朝日新聞が昨年の12月20日、小倉昭和館の復活について次のように報じました。
「昨年8月に北九州市小倉北区の旦過市場一体で起きた大規模火災で全焼した老舗映画館『小倉昭和館』が19日、もとあった場所で営業を再開した。1年4か月ぶりの再開にファンらが駆け付け、樋口智巳館主が一人ひとりに、小倉昭和館と刻印されたまんじゅうを手渡し、感謝を伝えた。『小倉昭和館再建の思いと重なる』と、初上映作品に選んだのは、『ニュー・シネマ・パラダイス』。第2次世界大戦後のイタリアが舞台の、小さな村の映画館をめぐる物語だ。作中の映画館は焼け、支援を受けて再建を果たす。樋口館主は上映前、『おかげさまでこの劇場ができた。皆様と一緒に守ってずっと続けていきたい』とあいさつした。来場者の中には、76年前に小倉昭和館で撮影したという古い写真を持参した94歳と93歳の女性の姿も。現在は別の場所で暮らすが、昭和館の近くで育ったといい、当時をなつかしみ、『立派に再建出来てよかった』と感激していた。小倉昭和館は、復活を望む約1万7千筆の署名やクラウドファンディングなどの支援を受け、再建。1スクリーン134席で、交流スペースや飲食できる場所を新設した。」
私は、小倉昭和館に何度も通い、多くの作品に触れてきました。
一昨年の火災事故は衝撃で、小倉昭和館が復活というにニュースに喜ぶ一人でした。
正月休みで、妻と復活した小倉昭和館に行ってきました。
映画館に、樋口智巳著「映画館を再生します。小倉昭和館、火災から復活までの477日」があり、購入し、樋口さんのサインもいただきました。
この本の中に、高倉健さんとの交流が描かれています。
二代目館主のお父様がご病気になられ、2009年、小倉に帰ってきて三代目館主となります。
この頃の高倉健さんとの交流を次のように触れています。
「わたしが小倉にもどって、最初に仕掛けたのが、高倉健さんの特集上映でした。健さんは、福岡県中間市出身です。最後の出演作になった『あなたへ』のロケが、北九州の門司港であると聞いたので、昭和館でも同時期に、健さんの特集を組みました。エキストラの一般公募に申し込んで、映画『あなたへ』に出演させてもらいました。門司港のベンチで話している健さんと佐藤浩市さんの目の前を、夫とふたりで意気揚々と歩いたのです。幸いなことにカットされず、ほんの一瞬だけ、映画に残っています。この撮影後、高倉健さんにご挨拶したところ、『自分の映画を上映していただきありがとうございます』と、握手してくれたのです。昭和館を知ってくださっていた・・・。うれしくて、手紙を書きました。握手のお礼と、『昭和館を存続させるかどうか、迷っています』と、正直に打ち明けました。思いがけず、お返事をいただきました。健さんの手紙は、速達で届きました。何か失礼があったのではないかと、おそるおそる封をあけたのですが・・・。『熱のこもったお手紙、拝読させていただきました』と書いてあります。一文字ずつ、かみしめるように読みました。『映画館閉鎖のニュースは、数年前から頻繁に耳にするようになりました。日々進歩する技術、そして人々の嗜好の変化、そんな業界でもスクラップ・アンド・ビルドは世の常。その活性が進歩を促すのだと思います』甘い言葉ではありません。それでも健さんは映画館経営を励ましてくれたのです。『スクラップ』と『ビルド』は、切っても切れない関係にある。たとえ崩れたとしても、そこから生まれてくるものがある・・・。この手紙は宝物にして、昭和館に飾っていました。健さんの言葉には、続きがあります。『夢を見ているだけではどうにもならない現実問題。どうぞ、日々生かされている感謝を忘れずに、自分に嘘のない充実した時間を過ごされて下さい。ご健闘を祈念しております』感激しました。昭和館を守ろうと決意しました。
健さんの最後の言葉は、この本のあとがきにも登場し、樋口さんが小倉昭和館を復活させる原動力となるものでした。
私は、今年で還暦です。40年前の大学生の時に、学生22人を亡くすバスツアー事故の参加者の一人でした。
そして、今年の元旦の能登地震。60名を超える方々が亡くなられました。
少し気後れしながら、妻と小倉昭和館で、この本に出合い、私も高倉健さんの言葉に励まされました。
「今を生かされている感謝を忘れずに」「自分に嘘のない充実した時間を過ごす」その事が、40年前に亡くなった多くの同級生と今回の災害で亡くなった方々への自分として報いとなると感じました。
高倉健さんの言葉を原動力に、災害に強い山口県づくりを考えていこうと、樋口館主の本を読みながら、帰路につきました。
これからの復活した小倉昭和館で、多くの映画に出合い、後半の我が人生を彩っていきたいと思います。
樋口館主、素晴らしい本をありがとうございました。
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