昨日、中国新聞は、県知事が山口宇部空港の特定利用空港受け入れを決めたと、次のように報じました。
「山口県は、7日、自衛隊と海上保安庁の利用に備えた『特定利用空港・港湾』の山口宇部空港(宇部市)の指定を受け入れる方針を国に伝えた。関係閣僚会議などを経て指定される見込み。同日、国土交通省や防衛省にメールで回答した。指定後は年数回、自衛隊機が訓練で離着陸することが見込まれているため、事前に訓練の丁寧な情報提供をすることや騒音などの影響を押さえるよう努めること、日没後の実施は避けることなどを併せて要望した。指定を巡り住民団体からは『ミサイル攻撃の標的となる懸念を払しょくできない』と反対の声もあった。村岡知嗣政知事はこの日の記者会経験で『あくまで民生利用が主であり、訓練などの際には安全性について確認できるよう丁寧に説明をしていただきたい』と述べた。特定利用空港・港湾は大規模災害時には輸送の拠点となることも想定されている。現在の指定は全国の11空港・25港湾で、中国地方は境港(島根県松江市、鳥取県境港市)1カ所となっている。」
知事が、7日の記者会見で示した資料(県のホームページで閲覧可能)を紹介します。
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1、「特定利用空港」とは
●自衛隊・海上保安庁が、平素から必要に応じて空港を円滑に利用できるよう、空港管理者との連絡・調整体制を設ける者で、現在、全国で11空港が対象とされている。
2、本県の対応
●国からの説明を受け、地元宇部市と情報共有を図りながら、本取組の主旨や地元関係団体の意見も踏まえ、空港管理者として慎重に検討を行ってきた。
●県としては、地元関係団体の理解が得られたことや、災害時における住民避難や災害派遣の効果的な実施が期待されることなどから、「円滑な利用に関する確認事項」を確認し、対象として受け入れることとして、本日(8/7)、その旨を国に回答した。
●また、山口宇部空港は、県民生活や経済活動を支える重要なインフラであることから、地元関係団体の意見も踏まえ、国への要請を行った。
3、本県から国への要請事項
●あくまでも民生利用が主であるという本取組の趣旨を遵守すること。
●訓練計画について、事前に丁寧な説明及び情報提供を行うこと。
●安全確保に万全を期すこと。
●当空港や他空港を利用した訓練において、事故等があった場合には、原因・再発防止策などを適切に情報提供すること。
●訓練の実施に当たっては、騒音等による影響が最小限となるよう努めるとともに、日没後は行わないこと。
●民生利用及び災害時の迅速な対応に資する必要なインフラ整備が着実に進むよう支援すること。
(参考)山口宇部空港における空港の施設の円滑な利用に関する確認事項
1、空港管理者は、平素において自衛隊・海上保安庁の運用や訓練等による空港の施設の円滑な利用について、空港法その他の関係法令等を踏まえ、適切に対応する。
2、また、自衛隊・海上保安庁と空港管理者は、国民の生命・財産を守る上で緊急性が高い場合又は航空機の飛行の安全を確保する上で緊急性が高い場合(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態を除く)であって、当該空港の施設を利用する合理的な理由があると認められるときには、民生利用に配慮しつつ、緊密に連携しながら、自衛隊・海上保安庁が柔軟かつ迅速に施設を利用できるよう努める。
3、上記の着実な実施に向けて、防衛省中国四国防衛局・海上保安庁第7管区海上保安本部と空港管理者との間において連絡・調整体制を構築し、円滑な利用に関する具体的な運用のための意見交換を行う。国土交通省大阪航空局はこれに協力する。
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まず、資料の最後に掲載されてある確認事項にある「国民の生命・財産を守る上で緊急性の高い場合(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態は除く)」についてです。
つまり、本当に有事の際に「特定利用空港」は利用されないのかいついてです。
昨年12月に開かれた関係閣僚会議の資料に「有事のみならず平時においても円滑な利用を確保する」とあります。また、国が示したQ&Aに「国民の生命・財産を守る上で緊急性の高い場合」の一つとして「弾道ミサイル対処を想定している」とあります。
政府は、一つの資料では有事の際を想定していないといいながら、別の資料では、有事を想定していると説明しています。つまり、有事の際にも使用される可能性が否定できません。
次に、先日のブログでも指摘した、国のQ&Aで示している「自衛では、武器・弾薬等を含む物資輸送や部隊の展開のために、必要な火工品や弾薬等の積卸しのために『特定利用空港・港湾』を利用することがある」としている点についてです。
瀬戸内ネットとの懇談の中で、県担当者は、山口宇部空港が「特定利用空港」に指定された場合、山口宇部空港で、弾薬等の積卸しが行われる可能性があることを認めました。更に、「特定利用空港」に指定されれば、弾薬等の積卸しが行われる可能性のあることを地元関係団体に説明していなかったことを県担当者は認めました。
資料に、地元関係団体の理解が得られたとありますが、「特定利用空港」の指定とは、有事の際にも使用される可能性があり、弾薬等の積卸しがされる可能性があることは、地元関係団体に十分説明されたとは言い難いと思います。
私は、県が、「特定利用空港」の指定を受け入れ、国と確認事項を交わしたことに抗議すると同時に、広く県民が参加できる説明会の開催を国に求めるべきであることを強く求めたいと思います。
日本共産党として、上京し、特定利用空港に指定された問題について関係省庁に要請・懇談を行うための調整を開始しました。
山口宇部空港が特定利用空港に指定された問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。
8月1日、しんぶん赤旗日刊紙の「話題作を読み解く」というコーナーで、津田塾大学の木村朗子さんが、王谷晶著「ババヤガの夜」を取り上げ、次のようなコメントが掲載されました。
「王谷晶『ババヤガの夜』が日本作品で初めてダガー賞を受賞した(英語版『The Night of BabaYaga』サム・ベット訳)。『赤旗』の読者は連載小説でおなじみの『他人やのゆうれい』の作者である。身のうちに燃えるような暴力への欲求がくすぶっている最強の女、新道依子はひょんなことからヤクザの令嬢のボディーガードとなった。そんな不釣り合いな二人が手をとりあって生き抜く物語。一般にイメージされる推理小説とはだいぶ趣が違うが、ダガー賞を選出する英国推理作家協会は、英語ではThe Crime Writers’Associationといって犯罪小説の作家協会なのである。『ババヤガの夜』はもともと河出書房新社の季刊文芸誌『文芸』2020年秋号の特集『覚醒するシスターフッド』の目玉小説として出された。シスターフッドとは女同士の連帯を意味する。2019年秋号から坂上陽子編集長のもと『再起動』した『文芸』は、リニュアル第2号となる秋号の特集『韓国・フェミニズム・日本』で反響を呼び、異例の増刷となった。読者の熱い要望で単行本として再出版し、さらに翌20年には小説版を刊行するなど好評を得た。この背景には、2017年にハリウッド女優が大物プロデューサーの性暴力を告発し、女性たちがSNSで連帯を表明した#MeToo運動が世界的に広がっていたことがある。韓国フェミニズムの火付け役となったのチョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』が2018年に斉藤真理子訳で出版され、日本でもベストセラーになった。2019年にはフェミニズムに特化したムック本『エトセトラ』『シモーヌ』が続々と創刊した。王谷晶は受賞のスピーチで自らの作家としてのテーマを『あいまいであること』とし、『自分のあいまいさを受け入れ、他人のあいまいさを受け入れることが世の中をよりよくすると私は信じている』と述べた。『あいまい』ということばは1994年にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎の『あいまいな日本の私』と題したスピーチを思い起させる。大江のスピーチでは両義性を意味するambiguousという語が用いられた。翻訳者のサム・ベットによる通訳では王谷晶の『あいまい』はカテゴリー化しにくいもの(hard to categorize)と訳された。主人公の女二人の関係や人生についてラベリングしないこと、具体的にはレズピアンと名付けマイノリティーの物語に囲い込んでしまわないこと。それはまさしくカテゴリー化を拒絶することである。読者はここに『女の敵は女』などという思い込みを超えた連帯の可能性をみるだろう。タイトルにあるババヤガはスラヴ民話に出てくる魔女だが実は小説中には出てこない。主人公たちはただ『鬼婆になりたい』と言うのである。英語役ではここにババヤガという言葉をあて、物語の骨子がクリアになった。小説中に『暴力は自由な人間のためのもの』という言葉がある。暴力をふるうことに震えるほどの喜びを感じている主人公像は、男女の立場を入れ替えてしまえば成り立つまい。フェミニズムがいまだ道半ばにあることを世界中が感じている今だからこそ喝采をあびる小説なのである。」
今、河出文庫の「ババヤガの夜」を半分読み終えました。私が今まで読んだ小説の中には登場しなかった主人公の新道依子です。しかし、一気に、新道の一挙手一投足に引き付けられていきます。
作家の深町秋生さんは、解説「クラッシュ&フリーダム」の最後に、「読み手の固定観念を破壊し、新たな価値観を打ち立ててみせる。本作で見事にやってのけた王谷晶のクラッシャーで、同時に自由で解き放たれたクリエイターでもあると思う。」と書いています。まさに、「新しい価値観を打ち立ててみせる」部分が世界で高い評価を受けたのだと思います。
深町さんは、「この魔窟というべき場で、新道と尚子が果たしてどんな道を進むのか。(中略)読者をあっと言わせる展開になっていくのだが、これも自由な考えを持つ著者にしか思いつけない仕掛けだろう。苦難の道を潜り抜けてたどりつくふたりの姿は涙が出るほど輝かしい。」と書いています。
新道と尚子が小説の後半で、どのような道を進むのか、読み進めるのが楽しみでたまりません。
王谷晶著「ババヤガの夜」を読まれた方の感想をお聞かせください。また、他の王谷作品に関する皆さんの感想をお聞かせ下さい。
NHK山口放送局は昨日、長生炭鉱の遺骨収集のための潜水調査について次のように報じました。
「戦時中に起きた水没事故で、183人が犠牲となった宇部市の海底炭鉱『長生炭鉱』で遺骨を探すための潜水調査の準備のため、坑道の中に酸素の入ったタンクを運び入れる作業が行われています。8日の調査では、これまで入ったことのない場所まで進む予定です。宇部市の海底炭鉱『長生炭鉱』では、戦時中の1942年に坑道が水没する事故が起き、朝鮮半島出身の136人を含む183人が亡くなっていて、市民団体が去年から坑道に残された遺骨を探す潜水調査を行っています。6日は、8日行う調査の準備として、海に突き出た排気筒からダイバーが坑道に入り、酸素の入ったタンクを運び入れる作業を行っています。今回の調査では、ことし6月の前回の調査で到達した排気筒から沖に向かって行動を200メートル余り進んだ場所からさらに奥に向かい、事故が起きたとみられる場所に近づいていく予定です。これまで入ったことのない場所まで進むことになり、調査の時間は最長で7時間にわたると想定されています。そのため、潜水の途中でタンクの交換が必要になる可能性があるとして、今回、事前に準備を行っているということです。調査を行うダイバーの伊佐治佳孝さんは『事故のないように準備をしてあさっての潜水調査を迎えたいです』と話しています。」
昨日、私は、長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会の運営委員として、午前中、潜水調査のサポートを行いました。
昨日、潜水調査の準備内容を説明するダイバーの伊佐治さん
今日は、午後1時から宇部市内の新川ふれあいセンターで、「長生炭鉱ジャーナリスト討論フェス」が行われます。討論フェスに参加するのは、ノンフィクションライターの安田浩一さんと、ジャーナリストの青木理さんです。当日の会費は1000円です。今からでもご参加ください。
明日の潜水調査は、当初は午前9時から潜水開始でしたが、午前7時からに変更されました。午前6時30分に坑口ひろば集合です。
明日は、遺骨が収集されることを願って、サポート活動を続けていきたいと思います。
長生炭鉱の遺骨収集に対する皆さんのご意見をお聞かせください。
昨日のKRY山口放送は、瀬戸内ネットが特定利用空港問題で、県に申し入れを行ったことを次のように報じました。
「自衛隊が平時から円滑に利用できる『特定利用空港』に国が山口宇部空港の追加を検討していることについて県内の市民団体が、空港に弾薬が持ち込まれる可能性などを指摘し、どのような運用が行われるのか明らかにするよう、県に求めました。県に申し入れたのは、市民団体『瀬戸内ネット』です。特定利用空港は、自衛隊が平時から民間空港を円滑に利用できるようにするもので、これまでに全国11の空港が指定されています。指定されると、年に数回程度の自衛隊機による離発着訓練などが想定されています。瀬戸内ネットは、国の説明のなかで『自衛隊が武器・弾薬などを含む物資輸送や部隊の展開のために特定利用空港を利用することがある』とされていることについて、県に認識を質しました。(瀬戸内ネット・久米慶典共同代表)『弾薬は入る、それは認めるか』(県の担当者)『おそらく入ると思う』(瀬戸内ネット・久米慶典共同代表)『弾薬を取りだしたら、何日かどこかに保管する必要がある。宇部空港に保管する所はあるのか』(県の担当者)『国から現時点で具体的な訓練の計画はない。爆発物を伴った訓練を実施する場合には、事前に県と調整する』瀬戸内ネットはこのほか、有事の際にアメリカ軍が山口宇部空港を利用する可能性が極めて高くなるなどと指摘。県は、『宇部市と情報共有を図りながら、国の取り組みの趣旨や地元関係団体の意見も踏まえ、適切に対応する』などと回答しています。」
国が示した「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」に関するQ&Aに次のようなものがあります。
Q14自衛隊や海上保安庁が「特定利用空港・港湾」を利用する際に、弾薬等の危険物も取扱うのですか?
A自衛隊では武器・弾薬等を含む物資輸送や部隊の展開のために、海上保安庁では海上保安業務(海南救助や領海警備等)い必要な火工品や弾薬の積卸しのために、『特定利用空港・港湾』を利用することはあります。その場合においても、関連する法令に則り、安全に十分配慮してまいります。
県は、このQ&Aから、山口宇部空港が特定利用空港に指定された場合、弾薬の積卸があり得ることを認めたのです。
瀬戸内ネットの懇談の中で、特定利用空港に指定された場合、空港に弾薬の積卸があり得ることを地元住民に伝えたのかとの質問に、県担当者は伝えていないと答えました。
山口県宇部空港管理条例10条に禁止行為が定められてあり、その一つに「爆発物又は危険を伴う可燃物を携帯し、又は運搬すること」とあります。
山口宇部空港は、弾薬の積卸しを想定していません。特定利用空港に指定された場合、それでも知事は、弾薬の積卸しを許可するのでしょうか。知事の裁量権の濫用が疑われる重大問題だと思います。
引き続き、特定利用空港指定された場合、弾薬の積卸しが行われる可能性があることを県担当者が認めた問題の解明に取り組んでいきたいと思います。
この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
ロシア・カムチャツカ半島付近で、7月30日に発生した大地震により、太平洋側の広範囲にわたって津波警報が発表されました。8月1日のしんぶん赤旗日刊紙は、避難所でのエアコン設置率について次のように報じました。
「猛暑が続く今夏を直撃した津波で、災害時に避難所となる体育館へのエアコン設置が改めて課題となりました。文部科学省によると、今年5月現在、公立学校の体育館の冷房の設置率は全国平均が22.0%、中学校が23.7%です。自治体によっては数%にとどまる県も多く、東京都92.6%、大阪府の49.8%と大きな開きがあります。同省は2023年度から、エアコン設置工事の国庫補助を3分の1から2分の1へ引き上げています。」
新聞で取り上げられた文科省の調査で、山口県の小中学校の空調設備設置率は9.8%、避難所指定校の設置率は10.0%となっています。
私は、昨年11月県議会で、愛知県では、今年度から、福井県では新年度から、避難所となる県立体育館にエアコンを設置する予算を計上すると報じられていることを紹介し、新年度予算で、避難所となっている県立学校の体育館所エアコン整備を進めるべきだと質しました。
私は、引き続き、避難所になっている県立学校の体育館へのエアコン設置の促進を求めていきたいと思います。
6月26日、朝日新聞は、「災害時の避難所に指定されている公立学校の防災機能に関する調査結果が25日、公表された。能登半島地震の教訓から、入浴や洗濯などに用いる生活用水の整備について調べると、備えている学校は36.7%にとどまっていた。」と報じました。
この調査は、昨年11時点の状況を調査したものです。
山口県は、小中学校で、19.8%、高等学校で54.8%、特別支援学校で16.7%、合計で22.7%となり、中国地方5県の中では最低となっています。
避難所となっている県立学校の生活用水を整備していくことについても改善を求めていきたいと思います。
全国で災害が相次いでいます。避難所に対する皆さんのご意見をお聞かせください。
今朝の読売新聞は、模擬原爆について次のように報じました。
「終戦直前の1945年7月~8月、全国各地に原爆そっくりの形をした大型爆弾が投下された。米軍が軌道を確認し、着弾精度を高める訓練をするために製造した模擬原爆だ。広島・長崎の悲劇につながるもので、約400人が死亡したとされる。その遺族らは『原爆による被害は、広島と長崎だけではない』と訴える。『遺骨は見つからず、出てきたのは変形したがま口だけ』。大津市の松浦儀明さん(88)は、模擬原爆で姉・治子さん(当時16歳)を亡くした80年前を思い巡らせる。8人きょうだいの長女だった治子さん。白いエプロンを身に着け、お昼時には『ご飯やで』とかいがいしく庭先まで家族を呼びに出た。地元の大津高等女学校に通い、自宅から2・5キロ離れた東洋レーヨン滋賀工場(現・東レ氏が事業場)で勤労奉仕に励んでいたとき、空襲に巻き込まれた。米爆撃機『B29』が工場に向けて模擬原爆1発を投下したのは45年7月24日朝だ。建物は吹き飛んで火災が起きた。家族が工場や学校に安否を尋ねたが消息は不明のまま。一家が工場に呼び出されたのは空襲から半年後だった。母ナオさんと弟と共に工場に向かう。犠牲者の遺品がまとめられたかごの中には、治子さんが使っていたがま口があった。元々赤いビーズで装飾されていたが、火災で変色したのだろうか紫色になり、ぐにゃりと曲がっていた。遺骨は見つからず、治子さんの墓には、形見となったがま口を入れた。この空襲では16人が死亡、100人以上が負傷したとされる。戦時中は松浦さん自身も空襲に見舞われた。生まれつき股関節に障害があり、素早く動くことができない。それでも空襲警報が鳴るたびに不自由な脚を動かし、安全な場所に逃れた。戦後は生活に困窮し、木の実を食べ、駅前で物乞いをして生き抜いた。だが幼い妹は栄養失調で息を引き取った。苦しい生活の中でも、遺骨すら見つからなかった治子さんのことを忘れることはなかった。約20年前、研究者から、東レ滋賀工場の爆弾は、模擬原爆による被害だったと聞かされた松浦さん。『原爆につながる爆弾だとはとても思わなかった』と驚がくした。『戦争でしわ寄せを喰らうのは一般市民。大切な家族を失い、暮らしをめちゃくちゃにされた』。今も悔しさをかみしめる。戦後、歴史に埋もれていた模擬原爆の存在に光を当てたのは愛知県の市民グループ『春日井の戦争を記録する会』だった。同会は1986年中学教諭らで結成した。米軍が本土爆撃の効果を検証した調査団の報告書を精査し、終戦前日の45年8月14日、春日井市が狙われた空襲を調べていくうち、報告書の記述の脇に『スペシャル17番』という単語があることに気付いた。研究者らの間では、広島と長崎に投下された原爆は、それぞれ特殊任務(スペシャル)『13番』『16番』と知られている。同会の金子力さん(74)は、『春日井の空襲と原爆は関連している』と直感した。金子さんはその後の91年、国立国会図書館(東京)で、米軍が原爆を投下するため特別に編成した『第509混成群団』の出撃任務一覧表と地図を見つける。資料には『特殊爆撃作戦』と書かれ、広島や長崎と並び、春日井市内の地名も記されていた。米アラバマ州の空軍基地でも調査を行い、同群団の爆撃を詳細にまとめた『特殊作戦任務報告書』を発見。各地の空襲に詳しい『空襲・戦災を記録する会』の工藤洋三さん(75)(山口県周南市)も加わり、読み解くうちに、B29が原爆と同じ形状で同質量の模擬原爆を搭載し、秘密裡に日本上空で投下訓練を繰り返していたことを突き止めた。会員らは収集した資料などを手掛かりに、18都道府県で計49発が投下されていたことを明らかにした。このうち46発は着弾地点まで特定した。金子さんは『核兵器が初めて使われたのは日本で、各地が実験台になった過去に思いを巡らせてほしい』。工藤さんも『49発の模擬原爆を学ぶことで原爆投下計画の全体像が理解できる』と話す。」
模擬爆弾が投下された日付と都府県名が掲載されています。
1945年7月20日=福島、茨城、東京、新潟、富山
24日=岐阜、三重、滋賀、兵庫、愛媛
26日=福島、茨城、新潟、富山、静岡、愛知、大阪
29日=福島、東京、京都、和歌山、山口
8月 8日=福井、三重、徳島、愛媛
14日=愛知
1945年7月29日に模擬原爆が投下された山口県の都市は、私が住む宇部市です。
私の本棚に、1995年に刊行された、宇部市の空襲を記録する会編の「宇部大空襲 戦災50年目の真実」という本があります。
この中に、新聞記事にも出てこられた工藤洋三さんによる「模擬原爆(パンプキン)投下ー7月29日ー」があります。工藤さんは、こう書いています。
「米軍の原子爆弾投下専門部隊である『第509混成群団』は原爆投下に先立ち、日本本土で模擬原爆を使って訓練をおこないました。使用された爆弾は長崎原爆と同型同重量(4・5トン)のパンプキン(かぼちゃ)とよばれました。宇部市には、同年7月29日、3発が落とされました。第一発目は、同日午前8時41分、宇部窒素肥料工場を標的に投下されましたが、目標をはずれて宇部市西海岸通1丁目の住宅付近(現在の宇部市新町、オオバヤシスポーツ斜め前の道路上)に落下。二発目は宇部曹達会社(現、セントラル硝子)をねらい午前8時49分に投下し、同じ工場を直撃。三発目は日本発動機油会社(現在の宇部市ガス付近)を目標に午前9時2分に投下され、宇部市東海岸通(現、東本町1丁目)の梶山文作商店を直撃しました。」
宇部警察沿革誌によれば、3発で、死者25人、傷者36人、行方不明0人、被害戸数86戸、罹災者429人だったとこの本に書かれてあります。
全国で49発の内、山口県宇部市に3発の模擬原爆が投下されたこと、原爆の被害は、宇部市にまで及んだことを、伝えていきたいと思います。
そして、二度と、このような事態を繰り返さない社会を目指していきたいと思います。
模擬原爆について、皆さんのご意見をお聞かせください。