ブログ

岡本喜八監督の映画「日本のいちばん長い日」を観て

 YCAMシネマで上映前に「名画座手帳あります」との「宣伝」がありました。
 私はアナログで、未だに手帳派です。
 見本を観て一目ぼれして、今年は、「名画座手帳」を使っています。
 この手帳は、日本映画の旧作を鑑賞することを推奨する内容です。
 毎日の日付の下に、日本映画の俳優や監督さんたちの生まれた日は赤字で、没した日は黒字でびっしりと名前が書かれてあります。
 手帳の後半には、映画監督の活動期が示された表や全国で日本映画の旧作が鑑賞できる劇場が列挙されています。
 この中に、YCAMシネマが山口県では唯一例示されていました。
 手帳を見るだけでも日々が楽しくなります。
 今年も激動が予想される年ですが、「名画座手帳」とともに、楽しい1年にしていきたいと思います。
 さて、今日は、日本映画の旧作を紹介したいと思います。1967年に作成された岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」です。
 昨年購入した春日太一著「日本の戦争映画」で紹介されている作品の中からネットフリックスにあった唯一の作品がこの映画でした。
 この作品は、東宝の「8.15シリーズ」の第一作目として制作された映画です。
 春日さんは、自著の中で「8.15シリーズ」について次のように述べています。
 「1960年代後半になりますと、高度経済成長により日本は世界有数の経済大国になります。その一方で、1960年の安保闘争が終わり70年の安保闘争へ向かっていく中での学生運動の激化、さらにアメリカが介入するベトナム戦争への反戦の動きなどもあり、大衆的な広がりは欠きながらも文化・芸術・マスコミの世界を中心に、反体制・左翼的なアプローチで表現する・・・という風潮が大きくなっていきます。そうした中で、映画界でも個人の情念だけではなく巨視的な視点から、ジャーナリスティックに戦争を捉えよという動きが出てきます。その象徴ともいえるのが、東宝の『8・15シリーズ』でした。」
 春日さんは、「日本のいちばん長い日」についてこう解説しています。
 「この作品のポイントは、その巨視性にあります。メインになるのは、大きく分けると、前半はポツダム宣言受諾か否かを巡る鈴木貫太郎内閣の閣議における駆け引き、後半は降伏を認めずに玉音放送阻止と戦争続行を望む陸軍士官たちのクーデター未遂ーということになります。それに加え、戦争が終わることを知らず、8月14日の夜に飛び立っていく特攻隊のシーンを入れ、会議が長引いている間に若者たちが次々に死んでいくという描き方をしている。さらに、。厚木基地にいる将校たちが車に乗り込んで鈴木首相を襲おうとする。こうした多方面の描写が同時進行で描かれています。作品を観ている我々は、既に戦争の終結を知っているわけですが、それでも、次々と来る妨害の前に『戦争は本当に終わるのかー』とスリリングに見守ることになります。」
 私は、2015年に製作された原田眞人監督の映画「日本のいちばん長い日」も観ましたが、「スリリングさ」が、1967年の作品の方があるように感じました。
 1967年の本作には原作があります。当時は、大宅壮一編とされていましたが、実際は、当時「文藝春秋」編集部次長の半藤利一さんが書いた「日本のいちばん長い日」です。
 1995年に出版された「決定版」の文庫版をもとに、8月14日の夜に飛び立つ特攻隊の様子を書いた半藤さんの文書を紹介します。
 「埼玉県の児玉基地では、空襲警報のサイレンの鳴りやまぬなかで、房総沖に遊弋する敵機動部隊に猛攻撃を加えんと、第27飛行団の主力36機の出撃準備が整えられている。飛行団長野中俊雄少将は、期待をこめて準備の進捗を見守っていた。最前線の指揮官は、戦争が午後11時を持ってすでに終わったことなど知るはずもなかったから、いまこそ猛訓練の成果を発揮してくれと、可愛い部下たちを死地に投ずる決心をあらためて固めるのである。児玉町民が陸軍飛行部隊の出撃を知って、日の丸の旗をもち、続々と飛行場に集まってきた。町民もまた、祖国が降伏したことを知るべくもない。ただかならず『神風』が吹くものと信じているのである。」
 春日さんは、岡本監督が、橋本忍さんの脚本を一部改変した部分の一つに、ラストシーンのテロップがあると指摘しています。
 テロップには、こう書かれてあります。
 「太平洋戦争に兵士として参加した日本人1000万人 戦死者200万人 一般の死者100万人 計300万人(5世帯に1人の割合で肉親を失う)」
 私は、戦争が終わって児玉基地から出撃した36機の少年兵の姿がこの映画で印象的でした。
 今年は、憲法が公布されて75年の節目の年です。
 憲法の前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないようにすることを決意」しています。
 また、憲法前文では「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあります。
 日本共産党が総選挙に向けて示した「5つの提案」の一つは「憲法を守り、立憲主義・民主主義・平和主義を回復する」です。
 再び戦争の惨禍を起こさないためには、自民党が進める憲法9条の改定を許さない新しい政府をつくることです。憲法違反の「敵基地攻撃」能力の保有を認めない政府をつくることです。
 「日本のいちばん長い日」を観て、そのことを実感しました。
 1967年作成、岡本喜八監督の映画「日本のいちばん長い日」を一人でも多くの皆さんにご覧いただきたいと思います。

トラックバック

コメントはまだありません

No comments yet.

コメント

コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。

メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。