ブログ

第21回本屋大賞受賞作 宮島未奈著「成瀬は天下を取りにいく」を読みました。

 第21回本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」を読み、続編の「成瀬は信じた道をいく」を半分読みました。成瀬は天下・・・から、この本は「成天」と呼ばれているようですが、私は、今、成天に嵌っています。
 新潮社が開設した「成瀬は天下を取りにいく」のネット上の特設サイトの中に、作家の柚木麻子さんと、宮島未奈さんとの対談が掲載されています。
 柚木さんの宮島さんの文学に対する評価に「そうそう」と共感しました。
 柚木さんは、「この作品を読んで、私は文学の世界に新しい風が吹いたと思った」と語り、次のようにその気持ちを述べています。
 「これまでの文学では、暗くじめっとしたものほど価値があるように語られ、明るさが軽んじられていたように思うんです。しかもそこでは、女性や子どもが悲劇的に描かれていることが多かった。きっとそれが楽だったんでしょうね。でも、成瀬は違います。何せ彼女は200歳まで生きると公言して、そのために毎日一生懸命、歯磨きをしている』そんな楽しげなキャラクターが、今の日本の文学には必要だったのです。実際、たくさんの人が成瀬を絶賛していますよね。そういう反応が集まるということは、きっとここから、新しい転換が起きていくのだと思います」と述べています。
 成瀬の明るさは、受けを狙ったり、読者に阿るものではなく、堂々と自分を生きる潔さを伴ったものだと私は感じました。そこが、柚木さんの言う「新しい転換」なのだと感じます。
 小説の中で、西武大津店が休館を迎えるシーンがあります。
 その部分の表現について、柚木さんは、「西武が終わってしまうことを、ただ悲しげに書かないところに魅力があります。実際に物語の中では、それがきっかけで旧友に再会したり、色々なことが起きたりする。喪失感に飲み込まれていないんです。」「喪失に対して、拘泥せずに、向き合っているんです。そしてさらにそれを楽しんでしまうのが、彼女の大きな魅力です。」と述べています。
 地方は、衰退の一途ですが、それを楽しむ大らかさが成瀬の魅力だと私も感じます。
 小説の中で、成瀬が坊主になるところがあります。これについても柚木さんは「女性が髪を切った時って、何か悲しい理由があるんじゃないか、ととらえられがちじゃないですか。誰かとの切れない約束とか、何かグッとくるストーリーがそこには用意されて…。でも成瀬はなんと、坊主の状態から髪を伸ばしてみたいというだけの理由で頭を丸めてしまったわけです!髪を伸ばすのを楽しむなんて、本当に意表をつかれたし、とても彼女らしい。成瀬はいつも、目の前の経験を楽しもうとしている。その奥には、女の人が実力をつけていくことへのまっすぐな肯定が基盤にあるようにも思います。」と述べています。
 ジェンダー平等の先の未来を歩く社会的なメッセージも成瀬の姿にはあるように感じます。
 とにもかくにも成瀬から目が離せません。
 続編で、成瀬は、京都大学1年生になりました。成瀬像がバージョンアップして、様々な物語が展開されていきます。
 本屋大賞の受賞を受け、近く、成天第三弾の出版も近いようです。
 今、成瀬から目を離すことができません。作者の宮島さん、第三弾をお待ちしています。
 一人でも多くの皆さんに、宮島未奈著「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」を読んでいただきたいと思います。

トラックバック

コメントはまだありません

No comments yet.

コメント

コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。

メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。