議員日誌

悼む人

 天童荒太さんの直木賞受賞作「悼む人」を読んでいます。

 文庫版の紹介文を引用します。

 「不慮の死を遂げた人々を『悼む』ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と憎しみ、罪と許しのドラマ。」

 文庫下巻の最後には、この本の書評を4人の方々が書いています。

 その一人が作家の重松清さんであり、彼が最後にこう書いています。

 「物語は鏡だった。『悼む人』は物語から旅立って、読み手の生きる現実へと渡ってきた。静人の声が遠くから聞こえる。その声は、あなたには自分のことを悼んでくれる人がいますか、あなたが悼みたい相手はいますか、と繰り返し問いかけてくるのである。」

 私が悼みたい相手は、やはり、1985年1月28日、「犀川スキーバス転落事故」で亡くなった22名の大学の同級生です。

 何度も本ブログなどで紹介していますからご存じの方が多いと思いますが、転落したバスは、3号車で、私は2号車に乗車していました。

 事故後、亡くなった学生が素晴らしかったことなどを聞くにつけ、「自分は死ぬ資格が無かったのだろう」などと落ち込むこともありました。

 しかし、その後は、漠然と「亡くなった学生の分も生き抜いてやろう」と思えるようになりました。

 ウイキペディアには「事故を悼み、事故現場には慰霊碑が建立された」とあります。

 事故の生存者として、亡くなった学生を悼みに、慰霊碑を訪ねたいと重松清さんの文章を読んで思いました。

 静人が本当にいたなら、もう現場で悼んでいることでしょう。

 最近、天童さんの文章を読み続けていますが、「死」に対して真摯向き合う姿勢を感じます。

 静人こそ、天童さん本人なのではないかと思われてなりません。

 殺伐とした時代だからこそ、天童さんの文章や静人の立ち振る舞いが胸に響きます。

 この小説を原作として、来年、堤幸彦監督によって映画化される予定です。

 静人役は、高良健吾さん、倖世役は、石田ゆり子さん。

 いいキャスティングです。 映画も今から楽しみです。

 本作を始め、天童作品の感想をお聞かせ下さい。

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