議員日誌

武器輸出と日本企業

 全国革新懇ニュース(2017.7・8月合併号)に東京新聞社会部記者の望月衣塑子のインタビューが掲載されていました。

 加計学園問題で注目された「総理のご意向」文書。それを「怪文書」として葬り去ろうとする菅官房長官に鋭く質問を続けて食い下がったのが望月記者です。

 翻訳家の池田香代子さんは「私たちの知る権利を守るためにすい星のごとくあらわれた記者」と評しています。

 望月さんは、「新聞記者としては、権力側ではなく、弱い側にたっていたい。判断い迷ったときは、弱い側の人に寄り添って判断する、これを大切にしたいです。質問するときはそこに気持ち、怒りを載せたい。私の質問が反響を呼んだとすれば、安倍一強のもと、「こんなことがまかり通るのか」という不満や批判が国民のなかに鬱積していた、いわばそれを突破してゆく流れのひとつの表象になったのかも知れませんね。」と革新懇インタビューで語っています。

 望月さんの書著「武器輸出と日本企業」を読みました。

 そもそも日本の武器輸出三原則が安倍政権のもとで形骸化されたことに根源があるようです。

 1967年2月、佐藤栄作首相の国会答弁は次の通りでした。

 ①共産圏諸国への武器輸出は求められてない

 ②国連決議により武器等の輸出が禁止されている国への武器輸出は認められない

 ③国際紛争の当事者または、その恐れのある国への武器輸出は認められない

 その後、76年2月、三木武夫首相が「武器輸出についての政府の統一見解」を発表します。

 ①三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない

 ②三原則対象地域以外の地域については、武器の輸出を慎む

 ③武器製造の関連装備の輸出については、武器に準じて取り扱う

 三木首相は、「平和国家としての我が国の立場から、これによって国際紛争などを助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後ともその輸出を促進することはしない」と当時明言しました。

 2014年4月、安倍政権のもと武器輸出三原則が47年ぶりに全面見直しされ、輸出容認に転換する「新防衛装備移転三原則」が閣議決定されました。

 ①国連安全保障理事会の決議に違反する国や紛争当事者には輸出しない

 ②輸出を認める場合に限定し、幻覚審査する

 ③輸出は目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る

 この武器輸出容認方針について望月さんは以下のように述べています。

 「一定の審査を通れば輸出が可能な仕組みとなり、従来の三原則からの大転換といえる。」「従来の三原則での『紛争当事者』になる恐れのある国』は禁輸の対象から外れた。また従来の三原則にあった『国際紛争の助長回避』という基本理念は明記されなかった。」

 この本の中で獨協大学の西山純子教授が「防衛装備庁は、おそらくアメリカほどの規模を目指せないにしても、武器開発に特化するような軍事専門企業を作らせたいのではないでしょうか。もちろん、国民の税金を使ってです。軍需への依存率が1割に満たなかった日本の軍需企業の再編や合併が行われる可能性もあります」と述べています。

 東京大学は、1959年、1967年に評議会で、次の原則を表明しました。

 ①軍事研究はもちろん、軍事研究と疑われる恐れのあるもの一切は行わない

 ②外国を含めて軍事関係から研究援助は受けない

 さらに83年に労働組合と教授陣の間で以下の声明も加えられました。

 ③軍関係との共同研究は行わない、大学の施設を軍関係に貸さない、軍の施設をかりたりしない、軍の研究指導をしない

 しかし、2015年、濱田東大総長は「東京大学における軍事研究の禁止について」を発表します。

 「東京大学における軍事研究の禁止の原則について一般的に論じるだけでなく、世界の知との自由闊達な交流こそがもっとも国民の安心と安全に寄与しうるという基本認識を前提とし、そのために研究成果の公開性が大学の根幹をなすことを踏まえつつ、具体的な個々の場面での適切なデュアル・ユースのあり方を丁寧に議論し対応していくことが必要である。」 

 「デュアルユース」について望月さんは「文字どおり『二通りの使い道』を意味し、民間に使用されている(民生)技術を軍用でも使うことだ。」と解説しています。

 アメリカ海軍海事技術本部「ONR」が資金提供した無人ボート大会に東大、東工大、阪大の三大学が資金援助受け参加したことなどがこの本に書かれてあります。

 国立大学の運営費交付金が減少する中、「デュアルユール」を隠れ蓑に防衛省などの資金が大学に流れている実態がこの本の中で描かれています。

 大学の研究とはどうあるべきか、この本の「あとがき」で戦後初代東大総長の南原繁さんの「南原繁 教育改革・大学改革論集」が掲載されています。

 「大学は国家の名において学問研究の自由の範囲が著しく狭めらられ、時の権力者によって都合よき思想と学説が保護せられ、これに反するものはしばし迫害せられ、弾圧せられて来った・・・われわれは、わが国の教育をかような官僚主義と中央集権制度から解放し、これを民主的または地方分権的制度に改編しなければならぬ」

 「国の政治に何か重大な転換が起きるときは、その前兆として現れるのが、まず教育と学問への干渉と圧迫である。われわれは、満州事変以来の苦い経験によってそれを言うのである」

 「大切なことは政治が教育を支配し、変更するのではなく、教育こそいずれの政党の政治からも中立し、むしろ政治の変わらざる指針となるべきものと考える。・・・いまの時代に必要なものは、実の真理と正義を愛する真の自由の人間の育成であり、そういう人間が我が国家社会を支え、その担い手おなってこそ、祖国をしてふたたびゆるぎない民主主義と文化的平和国家たらしめることができる。」

 望月さんは、この「南原三原則」を紹介した後でこう書いています。

 「2005年以降から膨張する世界の軍事費や武器輸出の状況を観れば、軍備の拡大が、世界の平和や安定とは駆け離れ、政界各地で勃発する紛争の火種になっていることは一目瞭然だ。それでも日本は欧米列強に続けと、武器輸出へ踏み込んだ。」

 「戦後70年、日本は憲法9条を国是とし、武力の放棄、交戦権の否認を掲げた。それらを捨て、これからを担う子どもにとって戦争や武器を身近でありふれたものにしようとしている。この状況を黙って見過ごすわけにはいかない。」

 私の長男は公立大学の工学部で機械工学を学んでいます。

 息子が知らず知らずに、軍事産業や武器輸出の一翼を担うのではないかと心配です。

 日本が憲法9条の元で「民主主と文化的平和国家」として発展することをこの本を読んで心から祈念しました。

 引き続き、望月さんから大いに学んでいきたいと思います。

 

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