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山口県弁護士会が「最低賃金額の引上げ等求める会長声明」を発表

 山口県弁護士会が5月31日付で、「地域経済を活性化させるために、最低賃金額の引き上げ等を求める会長声明」を発表しました。

 会長声明は以下の通りです。

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地域経済を活性化させるために,最低賃金額の引上げ等を求める会長声明

2022年(令和4年)5月31日

山口県弁護士会     

会長 田 中 礼 司

1 最低賃金の引き上げが必要であること

 厚生労働大臣は,本年6月頃,中央最低賃金審議会に対し,令和4年度地域別最低賃金額の目安について諮問を行い,本年7月頃,同審議会から,答申を受ける見込みである。
 昨年,同審議会は,都道府県の時給を一律28円引き上げるように答申を行い,各地の地域別最低賃金審議会は,これに基づき,答申を行った。その結果,令和3年度の地域別最低賃金は,全国加重平均額で930円(前年度より28円引き上げ)となった。山口県の地域別最低賃金は,857円とされた。
 時給857円では,1日8時間,週40時間働いても,年収178万2560円(857円×40時間×52週),月収14万8547円(178万2560円÷12ヶ月・小数点以下切り上げ)にしかならない。日本の最低賃金は,世界的に見ても極めて低い水準にあり,労働者の生活を守るためには,最低賃金を引き上げて公正な賃金を支払う必要がある。
 なお,最低賃金の引き上げにより雇用が減少するとの意見があるが,米カリフォルニア大バークリー校のデービッド・カード教授(2021年のノーベル経済学賞受賞者)は,最低賃金の上昇が必ずしも雇用の減少につながらないことを実証している。

2 地域間格差の是正

 最低賃金の地域間格差が依然として大きく,格差が是正していないことは重大な問題である。2021年の最低賃金は,最も高い東京都で時給1041円であるのに対し,山口県は時給857円であり,184円の開きがある。
 総務省統計局が令和4年4月15日に公表した令和3年10月1日現在の人口推計によれば,生産年齢(15歳~64歳)の人口数(男女計)は,東京都が925万5000人,山口県が71万2000人とされ,山口県は東京都の約13分の1しかない。
 山口県は若年層の県外への流出が多く,人口減少が続いている。最低賃金の低い地方の経済が停滞し,地域間の格差が縮まるどころか,むしろ拡大している。地域の労働力を確保することは,地域経済の活性化にとって極めて有効である。

3 中小企業・小規模事業者の支援

 国は,中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し,事業場内最低賃金の引き上げを図るため,「業務改善助成金」制度を実施しているが,必ずしも使い勝手のよい制度ではないため,令和2年度の支給決定件数は626件しかなかった。
 日本商工会議所及び東京商工会議所が令和3年4月5日に公表した「最低賃金引上げの影響に関する調査」によれば,中小企業・小規模事業者の多くは,最低賃金引上げに対応するために必要と考える支援策として,「税負担等の軽減」を挙げている。
 したがって,国は,最低賃金の引き上げにともない,中小企業・小規模事業者の経営が圧迫されないよう,助成金制度や補助金制度を使い勝手のよいものに変え,さらには税金や社会保険料の大胆な減免措置を講じるなど,税負担等の軽減を図る措置を講じるべきである。
 具体的には,地域別最低賃金が1000円未満の道府県において直ちに最低賃金を1000円以上に引き上げるため,中小企業・小規模事業者に対し,最低賃金と現に労働者に払っている賃金との差額を助成金として支給すべきである。また,賃金の引き上げに伴い社会保険料の負担も増額することから,中小企業・小規模事業者に対し,少なくとも年金保険料及び健康保険料の事業主負担額の3割を国が負担する措置を講じるべきである。

4 審議会の議事録等の公開について

 当会は,これまで山口地方最低賃金審議会の議事録等をホームページで公開するよう求めてきたが,山口労働局は,厚生労働省からの指示に基づき,令和2年度から同審議会の議事録等をホームページに掲載するようになった。
 情報公開の流れの中,議事録等がホームページで公開されたことは,最低賃金に関する県民の理解と関心を促進し,審議会等のさらなる透明化を図るものであり,当会としても歓迎したい。引き続き,議事録等をホームページで公開するよう求める。

5 委員の任命

 最低賃金審議会の委員は,労働者を代表する委員,使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもって組織されるところ(最低賃金法第22条),前二者は関係労働組合又は関係使用者団体からの推薦に基づき任命されている(最低賃金審議会令第3条)。
 このうち,労働者を代表する委員は,非正規労働者を数多く組織する関係労働組合からも任命されることが望ましい。なぜならば,非正規労働者は就業関係が不安定で最低賃金の影響を受けやすく,全労働者の3分の1以上を占めているからである。
 また,公益を代表する委員は,最低賃金の額が貧困問題の解決と密接に関係することから,生活困窮者の就労支援等を行っている団体の出身者及び社会保障法を専門とする学者からも任命することが望ましい。

6 まとめ

 よって,当会は,次のことを求める。
① 中央最低賃金審議会及び山口地方最低賃金審議会は,労働者の健康で文化的な生活を確保し,地域経済の健全な発展を促し,政府目標に少しでも近づけるため,最低賃金の引き上げに向けた答申をすること。
② 国会及び厚生労働大臣は,最低賃金の大幅な引き上げに当たり,助成金制度や補助金制度を使い勝手のよいものに変え,さらには税金や社会保険料の大胆な減免措置を講じるなど,中小企業・小規模事業者の経営に十分配慮した施策を行うこと。
③ 山口地方最低賃金審議会は,引き続き審議会の議事録等をホームページで公開する措置を講じること。
④ 厚生労働大臣及び山口労働局長は,非正規労働者を数多く組織する関係労働組合からも労働者代表委員を任命し,また,生活困窮者の就労支援等を行っている団体の出身者及び社会保障法を専門とする学者からも公益代表委員を任命すること。

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 県弁護士会が、「日本の最低賃金は、世界的に見ても極めて低い水準にあり、労働者の生活を守るためには、最低賃金を引き上げて公正な賃金を支払う必要がある。」と指摘していることは重大です。

 また、県弁護士会が「山口県は若年層の県外への流出が多く、人口減少が続いている。最低賃金の低い地方の経済が停滞し、地域間の格差が縮まるどころか、むしろ拡大している。地域の労働力を確保するこおは、地域経済の活性化にとって極めて有効である」として最低賃金の地域格差の是正を求めている点も重要です。

 更に、県弁護士会は、「地域別最低賃金1000円未満の都道府県において直ちに最低賃金を1000円以上に引き上げるため、中小企業・小規模事業者に対し、最低賃金と現に労働者に支払っている賃金との格差を助成金として支給すべきである。」などの提案がされていることも重要です。

 日本共産党は、2月24日、「アベノミクスで増えた内部留保に適正な課税を -大企業優遇の減税をただし、内部留保を賃上げと『グリーン投資』など国内投資に」という政策を明らかにしています。

 この中で、「資本金10億円以上の大企業に、2012年以降に増えた内部留保に毎年2%、5年間で10%の時限的課税を行います、これにより毎年2兆円規模、総額で10兆円程度の新たな財源が生まれます。」とし、「新たな税収で、最低賃金を時給1500円に引き上げるため、中小企業・中堅企業に必要な賃上げ支援を10兆円規模で実施できるようにし、大企業でも中小企業でも賃上げがすすむようにします」としています。

 アベノミクス(2012年から2020年)に、資本金10億円以上の大企業の内部留保は130兆円ふえましたが、働く人の実質賃金は22万円(年収)も減りました。

 この不公平を正し、賃金が上がる国にしていくことが、今度の参議院選挙の一大争点です。

 大企業優遇の減税をただし、内部留保を賃上げにあてる政治を実現しましょう。

 私は、山口県弁護士会の会長声明を全面的に支持し、賃上げができる国にしていくことことを共に訴えたいたいと思います。

 賃上げできる国に、参議院選挙では、日本共産党に対するご支援をお願いいたします。

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