山口新聞は、11日、下関北九州道路に対して、次のように報じました。
「山口県は10日、下関市彦島地区と北九州小倉北区を橋梁で結ぶ「下関北九州道路」(下北道路)について、国などと連携して準備してきた具体的な整備箇所を盛り込んだルートの素案が完成し、都市計画の手続きを行う県と北九州市にそれぞれ提出したと発表した。ルートの具体的な内容は明らかにしていないが、下関市の旧彦島有料道路と、北九州の北九州都市高速道路を結ぶ延長約8キロとみられる。県は5月から6月にかけて下関市内で説明会を開き、地元住民らの意見を聞きながら、都市計画作業を進めていく。県道路建設課によると、素案は国と山口、福岡の両県、下関、北九州の両市が協力して取りまとめた。都市計画の決定権限を持つ山口県と政令市の北九州市に対し、詳細な整備箇所を落とし込んだ平面図や縦断図、横断面図などを提出したという。素案の提出を受け、県は都市計画手続きをスタート。5月30日と6月2日に下関市立彦島公民館(同市彦島江の浦町)、5月31日同市勝山公民館(同市秋根南町)で時間を分けて説明会を予定。素案のルートにかかる地権者や事業所の関係者らの意見を聞くことにしている。今後、都市計画原案の公表や県民向け説明会、都市計画審議会での議論などを経て、都市計画を決定。スケジュールは未定だが、同課によると、決定までには数年単位で時間を要する見通しという。両市間を結ぶ道路には関門橋と関門トンネルがあるが、施設の老朽化に加え、悪天候や事故などで通行止めが頻発。渋滞も発生しやすい区間のため、県などは交流人口の拡大や円滑な物流に支障を来しているとし、国に早期の事業化を求めている。都市計画手続きの着手を受け、山口県の村岡嗣政知事は『下関北九州道路は関門地域の自立的発展を支える重要な基盤であり、災害時にも機能する道路網を構築する観点から整備が必要。県としては、下関市と連携し、地域の合意形成を図りながら、都市計画の手続きを着実に進めるとともに、早期事業化に向けて国への要望活動に精力的に取り組んでいく」とのコメントを発表した。下関市の前田晋太郎市長は『都市計画の参考となる図面を基に今後、都市計画の手続きが進められる。下関北九州道路は関門地域のアクセス性を向上させ、さらなる観光振興、地域活性化につながると期待している』としたうえで『下関市としては、今後の手続きについても引き続き国や関係自治体、経済界と連携し、地域の合意形成を図りながら早期実現に向け取り組んでいく』とするコメントを発表した。」
日本共産党は、本州側も九州側の県議団、市議団が連携して、下関北九州道路の建設に反対してきました。
主な理由は、取付道などで、県や市の負担が膨大なものになることが想定されることや、ルート周辺に活断層が存在することなどです。
下関北九州道路が新しい段階に踏み出そうとしています。
この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。
県内の医師・歯科医師などで作る山口県保険協会報第597号(24年4月25日号)は、地域医療構想について次のように報じています。
「4月2日、経済財政諮問会議では、この間の『新経済・財政再生計画』に沿った取り組みを検証、社会保障分野において、5年間で国費ベースで8000億円の削減を実現したとして、『医療介護のサービス改革・医療DX等の推進』『負担と給付の見直し』など20項目の評価を示した。こうした社会保障費の大幅削減が重大な問題を投げかけている中で、地域医療構想の実現や一人当たり医療費の地域差半減についてはさらなる『課題』があるとして、その対応策を今年の『骨太の方針』に盛り込むよう求めた。これに先立ち厚労省は、『地域医療構想及び医師確保計画に関するWG(2024/3/13)において、残り2年余りで期限を迎える地域医療構想のさらなる推進のために取り組むべき事項を定期。さらに社会保障審議会医療部会(2024/3/21)では、それと併せて、2026年度以降の新たな地域医療構想の考え方をまとめることを表明し、その検討に入るために『新たな地域医療構想等に関する検討会』を立ち上げ、議論を開始している。現在の地域医療構想は2025年に向けての医療提供体制の整備計画であり、都道府県に設定された地域医療構想区域ごとの『病床数の必要量(必要病床数)』を医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに推計し、その数値に近づけるために病床の統合、再編(削減)が進められている。この間の政府の取組として、①各医療機関への『病床機能報告』義務付け、②構想区域ごとに設置した『地域医療構想調整会議』における病床再編等の議論の推進、③病床再編への金銭的なインセンティブとして『地域医療介護総合確保基金』の活用促進、さらには、④公的病院を中心に地域医療構想実現に向けた『具体的対応方針の再検証』の要請など、強引な病床再編を迫ってきた。しかし、この間、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、対応に貢献した公的病院の役割の見直しもあって病床確保の重要性が再認識されるなどの動きもあり、厚労省の思うような病床再編にはつながっていない。そうした中での経済財政諮問会議による『検証』であり、地域医療構想の『必要病床数』と2025年における『病床機能報告上の病床数』では、総数においては近づきつつあるものの、構想区域別・機能別の必要量に差異が生じている点を課題とした。その点は厚労省としても同様に住しており、『病床削減』目標達成の手段として、すべての都道府県に1~2カ所の『推進区域』を設定。その中から全国で10~20カ所の『モデル推進区域』を選定し、アウトリーチの伴走支援(地域の医療体制・診療実績のデータ分析や財政優遇など)を行うことを提唱した。これを含め目標達成に向けた国のかかわりも積極的に行うことを提起した。これも含め目標達成に向けた国の関わりも積極的であり、「積極的支援」として6項目を掲げ、目標達成(病床削減)に向けた国の意気込みを示している(2024年3月28日医政局長通知)。入院医療費が医療費全体を押し上げているとして病床削減の目標達成は重要課題となっており、急性期病床が想定より多いことを問題視した諮問会議の意見をもとに、地域医療構想実現に向け都道府県に対して大いにハッパをかけるものとなっている。その一方で、厚労省は2040年を見据えた『新たな地域医療構想』の考えをまとめるために立ち上げた『新たな地域医療構想等に関する検討会』は、3月29日に初会合を開いた。人口減少や高齢化が進む2040年ごろを見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大等に対応できるよう、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含め、地域の医療供給体制全体の地域医療構想(地域医療介護構想)として検討していくことを掲げた。2025年に向けた病床削減の議論は進んでいるが、それによって在宅に追いやられる事態が想定されるわけであり、外来、在宅医療等を含めた医療供給体制の議論が不十分であることも指摘されている。これについてはかかりつけ医機能と連動させての議論も必要となるが、すでに、医療法改定によって医療機能情報提供制度等を活用することによってかかりつけ医機能の報告も求められることとなっている。2025年4月からの施行であり、病床の問題にとどまらない『新たな地域医療構想』の動きは、外来医療の再編へと動いていくことが想定される。これに関しては様々な検討会やワーキングチームが検討を開始しており、その議論には大いに注目していく必要がある。」
今年3月21日に開催された第107回社会保障審議会医療部会の資料1「地域医療構想の更なる推進について」に、国と都道府県が協議し、今年度前半、「都道府県あたり1~2カ所の推進地域及び、全国10~20カ所程度のモデル推進区域を設定」するとあります。
2025年の地域医療構想最終年に向けてラストスパートを国はかけようとしています。
この動きに県は、どのように対応しようとしているのかしっかりチェックしていきたいと思います。
地域医療構想の最終版の局面に対するご意見と、2040年に向けた新しい地域構想策定むけた動きに対するご意見をお聞かせください。
精神障害者が庁舎に入れないなどの条例や規則が今も残っていると9日、朝日新聞は次のように報じました。
「精神障害があると庁舎に入れず、議会の傍聴もできないー。そんな条例や規則が、今も行政機関に残されている。表立った実害は報告されていないものの、障害者差別解消法に抵触するとして各地で見直しが進む。条例や規則の存在に職員らは気づかず、放置されていたケースもある。同法は障害を理由とする不当な差別を禁じている。精神障害者当事者らでつくる『心の旅の会』(浜松市)が、ネットで公開されている自治体の例規集から、精神疾患や障害を理由に施設の利用などを制限する条項の有無を調べた結果、2022年は460件見つかった。同会の指摘を受け、文部科学省は『不適切』として23年1月に、総務省は『障害者差別解消法に違反する』として同年9月に、自治体宛てに規定の見直しを通知した。同会は昨年12月~今年1月末にも再調査。一昨年より数は減ったものの、266自治体と44広域行政機関で333件の条項が確認された。内訳は教育委員会の傍聴が85件、庁舎の利用が53件、議会の傍聴が43件など。公民館や公園、プールのほか、歴史資料館といった文化施設でも利用制限があった。調査対象を広げたところ、88自治体の保育施設の設置条例などに、子どもの『精神病や悪癖』を理由に利用を制限する規定があることが新たに判明。同会は3月、こども家庭庁に撤廃を要請した。『今どきこんな表記が残っていたなんて思いもよらなかった』東北地方のある町の担当者は、教育委員会の会議規則に傍聴できない対象として『精神に異常があると認められるもの』が挙げられていることに驚いた。部署内で話題になったことがなかったといい、『規則まで目が配られていなかった。今の時代にそぐわない表記なので、見直したい』。自治体担当者の多くは取材に『条項を理由に精神障害者を排除することはしていない』としつつ、『町村合併前の古い条項がそのまま引き継がれてしまった』『規則を改正する際に見落とされた』などと釈明した。心の旅の会世話人の寺沢暢紘さん(78)は『私が知る限り『実害』はないが、これは自治体側の意識の問題だ』と強調。『指摘されて改正するのでは意味がない。気づく機会はあったはずで、差別をなくすために自分事として取り組んでこなかったことの現れだ』と話す。同会が確認した制限条項333件には、警察組織も含まれていた。同会が調査した時点では警視庁も含まれていたが、その後変更され、今も残るのは千葉と神奈川の両県となった。両県警の条項では庁舎や警察署、交番への立ち入りを禁止する対象を『精神障害者、泥酔者などで、公務を妨害し、又は他人に迷惑をかけるもの』などとしている。一方で、『障害を理由に窓口対応を拒否する』ことを禁じるなど、障害者差別解消法に基づき、障害を理由とした差別的な取り扱いを禁止する規定や要領も存在する。制限条項について両県警は『精神障害者だからといって一律に立ち入りを禁じているわけではなく、その都度の状況で判断している』などとして改正の予定はないという。」
私は、昨日までに、知事部局、教育委員会、県警の条例や規則等に、障害者差別解消法に抵触するような「制限条項」がないのか、総務部を窓口に照会を行いました。
回答が届きましたら報告したいと思います。
私は、大学で社会福祉を学び、障害者福祉のゼミが学びました。
障害者の人権が尊重される県行政となるよう、引き続き、調査と発言を続けていきたいと思います。
障害者の人権に関する皆さんのご意見をお聞かせください。
点字ブロックについて、7日、しんぶん赤旗日刊紙は、次のように報じました。
「歩道や駅の通路に敷かれた黄色い点字ブロック。発祥は日本です。1967年、岡山県の盲学校の近くに世界で初めて敷設されました。誕生から約60年、日本のバリアフリーは進んでいるのでしょうか。全日本視覚障害者協議会代表理事の山城完治さんと点字ブロックを点検しながら、まちを歩いて考えました。点字ブロックの正式名は『視覚障害者用誘導用ブロック』。突起を白杖でふれ、足で踏んだ感覚で確認します。進む方向と誘導する線状ブロックと前方の危険などを警告する点字ブロックがあります。2001年にJIS規格が定められ、統一化されました。弱視の人も利用するため、目立つことも重要です。バリアフリー法にもとづく『道路移動等円滑化基準』は、黄色や路面とも輝度比(明暗のコントラスト)が大きく、ブロック部分を識別しやすい色とするよう規定。ガイドラインで、ブロックを暗い色で縁取るなど、対比効果の発揮を『基準的な整備内容』として求めています。JIS規定の適用や床面との対比の確保は、建設物や公共交通機関旅客施設のバリアフリーガイドラインでも同様に求められています。ところが、現状では点字ブロックもさまざまです。山城さんと駅や公共施設を歩いてみました。すると、古い型の点字ブロックがあちこち残っています。突起が小判状のブロックは誘導を目的とするものですが、方向性が判別しにくく、点状ブロックとの区別がつきにくいため、JIS規格から外されました。しかし、改修は進んでいません。新旧の型が混在した場所も多く、誤認を招く恐れがあります。色の対比が低く、識別しにくいものもありました。山城さんが案内してくれたのは豊島区役所です。突起だけが路面に設置され、黄色が目立ちません。『全体が黄色でないと認識できません。さまざまな人が訪れる公共施設こそ、誰もが利用しやすいようにしてほしい』(山城さん)『エスカレーターにも誘導ブロックをつなげてほしい』との声も「あがっています。一方通行なので人とぶつからず、階段より安心だと、山城さんは説明します。公共交通機関のバリアフリーガイドラインでも『ニーズは高く、エスカレーターを使用できる環境を整備する必要がある』と認め、一定の条件の設置を標準整備内容として定めています。しかし、なかなか実現していません。『点字ブロックは、視覚障害者の駅での転落死亡事故の裁判闘争や障害者団体の運動、バリアフリー法にもとづくガイドラインの制定などを経て普及が進んだ』と、山城さんは振り返ります。18年のバリアフリー法改正で、基本理念に『社会的障壁の除去』が明確化されました。『障害』を社会的な障壁との相互作用によってつくり出されたものととらえ、『社会的障壁を取り除くのは社会の責務である』との考えを示すものです。しかし、この理念は生かされているでしょうか。『点字ブロックは(道)であり、自由に移動する権利を保障するものですが、設置も改修も不十分です。駅のホームドアも、いのちに関わる問題としてもっと設置を進めてほしい。駅員が減らされ、無人の窓口や駅が増えていることも重大です。困っていても助けを求められない状況は、移動の自由の保障に逆行しています」と山城さん。理念を実効あるものにするには当事者の運動が欠かせないと、山城さんは強調します。『当時者の声を、行政は積極的に聞いてほしい。政治の役割も重要です。日本共産党都議団は、都と要望交渉などにいつも一緒に取り組んでくれています。これからも力をあわせて頑張りたいです」
県庁の正面玄関に入って点字ブロックはありますが、突起だけが直接路面に設置されている状況で、輝度比がなく、細長い突起となっています。これは、JIS規格にも、道路移動等円滑化基準にも適合していないのではないか疑問を抱きます。
私は、昨日までに、①知事部局②県道関係③県警④教育委員会の施設で県民の利用のあるものの点字ブロックについて次の調査を依頼しました。
①JIS規格及び道路移動等円滑化基準に適合した施設
②適合していない施設
③今年度、適合に向けて転換する施設
④今後、適合に向けて転換する計画
今月末を目途に調査をお願いしています。
調査結果が分かれば、本ブログで紹介していきます。
障害者差別解消法が施行され、合理的配慮が求められます。
県内で、基準にあった点字ブロックの敷設が広がるよう、また、基準に合っていない点字ブロックが改修されるよう、しっかり、チェックしていきたいと思います。
点字ブロックに対する皆さんのご意見をお聞かせください。
私は、昨年12月8日に一般質問で登壇しました。
その中で、道路サポーター事業について質問しました。
その内容は、昨年の12月30日のブログで報告しましたが、再掲します。
県は、自治会等が県が管理する国道や県道の草刈りをする場合、委託料を支払う「きらめき道路サポート事業」を行っています。活動経費の一部支援額は、2020年から1㎡当たり44円です。2020年度から2023年度までに全職種の労務単価は8.9%上昇しています。
私は、「新年度から活動経費の支援額を引き上げるべきだ」と質しました。
片山土木建築部長は「『きらめき道路サポート事業』の活動経費の支援額については、近年、労務単価や燃料価格等が上昇していることを踏まえ、既に見直しの検討を進めている」と答えました。
再質問で、私は「1㎡当たり44円を来年度引き上げるということのか」と質しました。
片山部長は「現在、労務単価や燃料価格等が上昇していることを踏まえ、既に見直しの検討を進めている」と答えました。
道路整備課は、3月25日、ホームページで、「きらめき道路サポート・グループの募集について」を公表しました。
この中で、県からの活動支援を「作業面積1平方メートル当たり55円」としました。
今年度の募集期間は、5月31日までとなっています。
最寄りの土木建築事務所に申請書を提出してください。
問い合わせは、最寄りの土木建築事務所か、県道路整備課 電話083-933-3680にお願いします。
私の質問を契機に、きらめき道路サポート事業の県の活動支援の1㎡当たりの単価が今年度、11円増額しました。
引き続き、県民の皆さんの声を県政に届けてまいります。
皆さんのお声を藤本にお寄せください。
連休後半は、晴天に恵まれ、実家の田の畔の草刈り三昧でした。
姉達夫婦の協力も得て、何とか畔の周りの草刈りが終わりました。
今月末に、田に水をあて、代かきをします。
そして、来月最初に田植えをします。
家族や地域の皆さんの協力を受けて、綱渡りのような農業ですが、今年も無事、田植えを終わりたいと思っています。
その他の時間は、地上波での野球中継で、ソフトバンクホークスを応援しています。
3連敗もありましたが、5日6日と勝利をおさめ、パリーグ20勝一番乗りで、現在、リーグトップです。
その他の時間は、読書に時間をあてました。
昨日からは、藤岡陽子著「リラの花咲くけものみち」を読んでいます。このことについては、後日、報告できたらと思います。
今日は、連休中に読了した夏川草介著「スピノザの診察室」を再度紹介したいと思います。
この本は、小説でありながら、何度も朱色のペンで、大切だと思うところに線を引きながら読みました。
前半部分は、以前のブログで紹介しましたが、最後まで、線を引く部分があった小説でした。
今回も、大学からの研修医である南先生に主人公の哲郎が諭す部分を紹介します。
自宅で命を落とした患者の辻の死を見送った後に、哲郎は、医療についてこう語ります。
「医者がこんなことを言ってはいけないのかもしれないが、医療の力なんて、本当はわずかなものだと思っている。人間はどうしようもなく儚い生き物で、世界はどこまでも無慈悲で冷酷だ」「人は無力な存在だからこそ、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。真っ暗な闇の中につかの間、小さな明かりがともるんだ。その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれる。そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶんじゃないだろうか」
無慈悲な世界は、ウクライナやガザの状況をみると深刻です。
こんな世界の中だからこそ、「手を取り合っても、世界は変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変えられる」の言葉が今、重要です。
手を取り合うことが、明るさを生み、暗闇で震えている誰かに勇気を与える。
「ささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶ」この言葉も今、重要です。
その上で、改めて、哲郎が南に諭します。
「間違えてはいけないよ、先生。医療がどれほど進歩しても、人間が強くなるわけじゃない。技術には、人の哀しみを克服する力はない。勇気や安心を、薬局で処方できるようになるわけでもない。そんなものを夢見ている間に、手元にあったはずの幸せはあっというまに世界に呑みこまれて消えてしまう。私たちにできることは、もっと別のことなんだ。」
哲郎は、このこととは「暗闇で凍える隣人に外套をかけてあげること」なのだと結論づけます。
一言で言うと「科学とヒューマニズム」ということになるのかも知れません。
先日、映画「オッペンハイマー」を観ましたが、科学自体が人と世界の万物の幸せのためでなくてはならないと感じますし、科学だけでは人は救えないーそこには「人の哀しみ」を克服する力が必要なんだ。
そのことは、凍える隣人に外套をかえることだという哲郎の言葉を噛みしめています。
私は、今年になって、一番の読書体験をこの本でしたような気持ちです。
大学で哲郎と同僚だった准教授の花垣が、小説の最終版に、達郎を訪ねこう発言します。
「マチ(哲郎)が38で、南はたしか30前だろう。まあ年齢差は許容範囲か」
私は、花垣のこの一言で、この本のシリーズ化に期待しました。
この本は、中小病院で働く哲郎の仕事を通じて、医療とは人間とは何かを問う小説である大きな柱と、哲郎と南先生がどうなるのか心が躍る小説でもあります。次回作に期待します。
また、大学時代の哲郎を描く作品も読んでみたいようにも思います。
夏川草介さんには、スピノザの診察室を「神様のカルテ」のようにシリーズ化していただきたく願います。
この作品で、私は、どう生きるべきかが問われました。励まされました。
感想は、それぞれですが、是非、一人でも多くの方の夏川草介著「スピノザの診察室」を読んでいただきたいと思います。