村瀬広著「映画は戦争を凝視する」をガイドに広瀬さんが紹介する戦争に関わる映画を順番に観ています。
第一章は、「9.11テロ以降の戦争と映画」です。
いつものように、宇部市で一番大きいレンタルビデオショップにあった映画を順番に観ています。
「ユナイテッド93」「告発のとき」「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」「アメリカン・スナイパー」を観ました。
どの映画も強烈に戦場や兵士の日常を描いた作品で、私の脳裏に焼き付くものばかりでした。
村瀬さんは、この本の中で「イラク戦争では、4500人以上の米軍兵士が戦死している。イラク戦争は終わったことになっているが、イラクから帰還した兵士の『戦争』は終わっていない。(中略)なお悲惨なのは、イラクの民間人が12万人も犠牲になっていることである。」
イラク戦争が国際法違反と指摘されている実態を鋭く表現した映画が「ドローン・オブ・ウォー」でした。
この映画は、オバマ政権のもとで行われた無人戦闘機ドローンをつかった攻撃を扱った作品です。
村瀬さんは、以下のようにこの実態を指摘しています。
「オバマ政権がアルカイダ幹部殺害など、無人戦闘機ドローンを使った秘密作戦をアフガニスタンやイラク、リビア、パキスタン、イエメンなどで展開してきたことは周知のことだ。政権発足後、非戦闘地域での無人機攻撃は数百件に上り、ブッシュ政権時をはるかに上回っている。無人機攻撃は米国兵の犠牲を伴わないが、現地の多数の民間人を犠牲にしている。パキスタン外務省は、アメリカの無人機攻撃を主権侵害、国際法違反と批判しているが、アメリカは続行の方針をまげていない。」
村瀬さんは、更に、無人戦闘機の攻撃について次のように指摘しています。
「ドローンはロボット兵士と並ぶ究極の兵器である。戦闘地域に行かず、母国の安全な場所から遠方の敵に的確な攻撃をヒットさせることができる。『アメリカ人の命を守る』ことが大義名分である。(中略)無差別爆撃ではなく、正確な標的殺害だから巻き添え被害は最小限で済むといわれるが、果たしてそうだろうか。攻撃はつねに過剰に行われているのではないか。(中略)2012年にアメリカ・スタンフォード大学やニューヨーク大学の研究機関がパキスタンにおけるドローンの犠牲者家族や目撃者、政府関係者などにインタビューした結果では、①一般市民が負傷し、殺害されている、②一般市民の日常生活に被害をもたらしている、③アメリカがより安全になったする証拠はあいまいである、④『法の支配』『国際法』による保護が軽視されている、などと指摘、批判されている。2010年時点の事実を背景にしたこの映画は、ドローンの使用倫理のみならず、科学・技術がもたらす現代戦争の深い闇を物語っている。」
映画の中で、無人戦闘機を操縦する兵士が「ここは、テロリスト製造工場だ」という趣旨の発言をしましたが、アメリカ軍による非戦闘員への攻撃が、新たなテロを生む温床となっていると感じました。
最近、金閣寺・銀閣寺住職である有馬頼底さんと立命館大学名誉教授である安斎郁郎さんとの対話本「宗教者と科学者のとっておき対話」を読みました。
その中で、安斎さんは「科学をきちんと管理し、制約しないと、とめどもない破壊のほうに向かいかねないわけです。こうした科学の行き過ぎた進歩にブレーキをかけるのは、科学それ自身ではなく、文学や芸術、宗教だと私は深く信じています。」「科学はいくらでも人を殺す道具立てをつくることができますし、ドローン兵器をはじめもっとやっかいなものができていくと思います。それに歯止めをかけるのは、命の大切さという普遍的価値を持つ仏教の思想が大事です。」とこの本の中で述べています。
ドローン兵器だけではなく、核兵器や原子などの科学の行き過ぎた進歩に、ブレーキをかけるのは、「命の大切さと言う普遍的価値」であることは間違いありません。
今、世界でまん延している新型コロナウイルス感染症をめぐる状況は、こうした科学の行き過ぎた進歩を見直し、「命の大切さという普遍的価値」を世界で共有していくことの重大さを世界に知らせていると思います。
新型コロナウイルスがまん延する最中、映画「ドローン・オブ・ウォー」を自宅で視聴しました。
この映画から多くのことを学びました。引き続き、村瀬広著「映画は戦争を凝視する」をガイドに、「戦争と映画」について学んでいきたいと思います。
皆さん方がご覧になった映画の感想をお聞かせ下さい。
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