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小山内孝著「六ケ所村核燃料サイクルの今」を読みました。

 18日、青森県庁を訪ねた後に、日本共産党青森県議団控室に立ち寄りました。
 その際に、小山内孝著「六ケ所村核燃料サイクルの今」を購入し、移動中の交通機関の中で読了しました。
 筆者の小山内さんは、青森県立高校の理科教員をされていた経験もおありのようです。専門用語の解説が丁寧で、分かりやすい記述がされていました。原子力政策を理解する上でバイブルになる本だと思います。
 小山内さんの結論が「はじめに」で明確にされています。
 「世界は10ほどの大きなプレートから成っています。そのなかで島弧日本列島は、4つのプレートで成り立ち、そのきしみ合いで誕生しました。しかもそのプレートは、年間約7~8センチも移動しています。北は亜寒帯・南は亜熱帯に位置する日本列島は、地震や火山噴火が頻発する世界でも危険な災害列島です。また、気候上も、ヒマラヤ山脈に端を発し、モンスーン地帯となり、現在は、地球温暖化の影響による『爆弾低気圧』と呼ばれる風速50メートル以上の台風と大雨や大雪による大災害列島です。原子力発電、再処理工場、核燃料サイクルなどをおこなうところではありません。リニア新幹線を走らせるところでもありません。また、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)を処分する地層もありません。」
 まず、六ケ所村近くの活断層についてです。
 小山内さんは、次のように書いています。
 「六ケ所村を含む下北半島の東方沖の太平洋の海底には、活動が否定できないものとした大陸棚外外縁断層が100キロメートル近く南北に走っています。この活断層は、池田安隆『下北半島沖の大陸外縁断層』(科学 82巻6号)など、多くの科学者が活断層と考えています。活断層研究会編『日本の活断層ー分布図と資料』(1980年2月/東京大学出版会)にも掲載されています。文部科学省の検定教科書(基礎地学)では、活断層は、『最近数万年間に繰り返し活動していた根拠があり、今後も活動性が高い断層』としています。原子力規制委員会が、2006年改訂指針において、耐震設計上考慮する活断層は、後期更新世以降(12~13万年以降)のことです。それは、最近12~13万年間活動していない証拠がなければ、活断層として考慮することを求めているのです。この活断層は、高さ200メートル以上も東方に傾斜しています。もし、この活断層が動くとM9に近い大地震となります。日本原燃は、この活断層を認めると、再処理工場や高レベル放射性廃棄物等の施設の耐震設計ができなくなるので認めていません。」
 「図は、日本原燃サービス(株)の『内部資料』の『再処理施設の配置図』の部分です。やや斜めに引いてある縦の日本線は、施設を通る活断層を表しています。東側f-1、西側f-2断層で、断層上に施設があることを明確に示しています。はじめからとても再処理工場を建設すべき所ではないのです。その後の県議会に提示された図ではなくなっています。」
 次に、高レベル廃棄物についてです。
 小山内さんは、次のように書いています。
 「当面問題になっているのは、フランスとイギリスで再処理され、搬入されている高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)です。現在、フランス、イギリス両国で再処理された使用済み核燃料は、1万228体あり、今後は約1万380体になるといわれています。貯蔵は、図ー『高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の貯蔵』のようになっています。ガラス固化体の1本あたりの重さは5000キログラムで、2・5キロワット程度の熱を持ち、キャニスター湿度は200度から280度です。中心湿度は400度もあります。これが9本ずつ筒状に縦に並んでいて、外気によって冷却されています。外気温が30度を超えると、90度近い熱風が吹き出します。施設は外気温+50度~55度で設計されています。再処理工場近くに、活断層があり、通風菅が数ミリ歪んだだけで、ステンレス容器のキャニスターは崩壊し、外気に高レベル放射性廃棄物が放出されます。思っただけでゾ―ッとします。フランク・フォンヒッペル氏(核物理学者、米国プリンストン大学公共・国際問題教授。非政府団体『国際核分裂性物質パネル』共同議長)は、事故がなくても50年位で危険な状態になると言っています。また、核物理学者の高木仁三郎氏もステンレスからできている容器キャニスターは、粒界応力腐食割れ(IGCC)を起こし、耐用年数は極めて短いと言っています。すぐにでもキャスク容器に入れ替えるべきです。」
 「3・11福島事故以来、低レベル放射性廃棄物でさえ受け入れる所がないのに、高レベル放射性廃棄物に至っては、スタートの処分地さえできないままに、50年を経過してしまうことが確実です。六ケ所が高レベル放射性廃棄物の置きっ放しになるのは必然です。高レベル放射性廃棄物を受け入れる自治体などあるとは考えられません。村民も県民もキャスクに入れ直して、搬出を迫る時です。」
 小山内さんは、むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設については、次のように言及しています。
 「現在むつ市はリサイクル核燃料貯蔵施設(RFS)として、事業開始を待っています。事業開始時期を、これまで2018年後半としていたものを2021年と修正し、再処理工場が操業する見通しがないまま、規制委員会は認可しようとしています。が、六ケ所再処理工場では必要がないので、搬入されるとむつに永久貯蔵されます。使用済み燃料は各原発サイトに貯蔵すべきです。」
 2014年に山口大学名誉教授である増山博行さんが「日本の科学者」で発表された「上関原発計画の現段階と諸問題」には、上関原発の活断層について次のようにあります。
 「上関町長島の陸域には活断層の露頭は報告されていないが、図で示したように予定地の数キロメートル西の海域を含め、海底には多数の活断層が見つかっている。これらの活断層は、西日本に特有な東北ー南西方向のリニアメント(棒状模様)を示す。海底活断層の延長線上には安芸灘断層群があり、北側には岩国断層帯、南側には伊予灘北西断層帯、中央構造線断層がある。1㎝/年で東進するユーラシアプレートに、1年あたり4㎝で北西に進むフィリピン海プレートが沈み込む影響で、大陸プレート内部で地盤のズレが生じることになる。プレート境界型巨大地震に比べると地震の規模は小さいが、原発敷地の近辺、直下で動くと、甚大な被害が懸念される。図に示した長島周辺にある、F-1、F-3、F-4、F-5の四つの断層帯が個別に活動するとして中国電力は基準地震動を算定した。しかし、素人目にも数多くの活断層が無関係であるとはとうていに読めない。原子力安全保安院の地盤耐震意見聴取会でも、専門家からは中国電力が別物と区別した断層の連続性や連動性、さらには岩国断層などの大きな活断層と関わりを指摘されており、基準地震動の見直しは必須と思われる。」
 中間貯蔵施設を建設しようとする長島周辺に複数の活断層が存在しています。建設ありきではなく、周辺住民は県民の命を最優先した活断層の調査が必要です。
 活断層の存在が明らかなら、中間貯蔵施設の建設は行うべきではありません。
 現在、六ケ所リサイクル施設内に、高レベル放射性廃棄物が大量に保管されていることへの危険が存在することと同時に、六ケ所再処理工場が稼働すれば、更に大量の新たな高レベル放射性廃棄物が発生します。これら高レベル放射性廃棄物を長期的に埋蔵する場所が決まっていない以上、小山内さんの指摘の妥当性は高まっています。
 小山内さんのむつ中間貯蔵施設に対する指摘も重大です。
 むつに搬入された核燃料廃棄物は、「永久保存になる」のなら、上関町の中間貯蔵施設に搬入された核燃料廃棄物だけが、永久保存にならないとは言えないのではないでしょうか。
 核燃料サイクルシステムは、あらゆる面で破綻しています。
 破綻しているシステムを破綻していないとして、中間貯蔵だけを進めても、中間が永久になることは必然だと、青森県の各原発関連施設を見学し、小山内さんの著作を読み痛感する私がいます。

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