議員日誌

中国人強制連行・労働の加害企業責任を問うた東京高裁判決について

 本日、日本中国友好協会山口県連合会の理事会が行われました。

 本日は、飯田健(元県労連議長)さんを講師に、宇部興産も被控訴人企業として名を連ねた中国人強制連行・労働裁判(06年6月16日東京高裁判決)の学習会を行いました。

 この判決の最大の特徴は、中国人労働者の強制連行・労働を認めたことでした。しかし、不法行為や安全配慮義務違反は、消滅時効として、損害賠償請求は退けられる内容でした。

 被控訴人企業の一つである宇部興産は、国際法上捕虜の労働使役は許されるなどと主張しました。

 しかし、東京高裁は判決文で、「被控訴人宇部興産が沖ノ山鉱業所に受け入れた中国人労働者は286名であるが、その内、32.5%にのぼる93名が死亡した。死亡原因は、慢性腸炎兼栄養失調症による物が92%強の86名である。また、その死因として、気管支性肺炎が3名、急性腸炎が1名、蜂窩織炎が1名、事故死1名、自殺1名である。中国人労働者は中国人医師らによる診察を受けたが、労働衛生に必要な定期的な健康診断もなく、予防注射は実施されなかった。」と書いています。

 また、強制連行・強制労働について、判決文では「第一審原告ら中国人労働者をその意に反して拘束するなどし、いったんは中国国内の収容所に連行した後、それぞれの貨物船等に乗船させて日本国内に連行し、さらに被控訴人企業らの事業場まで強制連行し」「各事業場において、中国人労働者を監視し、外出あるいは逃亡できない状態のもとに、かつ、衛生状態や食糧事情等が極めて劣悪な環境下で過酷な強制労働をしたものである。」としています。

 更に、判決文では「本件強制連行は、被控訴人企業ら関係団体から要請を受けた被控訴人国が主導し、被控訴人企業らもこれに関与して行われ、また、本件強制労働は被控訴人企業らが主体となってこれを行ったものといえる。被控訴人国と各被控訴人企業らは、各第一審原告らに対して、本件強制連行・強制労働について、民法709条、715条及び719条により共同不法行為責任を負う」としています。

 東京高裁において、宇部興産を含む企業が強制連行・労働させた責任を明らかにしていることは重大です。

 しかし、判決文では、消滅時効を理由に、賠償請求権を放棄しているとして「本件控訴を棄却する」と結論づけました。

 私たちは、その後の状況の発展に注目しています。

 まず、07年4月27日の西松建設の中国人強制連行・労働最高裁判決です。

 この最高裁判決の付言に、こう書かれています。

 「本件被害者らの被った精神的・肉体的苦痛が極めて大きかった一方、上告人(西松建設)は前述したような勤務条件で中国人労働者らを強制労働に従事させて相応の利益を受け、さらに前述の補償金を取得しているなどの諸般の事情にかんがみると、上告人を含む関係者において、本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待されるところである」

 この付言にのっとって、09年10月23日、広島県の発電所での強制連行・労働に関し、西松建設と中国人当事者との間で和解が成立しました。また、今年4月26日には、新潟県のダム建設での強制連行・労働に関し西松建設と中国人当事者との間で和解が成立しました。

 最高裁が付言で求めたのは、「上告人を含む関係者」です。関係者の中に、宇部興産などの中国人強制連行・労働を行った加害企業が含まれていることは明らかです。

 学習会の最後に、日本中国友好協会山口県連合会として、宇部興産に対して、強制連行・労働させた中国人当事者に対する被害の救済に向けて努力を行うよう求めていこうと話しあいました。

 引き続き、中国人強制連行・強制労働に関する皆さんのご意見をお聞かせください。

 

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