議員日誌

コロナ時代に地方自治を問う

 8月21日付毎日新聞の社説は今後の地方自治の方向を示した素晴らしい内容でした。
 表題は、「コロナの時代 地方の再生『稼ぐ競争』からの脱却を」です。紹介します。
 「人口減少対策として、安倍政権は地方創生の取り組みを進めてきた。とりわけ、観光需要発掘によるインバウンド効果は、その柱だった。政府が強調する『自治体の競争』『稼ぐ自治体』というコンセプトに合致していたためだ。」「だが、コロナ禍は、地方の観光業界に深刻な打撃を与えている。昨年3000万人を超した訪日外国人は今年上半期、395万人に落ち込んだ。観光への傾斜は結果的に、地方の傷を深めた。」「同時に、地方創生が観光一辺倒になりつつあったことを省みなければならない。昨年、東京圏の人口は流入が流出を15万人上回った。その差は地方創生を掲げる前よりもむしろ拡大している。『稼ぐ競争』は東京集中の流れを変えるに至っていない。」「政府が『稼ぐ競争』を誘導し、自治体が人口を奪い合う発想からそろそろ卒業してはどうか。観光戦略に逆風が吹く中、政府は次の目玉に『スーパーシティ構想』を据えようとしている。AI(人口知能)やビックデータを活用した『未来都市』をつくるふれこみだ。だが、規制緩和で自治体を競わせる手法は変わらない。子育て、自然環境、住民の交流などの暮らしやすさや、地域の特徴を生かした持続的な取組にもっと光を当てるべきだろう。」「競争よりも自治体同士、あるいは地域内での連帯や連携を追及すべきである。」「地方全体が税を共有し、目的に応じて再配分し、連携するような仕組みも検討に値するのではないか。」「大都市圏に住む若者が地方での暮らしに関心を示すなど、『ポストコロナ』に向けた新しいうねりも起き始めている。人口減少が進む中で、地域の将来をどう主体的に構想していくか。立ち止まり、再考する契機としたい。」
 7月24日付しんぶん赤旗は、自治体問題研究所理事長である岡田知弘さんのインタビュー「新型コロナが問う 日本と世界」を掲載しています。
 岡田理事長は、「東京圏へのコロナ感染者の集中は、東京をグローバル都市圏に育成しようとした安倍政権の『地方創生政策』の破綻を示すものです。第一期の地方創生総合戦略によって人口の東京への一極集中はむしろ進みました。この点の総括なしに、第32次地方制度調査会は新たな地方創生改革を答申しています。全国的にも『選択と集中』政策として、中核市・政令市を中心とする連携中核都市圏づくりを行い、各県の中心都市に人口も経済機能も集中させようとしてきた政策が、コロナ感染拡大の素地をつくったといえます。」「国には国境措置とともに本来、地方自治体の施策を行財政面から支える役割をもっています。ところが、市町村合併や『行財政改革』の結果、自治体はその役割を十分果たせない状況です。これも対応が遅れた一因です。」「コロナ禍のなかで、『公共』の大切さ、役割が国際的に再認識されたと思います。日本でも必要なものは『新しい生活様式』ではなく『新しい政治・経済・社会のあり方』です。何よりも住民の感染防止と命を守るために公共の責任を全うすることです。行き過ぎた行財政改革を根本的に見直し、公共・公的病院の再編計画を即時に中止し、地域の公衆衛生・医療体制を整えなければなりません。あわせて住民の暮らしを支えるための産業、福祉行政も、地域の個性に合わせて地方自治体が中心になった立案、実行すべき時です。コロナ禍のなかで、地域になくてはならないものがわかり、自治体による独自の防疫・医療・産業支援がなされ、地域のなかでの『連帯経済』の取り組みが広がっています。新たな地域社会や自治の展望が示されているのではないでしょうか。」と述べています。
 コロナ前の地方について、毎日新聞社説は「自治体の競争」「稼ぐ自治体」と表現しています。この点について、岡田理事長は、安倍政権の「地方創生政策」の破綻を表しています。
 コロナ後の地方について、毎日新聞社説は、「競争よりも自治体同士、あるいは地域内での連帯や連携」が重要と指摘しています。この点について、岡田理事長は、「地域の中での『連帯経済』」が重要と述べています。
 毎日新聞社説と岡田理事長のインタビューは、共通しています。
 二つの指摘の共通点を一言で言えば、コロナ前の地方自治は「公共」をないがしろにしてきた。コロナ後の地方自治は「公共」を大切にしたものでなければならない。それを推進していくために、地方自治体同士の競争ではなく連帯や連携が大切だと指摘していると思います。
 今こそ、「公共」を取り戻す改革こそが求められている中、毎日新聞社説は、政府は、「スーパーシティ構想」を進めようとしているとし、これは「規制緩和で自治体を競わせる手法は変わらない」と指摘しています。
 岡田理事長は、安倍政権は「地方創生政策」の破綻を総括することなく「第32次地方制度調査会は新たな地方制度改革を答申した」と指摘しています。
 この二つの指摘も共通しています。
 安倍政権は、これまでの自治体政策の破綻を総括することなく、破綻を拡大する政策をコロナ後も取ろうとしているとの指摘です。
 私は、山口県での「地方創生」の破綻を明らかにし、山口県がコロナの時代に「公共」を再構築できる自治体となるよう必要な発言を行っていきたいと、毎日新聞社説と岡田理事長のインタビュー記事を読んで痛感しました。
 コロナの時代に、あなたはどのような自治体を求めますか。皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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