が必要ではないでしょうか。
その事なしに、道州制の議論などできるはずがないと私は思います。
市町村合併について改めて、皆さんのご意見をお聞かせください。
「平成の大合併」とは何だったのかと話す今井教授
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