池上永一さんの「シャングリ・ラ」を読んでいます。
文庫本(上)の裏表紙を引用します。
「加速する地球温暖化を阻止するため、都市を超高層建造物アトラスへ移して地上を森林化する東京。しかし、そこに生まれたのは理想郷ではなかった。CO²を削減するために、世界は炭素経済へ移行。炭素を吸収削減することで利益を生み出すようになった。一方で、森林化により東京は難民が続出。政府に対する不満が噴き出ていた。少年院から戻った反政府ゲリラの総統・北条國子は、格差社会の打破のために立ち上がった。」
文庫本の解説で、筒井康隆さんは池上永一さんの「テンペスト」と「シャングリ・ラ」に共通する点を「それは文芸的に侵犯、そして越境というテーマと言えるだろう。両作品に共通する厳格な階層社会において、主人公たちは立入り不能の上部社会または禁断の領域へと侵犯し、立ち返ってはまた侵犯する。そして登場人物は男性・女性の境界を超えては立ち返り、性の越境も繰り返す。主人公たちの審判と越境によって作品内のほぼ固定した社会は激しく流動し、独特の過激な物語が展開する。」と書いています。
「テンペスト」はドラマや映画になりましたが、「シャングリ・ラ」は、アニメ化されています。アニメ「シャングリ・ラ」を同時に楽しんでいます。
筒井さんは、本作を「純然たるSFではあるのだが、単に未来ものというだけではない。経済炭素という概念の導入によって地球温暖化という現代的な問題を伴ったポリティカル・フィクションになっている」と書いています。
「地球温暖化」の問題を考える時、先日紹介した、不破哲三さんの「『資本論』刊行150年に寄せて」の指摘を想起します。
不破さんは「国連は、2050年までに『先進国』は温暖化ガスの排出量を80%以上減らし(1990年基準)、世界全体50%以上減らす、という目標を提起しました。まさに人類の生存を守る闘争目標です。これをやり抜く力をもたない社会体制には、人類の危機に対処する能力を持たない体制として、人類史的な審判がくだされるでしょう。」
地球温暖化はまさに資本主義体制そのものが問われている人類史的な課題です。
この問題にまっこうから挑んだ「シャングリ・ラ」じっくり読んでいきたいと思います。
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