書店で、私の敬愛する仏教学者である釈徹宗さんが講師をつとめるNHKラジオ第二放送「宗教の時間」、「『観無量寿経』をひらく」を購入し、「聞き逃し」サービスで聴いています。
これを期に、ブルートゥース接続のスピーカーを買い、移動中の車内で、NHK第二「聞き逃し」サービスを次々に聴いています。
釈徹宗さんによる宗教の時間の「『観無量寿経』をひらく」に始まり、カルチャーラジオ歴史再発見で静岡大学名誉教授小和田哲男さんから「明智光秀の実像に迫る」を学んでいます。
更に、古典朗読で前・電気通信大学教授の島内景二さんから「更級日記」を学んでいます。
そして、朗読では、夏目漱石の「三四郎」、壷井栄の「二十四の瞳」を聴いています。
壷井栄の「二十四の瞳」は、再放送ですが、今日が、第23回の放送で、物語の前半部分まで、俳優の藤澤恵麻さんの素敵な朗読を満喫することができます。
壷井栄の「二十四の瞳」は、文庫を買い、これから朗読される部分も含めて読了しました。
「二十四の瞳」を再び読み再発見したのは、この作品は、戦中の女性の生きざまを見事の描いた作品であるという点です。
戦中の女性たちの生きざまは、進学を断念するコトエの綴り方に描かれています。
「わたしは女に生まれてざんねんです。わたしが男の子でないので、おとうさんはいつもくやみます。わたしが男の子でないので、漁についていけませんから、おかあさんがかわりにゆきます。だからおかあさんは、わたしのかわりに冬のさむい日も、夏のあつい日も沖にはたらきにいきます。わたしは大きくなったらおかあさんに孝行つくしたいと思っています。」
主人公の大石先生は、この綴り方を読み「まるで女に生まれたことをじぶんの責任ででもあるように考えているコトエ。」と述べています。
更に、大石先生は、コトエの母を「夫にしたがって毎日沖にでている漁師の妻は、女とは思えないほど日にやけた顔をし、潮風にさらされて髪の毛は赤茶けてぼうぼうとしていた。しかもそれで不平不満はなかったかのように、じぶんのあるいた道をまた娘にあるかせようとし、娘もそれをあたりまえの女の道とこころえている。そこにはよどんだ水が、流れの清冽さを知らないような、古さだけがあった。」と評しています。
大石先生と岬で出会った12名の子どもたちの中には男の子もいます。男の子は、次々と戦地へ送られます。
「あんな小さな岬の村からでた今年徴兵適齢の5人の男の子、おそらくみんな兵隊となってどこかのはてへやられることだけはまちがいないのだ。ぶじかえってくるものはいく人あるだろう。-もうひとり人的資源をつくってこい・・・そういって一週間の休暇をだす軍隊というところ。生まされる女も、子どもの将来が、たとえ白木の墓標につづこうとも、案じてはならならいのだ。」
別のところでは、こうもう書いています。
「人の命を花になぞらえて、ちることだけが若人の究極の目的であり、つきぬ名誉であることをおしえられ、信じさせられていた子どもたちである。日本じゅうの男の子を、すくなくともその考えにちかづけ、信じさせようと方向づけられた教育であった。」
戦前の富国強兵政策などの中で、日本でジェンダー差別の構造がつくられた様子が、壷井栄の筆によって、人々の生活を通じて見事に描きだされています。
戦争は、大石先生の子どもの命も奪います。
国民に物資が行き届かない中で、末っ子の八津が亡くなります。
兄の大吉が、八津がほしがっていたチエノワを八津の亡骸に渡そうとします。
壷井栄は、大吉の無念をこう綴ります。
「胸にくみあわせた手にもたせようとしたが、つめたい手はもうそれをうけとってくれず、チエノワはすべって棺の底におちた。」
「二十四の瞳」は戦争の悲劇を描いた日本を代表する名作であることをこの一文から再認識しました。
作中の大石先生が、私の祖母の世代です。息子の大吉が、私の父世代です。
父は、戦地に行くことはありませんでした。その息子である私たちの世代は、「二十四の瞳」を読むことで、戦争の悲惨さを知り、ジェンダー差別の構造がつくられた様子を知ることになります。
今、NHKラジオ第二で、毎日「二十四の瞳」の朗読が放送されています。
今なら、聞き逃しサービスで第一回から聴くことができます。
一人でも多くの方に「二十四の瞳」の朗読を聴いていただきたいと思います。
戦争についてジェンダーについてご一緒に考えていきたいと思います。
「二十四の瞳」についての感想をお聞かせ下さい。
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