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防府北基地に、衛星妨害状況把握装置を搭載した車両6式が昨年度までに配備されていた。

 日本共産党県委員会は、20日、様々な問題で、省庁に要望書を提出し、懇談を行いました。今日は、宇宙監視レーダーに係る要望書に関するやり取りについて報告します。

 要望項目の1は、「防衛省は、2025年度予算案において、第二宇宙作戦隊(航空自衛隊防府北基地)に『より多様な電磁波環境の把握能力を強化するため、低軌道の衛星の電磁波環境や妨害状況を把握する能力を向上させた衛星妨害状況把握装置を取得』するとしていた。同装置の取得・配置は完了しているのか」です。

 防衛省の担当者は、「今年度、新たな衛星妨害状況把握装置1式を、取得する予定である。今後、宇宙作戦隊のある府中・防府北基地・宇宙監視レーダーのいずれかに装備1式を配備することになる。現時点で、配備の場所や時期は未定である。」などと答えました。新たな衛星妨害状況把握装置が、山陽小野田市の宇宙監視レーダー基地内に配備される可能性があることが分かりました。

 要望項目の2は、「中谷元防衛大臣が7月28日、『第二宇宙作戦隊』(航空自衛隊防府北基地)と宇宙監視レーダー(山陽小野田市)を視察し、記者会見した際『衛星妨害状況把握装置とSSAレーダーを視察した』と述べている、旧来の衛星妨害状況把握装置も山口県内に配備されているのか、そうであれば、どの基地に配置されているのか。」です。

 防衛省の担当者は、「令和2年度に予算要望し、衛星妨害状況把握装置を搭載した車両3式を令和5年度に配備した。令和3年、令和4年に予算要求し、同車両3式を令和6年に配備した。車両は1式約28億円である。製造したメーカーは、MHIだ。」などと答えました。防府北基地に、6式の衛星妨害状況把握装置を搭載した車両が配備されていることを初めて知りました。

 要望項目の3は、「防衛省は、2026年度までにSDA衛星の導入に向けた取組を進めるとしているが、山陽小野田市の宇宙監視レーダー(SSAレーダー)は、SDA衛星の電波を受信することはないのか。」です。

 防衛省の担当者は「SDA衛星の電波をSSAレーダーで受信することはない。SDAレーダーの受信は、府中になると思われる。」などと答えました。

 要望項目の4は「衛星妨害状況把握装置の配置やSDA衛星の打ち上げなど、『防衛省の『宇宙交通管理に関する取組』が本格化する中で、山陽小野田市で運用されている『宇宙監視レーダー』の重要性が増え、防府北基地に配備された『第二宇宙作戦隊』も増強の一途をたどっている。こうした状況の下で、防衛省が進める『宇宙交通管理に関する取組』については、山陽小野田、防府両市はもとより地元住民に対しても、丁寧な説明を行う機会が必要ではないか。』です。

 私は、「衛星妨害状況把握装置が山陽小野田市の宇宙監視レーダーに配備された場合には、防衛省は、住民説明会を開催すべきだ」と質しました。

 防衛省の担当者は、「地元自治体などから要請があれば、住民説明会の開催を前向きに検討したい。」と答えました。

 私は、「防府北基地内に衛星妨害状況把握装置を搭載した車両が6式配備されていることを、防府市民はほとんど知らない状況だ。防府北基地の第二作戦隊の任務や役割、配備の内容などについて、住民説明会を開催すべきだ。」と質しました。

 防衛省の担当者は、「地元自治体などからの要請があれば、住民説明会の開催を前向きに検討したい。」と答えました。

 この点での防衛省の担当者の答弁は重大です。

 山陽小野田市、防府市、山口県は、自衛隊に、地元説明会の開催を求めるべきです。

 県内で、宇宙分野での軍事基地化が拡大されています。引き続き、この問題を調査し、県議会で取り上げていきたいと思います。この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

山口宇部空港の特定利用空港指定問題などで国会要請行う 白川参院議員が同席

 今朝のしんぶん赤旗日刊紙は、昨日、日本共産党山口県委員会が行った国会交渉について次のように報じました。
 「日本共産党山口県委員会は、20日、県民要望の実現を求め、国会内で防衛省や国土交通省、内閣官房、厚生労働省と交渉しました。白川容子参議院議員、河合喜代、藤本一規両県議、吉田達彦県議団事務局長、荒川憲幸、時田洋輔両宇部市議、米津高明阿武町議が参加しました。有事に備えて自衛隊などが民間の空港を平時から利用できるように整備する『特定利用空港』に山口宇部空港(山口県宇部市)が指定される問題で、内閣官房が自治体や住民に向けて作成した『Q&A』で『有事の利用を対象とするものではない』と説明する一方で、政府資料は有事を念頭に置いていると質問。内閣官房の担当者は、平時の利用を主としつつ『有事を見据えている』と述べました。特定利用空港への指定によって標的にされるのではないかとの質問に、内閣官房は『時々の個別具体的な実態で決まるもので、特定利用空港の指定で形式的に決まるものではない』と言及。一方、参加者から『(標的になるかは)国際社会の判断によるのか』との質問に『その通りだ』と答え、軍事的標的になる可能性を認めました。また、内閣官房の担当者は、自衛隊が武器や弾薬などの輸送のために特定利用空港で『必要な火加品や弾薬の積み卸し』をすることについて、知事が拒否することは可能だと述べました。戦時中に宇部市の長生炭鉱水没事故で犠牲になった朝鮮人らの遺骨収集問題で、党県委員会は、国としての現地視察の実施や、遺骨収集の実現に向けた支援策の検討などを要請。厚生労働省の担当者は『安全性に懸念があり、現地視察は考えていない』と述べました。藤本県議は『世界的な技術を持つダイバーが死と背中合わせでやっている。財政的な支援があれば安全措置がとれる』、河合県議は『人道主義の立場にたって遺骨を遺族に返してほしい』と強調しました。要請後、白川氏は『事故で犠牲になった朝鮮の人たちの遺骨を故郷に返さなければならない。国が民間任せにせずに予算を投じるべきだ』と強調しました。」
 昨日の要請行動では、その他、自衛隊防府北基地と山陽小野田市で運用が始まった、宇宙作戦隊及び宇宙監視レーダーについても交渉を行いました。

   宇宙監視レーダーなどの問題を防衛省の担当者に要請しました。

  右から 白川参院議員、私、吉田県議団事務局長、河合県議、荒川宇部市議、時田宇部市議

 特定利用空港に関しては、内閣官房の担当者が「有事を見据えている」と回答したことは重大です。また、弾薬の積卸しに関し、内閣府の担当者が「知事が拒否することは可能だ」と発言したことも重大です。
 今回の国会要請で、学んだことを来る9月県議会に生かしていきたいと思います。
 特定利用空港問題、長生炭鉱問題、宇宙監視レーダーなどに関する皆さんのご意見をお聞かせください。

沖縄県は、特定利用空港・港湾指定を拒否しています。

 19日のしんぶん赤旗日刊紙は、自治体学校での中山理事長の講演を次のように報じました。
 「自衛隊は3月に統合作戦司令部を設置し、在日米軍も統合司令部を設置する方向で動いており、米軍と自衛隊の一体化が進んでいます。自衛隊が米軍の世界戦略に組み込まれる危惧があります。今年は能動的サイバー防御法が制定されました。これは政府が平時からネットの情報を監視し、攻撃の兆候を察知すると、相手国のサーバーでは、事業者への情報提供命令や秘密保持命令が強化され、市民の異議申し立てが困難になりました。さらに、地方自治法の改定(24年)で国が自治体に指示を出す権限が明記され、国と地方の対等平等の関係は揺らいでいます。今回の改定は武力攻撃を念頭に置いたものです。戦時体制を着々とつくっていくためには、地方自治が障害となっているということです。学術会議法の改定(25年)では、政府の介入を可能にする仕組みが導入されました。軍事研究に反対する声明を出してきた学術会議を変質させるのが狙いです。防衛費、国内総生産(GDP)2%の財源は税外収入、歳出改革、増税などで確保しますが、医療や教育予算の削減が懸念されます。高額療養費の負担限度額引き上げもその一環です。欧州の非核兵器保有国がアメリカの核兵器を受け入れ、『核共有』の動きが広がっています。日本は『非核三原則』があって表立っては核兵器を持ち込んでいいとは言っていません。しかし、石破首相は『核保有』を主張しており、日本でも『核保有』が進んでいく懸念があります。では、地域の自治体が一体今、何をすべきなのか。自治体にとって重要なのは、国の政策から地域の市民生活を守ることを最も大きな政策に据えてきました。国の公害行政を上回る施策を自治体が展開しました。特定利用空港・港湾の指定は自治体の協力抜きにはできません。沖縄県が少ないのは、県が同意しないからです。自衛隊への名簿提供を拒否する自治体もあります。自治体が協力しなければ戦争できる国づくりは進みません。今ならまだ、自治体が市民と連携して踏ん張れば、こうした動きをかなり食い止めることができます。自治体がそういう役割を認識できれば、日本がただひたすらに戦争に突き進んでいくことを妨げる防波堤になれます。」
 中山徹理事長編著の「いま、核のない世界を築くために 新しい戦前に直面する地域・自治体の役割」という本が自治体研究社から出版されました。
 この中で、中山理事長が「戦争できる国づくりと地域、自治体」と題して、自治体学校の内容を論文にしています。
 この論文から、記事にある特定利用空港・港湾が沖縄県内で少ないという部分を紹介します。
 「特定利用空港・港湾の指定で、九州、北海道が多くなっています。しかし、沖縄は3箇所しか指定されていません。空港で指定されたのは那覇空港1箇所、港湾で指定されたのは石垣港と平良港の2箇所です。沖縄県には空港が13箇所あります。そのうち那覇空港は国が管理する空港で、これ以外の12空港は県が管理しています。また沖縄県内には重要港湾が6箇所、地方港湾が35箇所あります。重要港湾のうち、3箇所は沖縄県が管理者、石垣港は石垣市が管理者、平良港は宮古島市が管理者、那覇港は沖縄県、那覇市、浦添市が設置した那覇港管理組合が管理しており、管理者は沖縄県知事です。また35地方港湾は全て沖縄県が管理者です。先に書いたように、関係省庁と管理者の間で『円滑な利用に関する枠組み』が設けられた空港・港湾が特定利用空港・港湾です。特定利用空港・港湾の指定を受けるためには、管理者の同意が必要です。沖縄県は、『施設の整備・拡充後の運用に不明な点が残っていること』『県議会との意見交換になお時間が必要であること』を理由に、沖縄県として指定に合意するかどうかの意思を示すことができないと国に回答しました。特定利用空港・港湾に指定されると国の費用で空港の拡張等を進めてもらえるということで賛成している自治体があります。しかしそれは地域の安全と引き換えです。沖縄県はそのような点で懸念を示し、合意できないという態度をとっています。自治体が地域の平和を守るという立場に立てば、国が進めている戦争できる国づくりに歯止めをかけることができます。自治体は、市民運動と連携し、地域の平和と市民の暮らしを守る先頭に立つべきです。政府が進める戦争できる国づくりから、地域と市民を守ることが、自治体に課せられた大きな課題です。」
 山口県の村岡知事は、8月7日、県営空港である山口宇部空港の特定利用空港指定受け入れを国に回答しました。
 昨年10月11日、国から山口宇部空港を特定利用空港の対象として検討していると県が説明を受けましたが、県がそのことを県民の公表したのは、今年6月11日です。
 過去のブログで指摘をした通り、国は有事の際に使用しないといいながら、国の資料に有事の際に使用するという下りがあります。また、弾薬等を積卸しすることを国は想定しており、県担当者は、そのことを、地域関係団体には説明していないことを認めています。つまり、山口宇部空港を特定利用空港にする上で「不明な点」は数多く残されています。
 また、6月の県議会では、私と自民党の高瀬議員が質問し、県議会の土木建築委員会で土木建築部が報告していますが、総じて、「県議会での意見交換」に十分な時間が使われたとは言い難い状況です。
 沖縄県が、不明な点があることや県議会との意見交換が十分ではないことなどを理由に特定利用空港・港湾の指定に同意していない状況である一方、山口県は、早々に、受け入れを表明したしたことは、国が進める戦争できる国づくりに結果、協力した姿勢に他なりません。山口県は、受け入れによって地域の安全が向上するのかという点で、再検討すべきだと思います。
 日本共産党山口県委員会は、明日、午後、内閣府・国土交通省・防衛省に対し、山口宇部空港の「特定利用空港」指定に係る要請書を提出し、1時間の懇談を行います。不明な点について、一つ一つ解明していきます。その内容は、後日のブログで報告します。また、政府とのやり取りを受けて、9月県議会でこの問題を取り上げる予定です。
 また、このやり取りには、白川参議院議員に同席頂ける予定です。この点でも大いに期待しています。
 明日は、その他、宇宙監視レーダー問題、長生炭鉱問題、阿武風力発電問題などについても、各省庁に要請や懇談を行う予定です。これらの結果についても後日、報告したいと思います。
 特定利用空港の指定問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。

有事を想定した避難施設が、県内で1325カ所指定されていました。

 18日のしんぶん赤旗日刊紙は、自治体学校での中山徹理事長の講演の内容を次のように報じました。
 「第67回自治体学校が7月26~27日、東京都で開かれ、中山徹自治体問題研究所理事長が、『地方自治と地域、この1年から考える』と題して基調講演し、『戦争できる国づくり』の実態や、平和・共存に向けた自治体の役割を強調しました。その趣旨を紹介します。日本は2015年の安保法制以降、急速に『戦争できる国』へと進んでいます。従来、日本政府の公式見解では憲法9条があるから集団的自衛権の行使はできないとされてきましたが、安保法制により一定の条件でこれが認められると解釈され、戦後の日本にとって大きな転換点となりました。安保法制の実質化が図られたのは、22年の安保3文書改定です。一つは敵基地攻撃能力の保有。敵基地の定義はあいまいで、軍事基地だけでなく相手国の政府機関も含まれます。防衛予算の国民総生産(GDP)比2%への倍増も明記されました。安保法制以降、南西諸島を中心に自衛隊基地の建設が進んでいます。16年には与那国駐屯地(沖縄県)、19年には宮古島(同)、奄美大島(鹿児島県)、23年には石垣島(沖縄県)にミサイル部隊を配備した駐屯地が建設されました。馬毛島(鹿児島県)では30年までに滑走路2本を備えた基地が整備され、米軍の空母着艦訓練(FCLP)にも使用されます。すでに今年度予算で1兆円以上の整備費がついています。佐賀駐屯地(佐賀県)が25年7月に開設され、南西諸島に近いとの理由で、自衛隊のオスプレイ17機が木更津駐屯地から移駐。呉市(広島県)では自衛隊だけでなく、無人機などの製造を担う民間企業も誘致した複合防衛拠点の計画が進んでいます。『特定利用空港・港湾』の指定が全国で進み、平時は自衛隊が訓練で使用し、有事に部隊を展開します。21年に制定された土地利用規正法では、防衛上の理由から防衛施設周辺1㌔が注視区域・特別注視区域に指定され、土地や建物の利用状況が調査されます。自衛隊に対する機能阻害行為には勧告・命令が発動され、所有権移転には事前届け出が必要です。自治体が決定する従来の都市計画とは異なり、内閣総理大臣に権限があります。国は有事を想定した避難計画を策定しており、沖縄県の先島諸島(宮古市、石垣市など)では、住民・観光客12万人を6日間で九州や山口県に避難させる計画が進行中です。県外避難まで待機する特定臨時避難施設(避難シェルター)の整備もすでに進んでいて、国の補助率90%というから驚きです。」
 記事の内容に沿うと、県内では、山口宇部空港が特定利用空港の指定を知事が受け入れました。
 また、特別注視区域に、県内では、岩国基地などに続いて、山陽小野田市の宇宙監視レーダーが新たに指定されました。
 有事を想定した避難計画では、石垣市の住民の避難場所として山口県が指定されています。
 その上で、今日は、記事の最後にある有事を想定した避難施設について、これまでに分かったことを報告します。
 昨年6月18日付の内閣官房副長官補が「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)の確保等の取組について」という資料に、避難施設の内訳が書かれています。
 避難施設には、①緊急一時避難施設に指定されていない避難所等②緊急一時避難施設③特定臨時避難施設ーがあります。
 緊急一時避難施設とは、「爆風等からの直接の被害を軽減するための一時的な避難に活用する観点からの、コンクリート造り等の堅ろうな建築物や地下街、地下駅舎等の地下施設」と規定されています。
 特定臨時避難施設とは、「武力攻撃災害から人の生命及び身体を保護するために必要な機能を備えた一定期間避難可能で堅ろうな避難施設」と規定されています。
 尚、特定臨時避難施設は、新規とされています。
 内閣府などの資料に、昨年4月1日現在の各都道府県ごとの避難施設の内訳があります。
 これによると、県内に緊急一時避難施設が920カ所(この内、地下施設134カ所)あり、緊急一時避難施設に指定されていない避難所等が405カ所あります。
 宇部市では、市内の小中学校やふれあいセンターや一部公共施設が緊急一時避難施設に指定されています。
 特定臨時避難施設を県内でどのように検討しているかは、昨日付けで、県総務部に照会を行いました。回答が届き次第、報告します。
 調べれば、調べるほど、県内で「戦争できる国づくり」の具体化が進んでいることに驚がくします。

「力の正義」と「秘密主義」の拡大による「新しい戦前」を回避する道は歴史の教訓を顧みること

 15日付、中国新聞の山中和久論説主幹の「『力は正義』被爆地は認めぬ」という記事を紹介します。
 「戦後80年の節目に平和国家日本の歩みを振り返り、二度と戦争を起こさない、起こさせない、との決意を新たにしたい。何より見つめ直すべきは無謀な戦争に突き進み、国民を巻き込んだ国策の誤りだ。その帰結として広島・長崎への原爆が投下され、多くの命が奪われた。それゆえに被爆地は、核兵器廃絶とともに、不戦を訴えてきた。数年前から『新しい戦前』という言葉を耳にする。戦争体験者が激減し、悲劇が忘れ去られようとしているのではないか。戦後80年の世論調査で、先の戦争が『侵略戦争だった』と答えた人は70歳以上で半数を占めた一方、40代以下は30%台だった。アジアへの加害認識を巡る分断に驚くほかない。こうした状況と無縁ではなかろう。集団的自衛権の行使容認、敵基地攻撃能力の保有、防衛予算の大幅増、防衛装備品の輸出拡大・・・。敗戦で軍国主義と決別したはずの平和国家の変節が際立つ。中国などへの対応を念頭に、日本は米国の『核の傘』への依存を深めつつある。自衛や抑止の名の下に『力による正義』の危うさが垣間見える。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃・・・。地球儀を回せば『力による正義』が横行する。その行き着く先は『核は正義』となる。絶対に認められない。非戦のために抑止力が必要だという主張は正論のようにも聞こえる。しかし、際限のない軍拡競争に陥りかねない。台湾有事を想定した日米拡大抑止協議では核兵器使用も視野に入れた議論が行われている。非核の国是が揺らぐ事態だ。何より国際ルールを踏みにじるトランプ米政権に安全保障を委ねる危うさを看過できない。戦後史の重みや、憲法の定める平和主義が抜け落ちているのではないか。しかも国民に十分な説明がないままに進められている。戦後日本は言論の自由を得たが、これでは戦前・戦時と変わらない秘密主義だ。自衛の名の下に戦争が始まった史実を忘れてはならない。北東アジアの緊張は日米同盟だけでは乗り越えられない。争いを防ぐ最大の抑止力は、官民を通じた外交力である。相手との対話を通じ、相互不信の解消に努めることが重要だと肝に銘じたい。日本の復興は、民主主義や法の支配を尊重する国際社会があり、日本が平和国家として歩んできたからこそ、成し遂げられたといえよう。国際秩序の再生に貢献する役割を日本は果たすべきだ。だからこそ私たちも、過ちを忘れず、平和への誓いを守り続けなければならない。歴史の教訓を顧みない動きには、被爆の惨禍を知るからこそ声を上げたい。それが80年続いた『戦後』を次世代につなぐ道になる。」
 私は、この盆休みに山口市のワイカムシネマで、山本薩男監督の映画「戦争と人間」の3部作を全て観ました。合計9時間を超える超大作です。日本が中国に侵略し、どのように戦線を拡大していったか、克明に描かれています。まさに、80年前までの日本は、「力が正義」だったことを実感しました。
 時同じく、NHKでは、昨夜までの2日間、NHKスペシャル「シミュレーション 昭和16年夏の敗戦」を放映しました。真珠湾攻撃の8ヶ月前に、時の政府内に「総力戦研究所」が編成され、軍官民から、若きエリートが招集され、日米開戦の戦局をまさにシミュレーションしました。研究所の結論は、日本の敗北となるーだったにも拘わらず、時の政府は、日米開戦を選択し、日中戦争からアジア太平洋戦争へ突入しました。時の政府は、「力は正義」を選択したのではないでしょうか。
 映画「戦争と人間」は、反戦を訴え、多くの若者が時の政府から拷問を受けるシーンが繰り返し映し出されます。映画で、吉永小百合が勤めていたのが、セツルメント診療所でした。私も、大学のサークルでセツルメントを行っていましたので、とても懐かしく感じました。このセツルメントにも特高警察が介入します。
 冒頭の記事にある反戦を訴える人々を弾圧する「秘密主義」が80年前の戦争を拡大する背景の一つであったことは間違いありません。スパイ防止法制定を訴える政党の台頭が、「新しい戦前」を想起させます。
 冒頭の記事を紹介しようと思ったのは、この言葉です。
 「歴史の教訓を顧みぬ動きには、被爆の惨禍を知るからこそ声を上げたい。」
 私は、今この、この言葉の重みを国民一人一人が感じる必要があると思います。
 私は、この夏、山本薩男監督の映画「戦争と人間」から、また、ブログに描いたように、笠原十九司著「南京事件 新版」から歴史の教訓を学びました。
 繰り返し、繰り返し、歴史の教訓を学んでいきたいと思います。
 そのことが「新しい戦前」にさせない道だと確信しています。

エレン・クラス監督の映画「リー・ミラー 彼女の瞳に映す世界」を観ました。

 盆休みに、エレン・クラス監督の映画「リー・ミラー 彼女の瞳に映す世界」を観ました。
 映画のパンフレットの『イントロダクション」を引用します。
 「リー・ミラーが映し出す写真には、人間が持つ脆さと残酷さの両方が刻みこまれ、今もなお人々を惹きつける歴史的記録として真実を伝えている。第二次世界大戦の激化を最前線で取材し、ノルマンディー上陸作戦やブーヘンヴァルトとダッハウ強制収容所の残虐行為を目撃し、ヒットラーが自死した1945年4月30日当日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室でポートレートを撮り戦争の終わりを伝えた。映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』は、現在における偉大な戦争報道写真家の一人としてその名を歴史に刻んだ、リー・ミラーの人生の10年間に焦点をあてた物語だ。」
 映画のパンフレットで、翻訳者・映画評論家の篠儀直子は、女性写真家としての葛藤を次のように書いています。
 「まだ、女性写真家が珍しかった時代に、彼女は男社会へと勇敢に突入していく。それを視覚化するかのように、映画のなかでリー・ミラーは繰り返し戸口に立つ。あるときは中に入ることを拒まれ、あるときはやすやすと入っていく。(中略
やがて、彼女の突破の試みは、最も強烈なかたちで成功する。タバコで警備兵を買収し、相棒のディヴィット・シャーマンとともに、ヒトラーのバスルームでの入浴写真をものにするのだ。彼女の最もアイコニックな戦争写真が、結局『撮られる側』としての写真だというのは皮肉にも思えるが、ブーツにこびりついた収容所の泥をバスマットに荒々しくなすりつけるリーの仕草は、信じる方向へと突き進む彼女の性格と、激しい怒りを表現して余りある。」
 ヒットラーのバスルームで写真を撮影するシーンは、圧巻でした。彼女の仕事の集約点がここにあることを実感しました。
 インターネットのアート・アジェンダに、映画評論家の長野辰次さんは、「そしてヒットラーのバスタブ以上の衝撃写真となったのが、ダッハウ強制収容所の内情をとらえたスクープ写真だった。貨車の中のユダヤ人たちの死体が薪のように積み重ねられ、収容所にはやせ細った女性や子どもたちが辛うじて生き残っていた。シュールという言葉ではもはや表現できない、人間の残酷さを極めて絶滅収容所の惨状を、リーは世界で初めて演じることとなった。」
 私は、ヒトラーの蛮行を取り上げた映画を何本か観てきたが、この映画は、心の奥底に「怒り」を湧き起こさせるものでした。
 主演を演じたケイト・ウィンスレットがこの映画を企画し、主演を務めました。リー・ミラーを映画化は何度も企画されたようですが、この程、初めての映画化となった背景に、ケイト・ウィンスレットの存在があったことは間違いありません。彼女の生き方が、リー・ミラーと重なり、見事な映画となっています。
 自国ファーストの究極が、ナチス・ヒットラーの政治だと思います。極右勢力が台頭してきた日本の現状の中だからこそ、ヒットラーのバスタブで、自らを撮影したリー・ミラーの写真から学ぶものは多いと思います。
 山口市のワイカムシネマで、22日まで上映されています映画「リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界」を一人でも多くの皆さんに観ていただきたいと思います。
 もし、ご覧になった方がおられましたら、感想をお聞かせください。また、この夏、皆さんがご覧になられた映画の感想をお聞かせください。
 リー・ミラーの写真を実際に観てみたいと思いました。