「落語 昭和の名人 極めつき」第9号は、八代目 林家正蔵です。
マガジンには、正蔵師匠を評して「時代におもねることなく、泰然とした語り口で、落語がもつ本来の古格を大事にしたのが八代目林家正蔵である。」とあります。
3席の噺を聞いて、まさにその通りだと思いました。
マガジンには、続いてこうあります。
「『駆け上がりでは、いい芸はできねェ』それが口癖で、寄席でもホールでも出番の1~2時間前には楽屋入りするのを旨としていた。正蔵の最後の弟子となった林家正雀師匠(67歳)が語る。『前後の出演者に迷惑をかけないためです。同時に、その日の寄席やホールの雰囲気を確かめながら、自分の高座に全神経を集中する。夜席のトリなのに、昼席のトリの前に楽屋入りしたこともあります。さすがに『待ちくたびれた』とこぼしていました。』(笑)」
私も、話をする時でも、役員をしている団体の会議でも、最低でも10分前には、会場に到着するようにしています。早く着けば、会場に来られたみなさんと色んな話が出来ます。仲よくなりますし、話をするときには、雰囲気を確かめることができます。
正蔵師匠は、扇子と手ぬぐいだけで語る『素話』ではなく、歌舞伎さながらに書割などの大道具や鳴物を多用する正本芝居噺を得意にした最後の噺家でした。
最後の弟子となった林家正雀師匠は次のように語ります。
「道具入り芝居噺は、圓朝の弟子の一朝爺さんからの直伝で、初代の正蔵は江戸の怪談噺の元祖です。師匠は由緒ある伝統芸を絶やすことなく後世に伝えるという強い信念をもっていたんだと思います。」
正蔵さんの語り口は、芝居噺で鍛えられた迫力のあるものです。
ドイツ文学者の池内紀さんは、マガジンのエッセーで正蔵師匠の噺について次のように語っています。
「大看板になってからも『あたま山』や『一眼国』をよくやった。もともとおかしな噺だが、八代目林家正蔵がやると、ニュアンスゆたかなおかしみに変わった。一人芝居の前衛劇を聞いているかのようだった。もとより怪談話の第一人者だったが、正蔵の怪談は単に怖いといったことではなく、心ならずも悪をしでかす業の深い人間へのかなしみがひそんでいた。八代目正蔵は、独特のおかしみとかなしみの噺家だった。」
志ん生師匠の「淀五郎」もいいが、正蔵師匠の「淀五郎」もいいです。
淀五郎の「かなしみ」が深く心に届きます。
「緑林門松竹~新助市」は「業の深い信介のかなしみ」が伝わります。
「一眼国」は、まさに一人芝居の前衛劇を見るようです。
登場人物が抱えた「かなしみ」が深く聴き手に届く八代目林家正蔵師匠の噺にほれ込んでしまいました。
八代目林家正蔵師匠の落語で好きな演目をお教え下さい。
落語を聞くたびに魅力に惹かれる毎日です。
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