災害対策を理由に、日本国憲法に国家緊急権を具体化した緊急事態条項を創立する憲法改正を自民党改憲草案などで打ち出している問題で、山口県弁護士会の中村友次郎会長は、7月26日付で「国家緊急事態条項の創設のための憲法改正に反対する会長声明」を発表しました。
会長声明の全文と資料は以下の通りです。
・・・
国家緊急事態条項の創設のための憲法改正に反対する会長声明
2016年(平成28年)7月26日
山口県弁護士会 会長 中村友次郎
近時,災害対策を理由に,日本国憲法に国家緊急権を具体化した緊急事態条項を創設する憲法改正が,超党派で議論されている(注1)。
国家緊急権(注2)とは,戦争・内乱・恐慌・大規模自然災害など平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において,国家の存立を維持するために,憲法秩序を一時停止して非常措置を執る権限とされる。
しかし,国家緊急権は人権保障の停止及び権力分立の停止をもたらすものであり,国家権力を抑制して人権保障を図る立憲主義を破壊する危険を持つ。歴史的にも,ドイツ・ワイマール憲法やフランス第5共和制憲法の下に於いて,国家緊急事態条項は濫用され,権力者の地位や政策の強化,反政府的言動をする者の排除,深刻な人権侵害がなされた(注3)。
災害対応において,「普段できないことは本番でもできない」とされている(注4)ように,災害によって準備できていない事態が起きた場合には,国家緊急権の強力な権限でも対処できない。
また,実際に災害が起きた場合,現行法制の下で,次のような対応が可能である。
まず,内閣総理大臣は,非常災害が発生した際,災害緊急事態を布告し(災害対策基本法105条 注5),生活必需物資等の授受の制限,価格統制及び債務支払の延期等を決定できる(同法109条1項 注6)ほか,必要に応じて地方公共団体等に必要な指示ができるなど(大規模地震対策特別措置法13条1項 注7),内閣総理大臣への権限集中を定めた規定が既に存在する。
また,防衛大臣が,災害に際して部隊を派遣できる規定もある(自衛隊法83条1項,注8)。
さらに,都道府県知事の強制権 (災害救助法7,8,9,10条 注9),市町村長の強制権 (災害対策基本法59,60,63,64,65条 注10) など地方自治体においても,私人の権利を一定範囲で制限する規定も設けられている。
以上のとおり,既存の法制を活用することで十分に災害に対応することは可能であり立憲主義を破壊し,基本的人権を不当に制約する危険性を持つ国家緊急権を災害対策として憲法に創設すべきではない。
よって,当会は災害対策を理由とする国家緊急権創設のための憲法改正に反対する。
以上
注1 自由民主党日本国憲法改正草案(抜粋)
第九章 緊急事態
第九十八条(緊急事態の宣言)
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
第九十九条(緊急事態の宣言の効果)
1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
注2 戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限(芦部信喜『憲法 第五版』岩波書店 2011 365頁)
注3 「緊急事態条項の是非について」飯島滋明(名古屋学院大学研究年報第28号(2015.12))48頁【2】ヴィマール共和国と非常事態権限,51頁【3】フランス第5共和制憲法の「緊急権」(16条),53頁【4】緊急事態条項の歴史と評価
注4 内閣府hpより,市町村における災害対策「虎の巻」(平成27年8月 内閣府)2ページ目「災害対応の原則」
注5 災害対策基本法 第百五条 (災害緊急事態の布告)
非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進し、国の経済の秩序を維持し、その他当該災害に係る重要な課題に対応するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる。
2 前項の布告には、その区域、布告を必要とする事態の概要及び布告の効力を発する日時を明示しなければならない。
注6 災害対策基本法 第百九条 (緊急措置)
災害緊急事態に際し国の経済の秩序を維持し、及び公共の福祉を確保するため緊急の必要がある場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置をまついとまがないときは、内閣は、次の各号に掲げる事項について必要な措置をとるため、政令を制定することができる。
一 その供給が特に不足している生活必需物資の配給又は譲渡若しくは引渡しの制限若しくは禁止
二 災害応急対策若しくは災害復旧又は国民生活の安定のため必要な物の価格又は役務その他の給付の対価の最高額の決定
三 金銭債務の支払(賃金、災害補償の給付金その他の労働関係に基づく金銭債務の支払及びその支払のためにする銀行その他の金融機関の預金等の支払を除く。)の延期及び権利の保存期間の延長
注7 大規模地震対策特別措置法 第十三条 (本部長の権限)
本部長(※)は、地震防災応急対策等を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定行政機関の長及び関係指定地方行政機関の長(第十五条において準用する災害対策基本法第二十八条の五 の規定により権限を委任された当該指定行政機関の職員及び当該指定地方行政機関の職員を含む。)、関係地方公共団体の長その他の執行機関、関係指定公共機関並びに関係指定地方公共機関に対し、必要な指示を行うことができる。
※ 大規模地震対策特別措置法 第十一条 (警戒本部の組織)
警戒本部の長は、地震災害警戒本部長(以下第十三条までにおいて「本部長」という。)とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもつて充てる。
注8 自衛隊法 第八十三条 (災害派遣)
都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。
注9 災害救助法 第七条 (従事命令)
都道府県知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるときは、医療、土木建築工事又は輸送関係者を、第十四条の規定に基づく内閣総理大臣の指示を実施するため、必要があると認めるときは、医療又は土木建築工事関係者を、救助に関する業務に従事させることができる。
2 地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)は、都道府県知事が第十四条の規定に基づく内閣総理大臣の指示を実施するため、必要があると認めて要求したときは、輸送関係者を救助に関する業務に従事させることができる。
3 前二項に規定する医療、土木建築工事及び輸送関係者の範囲は、政令で定める。
4 第五条第二項の規定は、第一項及び第二項の場合に準用する。
5 第一項又は第二項の規定により救助に従事させる場合においては、その実費を弁償しなければならない。
第八条 (協力命令)
都道府県知事は、救助を要する者及びその近隣の者を救助に関する業務に協力させることができる。
第九条 (都道府県知事の収用等)
都道府県知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるとき、又は第十四条の規定に基づく内閣総理大臣の指示を実施するため、必要があると認めるときは、病院、診療所、旅館その他政令で定める施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取り扱う物資の保管を命じ、又は物資を収用することができる。
2 第五条第二項及び第三項の規定は、前項の場合に準用する。
第十条 (都道府県知事の立入検査等)
前条第一項の規定により施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の保管を命じ、又は物資を収用するため必要があるときは、都道府県知事は、当該職員に施設、土地、家屋、物資の所在する場所又は物資を保管させる場所に立ち入り検査をさせることができる。
2 都道府県知事は、前条第一項の規定により物資を保管させた者に対し、必要な報告を求め、又は当該職員に当該物資を保管させてある場所に立ち入り検査をさせることができる。
3 第六条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合に準用する。
注10 災害対策基本法 第五十九条 (市町村長の事前措置等)
市町村長は、災害が発生するおそれがあるときは、災害が発生した場合においてその災害を拡大させるおそれがあると認められる設備又は物件の占有者、所有者又は管理者に対し、災害の拡大を防止するため必要な限度において、当該設備又は物件の除去、保安その他必要な措置をとることを指示することができる。
2 警察署長又は政令で定める管区海上保安本部の事務所の長(以下この項、第六十四条及び第六十六条において「警察署長等」という。)は、市町村長から要求があつたときは、前項に規定する指示を行なうことができる。この場合において、同項に規定する指示を行なつたときは、警察署長等は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
第六十条 (市町村長の避難の指示等)
災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者等に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる。
2 前項の規定により避難のための立退きを勧告し、又は指示する場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、その立退き先として指定緊急避難場所その他の避難場所を指示することができる。
3 災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、避難のための立退きを行うことによりかえつて人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者等に対し、屋内での待避その他の屋内における避難のための安全確保に関する措置(以下「屋内での待避等の安全確保措置」という。)を指示することができる。
4 市町村長は、第一項の規定により避難のための立退きを勧告し、若しくは指示し、若しくは立退き先を指示し、又は前項の規定により屋内での待避等の安全確保措置を指示したときは、速やかに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
5 市町村長は、避難の必要がなくなったときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。前項の規定は、この場合について準用する。
6 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の発生により市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったときは、当該市町村の市町村長が第一項から第三項まで及び前項前段の規定により実施すべき措置の全部又は一部を当該市町村長に代わって実施しなければならない。
7 都道府県知事は、前項の規定により市町村長の事務の代行を開始し、又は終了したときは、その旨を公示しなければならない。
8 第六項の規定による都道府県知事の代行に関し必要な事項は、政令で定める。
第六十三条 (市町村長の警戒区域設定権等)
災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、人の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、警戒区域を設定し、災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずることができる。
2 前項の場合において、市町村長若しくはその委任を受けて同項に規定する市町村長の職権を行なう市町村の職員が現場にいないとき、又はこれらの者から要求があつたときは、警察官又は海上保安官は、同項に規定する市町村長の職権を行なうことができる。この場合において、同項に規定する市町村長の職権を行なつたときは、警察官又は海上保安官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
3 第一項の規定は、市町村長その他同項に規定する市町村長の職権を行うことができる者がその場にいない場合に限り、自衛隊法 (昭和二十九年法律第百六十五号)第八十三条第二項 の規定により派遣を命ぜられた同法第八条 に規定する部隊等の自衛官(以下「災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官」という。)の職務の執行について準用する。この場合において、第一項に規定する措置をとつたときは、当該災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
4 第六十一条の二の規定は、第一項の規定により警戒区域を設定しようとする場合について準用する。
第六十四条 (応急公用負担等)
市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該市町村の区域内の他人の土地、建物その他の工作物を一時使用し、又は土石、竹木その他の物件を使用し、若しくは収用することができる。
2 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、現場の災害を受けた工作物又は物件で当該応急措置の実施の支障となるもの(以下この条において「工作物等」という。)の除去その他必要な措置をとることができる。この場合において、工作物等を除去したときは、市町村長は、当該工作物等を保管しなければならない。
3 市町村長は、前項後段の規定により工作物等を保管したときは、当該工作物等の占有者、所有者その他当該工作物等について権原を有する者(以下この条において「占有者等」という。)に対し当該工作物等を返還するため、政令で定めるところにより、政令で定める事項を公示しなければならない。
4 市町村長は、第二項後段の規定により保管した工作物等が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又はその保管に不相当な費用若しくは手数を要するときは、政令で定めるところにより、当該工作物等を売却し、その売却した代金を保管することができる。
5 前三項に規定する工作物等の保管、売却、公示等に要した費用は、当該工作物等の返還を受けるべき占有者等の負担とし、その費用の徴収については、行政代執行法 (昭和二十三年法律第四十三号)第五条 及び第六条 の規定を準用する。
6 第三項に規定する公示の日から起算して六月を経過してもなお第二項後段の規定により保管した工作物等(第四項の規定により売却した代金を含む。以下この項において同じ。)を返還することができないときは、当該工作物等の所有権は、当該市町村
長の統轄する市町村に帰属する。
7 前条第二項の規定は、第一項及び第二項前段の場合について準用する。
8 第一項及び第二項前段の規定は、市町村長その他第一項又は第二項前段に規定する市町村長の職権を行うことができる者がその場にいない場合に限り、災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官の職務の執行について準用する。この場合において、第一項又は第二項前段に規定する措置をとつたときは、当該災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
9 警察官、海上保安官又は災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官は、第七項において準用する前条第二項又は前項において準用する第二項前段の規定により工作物等を除去したときは、当該工作物等を当該工作物等が設置されていた場所を管轄する警察署長等又は内閣府令で定める自衛隊法第八条 に規定する部隊等の長(以下この条において「自衛隊の部隊等の長」という。)に差し出さなければならない。この場合において、警察署長等又は自衛隊の部隊等の長は、当該工作物等を保管しなければならない。
10 前項の規定により警察署長等又は自衛隊の部隊等の長が行う工作物等の保管については、第三項から第六項までの規定の例によるものとする。ただし、第三項の規定の例により公示した日から起算して六月を経過してもなお返還することができない工作物等の所有権は、警察署長が保管する工作物等にあっては当該警察署の属する都道府県に、政令で定める管区海上保安本部の事務所の長又は自衛隊の部隊等の長が保管する工作物等にあっては国に、それぞれ帰属するものとする。
第六十五条
市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、当該市町村の区域内の住民又は当該応急措置を実施すべき現場にある者を当該応急措置の業務に従事させることができる。
2 第六十三条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の規定は、市町村長その他同項に規定する市町村長の職権を行うことができる者がその場にいない場合に限り、災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官の職務の執行について準用する。この場合において、同項に規定する措置をとつたときは、当該災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
以上
・・・
山口県弁護士会が、災害対策を李勇とする国家緊急権創設のための憲法改正に反対するとの会長声明を発表しました。
この声明を皆さんはどうお考えですかお教え下さい。
安保法制=戦争法の具体化、憲法改定へと突き進む安倍政権の下で、自衛隊は戦後初めて、海外で殺傷される危険性が高まっています。
今朝のしんぶん赤旗日刊紙には、元陸自幹部からのメッセージが掲載されています。
「現在の先頭で兵士が受ける外傷は凄惨です。武装勢力が持つ自動操縦ですら射程が伸び、命中精度が向上し、遠隔操作で装甲車も吹き飛ばせるほどIED(即席爆発装置)の破壊力が増しているように、戦闘員の戦闘能力は飛躍的に向上しました。他国の兵士をより効率的に、大量に殺傷することが可能になっています。仮に生き残っても、手足を失ってしまう危険を覚悟しなければなりません。」
「現在、陸上自衛隊に支給されているのは止血帯1本と包帯だけ。包帯は被覆面積が狭いので、破壊力の強い銃弾で打ち抜かれた場合、創口をすべて覆うことができません。救急品が乏しいう上に、救急法教育は各部隊の指揮官が必要と判断すればやるという丸投げ状態で、標準化も徹底されていません。」
「防衛省行政レビューによれば、他国軍隊と同レベルの個人用救急品の支給だけでも予算は12億~13億円となり、かなり難しいとのことですが、救急処置の教育を施すのみでも相当数の救命が可能なのですから、まず、教育を整備すべきです。与えない、教えない、示さないという現状のまま、自衛官の命を守るための体制を整えることなしに戦場へ送り込むのは重大な人権侵害、生命軽視です。」
「南スーダンで『駆け付け警護』い踏み切れば、2020年の東京五輪・パラリンピックでは、車いすの自衛官が選手として出場するかもしれない」と陸上自衛隊の元幹部がしんぶん赤旗にメッセージを寄せています。
元陸自幹部は、最後に、「自衛隊は海外で戦争すべきではないし、日本の生き方としてふさわしくありません。日本は戦争をせずに豊かな暮らしができるという見本を世界に示していくべきです。」と語っています。
若い自衛官の命を奪う可能性が高まる南スーダンでの「駆け付け警護」が11月から実施されようとしています。
「自衛隊は海外で戦争すべきではない」との元陸自幹部の言葉に政府は耳を傾け、『駆け付け警護」の任務付加は今からでも中止すべきです。
皆さんは、元陸自幹部の言葉をどうお感じになりましたか。ご意見をお聞かせ下さい。
天皇は8日、「象徴としてのお勤めについて」とする発言を、ビデオメッセージの形で発表しました。生前退位の意向を示している天皇は、そのことには直接触れず、「私大に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と語りました。
日本共産党の志位和夫委員長は8日、党本部で記者会見し、同日、天皇が高齢の問題から「生前退位」を示唆する発言をしたことについて記者団に問われ、「高齢によって象徴としての責任を果たすことが難しくなるのではないかと案じているというお気持ちはよく理解できます。政治の責任として、生前退位について真剣な検討が必要だと思います」と表明しました。
さらに志位氏は「日本国憲法で、生前退位を禁じているということは一切ありません。日本国憲法の根本の精神に照らせば、一人の方が亡くなるまで仕事を続けるというあり方は検討が必要だと思います」と述べました。
天皇の生前退位についてどうお考えですか、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
広島市主催の平和記念式典が6日、平和記念公園で行われました。
市内の小学校6年生二人による「平和の誓い」の朗読は心に響きました。
「私たちは、待っているだけではいけないのです。誰が平和な世界にするのでしょう。夢や希望にあふれた未来は、ぼくたち、わたしたち、一人一人が創るのです。私たちには、被爆者から託された声を伝える責任があるのです。一人一人が、自分の言葉で、丁寧に、戦争を知らない人へ 次の世代へ 世界の人々へ 命の尊さを 平和への願いを 私たちが語り伝えていきます。」
子どもたちの「平和の誓い」に未来が来ることを実感しました。
安倍首相は平和式典で、5月のオバマ大統領が広島を訪れたことを引き合いに出し「核兵器を使用した唯一の国の大統領が、被爆の実相に触れ、被爆者の方々の前で、核兵器のない世界を追求する、そして核を保有する国々に対して、その勇気を持とうと力強く呼びかけました」と述べました。
安倍首相は、「勇気」について具体的に言及はしませんでした。
「勇気」とは、国連加盟国の7割を超える国が核兵器禁止を支持する現状を真正面からとらえ、唯一の戦争被爆国である日本が核兵器を禁止する法的措置を議論するテーブルにつき主体性を発揮することです。
G7の「広島宣言」では、「核兵器のない世界」が「漸進的なアプローチをとることのみにより達成できる」強調し、核兵器を禁止、廃絶するための国際条約=核兵器禁止条約の交渉開始について一言も言及がありませんでした。
日本は、核保有国の立場に同調する姿勢を転換し、唯一の戦争被爆国として、核兵器を禁止する法的措置を議論するテーブルにつく勇気を発揮する時です。
広島への原爆投下から71年が経過しました。皆さんの核兵器廃絶への想いをお教え下さい。
6日付朝日新聞は「中国電力は5日、伊方原発3号機(愛媛県、出力89万キロワット)を12日に再稼働すると発表した。東日本大震災後の新たな原発の基準の下で再稼働するのは、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に続き、3か所5期目になる。」と報じました。
今春以降九州地方を襲った連続的な地震は中央構造線断層帯付近で発生したと言われています。
その延長線上にあるのが四国電力伊方原発です。
伊方原発の30キロ圏内には愛媛県と山口県の合計12万人以上が居住しています。
伊方原発の再稼働は認めるべきではありません。
そして、中央構造線断層帯の北側に建設が計画され、山口県が埋立免許延長を許可したのが上関原発です。
上関原発建設計画は中止すべきです。
更には、原子力規制委員会が、原発の運転は開始から40年と法律で明記されたのを踏みにじって、6月に運転延長を認めた菅7歳電力高浜原発1、2号機に続き、11月末に運転開始から40年を迎える美浜原発3号機についても基準に「適合」するとの審査書案をまとめ、延長を認めようとしているのは重大です。
いま国内で運転しているのは、九州電力川内原発1、2号機だけですが電力は足りています。
老朽原発の運転延長や停止中の原発の再稼働、新増設などの動きは直ちに中止すべきです。
伊方原発、上関原発に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
西宇部小学校PTA主催で、「あおぞら読書会」が行われました。
保護者の方々や先生方が子どもたちに絵本の読み聞かせをします。
高学年の部では、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が朗読されました。
思わず足を留めて私は最後まで読み聞かせに聞き入っていました。
御釈迦様が犍陀多に垂らした蜘蛛の糸。
犍陀多が蜘蛛の糸を登り始めると下の方には蟻の行列のように人々が蜘蛛の糸を登ってきます。
犍陀多は大きな声を出して「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己のものだぞ。お前たちは一体誰に尋いて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と喚きます。
すると蜘蛛の糸はぷつりと切れて、犍陀多は真っ逆さまに血の池の中へ。
7月20日の本願寺新報には、本願寺派司教の内藤昭文さんにより「仏説無量寿経」の現代語訳が紹介されていました。
「(世間の人々は)みな金銭のことで悩んでいる。それがあろうがなかろうが、憂え悩むことには変わりがなく、あれこれを嘆き苦しみ、後先のことをいろいろと心配し、いつも欲のために追い回されて、少しも安らかなときがないのである。」
内藤司教は、ウルグアイ第40代大統領ホセ・ムヒカさんが先人の言葉を引用して「貧しい人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲望があり、いくらあっても満足しない人のことだ」と述べたことを聞いて、この「大経」の部分が浮かんだと書いています。
私は、犍陀多の姿を聞いて、内藤司教のエッセーがよく理解できました。
その上で、内藤司教は、「どの時代であれ地域であれ、人間はみな『しあわせ』な生活を望み、その実現に向けて励んでいます。科学技術の進歩や市場経済・消費経済の発展で、物は豊かになり社会は便利になったのかもしれません。しかし、本当に『しあわせ』になったのでしょうか。」と問います。
内藤司教は、「小欲知足(欲少なくして足ることを知ること)」が大切だと結論付けています。
内藤司教は「環境問題など私たちが抱える社会問題は政治を担う人間の問題です。その根本的解決には、足ることを知らない欲望に支配され苦悩する自らの命の営みの姿を知ることが、今まさに必要不可欠です。」と書いています。
犍陀多は蜘蛛の糸を独占しようとして転落してしまったのでしょう。
かけがえのない蜘蛛の糸をみんなでシェアしようとする思いがあれば、このようなことは起きなかったのではないかと内藤司教のエッセーを読んで気づかされました。
かけがえのない地球は、一握りの人々のものではありません。
今日は、米国が広島に原爆を投下した惨禍から71年目の日です。
広島での原爆死没者は30万3195人です。
オバマ大統領は5月、現職大統領として初めて広島平和記念公園を訪れて原爆碑に献花し「核兵器なき世界を追求しなければならない」と演説しました。
今日は、原爆投下の惨禍を繰り返さないための努力を誓う日にしたいと思います。
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」。あなたはどう解釈しますか。