上関原発を巡り、中国電力が、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」を訴えている裁判の第13回口頭弁論について、5月31日、しんぶん赤旗日刊紙は次のように報じました。
「山口県上関町に上関原発の建設を狙う中国電力が地元住民団体『上関原発を建てさせない祝島島民の会』に海上ボーリング調査を止めないよう求めた裁判の第13回口頭弁論が29日、山口地裁岩国支部で開かれました。中国電力がこの十数年間、新規制基準を踏まえて上関原発の設置許可申請の内容への補正などをしていないため、原子力規制委員会の審査会が開催されていないことが明らかになりました。審査会が十数年の長期にわたり開催されていない理由などに関し、島民の会側の申し立てを受けた裁判所が原子力規制委に審査内容の調査を依頼していました。報告集会で中村覚弁護団長は『中国電力はこの十数年、何もしていなかった。調査の正当性が失われ、権利の乱用がより鮮明に裏付けられた』と強調し、『中国電力が原発計画を進めていないことを示すもので、海上ボーリング調査の目的が、中間貯蔵施設建設に向けた活断層調査である可能性がより高くなった』と指摘しました。回答を受けた岩国支部(小川暁裁判長)はこの日の口頭弁論で、中国電に対し、海上ボーリング調査の手法、場所、上関原発における必要性、埋め立て工事前に実施する必要性を明らかにするよう求めました。」
私は、昨日までに、原子力規制委員会が山口地方裁判所岩国支部の調査委託書への回答文を入手しました。
回答内容は、以下の通りです。
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(質問1)
原子力規制委員会において、本件設置申請の審査会合が開催された事実はあるか。開催された事実がある場合は、その年月日及び審査内容。また開催された事実がない場合は、その理由は。
(回答)
上関原子力発電所に係る設置許可の申請(本件設置許可申請。平成21年12月18日付け)は、新規制基準の施行前(新規制基準の施行は生成25年7月8日)になされたものであり、新規制基準に係る規制要求を前提とするものではないことから、原子力規制委員会は、本件設置許可申請につき、新規制基準を踏まえた内容となるよう補正等がなされた後に具体的な審査を開始する取扱いとしているところ、現時点までに、申請者から所要の補正等はなされていないことから、本件設置許可申請に係る審査会合は開始されていない。
(質問2)
今後原子力規制委員会に置いて、本件設置申請の審査会が開催される予定、見通しはあるか。
(回答)
前記(1)のとおり、本件設置許可申請に係る審査会合の開催は、申請者より、当該申請が新規制基準を踏まえた内容となるよう補正等がなされることが前提となるところ、原子力規制委員会は、その時期等について承知しておらず、審査会合の予定ないし見通しについて述べることはできない。
(質問3)
現在制定されている新規制基準のもとで、既存原子力発電所の再稼働ではなく原子力発電所の新設である上関原子力発電所について、新規制基準への適合性の審査は可能なのか。
(回答)
本件設置許可申請に対し、原子力規制委員会が新規制基準への適合性審査を実施することは可能である。
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原子力規制委員会が、中国電が行っている上関原発について「所要の補正等はなされていないことから、本件設置許可申請に係る審査会合は開催されていない。」と回答したことは重要です。
中国電は、毎年度末に、山口県に、「埋め立てに関する工事の進ちょく状況」を報告しています。2024年3月末の工事進ちょく率は0%でした。
私は、現在、2025年3月末の進ちょく状況報告書について情報公開請求を行っています。現在、延長通知書が届き、6月16日までには公開される見通しです。
村岡知事が、「発電所本体の着工時期の見通しがつくまでは、埋め立て工事を施行しないこと」と中国電に要請していることも中国電が、埋立工事を進められない背景にあることは明らかです。
記事にあるように、中国電力は、上関原発について、新規制基準に基づく、原子力規制委員会との対応を何ら行っていないにも拘わらず、海上ボーリング調査を行うのはなぜでしょうか。
記事の中で、中村弁護士が発言しているように、「中間貯蔵施設建設のため」であるなら重大です。
弁護団は、着工のめどが立たない中で海の埋め立て権を基に中電が調査の正当性を主張するのは「権利の乱用」だと指摘してきました。今回の原子力規制委員会の回答は、中国電力の権利の乱用を裏付けるものとなりました。
一方、原子力規制委員会が、原子力発電所の新設である上関原発について、「新規制基準への適合性審査を実施することは可能」としてことも重要です。
昨年12月17日の中国新聞は、資源エネルギー庁の担当者が、同じ電力事業者の別の原発敷地内での建て替えを認めるが、建替え先に「上関は該当しない」と発言したと報じました。
この背景には、新しいエネルギー基本計画に、「廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力サイト内での次世代革新炉への建替えを対象」とあります。その後に「その他の開発などは、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく」とあります。
上関は、引用した前段部分の対象ではないが、後段部分に関して、検討していくこともあり得るということなのでしょうか。
原子力を最大限活用とした新しいエネルギー基本計画の問題点は、引き続き、大いに指摘していくべきだと再認識しました。
その上においても、中国電が、上関原発に関し、新規制基準が施行されて以降、12年間、審査会合が開催されていないことを原子力規制委員会が明らかにしたことの重要性は繰り返し指摘しておきたいと思います。
この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。
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