3月30日、信濃毎日新聞は、工藤真一論説委員の「考 ともに」で「長生炭鉱の遺骨」と題して、次の記事を掲載しました。
「瀬戸内海の周防灘に面する山口県宇部市の床波海岸。地元の人が『ピーヤ』と呼ぶコンクリートの太い円筒が2本、海面から突き出ている。かつて海底にあった長生炭鉱の排気・排水筒だ。太平洋戦争の開戦からおよそ2カ月を経た1942年2月3日、落盤による水没事故『水非常』が起きた。犠牲となった183人の大半、136人が朝鮮半島からの労働者だった。事故直後に坑口はふさがれ、80年余が過ぎる今も、遺骨は海底に埋まったままだ。先週末、現地でフィールドワークに同行した。遺骨の発掘に取り組む『長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会』の共同代表、井上洋子さん(74)が、九州や東京からの参加者に熱を込めて語る。『(見えない遺骨)は調査しないと政府が言うなら、私たちの手で、見えるようにする。骨の一片でも見つけて、政府を動かしたい』戦時下、日本が植民地支配した朝鮮半島から多くの労働者が国内各地の炭鉱や軍事施設の工事に動員された。日本と韓国は2004年の首脳会談を機に、日本政府が遺骨の返還に協力することを確認したが、調査したのは寺などにある『見える遺骨』だけだ。長生炭鉱では何もしていない。井上さんは天龍村で生まれ育った。戦時中、地元の平岡ダムの工事で朝鮮の人たちが過酷な労働を強いられたことを知ったのは、上京した大学時代。『朝鮮人強制連行の記録』(朴慶植著、1965年)を読み、衝撃を受けた。名古屋方面の軍需工場へ電力を送るため、国策として建設された水力発電用ダムだ。長野県内では松代大本営などに次いで多くの朝鮮人が動員された。本には『遺骨を風雨にさらしたままの平岡発電所工事場』と書かれていた。子どものころ遊んだあの山に骨があったかもしれないと、ずっと心に引っかかった。結婚して山口に住み、長生炭鉱の遺骨の発掘に取り組む今も、井上さんを駆り立てる力になっている。坑道が浅い危険な海底炭鉱として日本人の労働者から恐れられた長生炭鉱は、朝鮮人労働者が特に多かった。前年から漏水が起きていたが、安全を軽視したことが水非常につながる。その根に、植民地支配の差別と暴力があった。戦後長く事故は忘れ去られてきた。刻む会の発足は91年。犠牲者の名簿を頼りに韓国の遺族に手紙を送って関係を築き、20年余を費やして、追悼碑を海沿いの土地に建立する。朝鮮人と日本人の犠牲者全てをそこに刻んだ。遺骨の発掘を目標に掲げてはこなかったが、碑の除幕に立ち会った韓国の遺族の言葉に接し、方針を転じる。『遺骨を持ち帰るまで私たちは諦めない』。遺族の何よりの願いは遺骨の返還だった。政府はしかし、発掘調査の求めを突っぱね続けた。遺骨がどこにあるか特定できず、水没した坑道での調査は安全上の懸念があるとして『困難だ』と繰り返す。押し問答を重ねる間にも、遺族はさらに高齢になっていく。『政府が動くのを待っていては間に合わなくなる』。刻む会は昨年、自分たちで坑口を開けることを宣言した。クラウドファンディングで掘削の資金を集め、草やぶの地下5メートルに埋まっていた坑口を9月に掘り出す。水中探検家の伊左地佳孝さんが自ら協力を申し出て、潜水調査も試みた。水が濁り、崩れた構造物に阻まれて、事故現場の近くまでたどりつけていないが、あと一歩のところまで来ている。4月1日から4日間、再び潜水調査をする。韓国のダイバーも加わり、坑口とピーヤからも潜るという。政府が『できない』と決めてかかったことを、市民の力でここまで実際にやってきた。その熱意と行動は確実に政府を追い詰めている。国の戦争政策によって危険な労働現場に駆り立てられ、亡くなった人たちの遺骨を発掘し、返還するのは本来、政府が果たすべき責務だ。在日朝鮮・韓国人への差別はなお社会に根深く残り、排撃する言動がやまない。日本の植民地支配が朝鮮半島の人々の苦悩を強いた歴史に目を向けることは、この社会のあり方に向き合うことでもある。刻む会の取組は、そのことをこそ問うている。」
私は、4月にドイツのデュッセルドルフにあるナチス犠牲者を追悼する施設を訪ねました。自治体が、ナチスで犠牲になった人々の歴史を後世に残し、追悼する施設を運営しているということは、政府にその姿勢が鮮明である証左だと感じました。
一方、日本に目を転じると、記事にある通り「日本の植民地支配が朝鮮半島の人々に苦難を敷いた歴史に目を向け」ていないように感じます。
政府は、長生炭鉱の歴史に向き合い、遺骨収集に責任を果たしていただきたいと思います。
宇部市も山口県も政府にそのことを求め、自らの責任をどう発揮するかも考え実行していただきたいと思います。
私は、「刻む会」の運営委員の一人として県議会議員として、遺骨が遺族に返還できるよう、引き続き、力を尽くしたいと考えています。
長生炭鉱に対する皆さんの声をお聞かせください。
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