議員日誌

マンチュリアン・リポート

 念仏者9条の会・山口主催の連続講話「日本近現代史を読み抜く」を受講して、日本の中国侵略に進む時代に興味が湧いてきました。

 纐纈厚山大名誉教授の「満州事変」に突入するリアルで深いお話しを聞いて、浅田次郎さんの「マンチュリアン・リポート」を読み直したくなりました。

 この小説は、昭和3年6月4日未明、張作霖を乗せた列車が爆破された「満州某重大事件」が発生しました。

 昭和天皇から事件の真相の調査を命じられた志津中尉が中国に渡り、「満州報告書」をまとめるまでの物語です。

 この小説には、日本が戦争する国に至る国家体制の構築の過程が克明に書かれてあります。

 一つは、治安維持法「改正」です。

 浅田さんは治安維持法「改正」について、「共産主義者や無政府主義者に対して、現行法では懲役十年と定めた最高刑に死刑を適用しようというのである。これを拡大解釈すれば、国体変革を目的として行動する人間を国家が自在に消すことができる。近代国家にあってはならぬ恐怖政府が可能となる。」と書いています。

 二つ目は、軍人の政治関与の深化です。

 陸軍大将を務めた田中義一が、政友会総裁となり、首相として政権を担当しました。

 浅田さんは、軍人勅諭に「世論に惑わず政治に拘らず」とあると指摘し、志津中尉にこう語らせています。

 「自分は、『政治』という字句を使用したからには『政治に容喙せず』と解釈いたしました。『世論に惑わず』の対句と考えれば、陛下のご解釈(「いかなる政局にも左右されず」の意味ではないか」)が正しくも思えますが、軍人の本分を説明しているという大前提に立てば、この部分は『政治向きの議論を口にすることなく、政治そのものにも関与せず』と解釈するほうが正解であります。」

 日本は、共産主義や無政府主義者を投獄させ、軍部が政治に深く関与する中で、「満州事変」が勃発し、侵略がアジア・太平洋に広がったことが、この小説を読めばよく理解できます。

 6日のしんぶん赤旗日刊紙は「政府は5日、犯罪の計画段階で処罰可能とする、いわゆる『共謀罪』を創設するための組織犯罪処罰法改正案を20日召集予定の通常国会に提出する方針を固めました。東京五輪開催を理由として、『テロ対策』を前面に出すために、名称を『テロ等準備罪』とし、資金調達などの具体的準備行為を処罰要件に加えます。」と報じました。

 しんぶん赤旗のインタビューで自由法曹団幹事長の加藤健次弁護士は「『共謀罪』の名を『テロ等準備罪』に変えるというのが、違憲性のある行為ではなく意思そのものを犯罪にするという本質は一切変わらない。窃盗や道交法違反など600以上の犯罪が幅広く対象になり、限定性もない。悪用される危険性が拭えない。とりわけ、強硬な安倍政権にそんな武器を与えることはとんでもない。沖縄・高江での事態の推移をみても明らかなように、国民の正当な運動に対する弾圧のやいばとされることは必定だ。」と述べています。

 安倍政権の「戦争する国」づくりの加速化を許してはなりません。

 「戦争する国」づくりを許さないために、戦前の日本がどのように「戦争する国」づくりを進めていったかを知ることが重要だと思います。

 浅田次郎さんの近著に「天子蒙塵」があります。「蒼穹の昴」「マンチュリアン・リポート」の続編にあたる作品です。

 「天子蒙塵」にも注目していきたいと思います。

 

 

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