志駕晃著「スマホを落としただけなのに」を読み終えました。
本書(文庫)の裏表紙のストーリーを引用します。
「麻美の彼氏の富田がタクシーの中でスマホを落としたことが、すべの始まりだった。拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なハッカー。麻美を気に入った男は、麻美の人間関係を監視し始める。セキュリティを丸裸にされた富田のスマホが、身近なSNSを介して麻美を陥れる凶器へと変わっていく。一方、神奈川の山中では身元不明の女性の死体が次々と発見され・・・。」
この作品は、第15回『このミステリーがすごい! 』大賞最終選考作品「パスワード」を改題し、加筆修正したものです。
文庫版の解説は、作家の五十嵐貴久さん。「無限の可能性を秘めた超新星の誕生に寄せて」と題する解説に圧倒されました。
「予言しておく。本書によって、日本7のミステリーは劇的に変わる。十年後、出版に携わる者、もちろん読者、そしてあらゆる階層の者たちが『志駕以前』『志駕以降』というタームで、ミステリーというジャンルを語ることになるだろう。」
「ここがカジノなら、私は考える。志駕晃に、持っているチップをすべて賭ける。ひとつの新しい時代を、地平を切り開くであろう作家が、ここに誕生した。そのデビュー作の解説を書かせてもらう機会を与えられたことを、心から感謝したい。」
「解説」とは、作家を評価するものではあるが、ここまで、取り上げる作家を評価した解説を過去、知りません。
私は、五十嵐さんの解説を読んで、この本の購入を決め一気に読みましたが、大満足でこの本を読み終えました。
五十嵐さんは、この作品の特徴をこう書いています。
「誰もがパソコン、あるいはスマホに依存している現状を、志駕は読者に突きつける。そのセキュリティの脆弱さ、人間の心の弱さ、システムの盲点、インタネット攻撃とそれに対する無力さ、あらゆるリスクを容赦なく指摘していく。安全神話を信じて暮らしている人々の背後に、驚くほど深い落とし穴が待っていると警告している。」
志駕さんは、私より一つ年上の1963年生まれ、現在ニッポン放送のエンターテイメント開発局長という要職に就いている方です。インターネットの光と影に精通した志駕さんが奏でる社会性のあるエンターテイメント小説と言えます。
五十嵐さんは、本作品についてこうも解説しています。
「あなたの意識は作品世界の中に深く入り込み、抜け出せなくなる。それだけの時間が確保されているかどうか、それを確かめてから頁を開いた方がいい。」
この解説にも納得する作品です。この覚悟を持って、是非、この作品を読んでいただきたいと思います。
この解説を書いた五十嵐貴久さんにも興味が湧き、今、五十嵐貴久さんのデビュー作「リカ」を読んでいます。
「リカ」は、ホラーサスペンス大賞受賞です。
平凡な会社員の本間が、「出会い系サイト」で「リカ」と名乗る女性と知り合います。
彼女の「怪物」ぶりに引き込まれ、抜け出せなくなっています。
五十嵐貴久さんも日本のミステリー界をけん引する一人であることに間違いありません。
志駕晃さんの次回作品を待ちながら、今は、五十嵐貴久さんの作品にしっかり読んでいこうと思います。
五十嵐さんは、幅広いジャンルの作品は発表されている作家さんです。この点でも大いに楽しみです。
当面は、「リカ」シリーズである。「リカ」「リターン」「リバース」を読み進めることにします。
「スマホを落としただけなのに」を読んだみなさん、五十嵐貴久ファンの皆さん、感想をお聞かせ下さい。
No comments yet.
コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。
メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。