第7回山田風太郎賞を受賞した塩田武士さんの「罪の声」を読んでいます。
本作は、刊行2カ月半で5万500部と売り上げを伸ばしています。
戦後史に残る未解決事件「グリコ・森永事件」(1984年発生)が物語の舞台です。
毎日新聞で塩田さんを紹介したコーナーに「食品会社への脅迫テープには子供の声も使われていた。大学時代、事件の関連本を読み『子供と同世代だし、同じ関西だからどこかですれ違っているかもしれない。小説になる』と着想した。」とあります。
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープを見つけます。
テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてきます。
内容は、「ギンガ・萬堂事件」(ギン萬事件)で恐喝に使われていた音声とまったく同じものでした。
大日新聞大阪本社文化部記者の阿久津英士は、昭和の未解決事件の特集で「ギン萬事件」を追います。
阿久津が追う糸は、恐喝テープの子どもたちの「現在」につながってきます。
私が今、読んでいるのは、主人公の曽根と阿久津の糸が繋がる前で,「ギン萬」事件の闇の深さを知らされます。
この事件の4カ月前に、世界的ビールメーカーの「ハイネケン」の会長誘拐事件が発生しています。
この事件と「ギン萬」事件の関連も気になるところです。
1984年から1885年。私は大学生でした。サークル活動に明け暮れていた時期です。
「グリコ・森永事件」は当然知ってはいましたが、これほどまでに大規模で周到な事件だったことを、今回改めて知ることが出来ました。
事実を克明に追う点は、さすがに、10年の新聞記者の経験がある塩田さんならではだと思いました。
作家の佐藤優さんは、この小説を「ノンフィクションのような推理小説」と評しています。
私は、この小説を読みながら、ノンフィクション小説である増田俊也さんの「木村正彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を読んでいた時のような興奮を抱いています。
今年も様々なジャンルの小説をあれこれ読んできましたが、私が今年、読んだ本の中でも屈指の作品だとの胸騒ぎがします。
とにかく、後半を読み進めることにします。
面白い小説に出遭えた喜びを感じています。
塩田武士さんのこれまでにの作品とこれからの作品に注目していきたいと思います。
塩田さんの真摯な筆致に魅了されています。
皆さんのおすすめの小説をお教え下さい。
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