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第166回芥川賞受賞作砂川文次著「ブラックボックス」を読む

 18日のしんぶん赤旗日刊紙の「文化の話題」欄に、「ブラックボックス」で第166回芥川賞を受賞した砂川文次さんのインタビューが掲載されていました。
 記事を興味深く読み、今、砂川文次著「ブラックボックス」を読んでいます。
 しんぶん赤旗日刊紙に「ブラックボックス」が次のように解説されています。
 「物語の主人公は、交通量の多い都心で自転車便の配達をしているサクマ。急ぎの便ほど単価が高いため、速く走れて本数もこなせるサクマは稼ぎ頭です。しかし車にはね飛ばされても補償はなく、自己責任で放り出される過酷な労働現場。その日暮らしの繰り返し。サクマは、一瞬で全てを失う恐怖と、一生続けられる仕事ではないという不安や焦燥から逃げるように、ひたすら疾走します。」
 本作でサクマの焦燥感が次のように表現されています。
 「『ふざけんなよ!』と握りこぶしを挙げて声を荒らげたことに気づいたのは、実際にそのセリフを口に出してからだった。(中略)一度沸点に達すると、元に戻ることはない。それまで我慢できていたのに、一度決壊すると、それ以上耐えることができなくなってしまう。」
 「病気は、コロナに限らず怖くない。怖いのは、身体が動かなくなることだ。(中略)何が安全で何が危険なのか一つ一つ確かめる余裕など持ち合わせていない。」
 砂川さんは、サクマの怒りについて、インタビューで次のように応えています。
 「サクマの怒りは全方位に向けられているから、コロナ禍で自分の体を使って働いている人たちを『保護してあげないと』という言説にも結びついていているんですよ。保護の対象とされた側は、『そんな弱者じゃないぞ』って、尊厳を傷つけられたような気がするんじゃないかと思います」
 新自由主義の中で、コロナ禍でエッセンシャルワーカーと言われる方々の労働条件の劣悪さが顕在化してきました。
 「エッセンシャルワーカーに感謝の気持ち」を持つことばかりが強調されていますが、エッセンシャルワーカーの方々と他の労働者が共に生きていける社会を構築していくことの大切さを砂川さんの言葉から感じることが出来ます。
 しんぶん赤旗は、砂川さんの経歴について次のように紹介しています。
 「大学卒業後、6年間自衛隊に在籍しました。自衛官だった2016年、部隊の100キロ行軍訓練を描いた『市街戦』で文学界新人賞を受賞してデビュー。傭兵としてイラクに赴いた元自衛官を主人公に資本主義と戦争のからくりを喝破する『戦場のレビヤタン』、ロシア軍が北海道に上陸し、突然地上戦が始まる不条理を告発した『小隊』と、繰り返し戦争をテーマにしてきました。」
 砂川さんは、小説のテーマとして戦争を描く意味についてインタビューで次のように応えています。
 「戦争は第二次世界大戦以降もずっと続いていて、今この瞬間も起きています。たとえ国家間の戦争はなくても、格差や貧困、差別の下でゴールの見えない生活を続けていくのは苦しいだろうと思います。そこに立ち向かっていかなきゃ、という気持ちはあります」
 日本共産党規約第二条は、日本共産党の終局の目標を次のような規定しています。
 「人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会の実現をめざす。」
 砂川さんの「そこに立ち向かっていかなきゃ、という気持ちはあります」との言葉は、私の気持ちと共感するものがあることを感じることが出来ました。
 砂川さんは1990年生まれですから32歳。私の長男と7歳しか違いません。
 「ブラックボックス」に続き、若い砂川さんの作品から多くの事を学んでいきたいと思います。
 これからも砂川さんには、「戦争や格差や貧困や差別」を描き、「そこに立ち向かう」人々の姿を描く作品を出し続けていただきたいと思います。砂川さん第166回芥川賞受賞おめでとうございます。
 砂川作品を読んでこられた先輩諸氏の皆さん、砂川作品についての感想をお聞かせ下さい。

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