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4年間で県内の入院ベッドが1112床も削減

 山口生活と健康を守る会の社会保障資料5月号は、山口県の地域医療構想に基づく病床機能報告結果(2019年7月現在)の公表を受けて、次のような記事を掲載しました。(表は割愛しその部分の文章をカットしています)
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去る3月31日、山口県は地域医療構想(構想)に基づく病床機能報告結果(2019年7月現在)をやっと公表しました。例年は調査時点の1年後に公表していましたが、今回は9ヶ月遅れの公表(しかも4月28日には一部数値を訂正)です。県の担当者に聞くと「厚生労働省との調整に手間取った」と語っていますが、厚生労働省が2019年9
月に行った“公立・公的病院の統廃合・病床削減の名指し“と関係があるのではないかと疑りたくもなります。
 それはともかくとして公表数値を見てみたいと思います。
 構想の基準年(2015年)と比べて2019年時点の病床数は全体で1,112床の減少。機能別に見ると高度急性期、急性期、慢性期が減少して回復期が増加しています。傾向としては、高度急性期と急性期は回復期に転換され、慢性期は介護医療院への移行と一部は回復期に転換されているようです。
 また、目標年(2025年)に向けては慢性期病床の介護医療院への転換が本格化してさらに1,499床が減少する見込みで、合計の予定削減数は2,611床となります。
  一方、構想では目標年(2025年)の必要病床を15,889床、削減数は6,384床としています。これに対し、今回報告の予定削減数は2,611床ですから、その「達成率」は40.9%に過ぎません。もともと「必要病床数」は、山口県が国の算式を基に機械的に算出したものですが、今回の報告結果は、改めて、この削減目標が地域の実情からも医療現場の実態からも離反した“無謀な数値”であることを明らかにしたと言えます。
 次に医療圏ごとの動向を見てみます。なお、これ以降の表は山口県地域医療構想と2019年病床機能報告結果から作成したものです。
【岩国医療圏】
 高度急性期病床が大幅に削減されています。これは岩国医療センターが高度急性期240床を急性期に転換したことによるものです。また、岩国市医療センター医師会病院は20床、岩国市立美和病院は15床、同錦中央病院は5床をそれぞれ廃止、みどり病院は慢性期60床を介護医療院に移行しています。
【柳井医療圏】
 急性期と慢性期が減、回復期は増加していますが、課題の高度急性期はゼロのままです(表4)。周東総合病院は54床を急性期から回復期に転換、周防大島町立東和病院は54床を、同大島病院は39床を慢性期から回復期にそれぞれ転換しました。同橘病院は17床を廃止して有床診療所(19床)に転換、本年2月にはその19床さえも休床しています。
 さらに本報告時点(2019.7)以降、周東総合病院は39床を急性期から回復期に転換し、東和病院は26床を廃止、光輝病院は慢性期病床668床を介護医療院に移行するとしています。
【周南医療圏】
  急性期と慢性期が減少し、回復期が増加しています。周南記念病院は50床、徳山病院は46床、下松中央病院は28床を急性期から回復期に転換、また、周南リハビリテーション病院は40床、徳山病院は32床を慢性期から回復期に転換しました。
 さらに本報告時点(2019.7)以降、周南市立新南陽市民病院は50床を急性期から回復期に転換、周南高原病院は57床、鹿野博愛病院は36床の慢性期病床を介護医療院にそれぞれ移行するとしています。
【山口・防府医療圏】
 急性期と慢性期病床が減少し、回復期が増加しています(表6)。県立総合医療センターは56床、小郡第一病院は45床、防府胃腸病院は60床を急性期から回復期に転換、また、阿知須共立病院は45床、山口リハビリテーション病院は30床を慢性期から回復期に転換、阿知須同仁病院は60床、山口若宮病院は56床の慢性期病床を介護医療院に移行しました。
 さらに本報告時点(2019.7)以降、山口赤十字病院は病棟建替えに絡めて高度急性期36床と急性期83床を回復期44床と慢性期25床に転換し休棟分48床を含めて98床を廃止します。また、湯田温泉病院は慢性期46床を回復期に、防府リハビリテーション病院は慢性期100床を介護医療院に移行するとしています。
【宇部・小野田医療圏】
 高度急性期と慢性期が減少し、急性期と回復期が増加しています。山口大学医学部附属病院は高度急性期375床を急性期に転換。また、宇部記念病院は急性期66床、山口労災病院と尾中病院は急性期各60床、宇部協立病院は急性期52床、シーサイド病院は慢性期51床、宇部第一病院は32床の慢性期を回復期にそれぞれ転換しました。宇部リハビリテーション病院は120床、宇部西リハビリテーション病院は78床の慢性期病床を介護医療院に移行。綿田内科病院(39床)は廃止、美祢市立病院は急性期7床を減床しています。
 さらに、本報告時点(2019.7)以降、小野田赤十字病院は急性期40床を回復期に、セントヒル病院は43床、宇部記念病院は34床の慢性期病床を回復期に転換。また、尾中病院は慢性期60床を介護医療院に移行するとしています。
【下関医療圏】
 高度急性期・急性期・慢性期が減少し、回復期が増加。病床転換の進捗率は最も高くなっています。下関市立市民病院は高度急性期204床を急性期と回復期に転換する一方、下関医療センターは急性期96床を高度急性期に転換しています。下関市立豊田中央病院は急性期45床と慢性期26床を合わせて回復期60床とし、昭和病院は急性期46床と慢性期120床を回復期106床と介護医療院60床に転換、武久病院は87床、安岡病院は51床、光風園病院は47床、岡病院は46床の慢性期をそれぞれ回復期に転換。また、安岡病院は44床、王司病院は48床の慢性期病床をそれぞれ介護医療院に移行、下関医師会病院(64床)は廃止され、下関市立市民病院17床と光風園病院13床は減床となっています。
 さらに、本報告時点(2019.7)以降、武久病院は95床、森山病院は48床、桃崎病院と岡病院はそれぞれ32床の慢性期病床を介護医療院に移行するとしています。
【長門医療圏】
 急性期と慢性期が減少し、回復期が増加していますが、課題の高度急性期はゼロのままです。長門総合病院は急性期6床と慢性期38床を回復期40床に転換し4床を減床。斎木病院も急性期8床を減床しています。
 さらに本報告時点(2019.7)以降、俵山病院は慢性期50床を介護医療院に移行するとともに10床を減床するとしています。
【萩医療圏】
 急性期が減少し、回復期が増加しています。都志見病院が急性期57床を回復期に転換したことによるものですが、課題の高度急性期はゼロのままです。
 さらに本報告時点(2019.7)以降、全真会病院は54床、萩慈生会病院は40床の慢性期病床を介護医療院に移行、都志見病院は慢性期29床を減床するとしています。
 新型コロナの感染拡大が地域の医療提供体制に深刻な影を落とす中、県内では高度急性期病床の削減・転換が目立っています。具体的には、山口大学医学部附属病院375床、岩国医療センター240床、下関市立市民病院204床、山口赤十字病院36床などです。病状急迫時に医療資源を集中投下して治療に当たる高度急性期病床の削減は、地域医療の大きな機能低下に直結します。
 SARS(重症急性呼吸器症候群・2002年)、MERS(中東呼吸器症候群・2012年)や今回の新型コロナなど新たな感染症が繰り返し発生している歴史的事実は、地域の医療提供体制には平常時から一定の“ゆとり”が必要なことを教えています。
 医療費抑制のために入院ベッドを削減しようとする地域医療構想は一旦中断するとともに、公立・公的病院を名指しして統廃合に追い込むような企ては直ちに撤回すべきと考えます。
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 地域医療構想が提起されてこの4年間で、県内で1112床が削減されたことは重大です。2025年に向けて更に1499床のベットが削減されようとしています。医療構想そのものは、2015年に対し2025年は6384床削減するというとてつもないものです。
 同時に県内で高度急性期病床が大幅に削減されようとしていることは、新型コロナの嵐の中とても心配されることです。
 「地域医療構想は一旦中断するとともに、公立・公的病院を名指しして統廃合に追い込む企ては撤回すべき」とする社会保障資料の指摘に共感します。
 私は、過去の議会と環境福祉委員会の中で、地域医療構想に基づく急激な病床の削減に反対し、コロナ禍の中、構想の中断を県に求めてきました。
 社会保障資料の指摘を受けて、更に、この方向で発言を続けていこうと決意を新たにしました。
 県内で大幅な病床の削減が行なわれ、これから更に行われようとしています。この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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