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山口県は、緊急道を塞ぐ可能性のある建物の耐震化を完了させる手立てを取るべき

 大規模災害時に避難や救助、救援物資の輸送に使われる緊急輸送道路に関し、4月13日、毎日新聞は次のように報じました。
 「大規模災害時に避難や救助、救援物資の輸送に使われる緊急輸送道路(緊急道)のうち、特に重要な路線を指定し、倒壊した場合に道路を半分以上塞ぐ恐れのある沿道の建物の耐震診断を義務付けている自治体が23都府県にとどまることが毎日新聞の取材で判明した。このうち耐震診断を終え、耐震性が不十分な建物を把握済みなのは15都府県だった。国は特に重要な路線について、2025年末までに沿道の建物の耐震化を完了するよう求めているが、対応は遅れている。16年4月に起きた熊本地震では、熊本県内の緊急道計2100㌔のうち、28路線の50カ所が沿道の家屋倒壊などで通行止めになり、支援物資の輸送などが滞った。14日で地震発生から6年になるのを前に、47都道府県に取材した。13年11月施行の改正耐震改修促進法は、都道府県や市町村に対し緊急道の一部を特に重要な路線と指定し、沿道の建物のうち1981年以前の旧耐震基準で建てられ、倒壊した場合に幅員の半分以上を塞ぐ恐れがある建物の所有者などに耐震診断を義務付けるよう定めている。義務化した都道府県などは、建物ごとに耐震性の有無を公表した上で、耐震性が不足する建物の所有者に対して耐震補強工事や建て替えなどを促す必要があり、国はおおむね25年末までに完了させる目標を示してきた。取材によると22年3月末までに特に重要な路線を指定し、耐震診断を義務化したのは23都府県で、このうち福島▽埼玉▽東京▽神奈川▽岐阜▽愛知▽三重▽滋賀▽大阪▽岡山▽広島▽徳島▽香川▽高知▽佐賀―の15都府県は必要な耐震診断も終え、耐震性が不十分な建物を把握していた。残る8府県のうち、群馬▽千葉▽山梨▽京都▽和歌山▽島根―の6府県は、建物所有者からの診断結果の報告期限を23年3月末~26年3月末にしており、静岡県は報告を集計中、茨城県は報告期限が未定だった。東京都は緊急道2197㌔のうち約1000㌔を重要路線に指定し、耐震性が不十分で道路の半分以上を塞ぐ恐れのある建物が沿道に2277棟あることが分かった。愛知県は2856㌔のうち約900㌔を指定し401棟、大阪府は2346㌔のうち約260㌔を指定し185棟だった。一方、重要路線を指定せず、耐震診断を義務付けていない自治体は24道県。栃木や兵庫、福岡など17県は『迂回路がある』『倒壊して幅員の半分以上を塞ぐ対象建築物がない』などを理由に指定する必要がないという考えを示したが、北海道▽長野▽愛媛▽長崎▽熊本▽宮崎▽沖縄―の7道県は『全国で最も緊急道の総距離が長く、対象の絞り込みに時間がかかる』(北海道)『調査に人手が必要で、耐震診断費用の半分は自治体持ちのため負担が大きい』(長崎県)など、必要性を認めながら耐震診断の義務化を見送っている。国土交通省建築指導課は『義務付けるかどうかは自治体の判断だが、災害時に道路が塞がると住民の命に関わる。耐震性の有無は、診断により建物の危険性を把握できるため積極的に指定してほしい』としている。・・・室崎益輝・神戸大名誉教授(防災計画)の話 阪神大震災では幹線道路沿いの建物倒壊が相次ぎ、消防車が火災現場に駆けつけられないなどの影響が出た。道路の安全性を確保することは公共性が高く、多くの命を守ることにつながる。自治体は沿道の建物の耐震診断義務化などに積極的に取り組み、国も耐震補強などに対する財政支援に力を入れるべきだ。」
 「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震促進法)の第5条第3項第2号に基づく緊急道の場合は、倒壊した場合に道路の半分以上を塞ぐ恐れのある沿道の建物の耐震診断の義務付けを規定しています。第5条第3項第3号に基づく緊急道の場合は、沿道の建物の耐震診断を「努力義務」としています。
 法5条第3項第2号に基づいて対応しているのが、本文にある23都府県で、法5条第3項第3号に基づいて対応しているのが、本文の24道県だと思われます。
 山口県は、法5条第3項第3号に基づき、緊急道の沿道の建物の耐震診断は努力義務として対応しています。
 県建築指導課の担当者に山口県の状況を尋ねました。
 緊急道で倒壊した場合に道路の半分以上を塞ぐ恐れのある沿道の建物は把握しているとのことでした。法第5条第第3項第2号に基づいた場合は、建物の所有者は、耐震診断を行ったかどうか都道府県に報告する義務が生じます。しかし、法5条第3項第3号の場合は、報告義務が生じません。県担当者は、「沿道の建物が耐震診断をしているかどうかは把握していない」と答えました。
 なぜ、義務化しなかったのかとの問いに担当者は、「耐震促進法が改正され、義務化が規定された13年11月以降、山口県として義務化するかどうか検討したが、義務化しなかった。その理由は、緊急道を塞ぐ可能性のある旧耐震基準の建物は相当数集合しておらず、また迂回路があることである。また、緊急道の中には、道路を塞ぐ高い旧耐震基準の建物がない路線があることである。加えて、義務化した場合、建物の所有者には、耐震診断を実施し、その結果の報告義務が生じ、診断をしていない場合、都道府県は公表しなければならない規定がある。建物所有者への負担が大きいことが義務化しなかった理由の一つだ。」と答えました。
 本文にあるように、国は、2025年末までに沿道の建物の耐震化を完了するよう求めているのです。
 山口県は、現在、沿道の建物は把握しているが、耐震化されているかどうか把握していない状況です。
 山口県では、2025年末までに沿道の建物の耐震化が完了できる見通しが立っていないと感じました。
 私は、山口県は、法5条第3項第2号の義務化に踏み切り、沿道の建物の耐震化の状況を把握し、耐震化が完了するよう対処すべきだと感じました。
 室崎神戸大名誉教授が指摘されている通り、建物の所有者が耐震診断や耐震改修がしやすくなるよう、国は、耐震補強などに対する財政支援に力を入れるべきだと思います。
 災害に強い山口県になるよう、今後とも必要な調査や発言を行っていきたいと思います。
 この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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