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10年間で児童福祉司・児童心理司一人当たりの虐待対応件数が2倍近くに

 山口県地方自治研究所が発行する「山口自治研通信第45号(2021年10月13日)」に山口県の児童相談所の状況に関するレポートが掲載されていましたので紹介します。
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 去る5月28日、山口県は「令和2年度の児童相談所(以下、児相
における児童虐待対応件数(速報値)」を公表。これによると2020年度の児童虐待は729件、前年度から20件増加して3年連続で700件を超え深刻な事態が続いていることが分かりました。
 県内児相の児童虐待件数の増加は2015年度頃から始まり、2016年度には500件台に乗り、2018年度からは700件が続いています。なかでも心理的虐待の増加が著しくなっていますが、これは児童の目の前で配偶者や家族に暴力をふるう「面前DV」を心理的虐待のひとつと位置付けたことによるものです。また、この陰に隠れて他の虐待(身体的、ネグレクト、性的)も増加していることを見逃すわけにはいきません。
 主な虐待者は実父母が約9割を占めています。一昔前は実母が多かったのですが最近では父母半々の状況にあります。また、虐待を受けたこどもの年齢階層は小学生が最も多く、次いで3歳~学齢前、中学生というのがここ数年の傾向です。
 県内には6つの児相(岩国・周南・中央・宇部・下関・萩)があり、児童福祉司(虐待を受けたこどもの保護や親子関係の調整などを担当)と児童心理司(心理判定や心理的ケアなどを担当)が配置されていますが、両者とも10年間で1.5倍程度にしか増えていません。
 このため、児童福祉司・児童心理司1人当たりの虐待対応件数は、ここ10年間で2倍近くに増加しています。児相が扱う数多の相談の中でも児童虐待は対応の困難さと期間の長さにおいて特別なものがあります。筆者が児相に勤務していた10年前頃は児童福祉司1人当たり対応件数が一ケタだったのですが、それでも残業は恒常的で時には深夜に及ぶこともありました。また、メンタルの不調を訴える職員も少なからずありました。最近では少しずつ配置人数の改善が図られていますが、まだまだ虐待対応の増加に追い付いていないというのが現場の実感ではないでしょうか。
 もうひとつ、児童福祉司の任用に関わって気になることがあります。全国的には社会福祉士、公認心理師、精神保健福祉士の資格を有する者が児童福祉司の48%を占めていますが、山口県ではわずか4%に過ぎません。もちろん、こうした資格がなくても児童福祉司として立派にその任を果たしている職員は多数あることは承知していますが、資格者ゆえの専門性も否定できないところです。県として何らかの対策を講じる必要があるように思います。
 2004年の児童福祉法改正により市町村も児童虐待の通告先として位置づけられ、県内市町でも相談体制の整備が図られてきました。山口県社会保障推進協議会が行った「2020年度自治体アンケート」によると、下関市、宇部市、山口市、防府市、岩国市、周南市が、児童福祉司を配置し、19市町全体で非常勤も合わせると98人が虐待相談に対応しています。
 また、2019年度において19市町全体では1204件の虐待通告があり、うち398件を児童虐待として認定しています。この認定件数は児相対応件数の6割に迫るもので、今や、市町が児相とともに県下の虐待相談を担う時代になっていることを物語っています。
 児童虐待は、家族関係や貧困問題、親と子の個性など様々の要素が複雑に絡み合っており、その対応はまさしく『危機管理』です。それだけに児相と市町担当部署には個々の状況に応じた的確な判断を担保する組織体制の整備・強化が不可欠であり、そのためには専門性豊かな担当職員の増員が引き続き重要課題であることは論を俟たないところです。(M)
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 児童福祉司一人あたりの虐待対応件数が、2011年は9.3件だったものが、2020年で16.2件に、児童心理司では、17.9件から33.1件とそれぞれ、この10年で約2倍になっています。
 更なる児童福祉司と児童心理司の増員が急がれます。
 また、社会福祉士、公認心理師、精神保健福祉士の資格がある児童福祉司が全国平均は48%であるのに、山口県は4%である事実も重く受け止める必要があると感じました。
 これらの点を今後、担当する健康福祉部に質していきたいと思います。
 児童相談所に関する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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