日本学術学会の会員任命拒否問題をめぐるイタリア学会からの声明につて、11月7日、毎日新聞専門編集委員の青野由利さんは「土記」でこう書いています。
「科学者と話す機会が多いせいか、議論や根拠が不明の主張を聞くと落ち着かない。ひとつひとつ、矛盾点や根拠を確かめたくなる。日本学術会議の会員任命拒否をめぐる菅義偉首相の答弁がまさにそれ。『多様性』の次は、『閉鎖的で既得権益のよう』と言い出したが、いったい会員にどんな権益が?『6人のうち加藤陽子先生以外は知らない』というのに、『私が判断した』ってどういうこと?頭がくらくらする。でも、ここまでのわけのわからない答弁が繰り返されるまでに至って、事の核心は別のところにあると思うようになってきた。きっかけは、この問題に対するイタリア学会の声明だ。『説明しないこと』こそが民主主義に反する権力の行使であり、国民を無力化する手法なのだという。実は、情報公開の制度は古代ローマ時代のイタリアで芽生えたのだそうだ。紀元前59年、執政官に就任したカエサルは、元老院の議事録を公開する制度を定めた。その結果、貴族の権力はそがれ、隠れた不正ができなくなった。民主主義への第一歩だという。それから2000年以上たった日本では、安倍政権下で文書が改ざん・廃棄され、情報が隠された。官房長官だった菅さんも『指摘は当たらない』と繰り返し、説明に背を向けてきた。声明が掲げる紀元前5世紀のアイスキュロスの戯曲『縛られたプロメテウス』は示唆に富む。プロメテウスは絶対君主ゼウスに逆らって天井の火を人類に与え、はりつけにされる。彼を連行した2人の名は『クラトス(権力)』と『ビアー(暴力)』。ピアーは劇中で一言も言葉を発しない。無言の暴力で他者を従わせるのが権力、という寓意だという。確かに『説明なしに』排除されることは、理由がわからないまま逮捕される恐ろしさに通じる。声明を起草したのはダンテ研究者の藤谷道夫さん。『学会として声明を出すのは初めてだが、学問の自由に抵触する問題にだまっていられなかった。一般の方にも最後まで読んでもらえ、知識も一緒に付くように考えた』古代ローマには将軍が思い上がらないよう、凱旋式で部下が罵詈雑言を浴びせる習わしがあったことなど、学ぶことは多い。声明の全体を読むと、学術や古典の息の長さ、人類共通の価値の普遍性が伝わってくる。それに比べ、『時の権力』は一時。国家や時間を超える学術に政治権力は介入してはならないと改めて思う。」
私は、政治学者・白井聡さんの講演会の資料で「イタリア学会の声明」を読みました。
「学問は、国家や時の権力を超越した真理の探究であり、人類に資するものである。与党に資するものだけを学問研究とみなすことは大きな誤りである。」
今、菅政権がしようとしているのは「与党に資するものだけを学問研究」とみなそうとしているとのイタリア学会の指摘を私たちは重く受け止めたいと思います。
菅政権は、「その指摘は当たらない」というなら、その理由を示すべきだと思います。
指摘は当たらないと言いながら、理由を述べない姿勢は、権力の濫用と言わなければならないと思います。
日本学術会議の政治介入問題を国民の一人として今一度、皆さんと一緒に考えたいと思います。
皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
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