山口県医師会などで構成する「県民の健康と医療を考える会」が主催する県民公開講座に参加しました。アメリカに留学経験のある市原恒さんによる「アメリカ医療事情」と題する講演。読売新聞西部本社編集委員の小川直人さんによる「シッコを笑い飛ばすことができるのか」と題する講演。そして、マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」の上映が行われました。入場口で、県庁OBで、現在、医師会事務局に勤務されている方にお会いし、私は、「医師会とはかなり意見が一致してきましたね。」と笑顔でお話ししました。
「シッコ」は、昨年秋に会った大学の後輩が、べた褒めし、妻も、昨年防府の映画館に観に行った作品で、一度観る機会はないかと思っていた映画です。今日は、本当は、品川正次さんのお話がある日でしたが、怪我のため講演会が延期されたため、「シッコ」を観ることができました。
川柳では、「おかしみ」「うがち」「かるみ」の三要素を重んじます。マイケル・ムーアの視点は、川柳によく似ていると思いました。アメリカには、国民皆保険がありません。民間保険会社が医療界を支配しています。その中で、入院費用の支払いが出来ず、病院から路上に放り出される患者が映し出されます。また、利益優先の保険会社の中で、医療費の請求を拒否した件数が多い程、ボーナスが高くなる嘱託医の姿も映し出されます。そのリアルな現実を強調するために、「おかしみ」「うがち」「かるみ」の視点で現実を切っていくのがマイケル・ムーアです。
例えば、9・11の被災地でボランティアとして活動した消防隊員が現在、呼吸器の病気で苦しんでいます。政府の補償も一部の方にしか提供されておらず、多くの消防隊員が苦しんでいます。マイケル・ムーアは、それら患者を9・11を指導したとされるアルカイダのメンバーが匿われているグランタナモ基地に連れていきます。この基地の医療は実に潤沢であり、9・11後の被災地で被害にあった消防隊員の治療をしてくれと頼みに行くのです。
映画の最後には、マイケル・ムーアが、自らの洗濯物を持ってホワイトハウスに出向きます。「この洗濯物を洗ってほしい。」と頼みに行くのです。フランスでは、乳幼児を抱えた母親をケアするために、食事や洗濯など家事を援助してくいれるサービスが実施されています。このサービスをアメリカでもやれよという皮肉でしょう。
主催者のあいさつに立たれた医師会等の役員の先生方は口々に、「今、日本で皆保険制度が崩壊しようとしています。」「もしそうなったらどうなるのかが、この映画です。」「いつでも、誰でも、安心して、保険証一枚で、医療が受けられる制度を堅持していきましょう。」と訴えました。私も、この映画を聴視し、医師会の先生方の意見と深く共感しました。
アメリカでは、医療保険(民間中心ではあるが)に加入していない国民が5000万人以上いると言われています。日本でも皆保険と言われながら、国保がいまその制度が崩壊させられようとしています。国の国庫補助率が下げられる中で、保険料の値上げが続く。その中で、保険料滞納世帯が増える。それら世帯に2000年からの国の指導強化で、「短期保険証」「資格証明書」の発行が義務づけられました。窓口で、全額医療費を自己負担しなければならない「資格証明書」発行世帯は、昨年6月時点で、宇部市に797世帯、県全体で、6229世帯。国全体で、07年度に、34万世帯に及んでいます。
日本は、1961年か以来「保険証一枚あればどこの病院にもいつでもかかれる」とした皆保険制度が確立していますが、今、その体制が、崩壊の危機に瀕しているのではないでしょうか。
しかし、私は、県医師会が映画「シッコ」を県民講座として上映されたことに、県民医療を守る明るい展望を見出しました。
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