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映画「ペトルーニャに祝福を」

 久しぶりに映画を観ました。西京シネクラブの7月例会で上映された北マケドニアを舞台にした、テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督の「ペトルーニャに祝福を」です。
 映画のパンフレットからストーリーを引用します。
 「大学で学んだ知識を生かす仕事に就くことができず、鬱々としながら実家で暮らしている32歳のペトルーニャ、知人のツテで仕事の面接の口を探してきた母親は、ペトルーニャに言う『きれいな恰好をしていって、本当の年齢ではなく、25歳というのよ』。友人からマシなワンピースを借りたペトルーニャが指定された場所に行くと、そこは多くの女性がミシンを踏む縫製工場だった。面接担当の男性責任者はスマホをいじりながらペトルーニャに年齢を聞くと『42歳に見える』と一言。そして『デスクワークの経験はないが、大学で学んだ知識がある』と語るペトルーニャに近づくと、そのスカートに手をかけ、からかった末に言う。『縫製はできず、就職経験もない。事務をしたことがない。見た目もそそらない。』最悪の面接の帰り道。パトルーニャは、キリストの洗礼を祝う『新現祭』の群衆に遭遇する。司祭が川に十字架を投げ込み、それを最初に見つけた男は、1年幸福に過ごせると信じられている祭りだ。多くの男たちが半裸の姿で川に向かう、その人波に飲まれ川沿いまで来たペトルーニャは、投げ込まれると同時に自分の前に流れてきた十字架を見て、思わず川に飛び込み、それを手に取った。」
 映画のパンフレットで作家の東直子さんは、「ペトルーニャの苦悩は、遠い異国のことではない」と語り日本の例を次のように述べています。
 「数年前、相撲の土俵の上で儀式中に倒れた男性を救命救助するために上がった女性に対して、主催者側によって降りるように指示が出されたことがあった。人命が関わっているというのに習慣を重んじたことに強い批判の声が上がった。女性が土俵に上がれないのは、土俵は神聖な場所で、女性が上がると汚れるから、という理由を聞いたことがある。難しい問題を孕んでいるとは思うが、その価値観を継承し続けているとしたら、女性差別の意識を継承し続けていることにもなるのではないだろうか。」
 映画のパンフレットで日本女子大学大学院生の是恒香琳さんは、日本の女性の現状をこう書いています。
 「今も日本では、女子学生が就職活動をすると、まず、化粧の指導がされる。パンツスーツではなく、スカートが好ましいと言われ、ヒールのあるパンプスを推奨される。いったい、面接官に何を評価してもらわねばならないというのだろか。友人は、ペトルーニャのように就職相談でセクハラを受けた。女性が働くことは、性的に扱われることが込みになっているのだ。それは空気のように、自然なことと見なされている。」
 内閣府が「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書」を4月末にまとめました。
 報告書に、2020年、非正規労働者数は、男性が前年より26万人減ったのに対し、女性はその倍近い50万人減ったとあります。
 報告書に、2020年、自殺者数は前年と比べ、男性は23人減ったのに、女性は935人増えているとあります。
 コロナ禍が、日本で第二第三のペルトーニャを増やしている状況です。
 核兵器禁止条約の前文にこのような文章があります。
 「平等かつ完全で効率的な女性と男性双方の参加は、持続性ある平和と安全の促進・達成の重要な要素であり、各軍縮における女性の効果的な参加の支持と強化に取り組みことを再確認する」
 条約成立に向け、主導的な役割を担ったサーロー節子さんは自著「光に向かって這っていけ 核なき世界を求めて」で次のように書いています。
 「男性ばかりの顔ぶれの会議はそれ自体が問題視され、会議の結論の信頼性すら問われかねないのが現実だ。」
 映画のパンフレットでバルカン現代研究者の山崎信一さんは、映画のラストシーンについて次のように語っています。
 「本作は、こうしたさまざまな社会問題を鋭く扱いながら、まったく悲劇的ではない、むしろ最後に十字架を手放したペトルーニャの清々しい表情は、観る者にカタルシスを与える。」
 ペトルーニャは、「私には十字架はいらいが、あなた達には必要でしょう」と手放します。
 十字架は、社会の慣習の象徴として描かれているのでしょう。
 私は、この映画を東京オリンピックのただ中で診ました。
 「女性はわきまえろ」という趣旨の発言をして辞任した森氏を名誉会長にしようとする動きがあるとの報道があります。
 日本には、まだまだ女性を差別する慣習が残っています。
 それを変えるためには、サーロー節子さんが述べたように、国会や県議会を始め、各種会議に女性の参加を増やすことが重要だと感じます。
 ペトルーニャの清々しい表情に、私は、この映画から希望を感じ取ることが出来ました。
 やはり映画はいいですね。会場で、聴覚の障がいをかかえた映画監督である今村彩子さんの映画が、萩ツインシネマで秋にかけて上映されることを知りました。この夏から秋に萩ツインシネマで今村作品に触れたいと思いました。
 皆さんが観られた映画の感想をお聞かせ下さい。

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