私は、今、帚木蓬生さんの「紫式部物語 香子 1」を読んでいます。
2日の毎日新聞は、帚木蓬生さんが、1月に福岡県内で行った本作に関する講演が記事としてまとめられています。
本書の特徴について次のように報じています。
「本書は紫式部が主人公。式部の幼少期から書き起こし、式部の生涯と『源氏物語』の創作過程を描く。作中作として『源氏~』を登場させ、自身の手による現代語訳を掲載。『紫式部の人生も、源氏物語も分かる一粒で二度おいしい』作品だ。これまでもさまざまな作家が『源氏~』の現代語訳に取り組んできたが、紫式部がいかにこの物語を描いたかは『誰も小説にしていない』ことから着想したという。」
私が、今、読んだところは、一度目の結婚相手が病死した所で、まだ、「源氏~」の執筆に至っていな場面です。これから、「源氏~」と式部の人生を重ねて楽しむことができることが楽しみでなりません。
帚木蓬生さんは、「源氏~」について次のように語ったと報じています。
「帚木は『源氏~』について『紫式部はこの物語で女性を描きたかったのだ』と語る。式部は学者の家系に生まれ、幼い頃から漢籍を始め、さまざまな書物を読んで育った。しかし、それまでの物語はほとんどが男性の手による男の物語だった。式部は女性の物語、その個々の姿、『あはれさ』を書きたかったのだと言う。江戸時代の国学者、本居宣長は『源氏~』は『もののあはれ』を描いたと指摘したが、その下にあるのは、物語の各所に出てくる『心細さ』『心うし(憂し)』であり、『式部は、心細く、心に憂いを抱えながら生きている女性たちの姿を書きたかったのだと思う』と語る。当時の女性たちはさまざまな制約の中で、どこか満たされない思いをいだいていたはずだとし、主人公の光源氏は『黒衣みたいなもので、(主役は)女性』と指摘。」
「源氏~」について、光源氏は「黒衣みたいなもの」で主役は女性との解釈を聞くのは私自身初めてです。
改めて、本書を読む視線が定まったように感じました。
1000年前の女性作家が、当時の女性たちの生き様を描き出した物語が「源氏~」なのですね。その作品を描いた式部も1000年前の息苦しさや制限を受けた女性だったのだという視点も本作では読み取ることができます。
私が、今、読んでいる部分でも、庶民も貴族も多くの命が病気などで簡単に奪われる中での生活だったことが分かります。藤原家でも多くの男子が亡くなる中での道長だったことも分かりました。
また、式部が最初に結婚した相手も遠方に赴任した際に亡くなってしまいました。式部に病弱な姉がいたことも分かりました。
1000年前の人々の暮らしは、今では考えられないような死と隣合わせのものだったことが分かります。
だからこそ貴族が、加持祈祷に熱心だったことも分かりました。
1000年前の庶民の暮らしぶりが見事に描かれた中で、式部と「源氏~」の世界が現代の私たちに鮮明に浮かびあがってくる本作に大いに期待しています。
大河ドラマ「光る君へ」を視聴しながら、本作を読み進めていきたいと思います。
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