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望月衣塑子著「軍拡国家」は、軍産学(報)複合体制構築の脅威を明らかにした著作です。

 今朝のしんぶん赤旗日刊紙の読書欄は、前泊博盛沖縄国際大学教授が、望月衣塑子著「軍拡国家」について次の書評を寄せていました。
 「今年は(戦後)80年の節目だが、本書は政府が猛烈な勢いで進める軍拡による新たな(戦前)の準備状況をリアルな取材で紹介している。憲法は前文と9条で非武装と非戦を誓っている。だが、安倍晋三元首相は自衛隊を『わが軍』と公然と呼び、歴代政権が守ってきた武器輸出禁止3原則を解禁し、軍事国家へと大きく舵を切り、『台湾有事は日本有事』と危機をあおり、南西諸島への自衛隊配備強化を加速した。安倍・菅義偉政権に続く岸田文雄内閣は安保関連3文書、防衛費対GDP(国内総生産)1%枠の撤廃、5年間で43兆円の『異次元の軍拡』を閣議決定し、防衛装備移転3原則の改定で殺傷能力のある武器の完成品の輸出を可能にした。そして石破茂内閣はアジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設による集団的自衛権の拡大、核兵器の共有・配備という非核3原則の事実上の解禁に向けた議論を水面下で進めている。著者は10年前に『武器輸出と日本企業』で軍拡の動きに警鐘を鳴らした。それから10年、『軍拡』を加速する要人らの舞台裏の動きを、実名で告発している。事実をつかみ、証拠を押さえる。『裏どり』のためアポなし取材を試み、要人らに取材拒否に遭いながらも、突撃取材を繰り返す著者の取材手法に、読者は肝を冷やすであろう。『在野精神』を発揮した古き良き時代の新聞記者の取材活動の真骨頂をみる思いである。著者も昨年9月から内勤(デスク)となった。軍拡国家を形成する『軍産複合体』に、学術会議やメディアを組み込む『軍産学(報)』複合体制が構築され、軍拡の動きを伝える報道は姿を消しつつあると著者は指摘する。脅威である。軍拡による『新たな戦前』に歯止めをかける『政権に忖度しないメディア』をいかに取り戻すか。『同調圧力』『自壊するメディア』など著者のメディア論も併せて読み直したい。」
 私が、事務局長を務めるうべ憲法共同センターは、2018年4月8日、望月衣塑子さんを講師に学習会を宇部市内で行いました。
 その際に、望月さんに直接お会いして、パワフルな発言内容と親しみの持てる人柄に魅了されました。
 それ以来、可能な限り望月さん著作や出演された映像は聴視するようにしてきました。
 ブログで書いてきたように、私は、4月21日から沖縄県を視察しました。福岡空港に向かう24日の那覇空港の書店で望月さんの近著「軍拡国家」を手にし、飛行機と新幹線、電車の中で、この本を読みながら帰路につきました。
 この本で、一番感銘したのは、第4章「要塞化が進む南の島々」です。ブログに書いたように、私は、22日、宮古島の新設された自衛隊のミサイル基地を視察したばかりでしたので、望月さんの文章で頭の中が整理できました。
 特に「宮古島を訪ねて」の部分には、共感しました。
 私が視察した、宮古島駐屯地(千代田地区)には、沖縄防衛局は「弾薬庫はつくらない。」と住民に繰り返し説明をしてきました。「ミサイル基地はいらない宮古島住民連絡会」の清水早子さんは、駐屯地の発足式が行われた2019年3月26日、沖縄防衛局の広報担当者に、基地内の「古墳状のものは弾薬庫なのではないんですか」と尋ねます。広報官は「小さい方は保管庫だが、もう一つは誘導弾などの弾薬を詰め盛り土をした弾薬庫です」と認めたとこの本に書かれています。
 一連の経緯が2019年4月1日、東京新聞の朝刊1面に大きく掲載されました。
 望月さんは、本著で「弾薬がなければ、配備が予定されている最大800人規模のミサイル部隊は絵に描いた餅になる。防衛省が駐屯地から南東へ約15㎞離れた保良地区の採石場を用地として取得した。かつて旧日本軍の弾薬庫が置かれた場所だ。弾薬の島外撤去から半年後の19年10月から、3棟の弾薬庫を備えた新たな訓練場を建設しはじめた。」
 この時から5年以上経過した今年4月の状況は、千代田地区の弾薬庫にも弾薬が貯蔵され、保良地区の弾薬庫は2棟が完成し、残る1棟が建設中でした。
 千代田地区には、12式地対艦誘導弾を搭載できる重装車両がいくつも配備されている姿を遠くに見ることができました。
 望月さんは、「オフショア・コントロール」について書いています。
 望月さんは、海兵隊大佐だったトーマス・ハメス氏が12年に提唱した当たらアメリカの国防戦略の一つがオフショア・コントロールだと説明した上で、「オフショア・コントロール」について「東アジアで中国との緊張が高まった場合に、地政学上の利点を活かして中国の海上を封鎖、その上で経済的な消耗戦にもち込み、全面的な武力衝突を回避するというものだ」と指摘しています。
 望月さんは、2016年、防衛事務次官の西正典氏に自衛隊の南西シフトについて「日本を守るためと言っていますけれども、実は、ハメス氏の戦略に乗っかる形で自衛隊員をどんどん南西諸島に配備して、いざ有事が起これば結局は自衛隊員やその家族、そして島民の方々が犠牲になるだけではないでしょうか。」と質問したと書いています。
 望月さんが、2016年に防衛省幹部に行った質問の内容こそ、自衛隊の「南西シフト」の本質であることを気づかされました。
 望月さんの本書には、日本共産党の山添参議院の質問が取り上げられています。
 2023年6月1日に行われた参議院外交防衛委員会で、山添議員が、安保3文書の改定に向けて政府が設置した、国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議の第1回目の会議で、日本経済新聞社の喜多恒雄顧問が「長い間、日本は武器を輸出することを制限してきた。それが防衛企業の成長を妨げてきた。この制約をできる限り取り除くべきだ」と述べています。
 山添議員は、日本経済新聞社の喜多顧問の言葉を引用した後で「現在の防衛装備移転三原則とその運用方針では殺傷能力のある武器は輸出の対象から除外されている。それはなぜか」と当時の浜田防衛相に質しました。浜田大臣は、運用指針で輸出の対象は、救難、輸送、警戒、監視、掃海に該当する場合に限られていると説明した上で、「予断を持ってお答えすることは困難」と答えました。
 山添議員は、「いよいよ公然と殺傷能力のある兵器まで海外に売りさばこうとするなら、これは前回の参考人質疑でも指摘があった、死の商人国家への堕落と評価されるのも当然だ」と指摘しました。
 この「前回の参考人質疑」とは、武器取引反対ネットワークの杉原浩司代表が、2日前に行われた参院外交防衛委員会の参考人質疑で「平和国家から死の商人国家への堕落」と指摘したことを指しています。
 この一連のやり取りが、望月さんの本書で取り上げられています。
 そして、望月さんは、防衛装備移転三原則の撤廃を日本経済新聞社の顧問である喜多恒雄氏が求めていることに注目しているのです。
 この点が、赤旗の書評で前泊さんが「『軍産学(報)』複合体制が構築され、軍拡の動きを伝える報道は姿を消しつつあると著者は指摘する」としている部分です。
 望月さんは、本書の「おわりに」で、「この混沌とした世界に希望を持つのは難しいかもしれない。でも、平和を維持するためには歴史に学び、現在の状況を客観的に判断し、声をあげていくしかない」と書いています。
 これからも、望月さんの著作から声をあげていく勇気を学びたいと思います。望月さん、「軍拡国家」に声を上げるジャーナリストとして発言を続けてください。応援しています。
 この本を読まれた皆さん、感想をお聞かせください。

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