議員日誌

スーパーシティ構想 今秋公募開始

 仏教を始め様々な問題でご示唆頂いている京都市の中島晃弁護士から「旬刊 自由法曹団通信1710号2020年7月11日」をお届けいただきました。
 この通信に、中島弁護士の「企業による都市住民の支配を許してはならない-スーパーシティ法案批判」が掲載されています。
 まず、中島弁護士の小論から、スーパーシティ法案の問題点を引用していきたいと思います。
 今年5月、スーパーシティ法(「国家戦略特別区域法」改定案)が成立しました。
 中島弁護士は、この法案の問題点の第一は、「地方自治の破壊」だとして次のように指摘しています。
 「政府は、事業計画立案に『住民合意』が必要であるかのように説明してきたが、法律には『住民その他の利害関係者の意向を踏まえなければならない』とあるだけで、具体的な方法は区域会議に委ねられている。『住民代表』は区域会議の判断で入れてもいい存在にすぎないが、特定事業者は区域指定前から関与できる仕組みとなっている。地方自治体は、住民の直接選挙で選ばれる首長と議員、それと主権者である住民の三者によって運営される。住民の意思を無視する首長や議員については、住民はリコールによって罷免することができる。憲法82条は、『地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律によって定める』と規定されており、ここでいう『地方自治の本旨』とは、団体自治と住民自治にあることはいうまでもない。それ故に、地方自治は民主主義の学校とよばれる。ところが、今回のスーパーシティ法は、こうした地方自治の基本原則である団体自治と住民自治を解体し、自治体のほかに、国と企業が関与する『ミニ独立政府』によって地方自治体を運営しようというものであって、憲法が規定する『地方自治の本旨』を根本から否定するものである。ここに法律の最大の問題点がある。」
 中島弁護士は、スーパーシティ法の第二の問題点は「超監視社会の出現」だと指摘し、次のように述べています。
 「区域内では、先端サービスの実現を理由に、企業や個人の持つ各種のデータが集められ、実施主体がこうした情報を一元的に管理して、そのかわり医療、交通、金融などの各種サービスを提供しようというものである。スーパーシティでは、顔認証によるキャッシュレス決済や遠隔医療、薬のドローン配送など先端技術を用いたサービスの拡大や組み合わせを想定している。これまでとは次元の違い生体情報を含む個人情報が大量に集められ、活用されることになる。個人情報の活用について、政府は本人同意の必要性を強調しているが、現在でも就活情報サイトでは個人情報の使用に同意しなければ登録を完了しない実態がある。そうすると、利用者は不安があっても同意せざるを得ないことになる。また、現行の個人情報保護法でも、公益に資するなど特別な理由がある場合は、本人同意なしで提供できると定められている。本人同意が必要かどうかについて、政府は国会で、自治体や事業者や国でつくる区域会議が『判断する』と答弁しており、最終的には区域会議の判断に委ねられている。(中略)個人情報の保護や住民の人権が軽視されたまま、最先端のIT技術などを活用した便利で快適な暮らしの実現を掲げて、個人情報の一元的な収集・管理が進むと、その先には、恐るべき超管理社会の到来による地獄絵が出現することになろう。」
 内閣府地方創生推進事務局が今年7月に作成した「『スーパーシティ』構想について」では、「『スーパーシティ』構想 自治体アイデア公募の結果(今年6月1日現在)56団体からアイデアが提出されたとあります。県内では、下関市がアイデアを提出したことが明らかにされています。
 今年7月27日に内閣府が主催した「『スパーシティ構想』に関するシンポジウム」で配布された資料に「基本構想提出までの想定スケジュールについて(案」があります。
 この資料には、今年の秋「地方公共団体による事業者公募」、12月末「スーパーシティ公募」、来年2月頃「公募締め切り 各応募自治体の評価」、3月頃「スーパーシティの区域指定」とあります。
 今年5月に成立したばかりのスーパーシティ法。中島弁護士の指摘の通り地方自治の破壊や超監視社会の出現など、この法律には多くの問題点が指摘されています。
 このような中、政府は、この秋にもスーパーシティの公募を開始し、来年3月には区域指定を行おうとしているのです。
 政府がこれまでスーパーシティを急ぐ背景には、国民に内容を理解されないうちにという想いがあるのではないでしょうか。
 中島弁護士の小論は、「スーパーシティで、企業などの事業主体が個人情報の一元的な収集・管理を行うことによって都市住民の生活をすみずみまで管理統制し、支配することが可能となる危険を多分にはらんでいるといわなければならない。近未来の日本の都市で、その主人公になるのはスーパーシティ構想における企業などの実施主体なのか、それともそこで暮らす住民なのか、いま私たちは重大な岐路にたたされている。」
 私たちは、スーパーシティという「バラ色のキャッチフレーズ」に惑わされることなく、私たちが求める自治体とは何かを見据えて、この法案に基づく構想と対峙していく必要があることを中島弁護士の小論を読んで痛感しました。
 山口県としてこの法案にどう取り組もうとしているのか、県内の動向はどうかなど、これから調査してまいります。分かったことは、本ブログで紹介していきます。この問題に関する、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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