ブログ

誰もボクを見ていない

 毎日新聞記者・山寺香著「誰もボクを見ていない」を読んでいます。
 ポプラ文庫版の裏表紙からこの本の概要を紹介します。
 「2014年、埼玉県川口市で当時17歳の少年が祖父母を殺害し、金品を奪った凄惨な事件。少年はなぜ犯行に及んだのか?誰も止めることはできなかったのか?事件を丹念に取材した記者がたどり着いた『真実』。少年犯罪の本質に深く切り込んだ渾身のノンフィクション。」
 この事件を取材した山寺記者は、祖父母を殺害した優希(仮称)が、事件に至る前に大人や社会から救いの手が差し伸べられなかった理由についてこう書いています。
 「もっと単純なものだと想像していた。分かりやすい『悪』があるのだと思っていたのだ。例えば児童相談所の対応の不手際、あるいは周囲の人の冷たく無関心な態度、などだ。しかし、実際に取材してみると、そんなに単純な構図ではなかった。児童相談所については、一家が横浜で保護されたときに両親が一時保護を拒否したとはいえ、優希を学校に通わせておらず一家で野宿生活をしていた実態があったにもかかわらず、強制的な一時保護に踏み切らなかったことには疑問が残る。一方で、区役所の保護担当と児相は、一家に生活保護を受給させて住まいを提供し、優希の学籍復活と結衣(仮称・優希の妹)の就籍、家庭訪問など、継続的な支援を行っていた。」
 「17歳で祖父母を殺害する」結果を知る読者は、「大人や社会から救いの手が差し伸べられなかったのか」ともどかしい思いでこのノンフィクションを読み進めます。
 私は、この本を読みながら、帚木蓬生著「ネガティブ・ケイパビリティ」を想起しました。
 ネガティブ・ケイパビリティとは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処のしようのない事態に耐える能力」です。
 「なぜ、少年は祖父母を殺害してしまったのか」。この本にその答えは書かれていません。事実の積み重ねが綴られています。
 山寺記者は、「この事件を『特殊な少年が起こした特殊な事件』で済ませてはならない。私たちのすぐそばに、同じような過酷な日々を懸命にサバイブしようとしている子どもたちがいるかもしれない。それは、住んでいるマンションの壁一枚を隔てた場所で静かに起きているかもしれない。私たち大人は、その想像力を働かせることを忘れてはならないと思う。この本を、遠い世界の出来事としてではなくごく身近で起こりうる出来事として、少年のような子どもの存在に気づいたら自分に何ができるのかを想像しながら読んでいただければうれしく思う。」
 このノンフィクションを原案として映画「MOTHER」が製作され、全国で上映されています。

 母親役は、長澤まさみさんが演じます。是非、この映画を観たいと思います。

 山口県内での昨年度の児童虐待件数は709件です。

 厚生労働省は、昨年6月に「乳幼児健診未受診者、未就園児、不就学児等の緊急把握調査再々フォローアップ結果」を公表しました。

 厚労省は、2018年6月1日時点で、上記の把握対象児童数が全国で15270人(山口県で13人)だったが、昨年6月25日で確認ができない児童は、全国で17人(山口県で0人)だったことを明らかにしました。

 この本に繰り返し「居所不明児」のことが取り上げられています。

 この事件が、「特殊な少年が起こした特殊な事件」ではないことを感じながら、周りの子どもたちを見守っていきたいと思いました。

 子どもを取り巻く環境は、複雑さを深めているようです。ネガティブ・ケイパビリティの精神で、少しづつ、子ども取り巻く環境が改善するように、私は、宇部市PTA連合会顧問として、県議会議員として調査し、発言していきたいと思います。

 「居所不明児」や「児童虐待」など子どもを取り巻く諸問題について、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

トラックバック

コメントはまだありません

No comments yet.

コメント

コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。

メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。