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阿武風力発電所建設中止を求める1011筆の署名と要望書を経済産業大臣に提出する

 昨日、阿武・萩の未来を良くする会(中村光則代表)と阿武風力発電所建設を考える会(浅野容子代表)と阿武風力発電所ちゃあなんか考える会(宮内欣二代表)は、西村康稔経済産業大臣に(仮称)阿武風力発電事業の中止を求める署名1011筆と要望書を提出しました。
 署名と要望書は、岡崎修一中国経済産業局エネルギー環境対策課長が受け取りました。

 1000筆超の署名と要望書を渡す浅野容子阿武風力発電所建設を考える会代表、右端が私

 また、署名と要望書提出に、私と河合県議、浅井萩市議、米津阿武町議が同席しました。
 提出された要望書は、以下の通りです。
・・・

経済産業大臣 西村 康稔様
経済産業省 商務情報政策局産業保安グループ電力安全課 環境審査ご担当様

2023年8月3日

阿武・萩の未来を良くする会代表 中村光則
阿武風力発電所建設を考える会代表 浅野容子
阿武風力発電所ちゃあなんか考える会代表 宮内欣二

(仮称)阿武風力発電事業の中止を求める署名簿と要望書を提出します

  私たち住民3団体は、HSE株式会社が阿武町内に計画している(仮称)阿武風力発電事業の中止を求める署名活動を2020年12月以来行ってきました。本日、1,011筆(紙署名914筆、オンライン署名97筆)の署名を経済産業大臣宛に提出いたします。私たちは、署名に賛同してくださった方々とともに事業計画が中止されるよう求めます。
 経済産業大臣におかれましては、この事業に関わる許認可を事業主に与えないでください。地元住民はもとより多くの方々がこの事業に対し反対の意思を示していることを真摯に受け止めていただきたいと思います。 
 併せて、私たち住民が本事業計画に対して強く懸念している問題点をお伝えし、本事業を認可されることがないよう要望書を提出いたします。

要望書

 私たちは、事業計画実施予定区域の土砂災害の危険性があること、また奈古断層の直下に風力発電施設(以下、風車と略す)の建設予定地があることに強い懸念を抱いています。本事業を認可されることがないよう要望いたします。

1)事業実施予定区域、そして隣接する地域には国土地理院ハザードマップによる土砂流出危険区域が存在し、土砂災害発生が強く懸念されます。
 本事業実施予定地は日本列島が大陸の淵にあった6000万年から1億年前の大規模火山活動によって形成された火山岩地域にあり、その土質は脆弱で、土砂崩れを起こしやすい花崗岩、流紋岩の風化した土地を含みます。地元住民には事業予定区域とその周辺が真砂土で崩れやすいことはよく知られています。
また、国土地理院の重ねるハザードマップにおいても、事業予定区域には土砂災害の危険性がある土石流危険渓流が含まれており、予定区域北側直下の地域、また隣接区域には山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象の可能性がある土石流警戒区域、土石流特別警戒区域、傾斜度30°かつ高さ5m以上の急傾斜地で人家等に被害を与えるおそれのある急傾斜地崩壊危険箇所が含まれています。阿武町のハザードマップでも、事業区域直下の葛篭集落は土石流とがけ崩れの警戒区域に指定されています(注1)。
 この葛篭集落は葛篭川を挟んだ谷間の両側に位置しており、集落から仏坂と呼ばれる急坂を上に見上げる位置に風車建設が予定されています。ここは6号機、7号機、8号機の建設予定地周辺であり、経産省環境審査顧問会風力部会(2021年8月25日開催)の質疑応答において、「地山と盛土面の間の排水をきちんとやらないと結構危ない」、「一番上流側に一回水を集めて地山の面で下に流すというか、降った水を盛土面に流さないようにしないと危ない」と危険性が指摘されています。また、湧水から小川が流れるため池の水質の問題も同部会で指摘されています。
 また、この湿地帯には環境省レッドリスト2020補遺資料で絶滅危惧種1B(EN)に指定されているアブサンショウウオが生息していることが確認されています。この湿地帯周辺の改変により、アブサンショウウオ絶滅の危険性が一層高まるものと懸念されます。

2)13基の風車は奈古断層の直上に建設が予定されており、事業実施予定の20年間の安全性と倒壊の危険性が懸念されます。
 本事業実施予定区域内には、政府が設置した地震調査研究推進本部の地震調査委員会長期評価部会において、中国地域の活断層の長期評価において評価の対象とされている奈古断層が存在し、環境影響評価配慮書と方法書によれば、奈古断層の直上に13基の風車が設置されることになっています。地震調査委員会長期評価部会の中国地域の活断層の長期評価によれば、奈古断層は主要活断層帯には挙げられていませんが、活断層の今後30年以内の地震発生確率が不明であり、マグニチュード6.7まであるかもしれないという予測で、すぐに地震が起きることが否定できない「Xランク」と表記されています。活断層が存在すること自体、当地域で大きな地震が発生する可能性を示すものと考えられます(注2)。
本事業の関係自治体首長である阿武町長、萩市長、山口県知事は環境影響評価配慮書意見、また方法書意見において、事業予定地内の奈古断層の存在に言及し、最新の文献調査、専門家からの意見聴取、地質調査の実施を要請しています。
 私たち住民も風力発電の事業期間とされている20年間、断層上に建設される高さ148メートルの巨大な建築物である風車の安全性と倒壊の危険性はどのように担保されるのか、地震で倒壊しないという根拠を具体的に示してほしい、地質調査等とは具体的にどのような調査か、調査結果とその審査基準、建築物の安定性や地震に対する強度の適合基準を明らかにしてほしいと事業者であるHSE株式会社に直接質しました。
事業者は、これに答えて「風力発電施設を建設する際には、建築基準法や電気事業法に基づいて対象地におけるボーリング調査を行い、地震荷重を算出し、その荷重に耐えうる構造設計にしなければなりません。当該構造設計に対する第三者の評価を経て、国の安全基準を満たすものだけが建設することができます。国の法令に基づきながら地震に対する対策を検討いたします」と回答しました(添付資料1)。
 日本エネルギー学会発行の論文『風力発電設備支持物構造設計指針・同解説 2010 年版の策定』(注3)によれば、「風力発電設備支持物を設計する際には建設地点の自然環境を考慮した設計風速を決定することが重要である。(中略)建設地点の地形が急峻な場合には設計風速を解析的に求めることが困難である。」と記載されています。本事業計画の許認可にあたっては、電気事業法や建築基準法に基づいた風車の構造設計が国の安全基準を満たすかどうかという点で厳正な審査をお願いするものですが、それだけではなく、この事業予定区域がまさに急峻な地形に計画されており、土砂災害発生と奈古断層の存在という複合的な危険を孕んだ区域であることを十分に御留意いただき慎重に判断されるようお願いいたします。
 経済産業省におかれましては、これらの問題点を精査され、電気事業法第一条「この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによつて、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによつて、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。」に則り、公共の安全と環境の保全を一義とし、本事業を認可されることがないよう要望いたします。

3)FITによる事業認定区域外の土地利用について事実確認をしてください。
本事業計画は2021年3月10日にFITによる事業認定をされています。ところが、HSE株式会社は、昨年夏、事業認定された阿武町町有林に隣接する阿武町宇田郷地区の共有林(注4)の共同地権者数名と個別に会い、共有林を同事業の資材搬入路、並びに風力発電設備本体建設時の基礎として利用する旨の話し合いを非公式に行ったことがわかりました。これらの共有林は環境影響評価法による事業想定区域には含まれていますが、FITによる事業認定区域には含まれていません。事業認定を受けていない土地に風力発電設備を作ることは出来ないのではありませんか。この点について事実関係を精査され、事業者に対し適切な指導、勧告をお願いする次第です。
                                    以上
(注1)
阿武町土砂災害ハザードマップ(宇田中央つづら)
<88A2959092AC836E8355815B8368837D8362837681404832392E332E3820202044572E786477> (sakura.ne.jp)

(注2)
政府地震調査研究推進本部 地震調査委員会
今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(平成31年2月26日現在) (jishin.go.jp)
活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(2023年1月1日での算定)
今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(令和5年1月13日) (jishin.go.jp)

(注3)
『風力発電設備支持物構造設計指針・同解説 2010 年版の策定』_pdf (jst.go.jp)

(注4)
阿武町大字宇田字南迫10954−8 、 阿武町大字宇田字南迫10954―9 、阿武町大字宇田字火の平10955。
(添付資料)日立サステナブル社(現HSE株式会社)回答(2021年5月19日付)

・・・
 要望項目1)と2)について、岩本聡中国四国産業保安監督部電力安全課長補佐は、「要望書の内容は、経済産業省商務情報政策局産業保安グループ電力安全課に伝えている。私たちでは、回答はできない。回答は、経済産業省に問い合わせていただきたい。」と答えました。
 要望項目3)について、林仁中国経済産業局資源エネルギー対策課課長補佐は、「調査し、後日、口頭で回答したい。」と答えました。
 また、中村阿武・萩の未来を良くする会代表から「大字宇田字水穴で、面積8933㎡の土地が299200㎡だったことが判明した。事業者が、過少な面積で、FITを申請していたことになる。このことは、FIT法の上で、どのような問題があると言えるのか。」との質問を行いました。
 林課長補佐は「この点についも、調査し、後日、口頭で回答したい。」と答えました。

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