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深沢潮「海を抱いて月に眠る」を読んで

 しんぶん赤旗日曜版(2021年11月14日号)に、作家である深沢潮さんのインタビューが掲載されていました。
 「父は在日韓国人1世、母は在日2世です。2012年に在日コリアンの婚活を描いた『金江のおばさん』でデビューして以来、在日の葛藤やアイデンティティーを掘り下げる作品を発表してきました。」
 インタビューの中で紹介してあった最新作の「翡翠色の海へうたう」は書店に注文し、棚にあった「海を抱いて月に眠る」を一気に読みました。
 文庫本の背表紙を引用します。
 「離婚して働きながら一人娘を育てる梨愛。横暴で厳格だった在日一世の父は、親戚にも家族にも疎まれながら死んだ。しかし、通夜では見知らぬ人たちが父を悼み、涙を流していた。父はいったい何者だったのか。遺品の中から出てきた古びたノートには想像を絶する半生が記されていた。新しい在日文学の傑作!」
 私は、「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の役員を務めています。
 1943年に海底炭鉱で起きた水没事故で、183名の労働者が亡くなり、136人は朝鮮人労働者でした。
 私たちは、毎年、事故が起きた時期に、韓国から遺族を招き、追悼集会を開催してきました。
 その中で、韓国で暮らす方、在日一世や二世の方々、朝鮮半島に関する運動団体の方々と交流してきました。
 また、韓国が独裁政権だった時代を描いた映画を観てきました。
 小説を読みながら、今まで出会った朝鮮半島に関する方々の顔が浮かんできて、とてもリアルにこの本を読みました。
 この本は、朝鮮半島をめぐる戦後の歴史と、在日の方々が日本で歩んできた歴史を知る最良の入門書だと痛感しました。
 日本による朝鮮半島の統治。解放後の朝鮮半島の政治の混乱。朝鮮戦争。韓国の独裁政権誕生。日本での在日の方々への政治の希薄さ。
 日本と朝鮮半島の政治の混乱の中で、在日一世の方の人生は、筆舌に尽くしがたいものだったことをこの小説でリアルに感じることができました。
 先のしんぶん赤旗にある深沢さんの経歴から見ても、この小説は、フィクションですが、深沢さんの家族の歴史が根底にあるから、リアルな小説になったのだと思います。
 深沢さんは、しんぶん赤旗のインタビューで述べています。
 「それまで生きづらかったのが、小説を書くようになって楽になりました。普段の生活では背負うものがたくさんあるので、小説を書いている時は、すごく解放されて自由な感じです。もともと自己肯定感の低い人間だったんですが、書いたものを読んでくれる人がいることが励みになっています。いま、こうして小説を書かせてもらえていることへの、感謝の気持ちでいっぱいです。」
 読者の私こそ、深沢さんの小説に出会えて感謝の気持ちでいっぱいです。
 最新作「翡翠色の海へうたう」の到着を待ちながら、今、昨年刊行された「乳房のくにで」を読んでいます。
 総選挙後、11月県議会前のひととき、深沢潮さんの世界に浸っています。
 深沢潮ファンの皆さん、お勧めの作品をお教え下さい。

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