議員日誌

さよなら渓谷

 DVDビデオで吉田修一原作、大森立嗣監督の映画「さよなら渓谷」を観ました。

 渓谷の谷間で暮らす尾崎夫婦。隣に住む立花里美が息子殺しの容疑で逮捕される。

 夫の俊介は、大学時代に集団レイプ事件を起こしていた。

 妻かなこにも想像を絶する過去があった。

 ネタバレになるので、この辺りにします。

 吉田修一さんの名前を記憶に留めたのは、映画「悪人」の原作者だということでした。

 映画「悪人」は過去にDVDかテレビかで観ていました。

 妻夫木演じる「悪人」の主人公と、「さよなら渓谷」の尾崎夫婦、そして、立花里美は、共通した「罪」を背負った人たちです。

 私は、この人物たちが救われるのかが吉田修一さんの問いだと考えます。

 それを考える時に、親鸞聖人の説いた「悪人正機」を思い出します。

 親鸞聖人の教えを門弟の唯円が著した「歎異抄」に「善人なほもって往生をとぐ。いわんや悪人をや」という言葉があることは有名です。

 この下りが「悪人正機」と言われています。

 浄土真宗必携「み教えと歩む」には、「悪人正機」をこう説明しています。

 「私は、毎日いろいろな生きもののいのちを奪いながら生きています。またこころのなかには、とても口には出さないような恐ろしく自己中心的な考えが渦巻いています。社会の善悪を基準にすれば、それが理由で犯罪者になるあけではありません。しかし仏教の善悪を基準にすれば、いのちを奪い続け、自己中心的な煩悩に支配され迷いのなかにあり続ける私は、まぎれもなく悪人です。悪人正機の悪人とは、どこかの犯罪者といったような他人事ではなく、この私自身のことなのです。」

 原作者の吉田修一さんが描く悪人は、「他人事ではなく、自分自身のことなのだ」と思わせてくれる人物です。

 そして小説に登場する悪人は、救われていいんだと吉田さんは描いているように私は思います。

 この辺りに共感する人びとに支えられ、吉田修一さんの作品や映画がヒットしているのだと思います。

 今、小説「さよなら渓谷」を読んでいます。心がヒリヒリする場面が多い作品ですが、人間について深く考えさせる作品です。

 吉田修一原作の映像化作品では最近「横道世之介」を観ました。

 小学校5年生の娘は「とっても良かった」と言っていました。

 これは「善人」を描いた作品と言われていますが、これまた、心に残る映像でした。

 この辺りの感想は、後日、ゆっくり書きたいと思っています。

 吉田修一さんの小説は、「さよなら渓谷」がほぼ初めてですが、惹きつけられる文章です。

 一気に吉田修一ファンになりました。

 映像化も多い作家さんなので、小説と映像化された作品をコラボしながら楽しみたいと思います。

 吉田修一ファンの皆さん、お勧めの作品をお教え下さい。

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